この記事では「齧歯類」をキーワードに学習していこう。

齧歯類とよばれる動物の仲間にはどんなものがいるのか、どんな共通点があるのか…いろいろな角度から確認していきたい。自分の身の回りにいる齧歯類についても考えられるようになるといいな。

大学で生物学を学び、現在は講師としても活動しているオノヅカユウに解説してもらおう。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

齧歯類とは?

齧歯類(げっしるい)とは、哺乳綱(ほにゅうこう。哺乳類とも)の齧歯目(げっしもく)に含まれている動物を指す言葉です。

齧歯目はネズミのなかまが属しているグループであることから、ネズミ目といわれることもあります。

image by iStockphoto

その通りですね。「齧」という漢字が難しいので、一般的にはひらがなを使って書かれることの方が多いと思います。齧歯目も「げっ歯目」の表記の方がよくみられるでしょう。

ちなみに、「齧」は「齧る(かじる)」という漢字です。ネズミのなかまの特徴をうまく表した分類群の名称ですよね。

齧歯類の特徴

では、齧歯類の代表であるネズミの姿を思い浮かべながら、齧歯類の特徴を確認してきましょう。

伸び続ける門歯

齧歯類という言葉の由来でもあり、最大の特徴といっても過言ではないのが、齧歯類のもつ大きな門歯(もんし)です。門歯というのは、私たちが前歯とよぶ歯ですね。切歯(せっし)ということもあります。

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齧歯類は、非常によく発達した門歯を上下にもっています。この門歯は一生にわたって伸び続けるのです。自然であれば、硬いものを食べるときに自然に削られて、歯が伸びすぎるということが防げます。

ちなみに、齧歯類の門歯は外側と内側で材質が違うんです。歯の外側は硬いエナメル質、内側はエナメル質よりも柔らかい象牙質からなります。

硬いものを門歯で齧りとろうとすると、歯の内側の方が早く削れて、鋭くとがった”のみ”のような形状になるのです。

犬歯や前臼歯がない

立派な門歯をもつ一方で、齧歯類には犬歯(けんし)や前臼歯(ぜんきゅうし)がありません

犬歯とは私たち人間の口でいうところの”八重歯”になりことがある歯。肉食獣では発達した”牙”となることが多く、肉を切り裂くのによく使われます。前臼歯は犬歯のとなり(口の奥側)にある歯です。

齧歯類にこれらの歯がみられないのは、その食性が関係していると考えられます。

多くは草食性

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齧歯類はその多くが、おもに植物を食べる草食性です。伸び続ける門歯を上手に使い、硬い樹木の皮や木の実をかじります。肉を引き裂く犬歯が不要になったのも、この食性のためでしょう。

ただし、一部には虫や魚をおもに食べる、例外的な齧歯類もいます。

\次のページで「世界に広く分布する」を解説!/

世界に広く分布する

ネズミに代表される齧歯類は、現在の地球では大繁栄をとげた動物たちとなりました。その分布域は非常に広く、南極大陸以外には何かしらの形で齧歯類が生息しているほどなのです。

繫殖力が旺盛なのも、齧歯類の大きな特徴ですからね…「ネズミ算」という言葉もある通り、環境が良ければどんどん数を増やす生物です。

適応力も強く、寒いところ、暑いところ…様々な環境に生息できるようになった齧歯類が世界中にみられます。実は、哺乳類の中でももっとも種数の多いグループが齧歯類なんですよ!

齧歯類をさらに細かく分類すると…

ではここからは、齧歯類=齧歯目をさらに細かく分類して、どんな生物が含まれているのかを具体的にみていきましょう。

分類学では、齧歯目をいくつかの「亜目」や「上科」に分け、それぞれをさらにいくつかの「科」に分ける考え方がメジャーです。しかしながら、いくつの「亜目」や「上科」を設定するかは研究者によって意見が分かれるとこですので、今回は齧歯目にふくまれるいくつかの代表的な「科」をご紹介していきたいと思います。

ネズミ科

ハツカネズミやクマネズミ、ドブネズミといった、一般的なネズミのなかまが含まれているのが、ネズミ科です。非常に種類が多く、齧歯類全体の種数の大部分を占めます。

こちらはもう、説明不要のグループでしょう。人間とは古い時代から深い関りがあり、収穫した穀物を食べてしまう難敵として、古代から様々な対策がなされてきました。その適応力の高さから都市部に生息するものも多く、衛生上の問題があるため駆除対象になっていたりしますね。

リス科

リスの仲間がひとくくりにされているグループがリス科。ペットとしても人気のシマリスのほか、エゾリスやニホンリスなどがイメージしやすいでしょう。少し変わったところではムササビモモンガも、このリス科に含まれます。

また、樹上生活を営む種だけでなく、プレーリードッグジリスといった地上で生活する種もいるんです。

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\次のページで「ヤマネ科」を解説!/

ヤマネ科

ヤマネは、リスともモモンガともすこし姿が異なる小動物です。ヤマネの仲間だけでヤマネ科というグループを構成しています。

日本に生息している種は、通称ニホンヤマネ。10cmに満たない体と、その半分ほどの長さもある尻尾をもち、樹上で生活しています。国の天然記念物に指定されているんですよ。

ヤマアラシ科

体が鋭い針のような毛でおおわれているヤマアラシという生物がいます。このなかまはユーラシア大陸やアフリカ大陸、南北アメリカ大陸に生息していますが、そのうちユーラシア大陸とアフリカ大陸にみられるものが齧歯目ヤマアラシ科という分類群でひとまとめにされているんです。

image by Study-Z編集部

なお、南北アメリカ大陸に生息しているヤマアラシはアメリカヤマアラシ科に属します。ヤマアラシ科とアメリカヤマアラシ科のヤマアラシは、それぞれが別々の進化の道をたどった末に似た姿になった、収斂進化の一例だといわれているんです。

テンジクネズミ科

テンジクネズミ科。「テンジクネズミ」という生物の名前は知らなくても、モルモットという名称であれば耳にしたことがあるでしょう。モルモットはテンジクネズミの仲間を家畜化したものです。

この科には、齧歯類の中でも最大サイズになるカピバラが含まれています。モルモットとカピバラが近い仲間だなんて、意外ですよね。

ウサギは…?

立派な門歯をもつ齧歯類の仲間をみていると、「ウサギも齧歯類ですよね?」という声がよく聞かれます。残念ながらウサギは齧歯類(齧歯目)ではなく、兎形目(とけいもく)またはウサギ目という別の分類群なのです。以前は齧歯目に含まれていたのですが、歯の並びなどにはっきりとした違いがあり、現在は独立しています。

今回ご紹介した齧歯類以外にどんな動物がいるのか、兎型目にはどんな違いがあるのか…興味のある方は調べてみるといいでしょう。

イラスト提供元:いらすとや

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理科生物生物の分類・進化

齧歯類には何がある?具体例や特徴、分類、ネズミやリス、カピバラも!現役講師がわかりやすく解説します

この記事では「齧歯類」をキーワードに学習していこう。

齧歯類とよばれる動物の仲間にはどんなものがいるのか、どんな共通点があるのか…いろいろな角度から確認していきたい。自分の身の回りにいる齧歯類についても考えられるようになるといいな。

大学で生物学を学び、現在は講師としても活動しているオノヅカユウに解説してもらおう。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

齧歯類とは?

齧歯類(げっしるい)とは、哺乳綱(ほにゅうこう。哺乳類とも)の齧歯目(げっしもく)に含まれている動物を指す言葉です。

齧歯目はネズミのなかまが属しているグループであることから、ネズミ目といわれることもあります。

image by iStockphoto

その通りですね。「齧」という漢字が難しいので、一般的にはひらがなを使って書かれることの方が多いと思います。齧歯目も「げっ歯目」の表記の方がよくみられるでしょう。

ちなみに、「齧」は「齧る(かじる)」という漢字です。ネズミのなかまの特徴をうまく表した分類群の名称ですよね。

齧歯類の特徴

では、齧歯類の代表であるネズミの姿を思い浮かべながら、齧歯類の特徴を確認してきましょう。

伸び続ける門歯

齧歯類という言葉の由来でもあり、最大の特徴といっても過言ではないのが、齧歯類のもつ大きな門歯(もんし)です。門歯というのは、私たちが前歯とよぶ歯ですね。切歯(せっし)ということもあります。

image by iStockphoto

齧歯類は、非常によく発達した門歯を上下にもっています。この門歯は一生にわたって伸び続けるのです。自然であれば、硬いものを食べるときに自然に削られて、歯が伸びすぎるということが防げます。

ちなみに、齧歯類の門歯は外側と内側で材質が違うんです。歯の外側は硬いエナメル質、内側はエナメル質よりも柔らかい象牙質からなります。

硬いものを門歯で齧りとろうとすると、歯の内側の方が早く削れて、鋭くとがった”のみ”のような形状になるのです。

犬歯や前臼歯がない

立派な門歯をもつ一方で、齧歯類には犬歯(けんし)や前臼歯(ぜんきゅうし)がありません

犬歯とは私たち人間の口でいうところの”八重歯”になりことがある歯。肉食獣では発達した”牙”となることが多く、肉を切り裂くのによく使われます。前臼歯は犬歯のとなり(口の奥側)にある歯です。

齧歯類にこれらの歯がみられないのは、その食性が関係していると考えられます。

多くは草食性

image by iStockphoto

齧歯類はその多くが、おもに植物を食べる草食性です。伸び続ける門歯を上手に使い、硬い樹木の皮や木の実をかじります。肉を引き裂く犬歯が不要になったのも、この食性のためでしょう。

ただし、一部には虫や魚をおもに食べる、例外的な齧歯類もいます。

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