今回は「ニッケル」という元素について解説していきます。

ニッケルは金属元素の1つで、エレクトロニクス分野やエネルギー産業分野における技術を支える物質です。このように聞くと身近でないように感じるかもしれないが、実は50円玉などの硬貨にもニッケルが含まれているぞ。今回は、様々な側面から、ニッケルがどのような物質であるかを解明していく。ぜひこの機会にニッケルについて理解を深めてくれ。

化学に詳しいライター通りすがりのペンギン船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。環境工学、エネルギー工学を専攻している。これらの学問への興味は人一倍強い。資源材料学、環境化学工学、バイオマスエネルギーなども勉強中。

ニッケルについて学ぼう!

Nickel electrolytic and 1cm3 cube.jpg
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皆さんはニッケルという物質をご存知でしょうか?名前を聞いたことはあるが、詳しくは知らないという方が多いのではないでしょうか。理科の授業で大々的に紹介されるわけでもない影の薄い元素なので当然ですよね。しかしながら、ニッケルの工業的な価値は高く、今現在も様々技術を支えている元素なのです

今回の記事では、このようなニッケルの性質や用途について、化学・物理学・工学などの様々な学問の視点で解説していきます。それでは早速、ニッケルがどのような物質であるのかを解説していきますね。

ニッケルとは?

ニッケルとは?

image by Study-Z編集部

ニッケルは原子番号が28の遷移元素の金属であり、元素記号で表示するとNiとなります。ニッケルの単体結晶は銀白色の金属光沢をもちますよ。そして、ニッケルの常温における結晶構造は、面心立方格子ですよ。また、ニッケルの埋蔵量は世界的に見た場合にも少なく、レアメタルに分類されるのです。

ニッケルのイオン化傾向はやや大きく、塩酸や希硫酸と反応します。しかしながら、この反応は非常に遅いことが知られていますよ。このようなことから、ニッケルの反応性は比較的低く、耐食性があると言えるでしょう。加えて、濃硝酸中ではニッケルは不動態となり、反応は進行しません。

その他のニッケルの特徴としては、鉄族の元素であることが挙げられます。強磁性体で磁石に引き寄せられることは、鉄と同じ性質だと言えますよ。ニッケルは鉄と同じように高い電気伝導性をもちます。それゆえ、電気接点におけるメッキ処理の材料にニッケルが使われることがあるのです。

ニッケルの合金

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Muyo - 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, リンクによる

続いて、ニッケルの合金について学びましょう。ニッケルを含む合金の中で最も有名なものはステンレス鋼です。ステンレス鋼は、ニッケル・クロム・鉄によって構成される合金ですよ。ステンレス鋼は耐食性に優れ、塩害の対策などに用いられます。上に示した写真は関門海峡付近を走行している機関車です。この機関車は塩害による錆を防ぐために、ステンレス鋼で車体が作られています。

ステンレス鋼以外のニッケル合金としては、ステンレス鋼のニッケル含有率を高めた『ニッケル基合金』、海水中での耐食性を高めた『ニッケル銅合金』、耐熱性能を高めた『ニッケルクロム合金(ニクロム)』などが挙げられますよ。

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ニッケル鉱石の分布

image by iStockphoto

ニッケルの単体は自然界にはほとんど存在せず、ニッケル鉱石として埋蔵されています。ニッケル鉱石には、ニッケルの硫化物を主成分とする硫鉄ニッケル鉱やニッケルのケイ酸塩を主成分とする珪ニッケル鉱などが含まれていますよ。

ニッケル鉱石の分布についても説明していきますね。ニッケル鉱石の主要産出国は、オーストラリア・ニューカレドニア・ロシア・キューバ・カナダ・ブラジルなどです。また、日本の周辺には海底資源としてニッケルが産出されることが知られており、このニッケルを活用するための研究も行われていますよ

ニッケルの用途

続いて、ニッケルの用途について考えてみましょう。以下では、具体的に電池フェライトコア硬貨ガスタービンの4つをご紹介しますね。

それぞれの技術において、なぜニッケルが使用されているのかという点を、ニッケルの性質や特性と結び付けて理解することを意識して記事を読み進めてみてください。このような具体例を知ることで、ニッケルがどのような特徴をもっているのかということが、より深く理解できるようになるでしょう。

電池

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ニッケルは様々な種類の電池の材料として使用されています。ニッケルを使用した電池としては、ニッケルカドミウム電池ニッケル水素電池ニッケル酸リチウムイオン電池などが挙げられますよ。これらはすべて繰り返し充放電が可能な二次電池です。これらの電池は鉛蓄電池などの従来の電池と比較して、内部抵抗が低く、大電流を必要とする装置の電源として使用されます。

ニッケルカドミウム電池やニッケル水素電池は、電動アシスト自転車やハイブリッド自動車のバッテリーに使用されていますよ。また、ニッケル酸リチウムイオン電池はスマートフォンや電気自動車のバッテリーとして活躍しています

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フェライトコア

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ニッケルはフェライトコアの原料の1つですフェライトコアはトランス(変圧器)やコイルなどの電気部品を作る際に使用されます。これらの部品は、電力変換やノイズ対策を行うために必要不可欠であり、今後も需要が拡大していくと考えられていますよ。

フェライトコアにはいくつか種類がありますが、ニッケル系のフェライトコアは高周波回路に向いていると考えられています。高周波回路というのは、通信機器などに含まれていますよ。

硬貨

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ニッケルは硬貨を鋳造する際にも使用されます。硬貨は人の手に何度も触れるので耐食性が高い必要があり、ニッケルを含んでいるのですね。日本の貨幣の場合、50円玉、100円玉、500円玉にニッケルが含まれています。また、米国の5セント硬貨もニッケルを含んでいますよ

硬貨にニッケルが含まれている理由は、耐食性以外にもあるとされています。ニッケルは兵器の製造する際に必須となる材料で、有事に備えて貨幣としてニッケルを備蓄しているという説もありますよ。実際、第二次世界大戦の直前の時期、日本の10銭と5銭硬貨は純ニッケル素材だったのです。

ガスタービン

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ニッケルを含む合金は、耐熱性に優れています。そのため、ニッケル合金はガスタービンの材料として使われていますよ。ガスタービンの効率を高めるには、燃料の燃焼温度を向上させる必要があります。それゆえ、ガスタービンの高効率化には高温に耐えられるタービンが必要なのです。

高効率ガスタービンは火力発電所などで採用されており、持続可能な社会を実現する上で必要不可欠だと考えられていますエネルギー分野においても、ニッケル合金が活躍しているのですね

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私たちの生活を支えるニッケル

鉄や銅と比べると、ニッケルという金属の知名度は決して高いとは言えません。ですが、ニッケルは電池や電気部品の材料になっていたり、火力発電所のタービンになっていたりと私たちの生活を陰で支える物質なのです。日本で流通している硬貨の多くにニッケルが含まれているということも驚きですよね。

今回は縁の下の力持ちである金属元素のニッケルについて詳しく説明しました。ぜひ、この機会にニッケルという元素がどこで活躍しているのかを知ってみてくださいね。

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ニッケルとはどのような物質?性質や用途は?現役理系学生ライターが5分で徹底わかりやすく解説!

ニッケル鉱石の分布

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ニッケルの単体は自然界にはほとんど存在せず、ニッケル鉱石として埋蔵されています。ニッケル鉱石には、ニッケルの硫化物を主成分とする硫鉄ニッケル鉱やニッケルのケイ酸塩を主成分とする珪ニッケル鉱などが含まれていますよ。

ニッケル鉱石の分布についても説明していきますね。ニッケル鉱石の主要産出国は、オーストラリア・ニューカレドニア・ロシア・キューバ・カナダ・ブラジルなどです。また、日本の周辺には海底資源としてニッケルが産出されることが知られており、このニッケルを活用するための研究も行われていますよ

ニッケルの用途

続いて、ニッケルの用途について考えてみましょう。以下では、具体的に電池フェライトコア硬貨ガスタービンの4つをご紹介しますね。

それぞれの技術において、なぜニッケルが使用されているのかという点を、ニッケルの性質や特性と結び付けて理解することを意識して記事を読み進めてみてください。このような具体例を知ることで、ニッケルがどのような特徴をもっているのかということが、より深く理解できるようになるでしょう。

電池

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ニッケルは様々な種類の電池の材料として使用されています。ニッケルを使用した電池としては、ニッケルカドミウム電池ニッケル水素電池ニッケル酸リチウムイオン電池などが挙げられますよ。これらはすべて繰り返し充放電が可能な二次電池です。これらの電池は鉛蓄電池などの従来の電池と比較して、内部抵抗が低く、大電流を必要とする装置の電源として使用されます。

ニッケルカドミウム電池やニッケル水素電池は、電動アシスト自転車やハイブリッド自動車のバッテリーに使用されていますよ。また、ニッケル酸リチウムイオン電池はスマートフォンや電気自動車のバッテリーとして活躍しています

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