この記事では暗喩と隠喩の違いについてみていきます。
どちらも文学作品の解説で見かけるイメージがあるよな。どちらも比喩の一種であり、表現を豊かにする効果を持っている。比喩には他にも様々な表現が存在する。今回はそんな暗喩と隠喩の意味や例文、対義語やその他の比喩技法について、雑学大好きライターSadaieと一緒に解説していきます。

ライター/Sadaie

プログラマー、ヘルプデスク経験者。パソコン関係以外では文学、歴史が好き。それらの知識をわかりやすいかたちで配信したいと考えている。

 

暗喩と隠喩は比喩の一種

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暗喩と隠喩の読み方は、それぞれ「あんゆ」と「いんゆ」です。

国語の授業などで文学作品について説明するとき、「この表現は暗喩(または隠喩)」などと聞いたことはありませんか。

暗喩と隠喩は修辞法の一つである比喩の中の一種です。このままでは分かりづらいので、順を追って説明しましょう。修辞法とは文章やスピーチなどをよりよいものにするための技法のこと。その技法のーつである比喩とは「いいたいことを何かに例える」こと。比喩の一種である暗喩と隠喩は「例え方の一種」のことなのです。

暗喩と隠喩はどちらも同じで、別の言い方に過ぎない!

どちらも耳にする言葉なので意外に思われるかもしれませんが、実はこの二つの言葉に違いはなく、同一の意味になります。

暗喩(隠喩)とは?

暗喩(隠喩)は読んで字のごとく、比喩であることを隠した比喩のこと。「~のような」という形式を用いずにたとえた表現。喩という字は「たとえ」を意味します。

どちらも英語ではメタファー(metaphor)

暗喩(隠喩)は英語ではメタファー(metaphor)といいます。

文学作品の解説において比較的用いられることの多い英語であり、暗喩でも隠喩でもなくメタファーと呼ぶことも少なくありません。セットで覚えておくべき英単語でしょう。

メタファーの歴史

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メタファーの意義について初めて言及したのは古代ギリシアの哲学者アリストテレス(紀元前384年 ~ 紀元前322)。文学の構造や理論をまとめた著書「詩学」の中で彼は、メタファーは通常の言葉では伝えられないものを伝えられるものとし、そのメタファーを自在に使いこなす人は偉大であると述べています。

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対義語は明喩と直喩

暗喩(隠喩)の対義語は明喩(直喩)になります。暗喩(隠喩)と同様にこちらも意味は同じ。

明喩と直喩の読み方は、それぞれ「めいゆ」と「ちょくゆ」、英語ではシミリー(simile)といいます。

明喩(直喩)は比喩であることをわかりやすくした技法

暗喩(隠喩の)対義語である明喩(直喩)は比喩であることをわかりやすく表現した例え方のこと。

英語では「Al ike B」または「A as B」と表現されますね。

明喩(直喩)の例文

明喩(直喩)の例文は以下の通りです。

1.太陽のような笑顔
2.氷みたいに冷たい心
3.光陰(こういん)矢の如(ごと)し

Aという単語をBという単語で例えているのが分かるように、明喩(直喩)は「~のような」といったキーワードとセットで用いられます。他にも「~のごとく」、「~みたいな」など。

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暗喩と隠喩はどのように使うのか

そもそも暗喩(隠喩)は何故用いるのでしょうか。以下の二つが暗喩(隠喩)の強みであり、その強みを意識した使用が効果的でしょう。

感情一つとっても、書き手によってその表現が千差万別になる点。

その分かりにくさを逆に利用して、(理解出来た)読み手を心地よくさせる点。

分かりにくくしすぎた暗喩(隠喩)は効果的ではないので注意が必要です。

暗喩と隠喩の使い方

特定のキーワードを用いた明喩(直喩)と違い、暗喩(隠喩)の表現は広範囲になります。

大きく分けて使い方は三つのパターンに分けることが出来るでしょう。

明喩(直喩)のように「Al ike B」や「A as B」の形を取るが、キーワードを省いたもの。前後の文脈とセットではじめて暗喩(隠喩)になるもの。文章や物語そのものが教訓やテーマになっているもの。

暗喩(隠喩)の例文

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暗喩(隠喩)の例文は以下の通りです。

1.人生は旅だ
2.野にはバラが咲いていた
3.「狼が来たぞ」と何度も村人をだましてきた少年は次第に信用を失い、本物の狼が来た時に誰にも信じてもらえずに狼に食べられてしまった(イソップ寓話 狼少年)

一番目は直喩(明喩の)の使い方に似ていますね。「旅のような人生」と言い換えることもでき、「~のような」というキーワードを省いた格好です。

二番目は文中にただ存在する分には暗喩になりえませんね。しかし、バラの花言葉は「愛情」。その前後の文脈に例えば異性が登場していたなら、それは恋の暗喩(隠喩)になるのです。

三番目は例文というより物語全体が暗喩(隠喩)。物語全体が教訓のようになっており、「嘘つきは信用を失う」ことを示しています。

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その他の比喩技法

隠喩(暗喩)、明喩(直喩)以外の比喩表現として換喩、提喩について見ていきましょう。

読み方は、それぞれ「かんゆ」と「ていゆ」です。

語句の意味を拡張する換喩

英語ではメトニミー(metonymy)。例えば、「やかんが沸騰した」という表現が換喩。中にある「水」の代わりに近くにある「やかん」で表現しているんですね。このように、近くにあるものを用いた比喩表現のことを換喩といいます。

上位の概念を下位の概念で言い換える提喩

英語ではシネクドキ(synecdoche)。例えば、「ごはん食べにいこう」という表現が提喩。ここでいう「ごはん」とは「白米」を指すのではなく、「食事」を指します。「食事」という上位の概念を「ごはん」という下位の概念で言い換えているんですね。このように包括関係にある概念で言い換えたものを提喩といいます。

上位の概念で下位の概念を言い換える場合もあり、「お花見」などがその代表。「花」という上位の概念は、すなわち会の概念の「桜」の言い換えです。

暗喩と隠喩はどちらも同じで、明喩と直喩も同様

暗喩と隠喩は明喩と直喩は同じもので、言い換えに過ぎません。どちらも文学作品で頻繁に用いられる修辞法です。「~のような」とセットで用いられない暗喩(隠喩)は読み手(聞き手)の読解能力、理解力が試されます。文章の一部ではなく全体の理解が大切だからです。そういった部分が文学作品を読み解く際の魅力要素の一つではないでしょうか。また、あなたが発信する側であった場合、暗喩(隠喩)を組み込むことで、奥行きのある表現が可能になるでしょう。

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暗喩と隠喩の違いって?意味や例文、対義語やその他の比喩技法について雑学大好きライターがわかりやすく解説!

この記事では暗喩と隠喩の違いについてみていきます。
どちらも文学作品の解説で見かけるイメージがあるよな。どちらも比喩の一種であり、表現を豊かにする効果を持っている。比喩には他にも様々な表現が存在する。今回はそんな暗喩と隠喩の意味や例文、対義語やその他の比喩技法について、雑学大好きライターSadaieと一緒に解説していきます。

ライター/Sadaie

プログラマー、ヘルプデスク経験者。パソコン関係以外では文学、歴史が好き。それらの知識をわかりやすいかたちで配信したいと考えている。

 

暗喩と隠喩は比喩の一種

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暗喩と隠喩の読み方は、それぞれ「あんゆ」と「いんゆ」です。

国語の授業などで文学作品について説明するとき、「この表現は暗喩(または隠喩)」などと聞いたことはありませんか。

暗喩と隠喩は修辞法の一つである比喩の中の一種です。このままでは分かりづらいので、順を追って説明しましょう。修辞法とは文章やスピーチなどをよりよいものにするための技法のこと。その技法のーつである比喩とは「いいたいことを何かに例える」こと。比喩の一種である暗喩と隠喩は「例え方の一種」のことなのです。

暗喩と隠喩はどちらも同じで、別の言い方に過ぎない!

どちらも耳にする言葉なので意外に思われるかもしれませんが、実はこの二つの言葉に違いはなく、同一の意味になります。

暗喩(隠喩)とは?

暗喩(隠喩)は読んで字のごとく、比喩であることを隠した比喩のこと。「~のような」という形式を用いずにたとえた表現。喩という字は「たとえ」を意味します。

どちらも英語ではメタファー(metaphor)

暗喩(隠喩)は英語ではメタファー(metaphor)といいます。

文学作品の解説において比較的用いられることの多い英語であり、暗喩でも隠喩でもなくメタファーと呼ぶことも少なくありません。セットで覚えておくべき英単語でしょう。

メタファーの歴史

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メタファーの意義について初めて言及したのは古代ギリシアの哲学者アリストテレス(紀元前384年 ~ 紀元前322)。文学の構造や理論をまとめた著書「詩学」の中で彼は、メタファーは通常の言葉では伝えられないものを伝えられるものとし、そのメタファーを自在に使いこなす人は偉大であると述べています。

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