今回のテーマは「鱗粉」というキーワードについて学習していこう。
鱗粉はチョウの翅についている粉のことです。この鱗粉はチョウにとってどのような役割を果たすものなのでしょうか?これを機会に鱗粉はチョウにとってどのような存在なのか、役割や構造について学んで行こうじゃないか。
大学で生物を学び、現在は食品メーカーの研究員であるライター、ハナイグチに解説してもらおう。

ライター/ハナイグチ

大学で生物学を学び、現在は食品メーカーの研究員として勤務している。

サプリメントの広告を見るとついつい有効成分の含有量や作用機序を調べてしまう。

鱗粉って何?

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鱗粉(りんぷん)はチョウの翅(ハネ)や体についている粉で、様々なチョウに共通する構造です。小さいころにチョウを捕まえて、手に粉がついた経験をした方も多いのではないのでしょうか?

ウロコ(鱗)の粉という名前の通り、肉眼では粉にしか見えませんが、顕微鏡顕微鏡で拡大してみるとウロコのように見えます。そんな鱗粉はチョウにとって、とても重要なもので、取り除いてしまうと飛べなくなったり色や模様が消えてしまったりするんです。それでは鱗粉にはどのような役目があるのか詳しくみていきましょう。

鱗粉の役割

鱗粉の役割

image by Study-Z編集部

鱗粉の役割は大きく分けて4つもあります。順番に挙げると翅の模様をつくる飛ぶために必要体温調節を行う交尾を促す、です!このように多岐にわたって重要な働きをしている鱗粉はチョウにとって最も重要な特徴なんですよ。

\次のページで「役割1:翅の模様をつくる」を解説!/

役割1:翅の模様をつくる

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蝶といえば、種類によって翅の色や模様に様々なバリエーションがあることで人気ですよね。実は翅の色や模様は、色のついた鱗粉が翅についているためなんです

翅自体に色がついていることは珍しく、だいたい半透明かうす茶色なんですよ。一つの鱗粉の色は一色なのですが、様々な色の鱗粉同士が集まることによって、コンピューターグラフィックやモザイクアートのようにカラフルな模様を作っているのです。

それは、多くが外敵から身を守るためなんですよ。

カラフルな色は「毒がありますよ!」という警戒色としての役割を持っています。また、ヒメアカタテハという世界中ほぼ全域でよく知られているグループに属する蝶の翅には大きな丸い模様がついているんですが、これは生き物の目玉に見立てることで外敵からの攻撃をそらすことができるんです。あとは周囲の環境に擬態することで外敵に見つからないようにしている場合もありますね。

役割2:飛ぶために必要

鱗粉は蝶が飛ぶためにも欠かせないものなんですよ。空を飛ぶことに寄与している仕組みは大きく分けて、凸凹の構造によって空気抵抗を抑える水をはじく、の2つです。

ある研究で蝶の鱗粉をすべて取り除いてみる、という実験を行いました。すると驚くことに、蝶は鱗粉を失っただけで飛べなくなってしまったんです。鱗粉がチョウの飛行にこんなにも影響を与えていたなんて驚きですよね。

役割3:体温調節を行う

3つ目の役割は体温調節です。蝶は翅だけでなく腹部や足など全身に鱗粉をまとっています。これは体温の調整に必要だからなんですよ。

蝶が翅を広げているところを見かけることがありませんか?これは太陽の熱を吸収することで体を温めているんです。いわゆる日向ぼっこですね。黒っぽい色の鱗粉は熱をよく吸収するので、このようなときに早く効率的に温度を上げることができるんです。逆に、暑い場所では白っぽい色の鱗粉が過剰な体温の上昇を抑えるのに一役かっています。

\次のページで「役割4:交尾を促す」を解説!/

役割4:交尾を促す

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4つ目は交尾を促すということです。粉が交尾を促しているなんて、なんだか想像つかないですよね。

鱗粉が交尾を促す方法は2つあります。1つはオスとメスで異なる見た目にすることで、お互いに認識しやすくすること。もう1つは鱗粉の一種である発香鱗(はっこうりん)からフェロモンを放出することです。この2つについては次の章で詳しく説明します!

オスとメスの鱗粉の違い

前章で述べた通り、鱗粉の特徴がオスとメスで異なる場合があるんです。そのためにお互いを認識したり、アピールしたりすることに繋がって交尾を促しているんですね。

それではいったいどのような違いがあるのか、構造面や機能面から細かく見ていきましょう!

モンシロチョウは実はオスとメスで色が違う

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白地に黒い斑点のあるモンシロチョウ。実はオスとメスで全く色が違うのをご存じですか?

いいえ、違うと思います。日光の下で見るとどちらも白地に黒い斑点に見えるんです。

オスとメスで色の違いがわかるのは紫外線を当てたときなんですよ。紫外線をあてるとメスは白くみえて、オスは黒く見えます。これは鱗粉に含まれているプリテンという色素の構造がオスとメスで異なるためなんです。メスのプリテンは紫外線を白色の蛍光に変えて放出する構造をしており、逆にオスは濃褐色の光にかえて放出する構造をしています。

チョウは紫外線が見えるので色で互いの区別がついているというわけですね。

フェロモンを出す発香鱗

次は発香鱗についての説明です。発香燐というのは鱗粉の一種で、袋のような構造を持っています。この袋の中には香り物質であるフェロモンが入っているんですよ。

多くの種類はオスが発香鱗を持ち、香りをメスに嗅がせることで自分がオスであることを認識させるんです。そうして交尾を促すことにつながるんですね。ちなみに発香鱗は翅全体に散らばっていて、通常の鱗粉と見分けがつかない場合と、密集して性標紋という模様を作っている場合があります。

\次のページで「鱗粉の発生と構造」を解説!/

鱗粉の発生と構造

ここまで鱗粉の役割について詳しく説明してきました。そんな鱗粉の構造は顕微鏡で拡大しなければ観察することができません。いったい鱗粉はどのように作られて、何からできているるのでしょうか?

鱗粉はどうやってできているの?

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鱗粉の由来は毛の細胞が進化が進化したものと言われています。そんな鱗粉はいつ頃からどのように形成されているのでしょうか。

鱗粉の形成はサナギの段階で始まります。サナギの翅の表面の細胞が分化して、鱗粉になるのです。大人の蝶になったあとから鱗粉が新たに生まれることはありません

鱗粉は何からできている?

次は鱗粉が何から構成されているのか解説していきましょう。

鱗粉はタンパク質と色素、さらにキチンという丈夫な物質でできています。顕微鏡でみると瓦が並んでいるような見た目をしていて、鱗粉1つ1つの形は蝶によって様々ですが、普通は桜の花びらのような形をしているんですよ。そんな鱗粉はただ翅にくっついているわけではありません。翅の表面にはソケットと呼ばれるポケットのようなものがあって、鱗粉はそこにはまった状態で翅の上に存在しています。

多くの役割を持つ鱗粉は、チョウにとってとても重要なもの!

鱗粉は蝶の翅の模様となったり、飛ぶのをサポートしたり交尾を誘発したりと多岐にわたって重要な役割を果たしています。1種類の構造物がこんなにたくさんの機能を持っているなんてすごいですよね。一方でそんなに重要なものであるのに、一度失うと二度と生えてこないという点もなんだか不思議なところ。

くれぐれも悪戯半分で鱗粉を取ってしまう、なんてことのないようそっと見守っていてあげましょう。

イラスト引用元:いらすとや

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体の仕組み・器官理科生物

なぜチョウの翅には粉がついてるの?鱗粉の役割や構造・オスとメスの違いなどについて食品メーカー研究員がわかりやすく解説

今回のテーマは「鱗粉」というキーワードについて学習していこう。
鱗粉はチョウの翅についている粉のことです。この鱗粉はチョウにとってどのような役割を果たすものなのでしょうか?これを機会に鱗粉はチョウにとってどのような存在なのか、役割や構造について学んで行こうじゃないか。
大学で生物を学び、現在は食品メーカーの研究員であるライター、ハナイグチに解説してもらおう。

ライター/ハナイグチ

大学で生物学を学び、現在は食品メーカーの研究員として勤務している。

サプリメントの広告を見るとついつい有効成分の含有量や作用機序を調べてしまう。

鱗粉って何?

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鱗粉(りんぷん)はチョウの翅(ハネ)や体についている粉で、様々なチョウに共通する構造です。小さいころにチョウを捕まえて、手に粉がついた経験をした方も多いのではないのでしょうか?

ウロコ(鱗)の粉という名前の通り、肉眼では粉にしか見えませんが、顕微鏡顕微鏡で拡大してみるとウロコのように見えます。そんな鱗粉はチョウにとって、とても重要なもので、取り除いてしまうと飛べなくなったり色や模様が消えてしまったりするんです。それでは鱗粉にはどのような役目があるのか詳しくみていきましょう。

鱗粉の役割

鱗粉の役割

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鱗粉の役割は大きく分けて4つもあります。順番に挙げると翅の模様をつくる飛ぶために必要体温調節を行う交尾を促す、です!このように多岐にわたって重要な働きをしている鱗粉はチョウにとって最も重要な特徴なんですよ。

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