今回は「鉛」という元素について解説していきます。

鉛は金属元素のうちの1つです。その扱いやすさから、鉛は古い時代から多く人々が利用してきたぞ。この記事では、鉛の化学的な性質や用途について述べる。また、鉛に起因する環境問題についても考えるぞ。ぜひ、この機会に鉛についての理解を深めてくれ。

化学に詳しいライター通りすがりのペンギン船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。環境工学、エネルギー工学を専攻している。これらの学問への興味は人一倍強い。資源材料学、環境化学工学、バイオマスエネルギーなども勉強中。

鉛について学ぼう!

Lead electrolytic and 1cm3 cube.jpg
Alchemist-hp (talk) (www.pse-mendelejew.de) - 投稿者自身による作品, FAL, リンクによる

鉛という言葉を聞くと、皆さんはどのようなイメージが浮かぶでしょうか危険なイメージをもつ方もいれば、暮らしを便利にしてくれる物質だと考える方もおられるでしょう。このように鉛は、危険な部分と便利な部分を併せ持つ物質なのです。

今回の記事では、鉛という物質を化学の視点ではもちろんのこと、工学や環境学といった学問の視点からも考察してみましょう。鉛の二面性を理解することができれば、私たちがこの物質に対してどのように振る舞ったら良いかということも理解できるようになりますよ。それでは早速、説明をはじめます。

鉛とは?

鉛とは?

image by Study-Z編集部

鉛は原子番号が82の金属元素であり、元素記号で表示するとPbとなります。元素周期表の中では、鉛は上から6行目に位置していますよ。単体の鉛は青灰色の金属光沢をもっています。また、鉛は反応性も比較的高く、様々な元素とともに化合物を形成するのです

そして、鉛の最大の特徴は融点が低く、柔らかいということですよ。それゆえ、加工がしやすく、人間にとって扱いやすい金属なのですね。ただし、鉛は高密度であるため重いというデメリットもあります。それに加えて、人間の健康や生態系に悪い影響を与えることもデメリットと言えますね

\次のページで「鉛鉱石の分布」を解説!/

鉛鉱石の分布

単体の鉛は自然界にほとんど存在せず、多くが方鉛鉱(硫化鉛)などの鉱石という形で地殻中に埋まっています。鉛は世界中に広く分布していますよ。主要な鉛産出国を産出量が多い順で挙げると、中華人民共和国・オーストラリア・ペルー・アメリカ・メキシコとなります

鉛の埋蔵量は多くはありませんが、採掘と精錬が簡単なため、安価なのです。このような理由から、鉛はレアメタルではなく、ベースメタルに分類されていますよ。

鉛の反応性

鉛は比較的反応性が高い物質です。鉛に関する反応の中で最も注目しておきたいものは、酸・アルカリとの反応ですよ。鉛は、硝酸などの酸と水酸化ナトリウムなどのアルカリのどちらとも反応する両性元素です。両性元素は金属の中でも限られたものなので、ぜひ覚えておきたいところですよ。

しかしながら、鉛はすべての酸と反応する訳ではありません塩酸に鉛を投入した場合、塩化鉛被膜を形成し、反応は進行しないのです硫酸の場合は、硫酸鉛被膜が形成され、不溶となります。この点も重要な事柄なので覚えておきましょう。

鉛の用途

ここからは、鉛がどのような用途で使用されているかを考えていきましょう。鉛は安価な金属で扱いやすいことから、多くの製品の中で使用されています。以下では、具体的に鉛蓄電池有鉛はんだ放射線遮蔽材の3つをご紹介しますよ。

それぞれの製品がなぜ鉛を使用しているのかという点を、鉛の性質や特性と結び付けて理解することを意識して記事を読み進めてみてくださいね

\次のページで「鉛蓄電池」を解説!/

鉛蓄電池

image by iStockphoto

鉛蓄電池は繰り返し充放電が可能な2次電池です鉛蓄電池は鉛の酸化還元反応を活かして、充放電を行っています。鉛蓄電池は、UPSなどの非常用電源装置のバッテリーや自動車の電装品の電源となるバッテリーなどに使用されていますよ。

リチウムイオン電池やニッケル水素電池は高価であるため、安価で大容量な鉛蓄電池がいまだに多くの場所で活用されているのです。ただし、鉛蓄電池の電解液には希硫酸が使われているので、安全性には課題も残っていますよ

有鉛はんだ

image by iStockphoto

有鉛はんだは鉛とスズの合金であり、電気部品・電子部品を回路基板に固定する際に使用されます。ほとんどすべての家電製品や工業機器には回路が含まれていますよね。それゆえ、はんだはこのような機器の製造を行う上で、必要不可欠なものなのです。

また、ステンドグラスを作る時にもはんだが必要になります。ガラスとステンドグラスの枠をつなぎ合わせるときに、はんだが使用されるのです。はんだは私たちにとって最も身近な鉛材料だと言えるでしょう。

放射線遮蔽材

image by iStockphoto

鉛は放射線遮蔽材としても使用されます。放射線は、放射性物質などから放出される高エネルギーの粒子や電磁波のことです。鉛は密度が非常に高いため、透過力の強い放射線を遮ることができます

放射線は人体に悪影響を与えるので遮蔽を行う必要があり、その遮蔽材として鉛が活用されているのですね。鉛の放射線遮蔽材の最も身近な例は、歯のレントゲン写真撮影時に装着する「鉛エプロン」などが挙げられます。

鉛と環境問題

先ほどは鉛がいかに便利な物質であり、どのようなところで使われているかということを詳しく学びました。これは光と影で表せば、光の部分です。ここからは、鉛の影とも言える部分について学びます

具体的には、鉛と環境問題の関係性について述べますよ。鉛に起因する環境汚染の影響とその解決策について考えてみましょう。

\次のページで「鉛の有毒性」を解説!/

鉛の有毒性

鉛は有毒性の高い金属であることがわかっています。血液中の鉛濃度が高くなると、頭痛・貧血・胃腸障害・歩行障害などの症状に加えて、人格が変化するなどの精神的な症状があらわれるとされていますよ。

また、鉛は人間だけでなく動植物にも悪い影響を与えます。特に海の中にいる魚の場合、生物濃縮の影響で生態系ピラミッドの頂点に位置する魚の血中鉛濃度が非常に高くなってしまうという問題もあるのです。

鉛の環境への流出

鉛が環境中に流出する経路はいくつか存在しますが、最も多いのは家電製品の不法投棄に起因するものです。家電製品の中には、有鉛はんだが含まれています。それが酸性雨と反応することで、イオン化し水に溶けるのです。

水に溶けた鉛は最初は土壌へと流出し、やがて河川・湖沼・海洋へとたどり着きます。また、以前は自動車用ガソリンの添加剤に鉛が含まれており、自動車の排ガスも鉛の流出経路になっていましたよ

鉛の規制と鉛フリー技術

近年、鉛による環境汚染が深刻な問題として捉えられるようになりました。そこで、国際的な鉛の規制枠組みが誕生したり、代替技術が開発されたりするようになったのですね。鉛の規制として最も有名なものはRohs指令です。これはEU(ヨーロッパ連合)における鉛規制の法律ですよ。

また、有鉛はんだの代替品として、鉛フリーはんだ導電性接着剤などが登場しています。鉛フリーはんだはすず・銀・銅などを含む合金ですよ導電性接着剤は銀などのナノ粒子を接着剤に練りこんだものになります

鉛という元素の光と影を学ぼう!

この記事の中では、鉛の化学的な性質や特徴について説明するだけでなく、鉛を利用した技術と鉛による環境汚染についても述べました。鉛を利用した技術は光の部分であり、人々の生活を豊かにすることができます。一方で鉛による環境汚染は影の部分ですよね。

このように、科学技術は光と影の二面性を含んでいることがほとんどです。鉛というのは、このことを理解するための良い教材だと言えるでしょう。ぜひこの記事を読んで、鉛という元素について学んでみてくださいね。

" /> 鉛とはどのような物質?その性質や用途を解明!現役理系学生ライターが5分でわかりやすく解説 – Study-Z
化学原子・元素地学岩石・鉱物無機物質理科環境と生物の反応生活と物質生物

鉛とはどのような物質?その性質や用途を解明!現役理系学生ライターが5分でわかりやすく解説

今回は「鉛」という元素について解説していきます。

鉛は金属元素のうちの1つです。その扱いやすさから、鉛は古い時代から多く人々が利用してきたぞ。この記事では、鉛の化学的な性質や用途について述べる。また、鉛に起因する環境問題についても考えるぞ。ぜひ、この機会に鉛についての理解を深めてくれ。

化学に詳しいライター通りすがりのペンギン船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。環境工学、エネルギー工学を専攻している。これらの学問への興味は人一倍強い。資源材料学、環境化学工学、バイオマスエネルギーなども勉強中。

鉛について学ぼう!

Lead electrolytic and 1cm3 cube.jpg
Alchemist-hp (talk) (www.pse-mendelejew.de) – 投稿者自身による作品, FAL, リンクによる

鉛という言葉を聞くと、皆さんはどのようなイメージが浮かぶでしょうか危険なイメージをもつ方もいれば、暮らしを便利にしてくれる物質だと考える方もおられるでしょう。このように鉛は、危険な部分と便利な部分を併せ持つ物質なのです。

今回の記事では、鉛という物質を化学の視点ではもちろんのこと、工学や環境学といった学問の視点からも考察してみましょう。鉛の二面性を理解することができれば、私たちがこの物質に対してどのように振る舞ったら良いかということも理解できるようになりますよ。それでは早速、説明をはじめます。

鉛とは?

鉛とは?

image by Study-Z編集部

鉛は原子番号が82の金属元素であり、元素記号で表示するとPbとなります。元素周期表の中では、鉛は上から6行目に位置していますよ。単体の鉛は青灰色の金属光沢をもっています。また、鉛は反応性も比較的高く、様々な元素とともに化合物を形成するのです

そして、鉛の最大の特徴は融点が低く、柔らかいということですよ。それゆえ、加工がしやすく、人間にとって扱いやすい金属なのですね。ただし、鉛は高密度であるため重いというデメリットもあります。それに加えて、人間の健康や生態系に悪い影響を与えることもデメリットと言えますね

\次のページで「鉛鉱石の分布」を解説!/

次のページを読む
1 2 3 4
Share: