この記事では「刺青」と「入れ墨」の他に「タトゥー」との違いについてみていきます。

3つとも体の皮膚に彫り物を入れるイメージがありますが、違いはずばり彫り方のようです。さらに、それぞれの呼び方や語源などを調べてみると、意外な発見があるみたいです。

今回はそんな3つの違いを、歴史的および文壇からの影響などを交えながら、少女向け小説家兼ライターさらささらと一緒に解説していきます。

ライター/さらささら

少女向け小説家兼ライター、神社や名所を訪ねるのが趣味。お話のネタにするため様々な雑知識を集めました。わかりやすい言葉で説明します。

「刺青」と「入れ墨」と「タトゥー」の違いとは?

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みなさんは「刺青(いれずみ)」や「タトゥー」といった言葉を聞いたことがありませんか。刺青と入れ墨は同じ読み方だし、タトゥーは英語読みなだけのような気がしますね。

そこでこちらでは、3つの違いや共通点を調べてみました。

「刺青」が一般的で「入れ墨」は江戸時代に罪人のしるし

「刺青」は「入れ墨」と同じ意味で使います。後述しますが、もともと刺青は「しせい」と呼ばれていました。

それでは、刺青と入れ墨に違いがないのでしょうか?実は、ひとつだけ使い方に違いがあります。江戸時代に罪を犯した者に"前科の証や印"として彫られたものは「入れ墨」の字を使いました。

「タトゥー」は針の入る深さが浅い

「刺青」と「入れ墨」がほぼ同じであることがわかりましたね。それでは、「タトゥー」はどうでしょうか?

実は、刺青や入れ墨と比べ、タトゥーは針の入る深さが浅いといわれていました。逆に言えば、タトゥーに比べ針が深く入るのが刺青や入れ墨ですが、これらについては後述させて頂きます。

「和彫り」とは一体なに?

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「和彫り」とは、日本伝統の彫り方や図柄などを意味します。和彫りに対して「洋彫り」がありますが、これは日本独自のジャンル分けのようです。

こちらでは、和彫りと洋彫りの違いを、「刺青(入れ墨)」や「タトゥー」を交えながら説明します。

\次のページで「「刺青」と「入れ墨」は「和彫り」」を解説!/

「刺青」と「入れ墨」は「和彫り」

前述したように「和彫り」とは、日本伝統の和柄や手法で彫られた「刺青(入れ墨)」を意味します。日本画の特徴であるスジ彫の線(アウトライン=主線)と、ボカシと呼ばれる墨の濃淡が特徴的です。

深く針を入れる和彫りは、刺青を入れた部分の皮膚が盛り上がることがあります。刺青(入れ墨)の色はその名のとおり"墨(墨汁)"の他、朱肉などに使われる"朱"や陶磁器にも使われる"酸化鉄"などです。

「遠山の金さん」の桜吹雪をはじめ、背中や全身に色鮮やかな龍や牡丹が描かれた絵柄を見たことはないでしょうか?このように、日本古来のモチーフを用い彫られたものを、日本国内外で"和彫り"と呼びます。

「タトゥー」は「洋彫り」

「タトゥー」はポリネシア語の「叩く=Tatau(タタウ)」が語源といわれています。英語の「Tattoo」をはじめ、フランス語の「Tatouage」やイタリア語の「Tatuaggio」も同じです。

つまり、世界で彫り物は共通して"タトゥー"ですが、日本独自の「和彫り」があるためジャンル分けとして「タトゥー=洋彫り」となりました。

どうやって彫るの?

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「和彫り」や「洋彫り」の違いの一つに、針の入る深さなどをあげましたが、こちらではそれぞれの彫り方について調べてみました。

和彫りは彫り師による手彫り

「和彫り」は江戸時代などは全て「手彫り」で、さらに皮膚の深くまで針を刺すためかなりの痛みを伴いました。また、広範囲に刺青を入れる行為は忍耐や度胸があることを意味し、威嚇にも用いられたようです。そのため、ヤクザなどのイメージが付いて回りますが、和彫り=反社会勢力とは限りません。

背中など広範囲の場合、手彫りは時間がかかるので一気に一度で彫るのではなく、数日に分けて少しづつ進めるそうです。

ちなみに、江戸時代の火消しが刺青を入れたのは「江戸の粋」として、漁師の場合は海で死んでも「身元が分かるように」するためだと言われています。

タトゥーは機械彫り

日本で言う「タトゥー」のほとんどは、アメリカのタトゥーカルチャーがファッションと共に入ってきたと言われています。そのためファッションとしての側面が大きく、さまざまな装飾やモチーフが彫られているようです。

タトゥーの特徴として「機械彫り」があげられますが、これは丁度絵画などで使うエアブラシに似ています。近年は最新の機械やインクにより、タトゥーの表現がさらに自由で豊かになりました。

 

似た言葉の「紋々」「文身」とは?

「刺青(入れ墨)」には「彫り物」や「和彫り」の他に、「紋々(もんもん)」や「文身(ぶんしん)」という呼び名があります。

紋々の由来となったのは、背中一面に彫られた不動明王の化身である「倶利伽羅竜王」の紋々(=模様の意)となり、主に大阪で浸透した呼び名です。

もう一つの文身は主に「ぶんしん」と読みますが、熟字訓で「いれずみ」とも読みます。

\次のページで「実は全部同じと言う考え方も」を解説!/

実は全部同じと言う考え方も

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ここまで「刺青(入れ墨)」と「タトゥー」の違いについて記載しましたが、最近では全部同じとした考えにもなっています。実は「和彫り」に機械を使ったり、「洋彫り」でも深く彫ったりするからです。

さらに、私たちの年齢が上がるほど"刺青(入れ墨)"、年齢が下がると"タトゥー"と呼ぶ傾向にあり、結果としてどちらも明確な定義がなくなってしまったとの指摘もあります。

谷崎潤一郎の作品で呼び名に変化が

日本を代表するフェシズム小説家・谷崎潤一郎。彼の処女作品とも言われる『刺青(しせい)』は、1910年に発表された短編小説です。本来「刺青」は「しせい」と読み、「入れ墨」を意味する文章語でした。ところが、谷崎の『刺青(しせい)』が発表されて以降は、「刺青」と書いて「しせい」と読むようになったようです。

タトゥーや刺青を消す方法は?

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ここまでの説明で分かるように、刺青やタトゥーは針などを使って直接肌に模様や文字を彫り込むものです。爪などと違って通常彫られた肌は新しく生まれ変わることはできません。そのため、消すための施術が必要となります。

こちらでは美容などに利用する刺青の他に、消す方法を調べてみました。

アートメイクは医療行為

現代の刺青には「アートメイク」と呼ばれるものがあります。これは、まつ毛や眉毛にコンプレックスがあったり、メイクの時間を減らしたりノーメイクでも自信を持ちたい人などが行う施術です。例えば、病気で眉毛やヒゲなどを失った人が、代わりに入れ墨を彫ることでそれらを補完します。

アートメイクは表皮に色素(染料)を入れるので、肌の組織が一定周期で生まれ変わる「ターンオーバー」と共に薄くなってしまうそうです。そのため、持続期間はおよそ1~3年程。また、アートメイクは"医療行為"という位置付のため、施術をおこなう際は医師免許および医師による指示(診療)のもとでおこないます。

レーザー除去や切除方など

「タトゥー」や「刺青」を消すには2通りの方法があります。

まず1つは、一時的にタトゥーを消すため「スプレー」や「ファンデーション」を利用する方法です。これらは比較的安価ではありますが、あくまで"隠す"だけなので、塗り直しなどの手間がかかります。

もう1つが、専門の美容クリニックや皮膚科でタトゥー除去の手術を受ける方法です。これにはタトゥーがある部分の皮膚を切り取り、周囲の皮膚を縫合する「切除手術」。タトゥーがある部分の皮膚を医療用カミソリで削る「削皮手術」。タトゥーがある部分の皮膚を切除し、他の部位の皮膚を移植する「植皮手術」。そしてレーザー照射でタトゥーを薄くする「レーザー治療」などさまざま。

例えば、10㎝×10㎝のタトゥーを消す場合、切除手術は8万円前後ですが、植皮手術は45万円。さらに、早くて2週間、遅くても6ヶ月以上の治療期間を要します。

\次のページで「ファッションで入れるのならそれなりの覚悟を」を解説!/

ニュースなどでも見掛けるかと思いますが、実は未だサロンなどでアートメイクの施術提供をしている場所があるそうです。何度も念を押すようですが、アートメイクは医療行為のため、医療機関で医師免許などの資格を持つ者の監修が必要となります。

一方、タトゥーには明確に必要な資格はなく、法律でも特別規制されていません。そのため感染症などのリスクが高く、医師免許がないので麻酔も処方できないそうです。
※医師免許を持つ彫り師もいます。

こうしたアートメイクやタトゥー(入れ墨)に関しては、未だ日本の文化や法律では曖昧なのが現状のようです。

ファッションで入れるのならそれなりの覚悟を

ここまで、「刺青」と「入れ墨」と「タトゥー」についての情報をご紹介しました。刺青やタトゥーには宗教および文化的な意味合いを持っていたり、自分のアイディンティティや主張のために用いる方もいるようです。しかし、日本の公衆浴場やプールなどでは、タトゥーがある人は入場禁止となっています。

明確なポリシーがなくファッションで入れる場合は、数年後も見据えながら考えてくださいね。

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言葉雑学

3分でわかる!刺青と入れ墨とタトゥーの違いについて!呼び方に谷崎潤一郎にも関連が?紋々についても小説家兼ライターが丁寧にわかりやすく解説!

この記事では「刺青」と「入れ墨」の他に「タトゥー」との違いについてみていきます。

3つとも体の皮膚に彫り物を入れるイメージがありますが、違いはずばり彫り方のようです。さらに、それぞれの呼び方や語源などを調べてみると、意外な発見があるみたいです。

今回はそんな3つの違いを、歴史的および文壇からの影響などを交えながら、少女向け小説家兼ライターさらささらと一緒に解説していきます。

ライター/さらささら

少女向け小説家兼ライター、神社や名所を訪ねるのが趣味。お話のネタにするため様々な雑知識を集めました。わかりやすい言葉で説明します。

「刺青」と「入れ墨」と「タトゥー」の違いとは?

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みなさんは「刺青(いれずみ)」や「タトゥー」といった言葉を聞いたことがありませんか。刺青と入れ墨は同じ読み方だし、タトゥーは英語読みなだけのような気がしますね。

そこでこちらでは、3つの違いや共通点を調べてみました。

「刺青」が一般的で「入れ墨」は江戸時代に罪人のしるし

「刺青」は「入れ墨」と同じ意味で使います。後述しますが、もともと刺青は「しせい」と呼ばれていました。

それでは、刺青と入れ墨に違いがないのでしょうか?実は、ひとつだけ使い方に違いがあります。江戸時代に罪を犯した者に”前科の証や印”として彫られたものは「入れ墨」の字を使いました。

「タトゥー」は針の入る深さが浅い

「刺青」と「入れ墨」がほぼ同じであることがわかりましたね。それでは、「タトゥー」はどうでしょうか?

実は、刺青や入れ墨と比べ、タトゥーは針の入る深さが浅いといわれていました。逆に言えば、タトゥーに比べ針が深く入るのが刺青や入れ墨ですが、これらについては後述させて頂きます。

「和彫り」とは一体なに?

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「和彫り」とは、日本伝統の彫り方や図柄などを意味します。和彫りに対して「洋彫り」がありますが、これは日本独自のジャンル分けのようです。

こちらでは、和彫りと洋彫りの違いを、「刺青(入れ墨)」や「タトゥー」を交えながら説明します。

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