ライター/アラノるか
現役薬剤師ライター。日々の業務で麻薬処方せんも調剤する。大学では薬用植物を扱う生薬学研究室に所属。患者さまへの説明同様、わかりやすい解説を心がけている。
1.「麻」には大麻も含まれる?主な麻の種類を解説
さらりとした風合いで、夏場に心地よい麻の衣料。実は「麻」とは一種類の植物から取れるのではなく、植物に含まれる繊維の総称です。
一口に麻といっても、原料となっている植物は20種近くあり、それぞれ性質も異なっています。よく使われる麻としては、リネン、ラミー、ジュート、ヘンプなどがありますが、そのうちのヘンプが大麻草から取れるものです。
つまり、「麻」の一部分には大麻も含まれていると言えます。
1-1.亜麻(リネン)について
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リネンとは、アマ科の一年草の亜麻(アマ)の茎から取れる繊維や織物のこと。この項目で引用した写真には、可憐な亜麻の花も添えられています。実は、現在の日本で流通している麻製品のほとんどは、亜麻から作られたリネンなのです。
亜麻は繊維以外にも利用されており、種子から取れる油は亜麻仁油(アマニ油)として使われるほか、花を楽しむための園芸種もあります。リネンの織物は吸水・発散性に優れている上、汚れが落ちやすく、丈夫で洗濯にも強い素材です。
1-2.苧麻(ラミー)について
ラミーは、イラクサ科の多年生草本の苧麻(チョマ、別名カラムシとも)の茎の皮から取れる繊維。
ラミーは非常に丈夫な繊維で、天然植物繊維の中では最高レベルの強度です。ラミーの織物は清涼感に優れ、美しい光沢を持っています。
1-3.黄麻(ジュート)について
ジュートは、アオイ科の一年草の黄麻(コウマ、別名インド麻とも)の茎から取れる繊維。
ジュートは耐久性にはやや欠けますが、毛羽があるため保温性が高く、伸びにくいため導火線やカーペット等に使われます。
なお、近縁種のシマツナソも繊維原料になり、海外では同じく「ジュート」と呼ばれるのですが、若葉が食用の「モロヘイヤ」として流通しており、日本では野菜としてなじみ深いです。
1-4.大麻(ヘンプ)について
ヘンプは、アサ科で雄株と雌株に分かれる、一年草の麻(アサ、大麻草とも)の茎の皮から取れる繊維です。
ヘンプは繊維が固く、チクチクとした刺激がありますが、通気性・吸水性に優れます。
日本でもヘンプは古くから使われてきましたが、大麻取締法によって繊維用の大麻栽培が激減。現在の国内での使用は限られ、天皇即位の大嘗祭に献上される衣服であったり、神道の祓い具の大麻(おおぬさ)やしめ縄等の材料として、伝統があり替えの利かない分野で使用されています。
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