
熱可塑性樹脂・熱硬化性樹脂の構造的な違いは?

image by iStockphoto
プラスチック材料には熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂の2種類があること、それぞれ熱を加えた時の反応が違っていることがわかりました。しかし、なぜ反応が異なるのでしょうか?
この疑問に答えるには、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂の化学構造を読み解くことが必要です。
プラスチック含め、樹脂はモノマーと呼ばれる基本となる分子構造が数百~数千個単位で結合している構造をとっています。熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂では、この結合の仕方が異なるため性質が違っているんです。では、それぞれの化学構造について見てみましょう。
熱可塑性樹脂の構造は鎖状

image by Study-Z編集部
例として、ポリプロピレンの場合を考えてみましょう。ポリプロピレンはプロピレンが鎖状に結合した構造をとる熱可塑性樹脂です。
この鎖状の構造、実は結合の強さが場所によって異なっており、モノマーを鎖状に繋げる結合の強さは他の部分と比べてかなり弱くなっています。よって熱が加わると、熱エネルギーによりやがて結合の弱い部分が切れてしまうのです。モノマー間の結合が切れた状態が軟化、変形として目に見える形で現れているんですね。
熱可塑性樹脂はモノマーが鎖状に連結したシンプルな構造をとっており、その部分はほかと比べて結合が弱くなっています。そのため、どの熱可塑性樹脂でも加熱すると同様の反応になるんです。
熱硬化性樹脂の構造は網目状

image by Study-Z編集部
一方で、熱硬化性樹脂はもっと複雑な構造をしています。画像例として、熱硬化性樹脂であるシリコーン樹脂を加熱した後の構造を示しました。わかりやすく平面で表示していますが、実際はより立体的な構造です。
画像から、網目状の構造になっていることがわかりますか?このような橋かけ構造は架橋構造と呼ばれ、加熱による化学反応で形成されます。架橋構造を形作る結合はほかの結合部分と比べても十分強いため、熱が加えられて分子が振動しても、切れずに硬化した状態を保てるわけなんです。
熱硬化性樹脂に該当するプラスチックは架橋構造を形成する部分を持っており、熱を加えられると同じメカニズムで硬化します。
熱可塑性樹脂・熱硬化性樹脂の見分け方は?

image by iStockphoto
熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の違いはそれぞれの化学構造からくるものだというのはもう大丈夫ですね。では、実際のプラスチックがどちらになるのか分類する方法はあるのでしょうか?
結論として、材質や見た目からはほとんど判別できません。
しかし、製品の形であれば用途から用途からある程度推測が可能です。ブレーカーや食器など電気や熱が伝わるものや、自動車のボディなど軽さと強度が必要なものは熱硬化性樹脂が使用されます。一方、成形のしやすさやコストの安さから、ボトル容器などの大量生産が必要なものは熱可塑性樹脂が使われるのが一般的です。
また、化学式がわかっている場合は、構造の基本となるモノマーが何箇所で結合するかに着目しましょう。2箇所の場合は直線的な結合になり、熱可塑性樹脂となります。一方、3箇所以上に渡って結合する場合は、熱硬化性樹脂に見られる架橋構造となり判別可能です。
代表的な熱可塑性樹脂・熱硬化性樹脂

image by iStockphoto
これまでで、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂がどんな点で違いがあるのか解説してきました。最後に、それぞれ代表的な素材の例をいくつか紹介します。
\次のページで「1.ポリエチレン(PE)」を解説!/