フィトンチッドの活用例
ここまでフィトンチッドの主要な効果を解説しましたが、より具体的な例を見ていきましょう。日常で取り入れられそうなものはぜひ取り入れてみて、フィトンチッドを有効活用してみてくださいね。
①住宅
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樹木が伐採されて木材になってもフィトンチッドの効果は得られます。木で作られた家は爽やかな、良い香りがしますよね。住宅の建材に用いられるヒノキに含まれるフィトンチッドはダニやシロアリに対する防虫効果があります。また、フィトンチッドの消臭効果により家庭の代表的な悪臭である生ゴミ臭やトイレのアンモニア臭を軽減させることができるのです。
他にも、新築の家で起こることがあるシックハウス症候群はホルムアルデヒドなどの有害物質が原因とされていますが、フィトンチッドにはホルムアルデヒドの濃度を減少させる効果もあるため、住宅だけでもたくさんの良い効果があると言えますね。
②樟脳(しょうのう)
しょうのうは衣類の防虫によく使われますよね。しょうのうにはクスノキが持つ成分(カンファー)が使われていて、この成分は虫が嫌う臭いであるため防虫効果があります。フィトンチッドはそもそも樹木が害虫を寄せ付けないために虫が嫌う成分を出しているため、しょうのうはその作用をそのまま利用している分かりやすい例だと思います。
③アロマテラピー
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森に入ると爽やかな、安らぐような香りがしませんか?これはフィトンチッドの香り成分が関係していて、植物によって様々な種類がありますが、代表的な成分としてα-ピネンやリモネンなどがあります。
アロマは芳香、テラピーは治療という意味です。すなわちアロマテラピーとは植物から抽出した芳香成分を利用して健康状態を回復していく自然療法のことを示しています。アロマというと香りを楽しむためのもの、というイメージが強いですが香りを利用することで疲労回復やストレスを解消することで病気になりにくくするという目的もあるんですよ。アロマオイルをお風呂のお湯に数滴垂らすだけでも良いですし、ディフューザーを使って部屋に香りを拡散させて気持ちを落ち着かせるのもおすすめです。
植物は身体が傷つけられたことをどうやって全身に伝えているのか?
フィトンチッドは植物が傷つけられると放出される物質であるとお話しましたが、植物は自分自身が害虫や病原菌などに傷つけられたことをどのようにして全身に伝えているのでしょうか?
実は植物は傷つけられると、傷ついた組織からグルタミン酸というアミノ酸が流出します。するとグルタミン酸がカルシウム濃度を上昇させ、これによって防御機構が活性化されるのです。植物には神経がないためどのように防御機構を活性化させるのかについては近年まで分かっていませんでしたが、このような仕組みを使うことで数分で組織が傷つけられたことを伝え、例えば他の葉が虫に食べられないように苦み成分のあるジャスモン酸という植物ホルモンを合成するなどの防御を行います。動物のように簡単に動くことのできない植物ならではの防御の仕組みで非常に面白いですよね。
イラスト使用元:いらすとや