今回は気体の燃焼に関して勉強していきます。
ものが燃える光景は皆日常的に目にしていると思う。ですが、物体の燃焼という現象について説明できるやつはなかなかいないんじゃないか?
今回は燃焼の中でも特に気体の燃焼について、原理や方式の違いを機械系出身で熱力学に詳しい理系ライター、ふっくらブラウスと一緒に解説します。

ライター/ふっくらブラウス

理系単科大学で機械系を専攻、制御工学や各種力学のほか化学や情報工学も学んだ。塾講師時代の経験を活かし、理系科目を中心に解説している。

ものが燃えるってそもそもどういうこと?

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ものが燃える現象は、ガスコンロやロウソク、焚き火など日常的に見られる現象です。しかし、あまりに日常的すぎて、そもそも燃えるとはどんな現象なのか考えたことがある人はあまりいないかもしれません。

そこで、気体の燃焼について解説する前に、ものが燃えるために何が必要なのか初めに考えてみることにしましょう。

先に結論を言ってしまうと、ものの燃焼には熱源、酸素、可燃物の3要素が必要です。

実際に、水をかけ温度を下げる、土などを被せて酸素を遮断する、周りの可燃物を取り除いて鎮火を待つといった方法により燃焼を止めることができます。

それでは次に、燃えている時には具体的にどんなことが起こっているのか見ていきましょう。

燃焼のカギを握るのは酸素

身の回りの可燃物は油や炭など、炭素や水素から構成される有機物が中心であり、それらの燃焼には酸素が必要です。

炭素や水素、酸素と聞いてピンときた人もいるかもしれません。炭素と酸素が結合すると二酸化炭素に、水素と酸素が結合すると水になりますよね。

そう、実は燃焼とは熱源からのエネルギーにより可燃物が酸素と結合する化学反応、いわゆる酸化反応の一種にあたる現象となります。

また、燃焼の際に見られる炎は、気体や微粒子が舞い上がりながら燃焼し光を放っている状態です。つまり、炎を上げる燃焼については、気化もしくは分離して気体となった燃料と酸素がなければ成立しません

このように考えると、酸素がない状態でものの燃焼が進まない理由がよくわかると思います。引き続き解説する気体の燃焼についても、酸素の供給は重要なポイントです。

気体の燃焼は拡散燃焼・予混合燃焼の2つ

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これまで、燃焼には酸素が重要であることについて触れてきました。そして、気体の燃焼方式は酸素供給の方法により拡散燃焼・予混合燃焼の2種類に分かれています。

続いて、実際にこれらの燃料が利用されているエンジンの仕組みを紐解きながら、拡散燃焼および予混合燃焼の原理や特徴についてそれぞれ見ていきましょう。

ディーゼルエンジンから見る拡散燃焼

拡散燃焼を利用している主要な機械にディーゼルエンジンがあります。

ディーゼルエンジンの着火の仕組みは、圧縮し高温高圧にした空気中に軽油を噴霧、飛散し蒸発した軽油が酸素と混合し高温下で発火するというものです。可燃ガスと酸素をあらかじめ混合するのではなく、蒸発により拡散、混合させるのが特徴となります。

このように、拡散燃焼とは空気の拡散により酸素を供給する燃焼であり、燃料となる気体と酸素を別方向から供給して自然に混合されるのを待つ方式です。

\次のページで「拡散燃焼の特徴は橙色の炎、すすが出やすい」を解説!/

拡散燃焼の特徴は橙色の炎、すすが出やすい

拡散燃焼の特徴は、温度が低くなりがちなことです。そのため、拡散燃焼では炎の色が赤色や橙色となります。

計画的、人為的に酸素を供給しないため、自然界に見られる炎をあげる燃焼は全て拡散燃焼です。実際、焚き火の炎の色も赤い色をしていますよね。

拡散燃焼のメリットは、酸素と可燃ガスを混合する必要がないため、燃焼量の調整が簡単で高燃費なことです。また、その過程で生じる高温高圧の空気も利用できるため、多くの工業用バーナーで利用されています。

拡散燃焼のデメリットは、酸素供給が安定していないため不完全燃焼しやすいことです。そのため、可燃ガス中の炭素などが酸素と十分反応できず、すすや一酸化炭素を形成、排出することがあります。

ガソリンエンジンから見る予混合燃焼

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予混合燃焼を利用している代表的な機械はガソリンエンジンとなります。

ガソリンエンジンの着火の仕組みは、あらかじめ気化したガソリンと空気を混ぜた混合気体を用意し、火花を加えることで点火するというものです。安定的に燃焼するように人為的に可燃ガスと酸素を混合しておくのがポイントとなります。

このように、予混合燃焼とは可燃ガスと空気を混合した混合気体として酸素を供給する燃焼で、燃焼する気体と酸素を同方向から送り込む方式です。

予混合燃焼の特徴は青色の炎、すすが出ない

予混合燃焼は拡散燃焼よりも酸素供給が安定しているため、燃焼温度が高くなりやすいです。そのため、炎の色は青色でほの暗くなります。

予混合燃焼のメリットは、わずかな火花で素早く簡単に火がつき、火炎が安定していることです。また、不完全燃焼しないためすすや一酸化炭素などが発生しない点もポイントとなります。

一方で予混合燃焼のデメリットは、空気および可燃ガスの供給量や供給速度のコントロールが必要で、バランスを崩すと火が消えたり燃料供給側に引火(逆火)する危険があることです。逆火は機器類の破損の原因となります。

人為的に酸素を供給する方式であるので、予混合燃焼は人工の製品にのみ見られる燃焼形態です。

私たちの生活における拡散燃焼と予混合燃焼

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これまで、自動車に使われるエンジンを取り上げながら、拡散燃焼と予混合燃焼の違いについて説明してきました。ただ、エンジンは日常的に触れるものではないので、少しイメージしにくいかもしれません。

そこで、最後に拡散燃焼および予混合燃焼について、日常的な実例を取り上げてもう少し深堀りしていきます。

拡散燃焼の実例:ロウソク

拡散燃焼の実例:ロウソク

image by Study-Z編集部

火のついたロウソクは皆さん目にしたことがあると思いますが、火がつく仕組みは想像以上に説明が難しいものではないでしょうか。

実は、ロウソクに火がつくメカニズムは拡散燃焼と同様のものとなっています。

初めはロウソクの芯の部分がライターなどの熱により分解し、酸素と結びついて燃焼するという流れです。

芯の部分の燃焼により、ロウソクのロウの部分が溶解し、毛細管現象で芯を伝って高温部に到達し気化します。この気化したロウと周りをただよう酸素が炎から熱をもらって酸化反応し、燃焼が継続するのです。

実際に固体のロウはほとんど燃えず、固体から気体(融点300℃)に変化させ燃焼させるにはかなりのエネルギーが必要になります。そこで、初めに芯の部分を燃焼させることで、効率よくロウが気化するよう工夫しているんですね。

\次のページで「予混合燃焼の実例:ガスコンロ」を解説!/

予混合燃焼の実例:ガスコンロ

ガスコンロは素早く点火し、安定した炎が必要なため予混合燃焼方式をとっています。実際ガスコンロの炎は青色をしていますね。

ガスコンロは、燃料噴射口と同じ箇所から吸気した空気と可燃ガスを混合させる仕組みです。高速でガスを噴射することで機器筒内の圧力を下げ効率よく空気を取り込む工夫がされています。

こうしてガスと酸素を混合した気体が、バーナー孔に送りこまれ点火プラグの火花により酸化反応を起こし着火するのが最終的な流れです。ガスコンロを使用したときのカチカチという音は、点火プラグに流れる電流が火花をたてる音になります。

拡散燃焼と予混合燃焼では、酸素の取り込み方が違う!

燃焼は熱源、酸素、可燃物の3要素が必要となります。特に炎をともなう燃焼は、気化した可燃物と酸素が揃って初めて可能となる現象です。

拡散燃焼は空気の拡散により酸素と可燃ガスを混合する方式で、人為的に酸素を供給しません。予混合燃焼はあらかじめ可燃ガスと空気を混合しておく方式で、人為的に酸素を供給する方法をとります。

拡散燃焼は赤色の炎を上げるのが特徴で、すすや一酸化炭素などが生じやすいところが弱点です。予混合燃焼は青色の炎を上げるのが特徴で、炎が安定してすすも出ない分、可燃ガスや空気の供給量のコントロールが必要になります。

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拡散燃焼?予混合燃焼?気体の燃焼方式の違いをメリット、デメリットに触れながら、機械系出身ライターが5分でわかりやすく解説!

今回は気体の燃焼に関して勉強していきます。
ものが燃える光景は皆日常的に目にしていると思う。ですが、物体の燃焼という現象について説明できるやつはなかなかいないんじゃないか?
今回は燃焼の中でも特に気体の燃焼について、原理や方式の違いを機械系出身で熱力学に詳しい理系ライター、ふっくらブラウスと一緒に解説します。

ライター/ふっくらブラウス

理系単科大学で機械系を専攻、制御工学や各種力学のほか化学や情報工学も学んだ。塾講師時代の経験を活かし、理系科目を中心に解説している。

ものが燃えるってそもそもどういうこと?

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ものが燃える現象は、ガスコンロやロウソク、焚き火など日常的に見られる現象です。しかし、あまりに日常的すぎて、そもそも燃えるとはどんな現象なのか考えたことがある人はあまりいないかもしれません。

そこで、気体の燃焼について解説する前に、ものが燃えるために何が必要なのか初めに考えてみることにしましょう。

先に結論を言ってしまうと、ものの燃焼には熱源、酸素、可燃物の3要素が必要です。

実際に、水をかけ温度を下げる、土などを被せて酸素を遮断する、周りの可燃物を取り除いて鎮火を待つといった方法により燃焼を止めることができます。

それでは次に、燃えている時には具体的にどんなことが起こっているのか見ていきましょう。

燃焼のカギを握るのは酸素

身の回りの可燃物は油や炭など、炭素や水素から構成される有機物が中心であり、それらの燃焼には酸素が必要です。

炭素や水素、酸素と聞いてピンときた人もいるかもしれません。炭素と酸素が結合すると二酸化炭素に、水素と酸素が結合すると水になりますよね。

そう、実は燃焼とは熱源からのエネルギーにより可燃物が酸素と結合する化学反応、いわゆる酸化反応の一種にあたる現象となります。

また、燃焼の際に見られる炎は、気体や微粒子が舞い上がりながら燃焼し光を放っている状態です。つまり、炎を上げる燃焼については、気化もしくは分離して気体となった燃料と酸素がなければ成立しません

このように考えると、酸素がない状態でものの燃焼が進まない理由がよくわかると思います。引き続き解説する気体の燃焼についても、酸素の供給は重要なポイントです。

気体の燃焼は拡散燃焼・予混合燃焼の2つ

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これまで、燃焼には酸素が重要であることについて触れてきました。そして、気体の燃焼方式は酸素供給の方法により拡散燃焼・予混合燃焼の2種類に分かれています。

続いて、実際にこれらの燃料が利用されているエンジンの仕組みを紐解きながら、拡散燃焼および予混合燃焼の原理や特徴についてそれぞれ見ていきましょう。

ディーゼルエンジンから見る拡散燃焼

拡散燃焼を利用している主要な機械にディーゼルエンジンがあります。

ディーゼルエンジンの着火の仕組みは、圧縮し高温高圧にした空気中に軽油を噴霧、飛散し蒸発した軽油が酸素と混合し高温下で発火するというものです。可燃ガスと酸素をあらかじめ混合するのではなく、蒸発により拡散、混合させるのが特徴となります。

このように、拡散燃焼とは空気の拡散により酸素を供給する燃焼であり、燃料となる気体と酸素を別方向から供給して自然に混合されるのを待つ方式です。

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