この記事では慣用句とことわざの違いについてみていきます。自分の言いたいことがうまく言葉にできなかったり、良い例えが思い付かなかったりして、もどかしかった経験はないか?慣用句やことわざを知っていると、そんなときの手助けや突破口になるよな。今回はそんな日本語の表現に欠かせない2つの違いや特徴を、定義から確認しつつ、語学が大好きなライターおとのと一緒に解説していきます。

ライター/おとの

日本語の面白さや多様性について学ぶのが大好きな雑学オタク。日本語の表現についての知識本を見つけるとつい手にとってしまう。今回は英語のユニークなイディオムついても調べてみた。

慣用句とことわざはココが違う!

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慣用句とことわざは日本語をより豊かにしてくれる便利な表現ですよね。うまく会話に織り交ぜると、内容が格段に伝わりやすくなります。しかしこれらを明確に区別するのは難しいことです。それぞれ厳密な定義はなく、慣用句ともことわざとも言える表現も多数あります。そこで、この項では世間一般に広まっている認識についてまとめました。慣用句とことわざの巷説にはどのような違いがあるのか確認していきましょう。

慣用句:習慣的に使われてきた言い回し

慣用句は複数の単語を組み合わせて、本来の意味とは別の新しい意味を持たせた言い回しです。習慣として使われている言葉なので、自分でも意識しないまま使っているかも知れません。例えば「たくさん歩いたから足が棒になった」や「校長は同じ話ばかり繰り返すから耳にタコができるよ」など、日常会話のなかで不意に出てくることも多いでしょう。

慣用句は状況や度合いを表現するのにも役に立ちます。単純に「恥ずかしかった」と言うよりも「顔から火が出るかと思った」と言った方が、羞恥が強調されて伝わりますね。同じように「彼はまだ未熟だ」より「彼はまだくちばしが黄色い」と聞いた方が、ヒヨコのように頼りなく成長途中な青年のイメージが付くのではないでしょうか。慣用句を適切に使用することで、内容に具体性を持たせることができるのです。

ことわざ:教訓や戒めを説いた短い文章

ことわざには古来から受け継がれた教訓や戒めが込められています。いつ、誰が作ったというものではなく、長い歴史のなかで人々の意識に根付いた、上手く生きるためのコツや知恵と言えるでしょう。漫才などで思わず共感して頷いてしまうようなネタを「あるあるネタ」と呼びますよね。それと同じように、ことわざと自身の体験を重ねてみると、納得できるものは意外とたくさんありますよ。

ちなみに懐かしの人気番組『トリビアの泉』では雑学を紹介していましたが、番組内のコーナーで「80歳以上のお年寄りが嘘だと思うことわざ」を調査したことがありました。結果は1位が「果報は寝て待て」とのこと。幸運は自分の力ではどうしようもないので天に任せて気長に待つのが良いとの意味ですが、待ってるだけではどうしようもない場合もありますよね。筆者としては「金は天下の回りもの」が嘘だと思っています。

慣用句とことわざの特徴

この項では慣用句とことわざの特徴について解説します。先に述べたように、この2つにはハッキリとした区別はありません。しかし色々な慣用句とことわざを調べていくと、それぞれが会話のなかで使われる際の共通点や特徴が見えてきました。以下で確認していきましょう。

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慣用句の特徴:前後の文脈を引き立てる

慣用句はそれ単体では意味が通じないものです。例えば、会話や前提が全くない状態で「雁首揃えて」と言っても、相手は何のことか分かりませんよね。しかし「兄は財布を忘れて、弟はスマホを忘れていった。おまけに父は眼鏡を忘れるなんて、雁首揃えて何をやっているんだか」となれば、家族が揃って忘れ物をして呆れている様子が浮かび上がってきます。このように慣用句を入れることで、前後の文脈や状況を引き立ててくれるのです。

また、慣用句は体の一部が使われることが多いのも特徴と言えます。「胸が躍る」「喉から手が出る」「腹に据えかねる」などは有名ですね。習慣のなかで使われてきた言葉だからこそ、一番身近な自分の体が取り入れられたのでしょう。

ことわざ:ことわざのみで意味が通じる

慣用句が一文の中に組み込まれて使われるのに対して、ことわざはそれ自体が1つの文章です。それはつまり、ことわざのみで意味が通じるということ。会話のなかでは、自分の言いたいことや詳細などを簡潔にまとめた例として用いられることが多いですね。

考え方や意見とは今も昔も人によって様々です。そのせいか、ことわざにも同じ意味を持つものがいくつもあれば、全く反対の意味を持つものも存在します。例えば「善は急げ」と「急いては事を仕損じる」は逆のことを説いていますよね。自分の意見ありきで、背中を押してくれることわざを信じるのが良いのかも知れません。

ことわざの基本構造と形式

ことわざの基本的な構造は「寝る子は育つ」や「猫に小判」や「目の上のたんこぶ」のように偶数構造になっています。また、全てのことわざが当てはまるわけではありませんが、形式にもいくつかの特徴が。以下で詳細を確認しましょう。

対句形式
「頭隠して尻隠さず」や「人事を尽くして天命を待つ」に見られるように、対になる言葉が使われています。

列挙形式
「一姫ニ太郎」や「一富士二鷹三茄子」のように、複数のものを列挙したり順番付けたりした形式ですね。

音の反復
「当たるも八卦 当たらぬも八卦」のように同じ言葉を繰り返す形式です。韻を踏むのに似て語感が良いですね。

語呂やリズム
ことわざを口に出してみると、とてもリズムが良いことに気が付きます。特に5音と7音の組み合わせは、語呂が良くて音読すると気持ち良いですよ。

数字の多用
上記したことわざでも分かるように、数字が含まれている表現は非常にたくさんあります。「一難去ってまた一難」や「三度目の正直」なども当てはまりますね。

具体例から確認しよう

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この項では、AとBの2人が慣用句やことわざを使って会話をしている例を挙げてみました。下線部を引いた部分が慣用句もしくはことわざです。実際には1度の会話でこれらの表現を多用することはないでしょうが、どれか1つくらいは言ったことや言われたことがあると思います。自身の経験を思い出していただけると楽しいですよ。

慣用句:感情や行動を豊かに表現にする

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A:明日提出のレポートが終わらないんだ。この単位を落としたら、今までの勉強が水の泡になっちゃうよ。
B:いつも尻に火がつくまで行動しないのは悪い癖よ。私は口がすっぱくなるまで注意したでしょ。
A:今回はちゃんとやろうとしたよ。でも、提出期限を勘違いしてたんだ。
B:そんな大事なことを確認しておかないなんて、詰めが甘いんだから。もう開いた口が塞がらないわ。

課題が終わらなくて焦っているAを、Bが手厳しい言葉で非難している場面です。慣用句によって隠喩的に表現することで、感情や状況の説明がより具体的で多彩になりますね

「尻に火がつく」は「足元に火がつく」と言うこともできますし、呆れ返って言葉も出ない様子の「開いた口が塞がらない」の類義語に「二の句が継げない」などがあります。

ことわざ:例え話や引用として説得力を持たせる

A:英会話スクールをやめるって本当?
B:うん。全然上達しないから、諦めようかと思って。
A:レッスンは楽しいの?
B:それはとても楽しいんだけど、外国人の先生を前にすると緊張して言葉が出てこないの。
A:それなら続けた方が良いよ。「好きこそものの上手なれ」って言うだろ。
B:でも「下手の横好き」かも……
A:そう判断するのは早すぎるんじゃないかな。「継続は力なり」だから頑張ってみなよ!

ここでは、好きなことをやめようとしているAを引き止めるために、Bがことわざを使っています。「好きなことは必ず上達する」や「コツコツ努力を積み重ねることが大切」という自分の言い分を簡潔にまとめて、説得力を持たせることができていますね

Bが使った「下手の横好き」は「好きこそものの上手なれ」とは反対の意味のことわざ。先述したように、ことわざには同じ意味のものや真逆の意味のものがいくつも存在します。信じるならば、良い意味の方を信じたいものです。

故事成語や四字熟語との違いは?

学校の授業で座右の銘にする故事成語を決めたり、書き初めで四字熟語を書いたりした経験はありませんか?慣用句やことわざと同じように会話や文章の表現を豊かにしてくれるのが故事成語や四字熟語です。1つの表現がこれら4つのうち、複数のカテゴリーに属していることも珍しくありません。この項では、故事成語と四字熟語の特徴や違いについて確認していきましょう。

\次のページで「故事成語:中国などの故事を元にした格言」を解説!/

故事成語:中国などの故事を元にした格言

故事成語は主に中国の古典に出てくる故事から生まれた言葉です。故事とは大昔にあった出来事のこと。「矛盾」や「蛇足」は学校でも習いますし、日常会話のなかでも頻繁に使用されるのではないでしょうか。

「人間万事塞翁が馬」は座右の銘とされることもしばしば。人生は幸も不幸も予測がつかず、何が転機となるか分からないのだから、安易に喜んだり悲しんだりするべきではないとの意味です。ストレス社会に生き、繊細な精神を持つ現代人こそ大切にしたい格言ですね。

歴史において実際にあったとされる事柄や発言が元になっているので、いつ、誰が、どうしてといった由縁が比較的ハッキリしているのも特徴です。

四字熟語:漢字4文字で成り立っている熟語

四字熟語は「弱肉強食」や「古今東西」などの、漢字4文字で成り立っている熟語です。これは学術的な用語ではありませんが、慣用句やことわざの一種というイメージが強いのではないでしょうか。また「温故知新」や「四面楚歌」など故事からできたものもありますよ。

四字熟語の定義は未だ論争が続いています。漢字4文字で構成されていれば全て四字熟語だとする説がある一方で、教訓や導きがあるもののみを指すという説も。現在は後者の狭い意味での説が一般的として扱われているようです。好きな四字熟語を発表する課題では必ず「焼肉定食」と書く男子がいましたが、これは狭義では四字熟語とは言えないということですね。

英語のイディオムも確認しよう!

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英語にはイディオムと呼ばれる表現方法があります。そのまま直訳しては意味が通じず、それ専用の意味を持たせているところなどは慣用句と同じですね。ここでは、会話で使えたらネイティブのようで格好良くて、尚且つユニークなイディオムを5つ紹介しましょう。

It is a windfall:棚ぼただね
思いがけない幸運のことを日本では「棚からぼたもち」と言いますが、英語では風が落としたものと表します。木を切るのを禁止されていた時代に、風が落とした枝が貴重な資源だったことが由来のようです。

on the tip of one’s tongue:喉まで出かかっているのに思い出せない/言わない方が良い
「舌の先に(言いたいことが)乗ってるのに」という言い回しで、日本語よりももっともどかしいですね。どうしても名前が思い出せないときと、あえて自ら言葉を飲み込むときのどちらにも使えます。どちらの意味かは文脈で判断する必要があるので要注意。

Break a leg!:頑張ってね!
「足を折って!」なんて、言われたらギョッとしますよね。これはお芝居のとき、演者に「骨折するような不運とは真逆の幸運がありますように」との意味でかけられた言葉だそう。素直にそのまま言えば良い気もしますが、面白い表現ですね。

(Has the)Cat got your tongue?:どうして黙っているの?
直訳すると「猫に舌を取られたの?」となります。押し黙っている相手に、返答や続きを促す表現ですが、少し皮肉めいていて筆者のお気に入りの言い方です。

Rain the cats and dogs:土砂降りの雨
北欧の言い伝えでは猫は大雨を降らせて、犬は強風を呼ぶのだとか。ちなみに仲の悪い者同士を「犬猿の仲」と言いますが、英語ではこれも”They are on cat-and-dog term.”と表します。そんな不仲な猫と犬が競って天気を操ろうとしたら、土砂降りにもなりますね。

慣用句やことわざで表現を彩ろう!

筆者の友人にとても話の上手な女性がいます。如何に複雑な内容であっても、言い表すのが難しい微妙なニュアンスであっても、分かりやすく話してくれるのです。どうしてなのか考え続けてやっと分かったのは、彼女の表現がとても巧みだということ。話が上手で楽しい人は総じて、この点に特化していると感じます。自分の伝えたいことを相手に齟齬なく伝えるのはとても難しいことですね。しかし新しい言い回しや語彙を学び、それを口に出すことで、会話はどんどん面白く弾んでいくはずです。慣用句やことわざは絶好の武器。ぜひ使用して、表現を彩りましょう!

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言葉雑学

5分で分かる慣用句とことわざの違い!特徴や具体例から故事成語・四字熟語との違いまで日本語大好きライターがわかりやすく解説!

この記事では慣用句とことわざの違いについてみていきます。自分の言いたいことがうまく言葉にできなかったり、良い例えが思い付かなかったりして、もどかしかった経験はないか?慣用句やことわざを知っていると、そんなときの手助けや突破口になるよな。今回はそんな日本語の表現に欠かせない2つの違いや特徴を、定義から確認しつつ、語学が大好きなライターおとのと一緒に解説していきます。

ライター/おとの

日本語の面白さや多様性について学ぶのが大好きな雑学オタク。日本語の表現についての知識本を見つけるとつい手にとってしまう。今回は英語のユニークなイディオムついても調べてみた。

慣用句とことわざはココが違う!

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慣用句とことわざは日本語をより豊かにしてくれる便利な表現ですよね。うまく会話に織り交ぜると、内容が格段に伝わりやすくなります。しかしこれらを明確に区別するのは難しいことです。それぞれ厳密な定義はなく、慣用句ともことわざとも言える表現も多数あります。そこで、この項では世間一般に広まっている認識についてまとめました。慣用句とことわざの巷説にはどのような違いがあるのか確認していきましょう。

慣用句:習慣的に使われてきた言い回し

慣用句は複数の単語を組み合わせて、本来の意味とは別の新しい意味を持たせた言い回しです。習慣として使われている言葉なので、自分でも意識しないまま使っているかも知れません。例えば「たくさん歩いたから足が棒になった」や「校長は同じ話ばかり繰り返すから耳にタコができるよ」など、日常会話のなかで不意に出てくることも多いでしょう。

慣用句は状況や度合いを表現するのにも役に立ちます。単純に「恥ずかしかった」と言うよりも「顔から火が出るかと思った」と言った方が、羞恥が強調されて伝わりますね。同じように「彼はまだ未熟だ」より「彼はまだくちばしが黄色い」と聞いた方が、ヒヨコのように頼りなく成長途中な青年のイメージが付くのではないでしょうか。慣用句を適切に使用することで、内容に具体性を持たせることができるのです。

ことわざ:教訓や戒めを説いた短い文章

ことわざには古来から受け継がれた教訓や戒めが込められています。いつ、誰が作ったというものではなく、長い歴史のなかで人々の意識に根付いた、上手く生きるためのコツや知恵と言えるでしょう。漫才などで思わず共感して頷いてしまうようなネタを「あるあるネタ」と呼びますよね。それと同じように、ことわざと自身の体験を重ねてみると、納得できるものは意外とたくさんありますよ。

ちなみに懐かしの人気番組『トリビアの泉』では雑学を紹介していましたが、番組内のコーナーで「80歳以上のお年寄りが嘘だと思うことわざ」を調査したことがありました。結果は1位が「果報は寝て待て」とのこと。幸運は自分の力ではどうしようもないので天に任せて気長に待つのが良いとの意味ですが、待ってるだけではどうしようもない場合もありますよね。筆者としては「金は天下の回りもの」が嘘だと思っています。

慣用句とことわざの特徴

この項では慣用句とことわざの特徴について解説します。先に述べたように、この2つにはハッキリとした区別はありません。しかし色々な慣用句とことわざを調べていくと、それぞれが会話のなかで使われる際の共通点や特徴が見えてきました。以下で確認していきましょう。

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