今回は「偶蹄類」というキーワードについて学習していこう。

偶蹄類という言葉を聞いてどんな生物か思い浮かぶやつは、かなりの動物好きかもしれませんね。どんな特徴のある生物たちなのか、他のグループの生物とどんな関連があるのか…いくつかの項目に分けてみていきたい。

大学で生物学を学び、現在は講師としても活動しているオノヅカユウに解説してもらおう。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

偶蹄類とは

偶蹄類(ぐうているい)とは、哺乳類の中でも偶数本の蹄(ひづめ)をもつ動物のなかまがまとめられたグループです。

「哺乳綱の偶蹄目(ぐうていもく)という分類群に属する生物が偶蹄類」と言われることもあります。

そうですね…分類学上の偶蹄類のまとめ方は、すこし説明が必要な状況になっているのです。

このあたりの話は最後にさせていただくことにして、まずは偶蹄類の特徴や、これに属する代表的な生物をご紹介しましょう。

偶蹄類の特徴

偶蹄類の生物に当てはまる特徴をいくつかピックアップしてみたいと思います。

偶数本の蹄

この記事の初めにも述べた通り、偶蹄類は偶数本の蹄をもつという特徴をもっています。もちろん、「偶蹄類」というグループの名前もここからです。

蹄は、人間でいうところの「爪」が大きく厚く発達したもの。指先を保護し、土をしっかりと蹴ることができます。私たちの爪とは見た目がかなり異なるようですが、蹄も爪も角質という硬いタンパク質の層からなるのです。

image by iStockphoto

偶蹄類では、四肢の先端に2本や4本の蹄をもちます。2本の蹄をもつものであれば、その指は人間でいうところの中指(第三指)と薬指(第四指)にあたるのです。

\次のページで「蹄行性」を解説!/

蹄行性

偶蹄類の動物が歩く様子を観察すると、蹄の部分だけを地面につけて歩いているのが分かります。人間で例えるならば、爪のある部分…つま先だけで歩き続けるような状態です。

このような歩き方は、とくに蹄行性(ていこうせい)とよばれます。

私たちヒトは、普段つま先立ちのようにして歩くことはしませんよね。足の裏全体で地面を踏みしめながら体重を移動させて歩きます。このような歩き方を表す言葉は蹠行性(しょこうせい)です。

食べ物を「反芻」するものが多い

全ての偶蹄類に当てはまるわけではありませんが、食べ物を「反芻(はんすう)」するものが多いのも、偶蹄類の特徴でしょう。

反芻とは、一度胃に入れた食べ物を口まで戻し、また噛んで胃に戻すという食事の方法です。

偶蹄類には草食性のものや雑食性のものがいます。植物をメインに食べる場合、固い繊維を消化する必要があるため、反芻を行うことで消化を助けているのです。

image by Study-Z編集部

反芻だけでなく、胃も変わっています。草食性の偶蹄類では胃を複数持ち、さらにそこに微生物を住まわせることで、消化を効率よく行うものがいるのです。

偶蹄類にふくまれる動物たち

では、偶蹄類にはどんな動物が含まれているか、具体例を見ていきましょう。

ウシ

偶蹄類の動物でも代表的な存在がウシです。偶蹄目という分類群の名称も、別名を”ウシ目”というくらいですから。

ウシの蹄は二本。着物を着るときに履く”足袋”のようにもみえますね。

image by iStockphoto

ウシは人間と付き合いの長い動物です。昔から乳(牛乳)をとったり肉を食べたりしたほか、農耕にも利用されてきた歴史があります。現在家畜として利用されているウシは、もともとオーロックスという野生の牛を、人間が飼いならしたものです。

つまり、オーロックスは飼育されているウシのご先祖様だということができますが、残念ながらすでに絶滅してしまいました。

ほかにウシに近縁な動物として、バイソンスイギュウなどがいて、もちろんこれらも偶蹄類にふくまれます。

ヤギやヒツジ

ウシと同じく、ヤギ(山羊)ヒツジ(羊)も人間が飼育する偶蹄類として代表的な生物でしょう。じつは、ヤギもヒツジも分類上はウシの含まれるウシ科に該当する動物なんです。

\次のページで「ブタやイノシシ」を解説!/

そういう点では、「偶蹄類」や「偶蹄目」を、「ウシの仲間」や「ウシ目」と言ってしまうのは、すこし大ざっぱすぎる気もしますよね。

ブタやイノシシ

ウシ科ではありませんが、同じく私たちの生活になじみ深いブタも、偶蹄類の一つです。前述のヒツジなどは毛を利用する(めん羊)こともありますが、ブタに関しては、日本ではほとんど食用でしょう。

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ブタは野生のイノシシを家畜化したものです。したがって、イノシシも偶蹄類の仲間ということになります。

ウマは偶蹄類ではなく、奇蹄類(きているい)という別のグル―プなんですよ!奇蹄類は奇数本の蹄をもつ動物のまとまりです。ウマの蹄は、「U」のような形をした1本ですよね。

なお、偶蹄類と有蹄類はいずれも蹄をもつことから、有蹄類(ゆうているい)という名称でまとめられることもあります。

シカ

シカの仲間も偶蹄類に含まれます。日本のニホンジカに加え、ヘラジカトナカイなど、世界に30種以上が生息しているんです。

キリン

image by iStockphoto

アフリカの生物としておなじみのキリンも偶蹄類です。「偶蹄類は”ウシ目”」という印象をもっていると、なかなか想像しにくいかもしれませんね。

キリンはキリン科という分類群に属していますが、キリン科には現生種としてもう一つ、オカピという動物も含まれています。

\次のページで「カバ」を解説!/

カバ

最後にご紹介するのはカバです。大きな体をもつカバは、蹄が4つ。立派な偶蹄類の仲間になります。

カバは草食性ですが、ウシなどとは違い反芻を行いません。日中のほとんどの時間を水中ですごすことなど、偶蹄類の中では独特の生態がみられる動物です。

分類学上の偶蹄類=偶蹄目?

では最後に分類学のお話を少ししましょう。

以前まで「偶蹄類というのは、哺乳綱偶蹄目という分類群の動物です」ということができました。しかし、最近は偶蹄目という分類群自体がみなおされ、鯨偶蹄目(げいぐうていもく)という新しい分類群を考える説が有力になっているんです。

そのとおりですね。DNAの塩基配列などに基づいて分類を見直したところ、クジラの仲間と偶蹄類を一つの目としてまとめることができそうだ、という説が提唱されたのです。

偶蹄目という分類群の名称がいまだに使われることもありますが、やはりクジラの仲間をふくめるのであれば、鯨偶蹄目という呼び名の方がわかりやすいでしょう。

もちろん、クジラなどの海生哺乳類では蹄がありませんから、今回はあくまで「蹄の数に基づいた、以前までの”偶蹄目”」を偶蹄類としてご紹介しました。

ほかにもいるぞ!偶蹄類

今回ご紹介した生物以外にも、偶蹄類の動物は存在します。ラクダやリャマ、アルパカ、ジャコウジカにプロングホーン…有蹄類の中でも、偶蹄類は種類が多いのです。多様な姿をした種をふくんでいることが、今回の解説でお分かりいただけたかと思います。

偶蹄類の仲間には、動物園や牧場で飼育されているものが少なくありません。ぜひ一度、その姿や足元をじっくりと観察してみてください。

イラスト提供元:いらすとや

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理科生物生物の分類・進化

3分で簡単偶蹄類の種類や特徴!当てはまる動物とは?現役講師がサクッとわかりやすく解説

今回は「偶蹄類」というキーワードについて学習していこう。

偶蹄類という言葉を聞いてどんな生物か思い浮かぶやつは、かなりの動物好きかもしれませんね。どんな特徴のある生物たちなのか、他のグループの生物とどんな関連があるのか…いくつかの項目に分けてみていきたい。

大学で生物学を学び、現在は講師としても活動しているオノヅカユウに解説してもらおう。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

偶蹄類とは

偶蹄類(ぐうているい)とは、哺乳類の中でも偶数本の蹄(ひづめ)をもつ動物のなかまがまとめられたグループです。

「哺乳綱の偶蹄目(ぐうていもく)という分類群に属する生物が偶蹄類」と言われることもあります。

そうですね…分類学上の偶蹄類のまとめ方は、すこし説明が必要な状況になっているのです。

このあたりの話は最後にさせていただくことにして、まずは偶蹄類の特徴や、これに属する代表的な生物をご紹介しましょう。

偶蹄類の特徴

偶蹄類の生物に当てはまる特徴をいくつかピックアップしてみたいと思います。

偶数本の蹄

この記事の初めにも述べた通り、偶蹄類は偶数本の蹄をもつという特徴をもっています。もちろん、「偶蹄類」というグループの名前もここからです。

蹄は、人間でいうところの「爪」が大きく厚く発達したもの。指先を保護し、土をしっかりと蹴ることができます。私たちの爪とは見た目がかなり異なるようですが、蹄も爪も角質という硬いタンパク質の層からなるのです。

image by iStockphoto

偶蹄類では、四肢の先端に2本や4本の蹄をもちます。2本の蹄をもつものであれば、その指は人間でいうところの中指(第三指)と薬指(第四指)にあたるのです。

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