今回は「濃硝酸と希硝酸の違い」について解説していきます。

濃硝酸と希硝酸は濃度が異なる硝酸水溶液ですが、化学反応では全く別の気体が発生する。多くの人が厳密性を重視していると思っている化学という学問で、答えが1つでないのは果たして良いのでしょうか?今回はこの点を深堀りしてくつもりです。ぜひこの機会に濃硝酸と希硝酸の違いについての理解を深めてくれ。

化学に詳しいライター通りすがりのぺんぎん船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。環境工学、エネルギー工学を専攻している。これらの学問への興味は人一倍強い。資源材料学、環境化学工学、バイオマスエネルギーなども勉強中。

はじめに

今回の記事では、濃硝酸と希硝酸の違いを明らかにしていきます。両者は同じ溶質をもつ濃度が異なる水溶液です。このように聞くと、濃度が異なるだけで化学的な性質が変わる訳がないと思う方もいらっしゃるでしょう。しかしながら、実際には両者の間に大きな違いがあります。

記事の前半部分では、濃硝酸と希硝酸の違いを理解するために必要となる基本的な知識を身に着けるためのチャプターを用意しましたこれらを読んでから、本題である濃硝酸と希硝酸の違いについて学んでいきましょう。それでは早速、解説をはじめます。

硝酸について知ろう!

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硝酸は窒素系の酸素酸(オキソ酸)であり、HNO3という化学式で表すことができます。硝酸は塩酸や硫酸などと同じ強酸であり、様々な金属元素と反応しますよ。硝酸は人体にとって有毒な薬品ですが、工業的な価値は高く、現在も幅広い分野で活用されている物質です

他の物質にない硝酸の特徴としては、光や熱に対して弱いことが挙げられます。硝酸は光や熱によって分解されてしまい酸としての性質を失ってしまうのです。それゆえ、硝酸は直射日光などを遮ることができる褐色瓶に入れて保存されますよ。以上が硝酸の概要となります。

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濃硝酸と希硝酸の定義を知ろう!

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濃硝酸と希硝酸は硝酸水溶液の分類法の1つであり、濃度によって分けられていますよ。濃硝酸は質量パーセント濃度で60パーセント程度を超える硝酸水溶液のことを表します。一方、希硝酸は質量パーセント濃度で20パーセントから30パーセント程度の硝酸水溶液のことさしますよ

なお、希硝酸は濃度が低いことから弱酸であると勘違いして覚えてしまうことがあるかもしれませんが、これは間違いなので注意しましょう。希硝酸も強酸なのですね

濃硝酸と希硝酸の違い

濃硝酸と希硝酸の違いを学ぶ上で必要となる知識を説明できたので、ここでは両者の性質の違いを化学反応の観点から考察していきます。以下では、硝酸と金属の反応を例にとって説明していきますね。

酸化力や発生する気体などが、この説明の中で重要なキーワードとなりますよ。この点に注目して、このチャプターの内容を読み進めてみてくださいね。

濃硝酸の化学反応

濃硝酸の化学反応

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まずは濃硝酸の化学反応について学びましょう。例として、濃硝酸と銅の反応を考えます。濃硝酸と銅の反応を化学反応式で表すと、Cu+4HNO3→Cu(NO3)2+2H2O+2NO2となりますよ。

最も重要なことは、NO2(二酸化窒素)が発生することです。金属と濃硝酸が反応すると、NO2が発生することを覚えておきましょう。NO2は赤褐色の有毒な気体で、それに起因する人体への影響としては呼吸器障害などがありますよ

銅はイオン化傾向が小さく、イオンになりにくい元素として知られていますが、濃硝酸の強い酸化力によりイオン化しています。濃硝酸は酸化力が強く様々な金属をイオン化させることができるのです。ただし、鉄・アルミニウム・ニッケルなどの金属は濃硝酸中で不動態になるので反応の進行が止まります。不動態とは、物質表面に腐食を防ぐ被膜がつくられている状態のことを指しますよ。

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希硝酸の化学反応

希硝酸の化学反応

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続いて、希硝酸の化学反応について述べます。こちらも銅との反応を考えますね。希硝酸と銅の反応を化学反応で表すと、3Cu + 8HNO3 → 3Cu(NO3)2 + 4H2O + 2NOとなります

ここで重要なのは、NO(一酸化窒素)が発生することです。この点が濃硝酸の反応との大きな違いとなります。NOは無色無臭の気体ですNOは光化学スモッグや酸性雨の原因物質として知られていますよ

希硝酸は濃硝酸と同じように酸化力が強く、イオン化しにくい金属を溶かすことができます。また、濃硝酸では不動態になってしまう鉄・アルミニウム・ニッケルも希硝酸は反応させることができるのです。この点も濃硝酸と希硝酸の違いの1つですね。

濃硝酸と希硝酸の違いの原因を考えよう!

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濃硝酸と希硝酸の違いの中で最も重要なことは発生する気体が異なることです。ここでは、なぜ濃度が異なる同じ物質の水溶液から別の気体が発生するのかという点を深掘りしていきましょう

ここで学ぶ内容は多くの人が抱く化学のイメージとはかけ離れた曖昧さを含んでいます。しかしながら、化学を深く学んでいくほど、この曖昧さが非常に重要になりますよ。このチャプターでは、この点についても触れますね。

濃硝酸と希硝酸の反応は本質的には同じ?

先ほど濃硝酸と希硝酸の反応は異なると述べましたが、実は両者の反応は本質的には同じなのです。実は銅と硝酸が反応した直後は、濃硝酸と希硝酸のどちらであっても二酸化窒素と一酸化窒素の両方が発生しますしかしながら、その後に片方の気体が消滅するのです

濃硝酸の場合、一酸化窒素が溶液中を通過するときに溶液中の硝酸によって酸化され、すべての一酸化窒素分子が二酸化窒素に変化します。一方、希硝酸の場合は溶液中の水分量が多く、二酸化窒素が水に溶けてしまうので一酸化窒素のみが放出されるのです。これが硝酸の濃度によって発生する気体が異なる理由ですよ。

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化学における曖昧さを知ろう!

化学を含むサイエンスの勉強をはじめた頃は、多く人がそれらを正確性が高く、問に対する答えが一つになる学問であると考えたことでしょう。しかしながら、今回紹介した硝酸のように微妙な濃度の違いで発生する気体が変わるといったような曖昧さも含んでいます。

このような曖昧さこそ化学の面白さであり、この曖昧さを追求していくという行為が基礎研究へと繋がっていくのです

濃硝酸と希硝酸の違いを学ぼう!

この記事では、金属との反応を例に挙げて、濃硝酸と希硝酸の違いを考察してました。そして、その違いが生じる理由についても明らかにしましたよね。濃硝酸と希硝酸の違いについては高校化学の教科書に載っていますが、メカニズムについて詳しく述べられていないので、ぜひこの機会に身につけておいてくださいね。

また、濃硝酸と希硝酸の違いにおける曖昧さが化学の本当の面白さであることも述べました。このことを意識しておくと、化学の勉強がより楽しくなるかもしれませんよ。

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化学無機物質物質の状態・構成・変化理科

3分で簡単濃硝酸と希硝酸の違い!同じ物質だけど反応が違う?理系学生ライターがわかりやすく解説!

今回は「濃硝酸と希硝酸の違い」について解説していきます。

濃硝酸と希硝酸は濃度が異なる硝酸水溶液ですが、化学反応では全く別の気体が発生する。多くの人が厳密性を重視していると思っている化学という学問で、答えが1つでないのは果たして良いのでしょうか?今回はこの点を深堀りしてくつもりです。ぜひこの機会に濃硝酸と希硝酸の違いについての理解を深めてくれ。

化学に詳しいライター通りすがりのぺんぎん船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。環境工学、エネルギー工学を専攻している。これらの学問への興味は人一倍強い。資源材料学、環境化学工学、バイオマスエネルギーなども勉強中。

はじめに

今回の記事では、濃硝酸と希硝酸の違いを明らかにしていきます。両者は同じ溶質をもつ濃度が異なる水溶液です。このように聞くと、濃度が異なるだけで化学的な性質が変わる訳がないと思う方もいらっしゃるでしょう。しかしながら、実際には両者の間に大きな違いがあります。

記事の前半部分では、濃硝酸と希硝酸の違いを理解するために必要となる基本的な知識を身に着けるためのチャプターを用意しましたこれらを読んでから、本題である濃硝酸と希硝酸の違いについて学んでいきましょう。それでは早速、解説をはじめます。

硝酸について知ろう!

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硝酸は窒素系の酸素酸(オキソ酸)であり、HNO3という化学式で表すことができます。硝酸は塩酸や硫酸などと同じ強酸であり、様々な金属元素と反応しますよ。硝酸は人体にとって有毒な薬品ですが、工業的な価値は高く、現在も幅広い分野で活用されている物質です

他の物質にない硝酸の特徴としては、光や熱に対して弱いことが挙げられます。硝酸は光や熱によって分解されてしまい酸としての性質を失ってしまうのです。それゆえ、硝酸は直射日光などを遮ることができる褐色瓶に入れて保存されますよ。以上が硝酸の概要となります。

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