今回は「霊長類」というキーワードをテーマにみていきたいと思う。

霊長類は、我々人類が属している動物の分類群です。霊長類について知ることは、自分たち人間についての理解を深めることになるでしょう。

大学で生物学を学び、現在は講師としても活動しているオノヅカユウに解説してもらおう。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

霊長類とは?

霊長類(れいちょうるい)とは、動物の中でも哺乳綱(ほにゅうこう)の霊長目(れいちょうもく)にふくまれている動物を指す言葉です。

霊長目を「霊長類」というように、哺乳綱は「哺乳類」とよばれることが良くあります。

そうですね。せっかくですので、分類学で使われる分類群の階級を確認しておきましょう。

分類階級

分類学では、類縁関係の近い生物同士を一つのグループ=分類群とし、さらに近い分類群同士を一段階大きな分類群とし…という風に、似たもの同士をまとめていきます。

全体を見ると、大きな分類群のなかにいくつかの小さな分類群があり、それぞれの分類群のなかにより小さな分類群がある、入れ子のような構造です。

image by Study-Z編集部

現在の分類額では、もっとも大きな分類群から順に「界→門→綱→目→科→属→種」と呼ばれています。これがベースとなりますが、生物によっては、同じ目に属する生物をそれより少し小さなグループである”亜目”にわけたり、近い”科”同士をまとめた”上科”を設定するような場合もあるんです。

また、界の上には「ドメイン」という階級も設定されていますが、こちらはあまりに大きな分類群のため、上の図では省略しています。

霊長類は「人間も含んだサルの仲間」

霊長類=霊長目は、別名をサル目といいます。その名の通り、サルの仲間がまとめられた分類群なのです。

サル目という用語の方がイメージがしやすい気もするのですが、最近は霊長目という呼称の方が使われることが多くなっています。

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image by iStockphoto

なお、われわれヒト(人間)もこの霊長目の一員です。とはいえ、ヒトをわざわざ「サルの仲間」ということはあまりないですよね。一般的に「サル」というと、ヒト以外の霊長類を指すようです。

霊長類の特徴

それでは、霊長類とよばれる動物にみられる共通点や特徴を確認してきましょう。

ものを掴める5本の指

霊長類は、ふつう手足に5本の指をもっています。5本指をもっている動物は霊長類以外にも存在しますが、大事なのはその指を使って「ものが掴める」という点です。

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私たちがものを掴めるのは、5本の指のうちの1本(親指)がほかの4本と離れ、向かい合うように配置ししているからです。これを母指対向性(ぼしたいこうせい)といい、霊長類ならではの特徴となっています。

霊長類の多くは樹上生活。ものを掴んだり話したりできる手足は、樹を登ったり、枝をつかむために必要だったと考えられています。

ヒトの祖先は樹上生活から地上生活をするようになりました。平坦な地面を歩くためには、足の指でモノを掴めるよりも、親指の配置も他4本にそろえ、しっかり大地を踏みしめられる方がいいでしょう。

すなわりヒトの場合、足の母指対向性は進化の過程で失われてしまったと考えられているのです。

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熱帯域に生息しているものが多い

「樹上生活」という言葉が出てきましたので、おもな生息地にも触れておきましょう。

霊長類はその多くが熱帯域に分布しています。背の高い樹木が生い茂る熱帯の森林などには、何種類もの霊長類が見られることがあるんです。

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もちろん、ここでもヒトは例外的な存在です。道具を使い、寒さから体を守ることができるようになったおかげもあって、寒冷な土地にも住まうことができるようになりました。

ヒト以外の霊長類で最も北に生息しているのは、日本に住むニホンザルなんです。

大脳が発達している

他の動物に比べて大脳が発達していることも、霊長類のもつ特徴だといわれます。

大脳は、脳の中でも情報の統合や分析、知覚、行動のコントロールなど、さまざまな機能をもった部分です。

ヒトでは霊長類のなかでもとくに大脳が発達しています。私たちが計算をしたり、未来を想像・予測したりできるのは、この大脳のおかげです。

霊長目にふくまれている”科”

では、霊長類に含まれている動物にはどんなものがいるのか、具体的にみていきましょう。

霊長目の分類をより詳しく見ていくと、亜目や上科などの分類群が提唱されています。ですが、どのような分類群を想定するかは研究者の見解や、研究・調査の結果によって変わる可能性があるものです。

そのため、ここではある程度分類に信頼性があるとみられる””の分類群に基づき、代表的なものをご紹介していきたいと思います。

キツネザル科

ワオキツネザルやカンムリキツネザルなど、キツネザルの仲間がふくまれる分類群がキツネザル科です。キツネザル科はマダガスカル島に自然分布しています。

そうなんです。独特の生態系がみられることでよく知られているマダガスカル島ですが、じつは世界で4番目に大きな島。なんと面積は日本の1.6倍ほどもあります。キツネザル科だけでもいくつもの種類が見られるんですよ。

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アイアイ科

アイアイ科に属しているのは、現生のもので一種だけ。アイアイ属のアイアイです。日本では童謡に歌われているサルの仲間として名前が知られていますね。

メガネザル科

メガネザルのなかまが属するのがメガネザル科。非常に大きな目をもち、昆虫などを食べる霊長類です。東南アジアの島々に生息しています。

オナガザル科

オナガザル科には、テングザルやアレンモンキー、ヒヒやマンドリルなどさまざまな種が属しています。”尾長(オナガ)”という言葉が使われていますが、なかには尾が短いものがいるのも事実です。

先ほど少し名前の出てきたニホンザルも、このオナガザル科。マカク属という分類群に属しているのですが、ニホンザルの尾は短いですよね。

テナガザル科

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テナガザル科の霊長類は、名称通り長い前肢をもつことが大きな特徴です。

このテナガザルは、後述するヒト科とひとまとめにしたヒト上科という分類群でくくられることがあります。つまり、これまでご紹介してきた霊長類の中でも、比較的ヒトの属する分類群に近い仲間だということです。

ヒト科

最後にご紹介するのはヒト科。われわれヒトが含まれているのはもちろんですが、他にもゴリラやチンパンジー、ボノボ、オランウータンなどが、同じヒト科に属しています。

ヒトは「ヒト科ヒト属」に属し、学名はホモ・サピエンス。”ホモ”というのが属名を表しているのです。

多種多様な霊長類

「サルの仲間」と紹介される霊長類ですが、こうしてみると多種多様な種が含まれていることが分かります。そして、ヒトという生物も属しているのがこのグループです。私たちの存在や進化の歴史を考えるうえで、無視することのできない仲間たちといえるでしょう。

動物園などに行く機会があれば、ヒト以外の霊長類のなかまをよく観察してみてください。ヒトとの違いや共通点がいろいろと見つかるはずです。

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理科生物生物の分類・進化

霊長類はサルだけではない!分類や特徴、最も人間に近い哺乳類についてを現役講師がわかりやすく解説します

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なお、われわれヒト(人間)もこの霊長目の一員です。とはいえ、ヒトをわざわざ「サルの仲間」ということはあまりないですよね。一般的に「サル」というと、ヒト以外の霊長類を指すようです。

霊長類の特徴

それでは、霊長類とよばれる動物にみられる共通点や特徴を確認してきましょう。

ものを掴める5本の指

霊長類は、ふつう手足に5本の指をもっています。5本指をもっている動物は霊長類以外にも存在しますが、大事なのはその指を使って「ものが掴める」という点です。

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私たちがものを掴めるのは、5本の指のうちの1本(親指)がほかの4本と離れ、向かい合うように配置ししているからです。これを母指対向性(ぼしたいこうせい)といい、霊長類ならではの特徴となっています。

霊長類の多くは樹上生活。ものを掴んだり話したりできる手足は、樹を登ったり、枝をつかむために必要だったと考えられています。

ヒトの祖先は樹上生活から地上生活をするようになりました。平坦な地面を歩くためには、足の指でモノを掴めるよりも、親指の配置も他4本にそろえ、しっかり大地を踏みしめられる方がいいでしょう。

すなわりヒトの場合、足の母指対向性は進化の過程で失われてしまったと考えられているのです。

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