今回は「雌雄同体」について学習していきます。生物はもともと一個体が分かれて新しい個体が作られる無性生殖から、雄と雌が受精をして子孫を残す有性生殖へと進化した。雌雄同体は有性生殖の仲間ですが、どのような仕組みで子孫を残しているのでしょうか?
理科の教員免許を持っていて生物に詳しいライターAnnaと一緒に解説していきます。

ライター/Anna

大学で生物学について幅広く学び、大学院では植物の研究をしていた。生物学の楽しさをたくさんの人に広められるよう日々勉強中。

雌雄同体ってなに?

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雌雄同体(しゆうどうたい)とは、動物のうちメスの生殖器官とオスの生殖器官を一個体に両方持つもののことです。生殖器官とは有性生殖をするための器官であり、メスの場合は卵巣や子宮など、オスの場合は精巣や精嚢などがあります。動物では雌雄同体のものは少なく、一般的には雌性配偶子(卵子)と雄性配偶子(精子)を作る個体は分かれている雌雄異体(しゆういたい)であることが多いです。

ちなみに植物では雌花(めばな)と雄花(おばな)を一個体に両方持つもののことを雌雄同株(しゆうどうしゅ)と言い、反対に雌株と雄株に分かれているものについては雌雄異株(しゆういしゅ)または雌雄別株(しゆうべっしゅ)と言います。

雌雄同体のメリットとデメリット

生まれた時から性別が決まっている私たちヒトからすると雌雄同体の生物はとても不思議に思いますが、どのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか?

\次のページで「メリットその1:交配相手を見つけやすい」を解説!/

メリットその1:交配相手を見つけやすい

雌雄同体の一番のメリットは交配相手を見つけやすいことです。雌雄異体の場合、繁殖をしたいと思っても周りに同性しかいない時には交尾をすることができません。一方雌雄同体であれば、オス・メスを考える必要がないため、相手を見つけることさえできれば繁殖が可能です。また、後ほど紹介しますが、雌雄同体の中には性転換する生物もいて、出会ってから雌雄を決めて交尾をして繁殖することもあるんですよ。

メリットその2:自家受精により子孫を残すことができる

自家受精とは同一個体内で作られた精子と卵子で起こる受精のことです。自家受精では一個体のみで繁殖できるため子孫を残す上では大きなメリットとなります。

植物では作られた花粉が同一個体のめしべの柱頭につくことで受粉することがあり、これを自家受粉と呼ばれているんですよ。イネやコムギなどは同一個体内でおしべとめしべを作って自家受粉をしています。

デメリットその1:遺伝的多様性がなくなる

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雌雄同体の生物はメリットでも解説した通り自家受精を行うことができますよね。しかし、自家受精は他の個体と交配をしないため多様性においてはデメリットとなってしまいます。他の個体と子孫を残す場合には遺伝子が交わるため遺伝的に多様性がありますが、一個体のみで子孫を残す場合には自分と同じ遺伝子を残すことしかできません。遺伝的多様性がないと、環境が大きく変化した際に適応できず絶滅してしまう恐れがあります

ちなみに自家受精を行う動物はナメクジやミミズなどがいますが、自家受精を行うことはかなり珍しく、繁殖相手がどうしても見つからない場合などに行うそうです。

デメリットその2:エネルギーの消費が大きい

生殖細胞は代謝が活発であるため、たくさんのエネルギーが必要になります。雌雄同体の場合、雌性配偶子と雄性配偶子の両方を一個体中に持つためその分エネルギー消費が大きくなりデメリットとなってしまうのです。また、雌雄同体はメスだけでなくどちらの個体も卵を産むため、それぞれが卵へ栄養を与える必要もありますよね。その際にも栄養を取ってエネルギーを獲得する必要があったり、卵を産卵するために運動性が低下してしまうことがデメリットとして挙げられます。

雌雄同体の生物とは?

ここまで雌雄同体のメリットとデメリットを見てきましたが、具体的にどのような生物が雌雄同体なのでしょうか?いくつか例を見ていきましょう。

\次のページで「カタツムリ」を解説!/

カタツムリ

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カタツムリは雌雄同体の生物として有名ですよね。カタツムリが雌雄同体である理由として、移動能力が低いためと言われています。移動能力が低いと別個体と出会うことがなかなかありません。やっと会えた、と思ったら同性で交尾ができず繁殖ができない...ということも起こり得るため、雌雄同体になったと考えられています。

他にも動きがゆっくりであるため、交尾をして卵を産むことができても他の生物に食べられてしまうなどのリスクもありますよね。どの個体も卵を産むことができれば多くの子孫を残すことができるため雌雄同体になっているとの考え方もあります。ちなみにカタツムリの交尾はお互いの精子を雌の生殖器に注入し合い、それが終わるとお互いに卵を産むのです。

クマノミ

クマノミ

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実は魚では雌雄同体が多く存在していて、特に興味深い特徴として「性転換」をします。オスからメスになる(雄性先熟)種類や、メスからオスになる(雌性先熟)、またオス・メスどちらにも何回でも転換できる種類もいるんですよ。

クマノミはイソギンチャクと共生している水族館でも人気の魚ですよね。実は生まれたときは「両性生殖腺(りょうせいせいしょくせん)」と呼ばれる器官を持っています。成長するにつれてメスまたはオスになりますが生まれた時点ではオスです。クマノミは通常数匹のグループで生活しているのですが、そのグループの中で身体が最も大きい個体がメスになります。では、もしそのメスが死んでしまったらどうするのかというと、今度は二番目に身体が大きい個体がオスからメスに性転換するのです。

カキ(牡蠣)

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実は私たちが食べるカキ(牡蠣)は種類によって異なりますが雌雄同体のものもいます。日本で食用とされているマガキは交代制の雌雄同体です。カキは繁殖期になるとオスとメスに分かれ、栄養が豊富な個体はメスに、そうでない個体はオスになります。そして繁殖期が終わるとまた性別がない状態に戻るという非常に面白い生物です。ちなみにカキは漢字で「牡蠣」と書きますが、これは昔カキにはオス(牡)しかいないと思われていたためという説があるそうですよ。

雌雄同体より雌雄異体の動物の方が多いのはどうして?

雌雄同体の動物を具体的に見ていきましたが、現在では雌雄異体の動物の方が多いのはなぜでしょうか?

それは先ほどの雌雄同体のデメリットで解説した通り「遺伝的多様性」が原因であると言われています。雌雄同体である方が、数としては子孫を多く残すことができますが、環境の変化や寄生虫などの被害があった場合には遺伝子に多様性がある方が種の存続に繋がりますよね。他にも気に入ったメスをかけてオス同士で争い、強いオスがメスを獲得したり、より綺麗な模様のオスがメスに選ばれるということもあります。これはより良い遺伝子を残すための仕組みで遺伝的なメリットが大きいと考えられますね。

また、オスは狩りに出て餌を獲得し縄張りを守る、メスは生まれた子供や卵を敵から守るなど、オスとメスで役割を分けている生物もいます。オスとメスで分業することで雌雄同体にも負けないよう子孫をより多く残す工夫をしているのではないでしょうか。

イラスト使用元:いらすとや

" /> 3分でわかる雌雄同体!カタツムリやクマノミまで?生物の例と雌雄同体のメリット・デメリットを詳しくわかりやすく解説 – Study-Z
理科生物細胞・生殖・遺伝

3分でわかる雌雄同体!カタツムリやクマノミまで?生物の例と雌雄同体のメリット・デメリットを詳しくわかりやすく解説

今回は「雌雄同体」について学習していきます。生物はもともと一個体が分かれて新しい個体が作られる無性生殖から、雄と雌が受精をして子孫を残す有性生殖へと進化した。雌雄同体は有性生殖の仲間ですが、どのような仕組みで子孫を残しているのでしょうか?
理科の教員免許を持っていて生物に詳しいライターAnnaと一緒に解説していきます。

ライター/Anna

大学で生物学について幅広く学び、大学院では植物の研究をしていた。生物学の楽しさをたくさんの人に広められるよう日々勉強中。

雌雄同体ってなに?

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雌雄同体(しゆうどうたい)とは、動物のうちメスの生殖器官とオスの生殖器官を一個体に両方持つもののことです。生殖器官とは有性生殖をするための器官であり、メスの場合は卵巣や子宮など、オスの場合は精巣や精嚢などがあります。動物では雌雄同体のものは少なく、一般的には雌性配偶子(卵子)と雄性配偶子(精子)を作る個体は分かれている雌雄異体(しゆういたい)であることが多いです。

ちなみに植物では雌花(めばな)と雄花(おばな)を一個体に両方持つもののことを雌雄同株(しゆうどうしゅ)と言い、反対に雌株と雄株に分かれているものについては雌雄異株(しゆういしゅ)または雌雄別株(しゆうべっしゅ)と言います。

雌雄同体のメリットとデメリット

生まれた時から性別が決まっている私たちヒトからすると雌雄同体の生物はとても不思議に思いますが、どのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか?

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