今回は「花弁」について勉強していこう。花はカラフルな色や甘い香りで園芸や生け花など様々なシーンで使われているが、植物自体は人間を楽しませるために花を咲かせているわけではない。花の構造の中でも最も目立つ「花弁」の役割や種類を見ていき、より知識を深めていこう。

大学院で植物の研究していた、生物に詳しいライターAnnaと一緒に解説していきます。

ライター/Anna

大学で生物学について幅広く学び、大学院では植物の研究をしていた。生物学の楽しさをたくさんの人に広められるよう日々勉強中。

花弁の役割とは?

花弁の役割とは?

image by Study-Z編集部

花弁とは簡単に言うと花びらのことです。複数の花弁が集まったものを花冠(かかん)と呼びます。花というと花びら(花弁)のことをイメージしがちですが、花は萼片(がくへん)、花梗(かこう)、花床(かしょう)、雄しべ、雌しべなどから構成されていて、花弁も花を構成する構造の一つです。

植物によって色や形は様々ですが、どの花弁も同じ役割を持っているんですよ。その役割を一つずつ見ていきましょう。

虫や鳥を引き寄せる

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花弁には虫や鳥を引き寄せる役割があります。一般的に植物は動くことができないため、種子を作る際には虫や鳥を媒介して花粉を運んでもらい受粉する必要がありますよね。虫を利用して花粉を運ぶ花を虫媒花と言いますが、虫媒花は虫を誘うために花弁の色が鮮やかであったり匂いが強いものが多いですよね。一方、鳥を利用して花粉を運ぶ花を鳥媒花と言いますが、鳥媒花は虫媒花と比べると匂いがほとんどなく花弁の色は赤色が多いです。

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花粉を守る

花弁の内側にある雄しべと雌しべを保護する役割もあります。雄しべの先端には葯(やく)と呼ばれる小さな袋がついていて、その袋の中に入っているのが花粉です。雌しべの先端は柱頭と呼ばれ、ここに花粉がつくことで受粉し繁殖することができます。ちなみに柱頭はベトベトしていて虫や鳥が他の花の蜜を吸った際に体についた花粉がくっつきやすくなるような仕組みになっているんですよ。

花弁にはどんな種類や形があるの?

花弁の役割が分かったところで、次は花弁の種類を見ていきましょう。花弁がくっついているか、離れているかによって種類が分かれていますが、ここでは花弁を作らない植物についてもご紹介します。

離弁花類

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花弁を作り、胚珠と呼ばれる受粉後に種子になる器官が子房に包まれている植物を「被子植物」と言います。被子植物の中でも「双子葉植物(子葉が2枚の植物)」のうち、花弁が離れている植物を「離弁花類」くっついている植物を「合弁花類」と分類しているのです。

離弁花類の花冠は離弁花冠と呼ばれ、花を解剖してみると花弁が一枚一枚離れています。スミレ科、アブラナ科などは離弁花類です。

離弁花類の具体例

バラ、サクラ、エンドウ、ウメ、ナデシコ

合弁花類

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合弁花類の花冠は離弁花類に同様に合弁花冠と呼ばれ、花を解剖してみると花弁が一枚で繋がっています。ツツジ科、ヒルガオ科などは合弁花類です。合弁花類は離弁花類が進化したものと考えられていますが、なぜ進化の上で花弁が一枚に繋がったかについては分からないと言われています。

合弁花類の花弁の形は様々ですが例を挙げると、シソ科のように花弁が上下に分かれて上唇と下唇のような形をしている唇形花(しんけいか)や、タンポポのように花弁の先端が広がって舌のような形をしている舌状花(ぜつじょうか)などたくさんの種類があるんですよ。

合弁花類の具体例

キキョウ、アサガオ、アセビ、キク、セイヨウタンポポ

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花弁を作らない植物

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離弁花類、合弁花類と花弁の種類を紹介してきましたが、花弁を作らない植物も存在します。植物の分類で言うと裸子植物が花弁を作らない植物です。

裸子植物は胚珠がむき出しになっていて子房も花弁もありません。裸子植物にも花はありますが、被子植物と違って「雌花」と「雄花」に分かれています。雌花には胚珠があり雄花には花粉のうがあり、花粉は風によって運ばれるため風媒花と呼ばれるんですよ。裸子植物の例としてはイチョウ科、ソテツ科、マツ科などがあります。

花弁の色はどうやって決まる?

花弁の色は数多くありますが、実は花弁の色を決める元となる色素は数種類しかありません。また、植物が持っている色素だけでなく環境によっても花弁の色は変わってきます。詳しく見ていきましょう。

色素による色の違い

植物に含まれる代表的な色素はフラボノイド、カロテノイド、ベタレイン、クロロフィルです。

フラボノイド黄色〜青色までの多くの色を出します。多くの植物がフラボノイド系の色素を持っていますが、フラボノイド中でも代表的なアントシアニンは赤色や青色を出し、アサガオやキキョウなどに含まれているんですよ。

カロテノイド黄色〜オレンジ色を出す色素で、黄色い花の多くはカロテノイドによるものです。

ベタレイン黄色や赤紫色を出す色素ですがベタレインを持つ植物は少なく、ナデシコ、ボタン、オシロイバナなどがあります。

クロロフィルは色素の中でも特に有名で、植物の葉や茎に含まれる緑色の色素です。花は蕾の時には緑色をしていますが、花が咲く時期には徐々にフラボノイドやカロテノイドなどの色素が作られクロロフィルが減少するため、花弁が赤や黄色に色づくんですよ。

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環境やその他の要因による色の違い

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花弁の色は色素だけでなく環境によっても変化します。例えばスイフヨウと呼ばれる花は、朝は白色の花弁ですが夕方には赤色に変わるんです。これは日が当たったり気温が25℃を超えるとアントシアニンを合成する酵素が活性化し、花弁にアントシアニンが蓄積されるため赤色になります。

他にもアジサイの色は土壌のpHによって変化することが知られていますよね。これには土壌中に含まれるアルミニウムが関係していて、アジサイの花弁に含まれる色素がアルミニウムと結合すると青くなり、アルミニウムと結合しないとピンク色となります。アルミニウムは酸性の土壌ではよく溶け、アルカリ性の土壌では溶け出しにくいため酸性土壌では青色、アルカリ性土壌ではピンクと花弁の色が変化するのです。

エディブルフラワーで花びらを味わってみよう

エディブルフラワーを知っていますか?エディブルフラワーとは食べられる花のことで、日本でも古くから料理に使われてきました。例えば桜の塩漬けやお刺身などに添えられている菊もエディブルフラワーです。毒性を持つ植物もあるため全ての花が食用として適しているわけではありませんが、現在ではパンジーやスイートピーなどがエディブルフラワーとして使われていてスイーツやサラダに入っていることもあります。また、意外にも栄養価が高く、花によって食感が違うため色彩だけでなく食材としてしっかり楽しむことができるんですよ。ぜひ皆さんもエディブルフラワーが使われた料理があれば食べてみてくださいね。

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理科生物生物の分類・進化

花弁はなんであるの?花冠とは?花弁の役割や種類、色の仕組みについても理系ライターが分かりやすくわかりやすく解説

今回は「花弁」について勉強していこう。花はカラフルな色や甘い香りで園芸や生け花など様々なシーンで使われているが、植物自体は人間を楽しませるために花を咲かせているわけではない。花の構造の中でも最も目立つ「花弁」の役割や種類を見ていき、より知識を深めていこう。

大学院で植物の研究していた、生物に詳しいライターAnnaと一緒に解説していきます。

ライター/Anna

大学で生物学について幅広く学び、大学院では植物の研究をしていた。生物学の楽しさをたくさんの人に広められるよう日々勉強中。

花弁の役割とは?

花弁の役割とは?

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花弁とは簡単に言うと花びらのことです。複数の花弁が集まったものを花冠(かかん)と呼びます。花というと花びら(花弁)のことをイメージしがちですが、花は萼片(がくへん)、花梗(かこう)、花床(かしょう)、雄しべ、雌しべなどから構成されていて、花弁も花を構成する構造の一つです。

植物によって色や形は様々ですが、どの花弁も同じ役割を持っているんですよ。その役割を一つずつ見ていきましょう。

虫や鳥を引き寄せる

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花弁には虫や鳥を引き寄せる役割があります。一般的に植物は動くことができないため、種子を作る際には虫や鳥を媒介して花粉を運んでもらい受粉する必要がありますよね。虫を利用して花粉を運ぶ花を虫媒花と言いますが、虫媒花は虫を誘うために花弁の色が鮮やかであったり匂いが強いものが多いですよね。一方、鳥を利用して花粉を運ぶ花を鳥媒花と言いますが、鳥媒花は虫媒花と比べると匂いがほとんどなく花弁の色は赤色が多いです。

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