この記事では「寂しい」と「寂しい」の違いについてみていきます。どちらも心が満たされない、心細い、ひっそりとした状態をさすイメ―ジがあるよな。違いはずばり「情景を示すか、心情を示すか」のようですが、読み方には注意が必要みたいです。今回はそんな「寂しい」と「淋しい」それぞれの意味や使い方、類義語・対義語について、雑学大好きライターSadaieと一緒に解説していきます。

ライター/Sadaie

プログラマー、ヘルプデスク経験者。パソコン関係以外では文学、歴史が好き。それらの知識をわかりやすいかたちで配信したいと考えている。

読み方は「さびしい」?「さみしい」?

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「寂しい」、「淋しい」は口に出して読むときどちらも「さびしい」または「さみしい」という2つの読み方がありますね。どちらが正しいのでしょうか。

どちらもでも正解!

「さびしい」、「さみしい」実はどちらも正解です。ただし、それは口に出して読んだ場合と覚えておいた方が良いでしょう。「さみしい」には注意が必要になります。

「さみしい」は常用漢字ではないので注意!

「さびしい」、「さみしい」はどちらも正解ですとお伝えしましたが、「さびしい」と覚えた方がよいです。「さみしい」は常用漢字ではないので、試験・テストの回答では間違いとされることが多いでしょう。

常用漢字とは、分かりやすく通じやすい公用文や文書作成のために、参照される漢字使用の目安のこと。国語の教育上、常用漢字こそ正しい「書き方」と「読み方」になるわけです。

常用漢字ではない「書き方」の例として挙げられるのが「旧字体」。旧字体とは1949年まで使われていた難解な漢字のこと。「国」という漢字の旧字体は「國」。旧字体も試験や文面での使用は控えて、常用漢字を使用する方が無難でしょう。

同じ読み方でもニュアンスが異なる!

「寂しい」「淋しい」の意味の定義は以下のようになっています。

(1)あるはずのもの,あってほしいものが欠けていて,満たされない気持ちだ。物足りない。さみしい。
(2)人恋しく物悲しい。孤独で心細い。さみしい。
(3)人けがなくひっそりしている。心細いほど静かだ。さみしい。

出典:大辞林「さびしい 寂しい・淋しい」

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いずれも意味の末尾に「さみしい」とありますね。「さみしい」というのが「さびしい」が同義であることが分かります。

3つの意味のうち、(3)は「情景」、(2)は「心情」を表しおり、ここが「寂しい」、「淋しい」を使い分ける際のポイント。(1)の意味は「情景」、「心情」どちらも含んだものと言えるでしょう。

客観的で情景的な「寂しい」

「寂しい」は様子や状況を表す際に用います。

「寂」の他の意味として、人が死ぬこと、さびがあります(古びれたおもむきのこと)。この「さび」に関しては後述。

主観的で心情的な「淋しい」

「淋しい」は感情を表す際に用います。

「淋」の他の意味としては、性病の一種、したたる、そそぐ。

「さびしい」の歴史

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「さびし(い)」という言葉の歴史を見てみましょう。

平安時代より前の古文では「さぶし」(漢字では当て字で佐夫之)という表記がありました。「さぶし」が「さびし」に変わっていったのは平安時代以降。さらに江戸時代になると、「さみし」という読み方が増え、こちらは「さびし」に取って代わるのではなく併用され、現在に至ります。

語源はどちらも 動詞の 「さぶ」

「さみし(い)」は「さびし(い)」から派生したものだということが分かりましたね。「さびし」は「さぶ」という動詞の形容詞になります。

同じ語源を持つ言葉に「錆」がある

「さぶ」という動詞は「錆ぶ」とも書きます。

古き質素なもの、静寂に趣(おもむき)を感じる日本人の独自の美意識の侘び寂び(わびさび)。錆て古くなっていく様子から「錆」も、わび・さびの「さび」に通ずる言葉なんです。

\次のページで「「さびしい」の使い分け方」を解説!/

「さびしい」の使い分け方

「情景」と「心情」で使い分ける「さびしい」。わびさびと通ずる「寂」、涙と通ずる「淋」と覚えておくと使い分けが簡単です。

静けさや情緒を表現するなら「寂しい」

物がない、荒れているといった物理的なさびしさを表現するのには「寂しい」を用います。また、「侘び寂び」とあるように、美的な感覚を伴う場合、「寂しい」を用いるのが適切でしょう

この漢字を使った言葉で最もメジャーなものが「静寂」。この言葉に心情的なニュアンスはありませんね。「淋」という漢字を使用した言葉にメジャーなものがないので、「寂しい」、「淋しい」の二つを使い分ける際には「静寂」という言葉の意味を考えてみるのもよいでしょう。

淋しい気持ちを表現するなら「淋しい」

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心情を表す場合に用いられる「淋しい」。涙を表したさんずいが入っていると覚えておきましょう。

したたる、そそぐという意味もある「淋」。水を意味するさんずいに林と書く「淋」は、絶え間なく続く木立に水がしたたることを表しています。この「水」とは何か。これが「涙」を表すのです。

英語ではどちらも同じ

英語ではどちらもlonely。feel(感じる)とセットで使用される場合が多く、意味合い的には漢字の「淋」に近いでしょう。

「寂しい」、「淋しい」の具体的な例文

「情景」、「心情」を意識した例文を見てみましょう。

・過疎化が進んだ故郷の街並みはさびしい

・大切な人と会えなくなりさびしい

あえて平仮名で記載した「さびしい」。情景が想起される上の例文が「寂しい」、心情が想起される下の例文が「淋しい」と書くのが正しいです。

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対義語と類義語は?

「さびしい」の類義語と対義語について見ていきましょう。対義語は一つですが、類義語はたくさんあります。

対義語は「賑わしい」

「寂しい」、「淋しい」の対義語は「賑わしい(にぎわしい)」。人が大勢いてにぎやか、繁盛しているといった意味があります。

「さびしい」の類義語はたくさんある!

「さびしい」の類義語はたくさんあるのですが、ニュアンスで分類すると「寂しい」なら侘(わび)しい、孤独。「淋しい」なら寂寞(せきばく)たる、寥寥(りょうりょう)たる、といった類義語が挙げられます。

「さびしい」という読み方をする漢字は他にも!

「寥しい」、「寞しい」はどちらも「寂しい」と同じように静かである様子を表す意味を持ち、読み方も同じです。この2字はあまり見たことはないのではないでしょうか。それもそのはず、どちらも漢字検定1級レベルの漢字なのです。

締め文

どちらもよく目にする漢字である「寂しい」と「淋しい」。読み方も含めて曖昧に利用されることが多いですよね。でも、使い分けは難しくありません。語源繋がりで「錆」を覚えておくと、関連付けて「侘び寂び」というキーワードが出てきますね。侘び寂びは情景の風情を表しますから、「寂」という漢字は情景的な場合、それ以外の場合は「淋」を使えばOKなのです。同じ読み方でも、細かなニュアンスの違いがある点に日本語の奥深さであり、その歴史を紐解くのもまた一興ですね。

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寂しいと淋しいはニュアンスが全然違う!語源から意味や使い分け方、類義語を例文を踏まえて雑学大好きライターがわかりやすく解説!

この記事では「寂しい」と「寂しい」の違いについてみていきます。どちらも心が満たされない、心細い、ひっそりとした状態をさすイメ―ジがあるよな。違いはずばり「情景を示すか、心情を示すか」のようですが、読み方には注意が必要みたいです。今回はそんな「寂しい」と「淋しい」それぞれの意味や使い方、類義語・対義語について、雑学大好きライターSadaieと一緒に解説していきます。

ライター/Sadaie

プログラマー、ヘルプデスク経験者。パソコン関係以外では文学、歴史が好き。それらの知識をわかりやすいかたちで配信したいと考えている。

読み方は「さびしい」?「さみしい」?

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「寂しい」、「淋しい」は口に出して読むときどちらも「さびしい」または「さみしい」という2つの読み方がありますね。どちらが正しいのでしょうか。

どちらもでも正解!

「さびしい」、「さみしい」実はどちらも正解です。ただし、それは口に出して読んだ場合と覚えておいた方が良いでしょう。「さみしい」には注意が必要になります。

「さみしい」は常用漢字ではないので注意!

「さびしい」、「さみしい」はどちらも正解ですとお伝えしましたが、「さびしい」と覚えた方がよいです。「さみしい」は常用漢字ではないので、試験・テストの回答では間違いとされることが多いでしょう。

常用漢字とは、分かりやすく通じやすい公用文や文書作成のために、参照される漢字使用の目安のこと。国語の教育上、常用漢字こそ正しい「書き方」と「読み方」になるわけです。

常用漢字ではない「書き方」の例として挙げられるのが「旧字体」。旧字体とは1949年まで使われていた難解な漢字のこと。「国」という漢字の旧字体は「國」。旧字体も試験や文面での使用は控えて、常用漢字を使用する方が無難でしょう。

同じ読み方でもニュアンスが異なる!

「寂しい」「淋しい」の意味の定義は以下のようになっています。

(1)あるはずのもの,あってほしいものが欠けていて,満たされない気持ちだ。物足りない。さみしい。
(2)人恋しく物悲しい。孤独で心細い。さみしい。
(3)人けがなくひっそりしている。心細いほど静かだ。さみしい。

出典:大辞林「さびしい 寂しい・淋しい」

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