この記事では「尊敬語」と「謙譲語」の違いについてみていきます。どちらも敬語で、丁寧な言葉のイメージがあるよな。違いはずばり立てる人物と下げる人物のようですが、そのため互いに使い方などが間違えやすいみたいです。
今回はそんな言葉づかいの違いを、ビジネス現場での使い方を確認しつつ、少女向け小説家兼ライターさらささらと一緒に解説していきます。

ライター/さらささら

少女向け小説家兼ライター、神社や名所を訪ねるのが趣味。お話のネタにするため様々な雑知識を集めた。わかりやすい言葉で説明を心がける。

「尊敬語」と「謙譲語」の違いとは?

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皆さんも学校なら先生、バイトや会社の上司など目上の人に対して、苦手ながらも「敬語」を使うのではないでしょうか。敬語とは文字通り、話す相手への「敬意やわきまえ」の気持ちを表す言葉遣いです。そして、そんな敬語には「尊敬語」と「謙譲語」がありますが、それぞれどんな違いがあるのでしょう?

次の項目では、2つの違いを分かりやすくするため簡単な説明をさせて頂きます。

「尊敬語」は相手を持ち上げ敬う

「尊敬語」とは、目上の人など相手を持ち上げることで敬う気持ちを示す敬語です。名詞や動詞にも「尊敬語」が存在します。

例えば、相手のことを「〇〇様」「貴殿」、相手の行動に対し「~される」「~なさる」などです。

「謙譲語」は自分がへりくだることで敬う

「謙譲語」とは、自分が「謙(へりくだり)+譲(ゆずる)」ことで敬う気持ちを示す敬語です。「謙譲(けんじょう)」は「謙遜(けんそん)」と同じ意味を持ち、「尊敬語」同様に「謙譲語」にも名詞や動詞が存在します。

例えば、自分のことを「当方」「小生」、自分の行動に対し「~させて頂く」「参る」「承(うけたまわ)る」などです。

それぞれどんな使い方をするの?

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こちらでは、「尊敬語」と「謙譲語」の名詞・動詞の例文を比較しながら、それぞれの違いと使い方を見てみたいと思います。

「尊敬語」の例文

「尊敬語」は相手を主体とした言葉のため、「相手の~」「相手が~」と考えるのが分かりやすいかもしれません。

「お」もしくは「ご」+「動詞」+「~になる」
例)ご主人様が、お出でになる。

\次のページで「「謙譲語」の例文」を解説!/

尊敬語

【名詞】
・お店    貴店
・住所    ご住所、貴邸、貴宅
・息子    ご令息様、ご子息様、ご長(次)男様
・娘     ご令嬢様、お嬢様、ご息女様

【動詞】
・食べる   召し上がる
・聞く    お聞きになる
・買う    お買いになる、お求めになる

……など。

「謙譲語」の例文

反対に「謙譲語」は自分を主体とした言葉のため、「自分の~」「自分が~」と考えてください。

「お」もしくは「ご」+「する」もしくは「致す」
例)私どもが、お届け致します。

謙譲語

【名詞】
・お店    弊店
・住所    当方、我が家、拙宅
・息子    息子、せがれ、長(次)男、名前
・娘     娘、長(次)女、名前

【動詞】
・食べる   いただく
・聞く    拝聴する、うかがう
・買う    買わせて頂く、頂戴する
……など。

ビジネスの現場でよく使われる「尊敬語」と「謙譲語」

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敬語といえばやはり、ビジネスシーンなどで使う機会が多いかと思われます。ところが、「尊敬語」と「謙譲語」がぐちゃぐちゃになってしまったり、自分をへりくだったつもりが相手を貶めてしまうような言葉遣いをしてしまったら大変です。

そこでこちらでは、ビジネスにおいて間違えやすい敬語の使い方を例文と一緒にチェックしてみましょう。

ビジネス現場での「尊敬語」の例文

「尊敬語」とは、相手を持ち上げ敬う言葉です。そのため過剰なほど丁寧にし過ぎてしまい、「お茶」と同じく「コーヒー」に「お」を付け「おコーヒー」など冗談みたいな間違いも度々聞かれます。

さらに、同じ種類の敬語を重複使用した「二重敬語」にも気を付けたいところです。こちらは「お」を付けた場合、「~れる(~られる)」は使わないよう注意してください。

【二重敬語】…同じ種類の敬語を重複して使用する。「尊敬語+尊敬語」
・帰る   誤)お帰りになられる→正)お帰りになる、帰られる
・見る   誤)ご覧になられる→正)ご覧になる
・役職   誤)田中社長様(殿)→田中社長

【その他NG】
・誤)お体をご自愛くださいませ→正)ご自愛くださいませ
  →「ご自愛ください」=「体に気を付けてください」なので
・誤)お座りになってお待ちください→正)お掛けになってお待ちください
  →「お座り」=犬に対する「お座り」を連想するため

【容認される二重敬語】
・お召し上がりになる
・お見えになる

……など。

\次のページで「ビジネス現場での「謙譲語」の例文」を解説!/

ビジネス現場での「謙譲語」の例文

「謙譲語」とは、自分をへりくだることで相手を敬う言葉ですね。実は、ここでうっかり間違えてしまうのが、相手に対して自分側の人間に「敬語」を使ってしまうこと。

例えば、相手側に自分の会社の人を紹介する時「こちらは営業の山田さんです」は間違え。正しくは「こちらは営業の山田です」と呼び捨て(もしくは役職を付けて氏名)になります。

【自分を含め身内は謙譲語】
・誤)本日、山田はお休みをいただいております→正)本日、山田は休暇を取っております

【相手の行為に謙譲語はNG】
・誤)それでは後日、おうかがいいただけますか?→正)それでは後日、お出でいただけますか?
・誤)田中さまが申されるようなことですと→正)田中さまがおっしゃるようなことですと

【くだけた表現でNG】
・誤)お世話様です→正)いつもお世話になっております
・誤)お久しぶりです→正)ご無沙汰しております
・誤)どちら様でしょうか→正)お名前をうかがってもよろしいですか?
・誤)了解しました→正)承知しました、かしこまりました

……など。

もうひとつの敬語「丁寧語」とは?

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「尊敬語」や「謙譲語」以外に、敬語のひとつに「丁寧語」があります。こちらは相手や内容に問わず、文字通り丁寧な言葉遣いの敬語です。

また、「丁寧語」の特徴として語尾が「~です」「~ます」「~ございます」で終わります
例)「あちらが駅です」「隣にございます」

「丁寧語」の例文

「丁寧語」と共に、「尊敬語」と「謙譲語」の簡単な一覧にしてみました。3つを見比べながら、表現の違いを確認してみてください。

敬語の比較

「(~が)行く」
【尊敬語】(相手が)おいでになる、いらっしゃる
【謙譲語】(自分が)うかがう、参る
【丁寧語】行きます

「(~が)来る」
【尊敬語】(相手が)おいでになる、いらっしゃる、見える、お越しになる
【謙譲語】(自分が)うかがう、参る
【丁寧語】来ます

「(~が)いる」
【尊敬語】(相手が)いらっしゃる、おいでになる
【謙譲語】(自分が)おる
【丁寧語】います

「(~が)わかる」
【尊敬語】(相手が)おわかりになる、ご理解いただく
【謙譲語】(自分が)かしこまる、承知する
【丁寧語】わかりました

……など。

\次のページで「細分化された敬語「丁重語」と「美化語」」を解説!/

細分化された敬語「丁重語」と「美化語」

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敬語には大きく分けて「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」の3種類あるのは分かりましたね。ところが、さらに細分化して「美化語」、「謙譲語」を1と2に分けた1つ「丁重(ていちょう)語」もあるのをご存じでしょうか?

「美化語」とは、「お茶」や「ご飯」のように名詞に「お」や「ご」を付け「物事や行動を美化した」言葉。そして前述した「謙譲語」の「参る」や「拙宅」などは「丁重語(謙譲語2)」に分類されますが、こちらは自分側の動作を丁重に表す言葉です。

敬語は以前「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」の3種類でしたが、2007年(平成19年)の文化審議会「敬語の方針」において、「丁重語」「美化語」を加えた5種類になりました。

前述したよう「丁重語」は「謙譲語」に含まれる言葉で「謙譲語2」とも呼ばれており、「美化語」は「丁寧語」に含まれる言葉となります。そのため、敬語表現は「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」3種類とした考えが主流のようです。

ちなみに、一部有識者からは敬語を5種類ではなく、さらに細分化するべきとの意見もあります。

正しい敬語を使うことは自分の価値を上げること!

言葉は時代によって変化をする生き物だとも言われています。最近では会社などの上司に対しても、いわゆる"タメぐち"を使う若い社員が増えたとか。ですが、社会人としての話し方や言い方をマスターするということは、会社内でのコミュニケーションを円滑にするうえ、あなた自身の価値さえ上げることになります。

本記事の情報が、美しい日本語の参考となれば幸いです。

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言葉の意味雑学

3分で簡単尊敬語と謙譲語の違い!敬語は3種類以上ある?丁寧語についても小説家兼ライターが丁寧にわかりやすく解説!

この記事では「尊敬語」と「謙譲語」の違いについてみていきます。どちらも敬語で、丁寧な言葉のイメージがあるよな。違いはずばり立てる人物と下げる人物のようですが、そのため互いに使い方などが間違えやすいみたいです。
今回はそんな言葉づかいの違いを、ビジネス現場での使い方を確認しつつ、少女向け小説家兼ライターさらささらと一緒に解説していきます。

ライター/さらささら

少女向け小説家兼ライター、神社や名所を訪ねるのが趣味。お話のネタにするため様々な雑知識を集めた。わかりやすい言葉で説明を心がける。

「尊敬語」と「謙譲語」の違いとは?

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皆さんも学校なら先生、バイトや会社の上司など目上の人に対して、苦手ながらも「敬語」を使うのではないでしょうか。敬語とは文字通り、話す相手への「敬意やわきまえ」の気持ちを表す言葉遣いです。そして、そんな敬語には「尊敬語」と「謙譲語」がありますが、それぞれどんな違いがあるのでしょう?

次の項目では、2つの違いを分かりやすくするため簡単な説明をさせて頂きます。

「尊敬語」は相手を持ち上げ敬う

「尊敬語」とは、目上の人など相手を持ち上げることで敬う気持ちを示す敬語です。名詞や動詞にも「尊敬語」が存在します。

例えば、相手のことを「〇〇様」「貴殿」、相手の行動に対し「~される」「~なさる」などです。

「謙譲語」は自分がへりくだることで敬う

「謙譲語」とは、自分が「謙(へりくだり)+譲(ゆずる)」ことで敬う気持ちを示す敬語です。「謙譲(けんじょう)」は「謙遜(けんそん)」と同じ意味を持ち、「尊敬語」同様に「謙譲語」にも名詞や動詞が存在します。

例えば、自分のことを「当方」「小生」、自分の行動に対し「~させて頂く」「参る」「承(うけたまわ)る」などです。

それぞれどんな使い方をするの?

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こちらでは、「尊敬語」と「謙譲語」の名詞・動詞の例文を比較しながら、それぞれの違いと使い方を見てみたいと思います。

「尊敬語」の例文

「尊敬語」は相手を主体とした言葉のため、「相手の~」「相手が~」と考えるのが分かりやすいかもしれません。

「お」もしくは「ご」+「動詞」+「~になる」
例)ご主人様が、お出でになる。

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