今回は「フィトンチッド」について学習していこう。フィトンチッドという言葉を初めて聞く人もいるかもしれないが、防虫剤や森林浴など私たちの身近なものにも関係しているんです。どんな効果があるのか具体的な例を見ながらフィトンチッドとはなにか理解していこう。
大学院で植物の研究していた、生物に詳しいライターAnnaと一緒に解説していきます。

ライター/Anna

大学で生物学について幅広く学び、大学院では植物の研究をしていた。生物学の楽しさをたくさんの人に広められるよう日々勉強中。

フィトンチッドとは?

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フィトンチッド(phytoncide)とは、樹木が自分自身を守るために葉や幹から放出している揮発性の物質の総称です。樹木は傷つけられると傷口を菌から守るために抗菌作用を持つ揮発成分を出します。また、害虫を寄せ付けない効果や、生物が嫌う苦み成分などを出すことで摂食を阻害する効果もあるんです。

では人間にとってもフィトンチッドは害になってしまうのではないか?と思うかもしれませんが、実は人間にはとても有益に働き、防虫や消臭・脱臭など生活の様々な場面でフィトンチッドは活用されています。

フィトンチッドの4つの効果

フィトンチッドはあまり聞きなれない言葉かもしれませんが、意外にも私たちの身近なところで使われています。ここでは主要な4つの効果を見ていきましょう。

1. 除菌・抗菌効果

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フィトンチッドには除菌・抗菌作用があることがこれまでの研究により実証されています。具体的にはノロウイルスや、強い食中毒を引き起こすことで知られるO157に有効であることが分かっているんですよ。その他の細菌やウイルスにも効果を示すため室内の除菌などに用いられています。

他にもお寿司屋さんでお寿司が葉っぱの上に乗せられているのを見たことはありませんか?あれは葉蘭(はらん)と呼ばれるユリ科の植物の葉で、植物の殺菌作用を利用してお寿司の鮮度を保っているのです。また、柿の葉寿司はお寿司が柿の葉に包まれていますが、これも菌の繁殖を防ぐ「抗菌」のために使われています。

\次のページで「2. 消臭・脱臭効果」を解説!/

2. 消臭・脱臭効果

フィトンチッドには消臭・脱臭効果もあり、室内の臭いを消臭するスプレーや空気清浄機があります。フィトンチッドは悪臭の原因となる成分に付着して無害化していて、アンモニア臭やタバコの臭いを消臭したり、有害物質の濃度を下げたりする効果もあるんですよ。また、フィトンチッドの消臭成分は人間やペットが吸い込んでも害はないと言われていて、可燃性もないため安全に使用することができます。

3. リフレッシュ・リラックス作用

3. リフレッシュ・リラックス作用

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森林浴」という言葉を聞いたことはありますか?森林浴という言葉は林野庁により提唱されましたが、森林に触れて心身を癒やすことを言います。実はこれにもフィトンチッドが関係しているんですよ。

ストレスを感じると分泌されるコルチゾールというホルモンがありますが、森林浴をするとコルチゾールが減少するという研究結果があります。またフィトンチッドが脳内のα波を高め、気分を落ち着かせてリラックス効果をもたらすことも分かっていて、ストレスの軽減にも効果的です。フィトンチッドは気温や季節、植物の種類などによって放出量が変わりますが、スギやヒノキなど様々な樹木から出ているので疲れた時や気持ちを切り替えたい時など森林に行くとリフレッシュできるのではないでしょうか?

4.免疫力の向上

フィトンチッドはナチュラルキラー細胞(NK細胞)を活性化させることが研究結果から分かっています。ナチュラルキラー細胞とは免疫細胞の一つで、ガン細胞やウイルス感染した細胞を発見して攻撃する働きを持っているんです。ナチュラルキラー細胞の活性が低下すると免疫力も低下して病気にかかりやすくなってしまうため、免疫力を高めるためには非常に重要な細胞であると言えます。

ちなみにフィトンチッドがどのように取り込まれるかというと、呼吸によって血液に入りナチュラルキラー細胞を活性化したり、嗅覚神経を通って脳に届きストレスホルモンの分泌を抑制しているそうです。

\次のページで「フィトンチッドの活用例」を解説!/

フィトンチッドの活用例

ここまでフィトンチッドの主要な効果を解説しましたが、より具体的な例を見ていきましょう。日常で取り入れられそうなものはぜひ取り入れてみて、フィトンチッドを有効活用してみてくださいね。

①住宅

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樹木が伐採されて木材になってもフィトンチッドの効果は得られます。木で作られた家は爽やかな、良い香りがしますよね。住宅の建材に用いられるヒノキに含まれるフィトンチッドはダニやシロアリに対する防虫効果があります。また、フィトンチッドの消臭効果により家庭の代表的な悪臭である生ゴミ臭やトイレのアンモニア臭を軽減させることができるのです。

他にも、新築の家で起こることがあるシックハウス症候群はホルムアルデヒドなどの有害物質が原因とされていますが、フィトンチッドにはホルムアルデヒドの濃度を減少させる効果もあるため、住宅だけでもたくさんの良い効果があると言えますね。

②樟脳(しょうのう)

しょうのうは衣類の防虫によく使われますよね。しょうのうにはクスノキが持つ成分(カンファー)が使われていて、この成分は虫が嫌う臭いであるため防虫効果があります。フィトンチッドはそもそも樹木が害虫を寄せ付けないために虫が嫌う成分を出しているため、しょうのうはその作用をそのまま利用している分かりやすい例だと思います。

③アロマテラピー

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森に入ると爽やかな、安らぐような香りがしませんか?これはフィトンチッドの香り成分が関係していて、植物によって様々な種類がありますが、代表的な成分としてα-ピネンやリモネンなどがあります。

アロマは芳香、テラピーは治療という意味です。すなわちアロマテラピーとは植物から抽出した芳香成分を利用して健康状態を回復していく自然療法のことを示しています。アロマというと香りを楽しむためのもの、というイメージが強いですが香りを利用することで疲労回復やストレスを解消することで病気になりにくくするという目的もあるんですよ。アロマオイルをお風呂のお湯に数滴垂らすだけでも良いですし、ディフューザーを使って部屋に香りを拡散させて気持ちを落ち着かせるのもおすすめです。

植物は身体が傷つけられたことをどうやって全身に伝えているのか?

フィトンチッドは植物が傷つけられると放出される物質であるとお話しましたが、植物は自分自身が害虫や病原菌などに傷つけられたことをどのようにして全身に伝えているのでしょうか?

実は植物は傷つけられると、傷ついた組織からグルタミン酸というアミノ酸が流出します。するとグルタミン酸がカルシウム濃度を上昇させ、これによって防御機構が活性化されるのです。植物には神経がないためどのように防御機構を活性化させるのかについては近年まで分かっていませんでしたが、このような仕組みを使うことで数分で組織が傷つけられたことを伝え、例えば他の葉が虫に食べられないように苦み成分のあるジャスモン酸という植物ホルモンを合成するなどの防御を行います。動物のように簡単に動くことのできない植物ならではの防御の仕組みで非常に面白いですよね。

イラスト使用元:いらすとや

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理科生き物・植物生物

コロナで大注目!フィトンチッドとは?森林浴と関係があるその効果や作用を身近な例とともにわかりやすく解説します

フィトンチッドの活用例

ここまでフィトンチッドの主要な効果を解説しましたが、より具体的な例を見ていきましょう。日常で取り入れられそうなものはぜひ取り入れてみて、フィトンチッドを有効活用してみてくださいね。

①住宅

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樹木が伐採されて木材になってもフィトンチッドの効果は得られます。木で作られた家は爽やかな、良い香りがしますよね。住宅の建材に用いられるヒノキに含まれるフィトンチッドはダニやシロアリに対する防虫効果があります。また、フィトンチッドの消臭効果により家庭の代表的な悪臭である生ゴミ臭やトイレのアンモニア臭を軽減させることができるのです。

他にも、新築の家で起こることがあるシックハウス症候群はホルムアルデヒドなどの有害物質が原因とされていますが、フィトンチッドにはホルムアルデヒドの濃度を減少させる効果もあるため、住宅だけでもたくさんの良い効果があると言えますね。

②樟脳(しょうのう)

しょうのうは衣類の防虫によく使われますよね。しょうのうにはクスノキが持つ成分(カンファー)が使われていて、この成分は虫が嫌う臭いであるため防虫効果があります。フィトンチッドはそもそも樹木が害虫を寄せ付けないために虫が嫌う成分を出しているため、しょうのうはその作用をそのまま利用している分かりやすい例だと思います。

③アロマテラピー

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森に入ると爽やかな、安らぐような香りがしませんか?これはフィトンチッドの香り成分が関係していて、植物によって様々な種類がありますが、代表的な成分としてα-ピネンやリモネンなどがあります。

アロマは芳香、テラピーは治療という意味です。すなわちアロマテラピーとは植物から抽出した芳香成分を利用して健康状態を回復していく自然療法のことを示しています。アロマというと香りを楽しむためのもの、というイメージが強いですが香りを利用することで疲労回復やストレスを解消することで病気になりにくくするという目的もあるんですよ。アロマオイルをお風呂のお湯に数滴垂らすだけでも良いですし、ディフューザーを使って部屋に香りを拡散させて気持ちを落ち着かせるのもおすすめです。

植物は身体が傷つけられたことをどうやって全身に伝えているのか?

フィトンチッドは植物が傷つけられると放出される物質であるとお話しましたが、植物は自分自身が害虫や病原菌などに傷つけられたことをどのようにして全身に伝えているのでしょうか?

実は植物は傷つけられると、傷ついた組織からグルタミン酸というアミノ酸が流出します。するとグルタミン酸がカルシウム濃度を上昇させ、これによって防御機構が活性化されるのです。植物には神経がないためどのように防御機構を活性化させるのかについては近年まで分かっていませんでしたが、このような仕組みを使うことで数分で組織が傷つけられたことを伝え、例えば他の葉が虫に食べられないように苦み成分のあるジャスモン酸という植物ホルモンを合成するなどの防御を行います。動物のように簡単に動くことのできない植物ならではの防御の仕組みで非常に面白いですよね。

イラスト使用元:いらすとや

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