タリウムの主な用途
それではタリウムの使い道を確認していきましょう。タリウムの化合物は分析実験などに用いられますが、ここではもっと身近な使用例をご紹介します。
ネズミに危険なものは人間にも危険?殺鼠剤
殺鼠剤とはその名の通りネズミを駆除するための薬剤のこと。殺鼠剤は餌として食べさせたり、巣に投入してネズミたちを全滅させるのです。タリウム系の殺鼠剤には硫酸タリウムが使われ、臓器にダメージを与えます。硫酸タリウムはネズミだけでなく、人間の大人でも1g摂取すると死に至る可能性があるものです。殺鼠剤には他に黄燐、リン化亜鉛があげられますが、これらもやはり人間にとっても有害なので注意してください。
毛が抜ける作用、脱毛剤
タリウム塩には脱毛作用があります。タリウムはケラチンという髪の毛の主成分の成長を阻害するため、毛が抜けてしまうのです。この性質を用いて、タリウム塩は脱毛剤の原料として使われていました。これを頭皮に塗り、髪の毛を抜いてから皮膚病の治療を行っていたそうです。また、体の脱毛クリームとしても使用されていましたが、製造過程や使用時に体調不良を訴える人が出たため現在では使われていません。
タリウムの毒性
タリウムは急性毒(摂取した直後から数自治以内に現れる毒性)を持つ元素です。タリウムは水と反応し、強塩基の水酸化タリウムを作ります。 この水酸化タリウムは体内に入るとカリウムイオンと置き換わり、毒性を示すのです。
タリウムの中毒の症状は脱毛、皮膚炎、爪に白い線(ミーズ線)が現れるといった症状があります。その他に不整脈や血圧の異常、無呼吸、筋力低下、肝機能障害、嘔吐、下痢とタリウムにはたくさんの危険性があるのです。
もし誤って摂取した場合は胃洗浄や人工透析を行います。
タリウムで殺人?本当にあった事件
あまりなじみがないと紹介してきたタリウム。ですが犯罪の世界ではちょっと知られた存在です。
ミステリーの世界ではアガサ・クリスティが『蒼ざめた馬』という作品で使っています。 過去に何度が毒物として殺人事件や殺人未遂事件に使われてきました。この小説をきっかけに実際の殺人事件の謎が解かれたというのも興味深いです。
というわけで、タリウムに関わる実際の事件についてご紹介します。
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