今日は「奇蹄類」というキーワードにをテーマに学習していこう。

奇蹄類という言葉を耳にしても、どんな生物のグループかぴんと来ないかもしれないが、我々によく知られている動物が含まれている。その特徴や、属している生物種について確認していこうじゃないか。

大学で生物学を学び、現在は講師としても活動しているオノヅカユウに解説してもらおう。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

奇蹄類とは?

奇蹄類(きているい)は、哺乳綱(ほにゅうこう)にふくまれている動物の総称です。

”哺乳綱”に含まれる動物は、一般的には「”哺乳類”の動物」と紹介されますね。奇蹄類も、分類学に基づいた正式な分類群の名称としては奇蹄目(きていもく)といいます。

奇蹄目の別名はウマ目。そう、ウマやそれに比較的近縁な動物がまとめられているのが奇蹄目なのです。

少し前まではウマ目ということが多かったように思うのですが…最近は、特定の生物の名称を”目”の名称に使うことが減っているようなんです。

「ウマ目」よりも「奇蹄目」がいい?

たとえば、奇蹄目と同じ哺乳綱には食肉目(しょくにくもく)という分類群があります。こちらは別名ネコ目で、名前通りネコ科などの動物が含まれているグループです。

食肉目(ネコ目)にネコ科だけが存在しているなら話はシンプルなのですが、ここにはほかにもイヌ科やクマ科、イタチ科、マングース科などがふくまれています。これだと、「食肉目=ネコ目=ネコのなかま」といってしまうのは、ちょっと難しいと思いませんか?

「さまざまな生物種が含まれているのに、なぜネコが代表なのか」という話にもなりますしね。その点、食肉目という名称はネコに限らず、この分類群に含まれる動物の特徴(肉食のものが多くいる)をよく表しています。

\次のページで「奇蹄類の特徴」を解説!/

image by iStockphoto

奇蹄目も、ウマ目と言ってしまうと「ウマのなかま」のイメージが強いですよね。ですが、ウマとは姿が大きく異なる動物が含まれているのが実際のところです。分かりやすさ優先でウマ目という言葉を使うこともありますが、奇蹄目という名称も併記しておく方が良いと思います。

まあ、そもそも”分類群”なんていうものも、人間が勝手に考えているグループ分けなんですけどね。あまり気にしすぎず、それぞれの生物にきちんと向き合う、という考え方でもよいでしょう。

奇蹄類の特徴

では、ここからは奇蹄類の動物に当てはまる代表的な特徴をご紹介していきます。

あしの指が奇数本

奇蹄類という名前の由来は、あしの指の数にあります。

一部に例外がありますが、奇蹄類はあしの指(とくに後ろ脚)の数が1本、または3本になっているのです。

私たちがもつ5本指に置き換えると、親指と小指(第1指と5指)が退化。体重は、おもに中指(第3指)にかかります。

発達した蹄

指の先にある爪はよく発達し、かたい(ひづめ)になっています。これは、ウマの蹄を思い浮かべていただくとわかりやすいですね。

この蹄という特徴は奇蹄類だけでなく、偶蹄類(ぐうているい)とよばれる動物のグループにも当てはまるものです。そのため、奇蹄類と偶蹄類はまとめて有蹄類(ゆうているい)とよばれます。

\次のページで「草食」を解説!/

そうです!やはり、分類群の名称は生物の特徴をよく表現していますよね。

草食

奇蹄類の動物は一般的に草食性です。そのため、歯や腸は植物食に適した形状になっています。

歯の形でいえば、植物をかみ切るための切歯や、すりつぶすための臼歯がよく発達していますね。

奇蹄類の分類

では、奇蹄類をさらに細かく分けたときの分類群(下位分類)をみていきましょう。現存している奇蹄類は、ウマ科、バク科、サイ科の3つの科に属しています。

ウマ科

ウマ科には、ウマシマウマロバなどの動物種が含まれています。

ウマは人間にとってなじみ深い動物の一つでしょう。古くからウマは農耕などの目的で馬を飼育されてきました。そのなかで様々な品種が生み出されてきたのです。競馬にみられるサラブレッドのような走りをできるもの、重たいそりや農具を曳けるもの、ポニーのような小型のもの…いずれも、元々の種はノウマとよばれる種でした。

現在は野生のノウマは絶滅したとされています。

image by iStockphoto

ほかにウマ科に含まれるのは、シマウマロバの仲間です。

シマウマといっても、サバンナシマウマやグレビーシマウマといったいくつかの種が認められています。

また、ロバのなかまにも、アフリカノロバやアジアノロバなどの種があるんです。

バク科

バク科には、アメリカバクやマレーバクなど、現存しているバクのなかまが5種類含まれています。

バクの仲間は、後ろ足の指が3本なのに対し、前の足の指は4本です。これは奇蹄目の特徴から少し外れた例外ということになります。

全体的に脚は短めでずんぐりとした体形になっていますが、これはバクが森林を主な生息地としているため、藪の中を歩きやすいような形状なのではないかと考えられているんです。

image by iStockphoto

バクの仲間も、後述するサイの仲間も、現在の地球に残っている種数は決して多くなく、個体数も減少しています。言ってしまえば絶滅の危機にあるものが多いのです。

最近では、生息地の減少や乱獲など、人間の活動が大きく影響しています。動物園などで姿を見ることがあれば、ぜひそのような現状にも思いをはせていただきたいのです。

\次のページで「サイ科」を解説!/

サイ科

最後はサイ科。現生のサイのなかま5種でこの科が構成されています。

5種のサイとは、シロサイ、クロサイ、スマトラサイ、ジャワサイ、インドサイ。その多くが絶滅の危機に瀕しているのが現状です。

image by iStockphoto

絶滅した奇蹄類たち

奇蹄類で現在生き残っている種は、上記の3つの科に含まれ、個体数が減少傾向にあるものが多くいます。ですが、過去の地球ではこの奇蹄類が多様化し、繁栄した時代があったんです。

image by Study-Z編集部

新生代の古第三紀中ごろあたりから、奇蹄類が広く繁栄したことが、多くの化石からわかっています。ところが、新第三紀にはいってからは徐々にその数を減らしていきました。地球の寒冷化などが原因とみられています。また、人類の登場によってさらなる影響を受けたことは、先に述べたとおりです。

シカやキリンは?

皆さんの中には、ウマのようにすらりとした脚をもったシカやキリンが奇蹄類に含まれていないことを意外に感じる方もいるでしょう。シカとキリンは偶蹄類のなかまであり、分類学的には鯨偶蹄目(げいぐうていもく)というグループに属します。鯨偶蹄目にはウシなどの動物が含まれているのですが…これはまた別の機会にお話ししましょう。

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理科生物生物の分類・進化

「奇蹄類」とはどんな動物のグループ?具体例や特徴を現役講師がわかりやすく解説します

今日は「奇蹄類」というキーワードにをテーマに学習していこう。

奇蹄類という言葉を耳にしても、どんな生物のグループかぴんと来ないかもしれないが、我々によく知られている動物が含まれている。その特徴や、属している生物種について確認していこうじゃないか。

大学で生物学を学び、現在は講師としても活動しているオノヅカユウに解説してもらおう。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

奇蹄類とは?

奇蹄類(きているい)は、哺乳綱(ほにゅうこう)にふくまれている動物の総称です。

”哺乳綱”に含まれる動物は、一般的には「”哺乳類”の動物」と紹介されますね。奇蹄類も、分類学に基づいた正式な分類群の名称としては奇蹄目(きていもく)といいます。

奇蹄目の別名はウマ目。そう、ウマやそれに比較的近縁な動物がまとめられているのが奇蹄目なのです。

少し前まではウマ目ということが多かったように思うのですが…最近は、特定の生物の名称を”目”の名称に使うことが減っているようなんです。

「ウマ目」よりも「奇蹄目」がいい?

たとえば、奇蹄目と同じ哺乳綱には食肉目(しょくにくもく)という分類群があります。こちらは別名ネコ目で、名前通りネコ科などの動物が含まれているグループです。

食肉目(ネコ目)にネコ科だけが存在しているなら話はシンプルなのですが、ここにはほかにもイヌ科やクマ科、イタチ科、マングース科などがふくまれています。これだと、「食肉目=ネコ目=ネコのなかま」といってしまうのは、ちょっと難しいと思いませんか?

「さまざまな生物種が含まれているのに、なぜネコが代表なのか」という話にもなりますしね。その点、食肉目という名称はネコに限らず、この分類群に含まれる動物の特徴(肉食のものが多くいる)をよく表しています。

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