
皆は水銀を見たことはあるか?以前は体温計や水銀灯などそこそこ身近だった水銀。金属なのに常温で液体と言う変わった金属。しかし、水銀には毒性があり、現在その取扱いは厳しい。日本では水銀による世界的にも重大な公害も起きている。
そんな水銀の性質や利用方法について解説する。担当は化学系科学館職員のたかはしふみかです。

ライター/たかはし ふみか
水や環境に関する講義を受け、公害の歴史を調べたこともある化学系科学館職員。毒劇物や登録販売者の資格を持つ。地球の環境に役立つ研究がしたいと、化石燃料に替わるエネルギーについて研究していた。
水銀てどんなもの?

水銀は元素番号80番、原子記号はHgです。どろっとした見た目で水の銀と書く水銀。銀のような光沢があるため、このように命名されました。ちなみに水銀は英語でmercury、水星のことです。
果たして水銀は金属でしょうか、それとも非金属でしょうか?
水銀は金属元素の一種
水銀は金属元素です。金属というと鉄、金など硬いイメージですね。しかし水銀は常温常圧で唯一、金属の元素なのです。なぜ液体なのか。それは水銀の融点、つまり固体になる温度が低いからです。ではなぜ融点が低いのでしょうか。
金属は価電子を共有する金属結合で原子同士がつながっています。水銀の場合、この金属結合をするエネルギーが小さいため液体となるのです。
水銀ほどじゃないけど融点が低い金属としてGa(ガリウム・30℃)、K(カリウム・63℃)、Sn(スズ・232℃)、Pb(鉛・327℃)、Zn(亜鉛・420℃)があります。
こちらの記事もおすすめ

3分で簡単!沸点・融点・凝固点の違いとは?物質の状態変化を元家庭教師がわかりやすく解説
そもそも常温で単体で液体の形態をしている元素が珍しく、水銀の他には臭素しかありません。臭素は融点-7.3℃、沸点58.8°のため、常温では液体となります。
こちらの記事もおすすめ

簡単にわかる「ハロゲン」とは何か?種類や特徴も理系大学生がわかりやすく解説
その他水銀の性質は次のようになっています。
密度 13.6g/cm3
融点 -39℃
沸点 357℃
水銀は密度は大きく、持ってみると意外にずっしりと重たいです。
水銀はどこで産出されているの?
パブリック・ドメイン, リンク
世界的に有名な水銀の産地と言えば、スペインにあるアルマデン鉱山です。
日本では佐世保市、北海道の留辺蘂町のイトムカ鉱山で産出されていました。イトムカ鉱山は良質な水銀が採掘され、その名の由来もアイヌ語で「光り輝く水」と言われています。この鉱山では水のように自然水銀が噴出し、採掘されていました。しかし、他の水銀鉱山では辰砂という硫化水銀(HgS)の鉱石として採掘がおこなわれています。この辰砂を600まで加熱すると、液体の水銀を得ることができるのです。
水銀電池
現在はほとんど利用されていない水銀電池。酸化水銀を使ったか電池です。小型で軽量という利点から、写真機や時計、補聴器などで使われていました。しかし、環境に配慮して1996年頃から世界中で使用が禁止となり現在はほとんど使われていません。
\次のページで「体温計」を解説!/