この記事では土偶と埴輪の違いについてみていきます。2つとも土製の遺物というイメージがあるよな。違いはずばり「製作年代」と「使用目的」のようですが、その外観からでも見分けが可能で、細分化されたそれぞれのデザインには異なった呼び方があるみたいです。今回はそんな原始から古代の日本文化を語るうえで欠かせない2つの遺物の違いや、世界の類例を史跡巡り大好きライターSadaieと一緒に解説していきます。

ライター/Sadaie

プログラマー、ヘルプデスク経験者。パソコン関係以外では文学、歴史が好き。それらの知識をわかりやすいかたちで配信したいと考えている。

製作された年代が大きく異なる!

image by iStockphoto

土偶と埴輪と聞くとどちらも素焼きの土製品を連想しますよね。似たような外観ですが、実はそれらの製作された年代には大きなひらきがあります。土偶の方が埴輪よりも遥か昔に製作されたものなのです。

縄文時代に製作された土偶

先輩の土偶の解説からしましょう。土偶は縄文時代に製作されています。

縄文時代とは紀元前14000年頃~紀元前10世紀。

最古の土偶といわれる粥見井尻土偶(かゆみいじりどぐう)や、相谷土偶(あいだにどぐう)は紀元前11000年前後に製作されたもの。

古墳時代に製作された埴輪

後輩の埴輪は古墳時代(大和時代)に製作されたもので、主に古墳から出土されます

古墳時代(大和時代)は3世紀中頃 –~7世紀頃。

3世紀後半の古墳から出土した都月型円筒埴輪(とつきがたえんとうはにわ)が最古の埴輪とされる。

土偶と埴輪の見分け方は?

その見分け方は、その外観に女性的特徴を見て取ることが出来るかです。女性的御特徴があれば土偶、なければ埴輪というのが大雑把な見分け方。ただし、埴輪の中にも女性を象ったものは存在するので注意が必要です。

土偶は女性を象ったもの

Dogū of Jōmon Venus.JPG
Takuma-sa - 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, リンクによる

土偶の多くは乳房やくびれを有し、妊娠した女性を象っています。

画像はその特徴を見て取れる典型、長野県の棚畑遺跡(たなばたいせき)から出土した国宝の土偶。通称「縄文のビーナス」。

また、土偶は体の一部が破壊されているものが多いのも特徴。出土の間に壊れてしまったのではなく、意図的に壊されていたとする説もあります。

\次のページで「埴輪は様々なものを象る」を解説!/

埴輪は様々なものを象る

太田市飯塚町出土 埴輪 挂甲の武人-2.JPG
Saigen Jiro - 東京国立博物館展示。撮影許可下でSaigen Jiroが撮影。, パブリック・ドメイン, リンクによる

土偶と違って埴輪には様々な形態があります。筒状のもの、人物、動物、家などを象ったもの。

画像は武人を象った国宝の埴輪で、群馬県出土の「埴輪挂甲武人」。挂甲(けいこう)とは古代の鎧のこと。縄文のビーナスと同様、どちらも写真では見たことがある人が多いのではないでしょうか。

それぞれの役割は?

土偶と埴輪の役割は全く異なります。土偶は豊穣祈願、埴輪は魔除けが目的です。

豊穣祈願の土偶

土偶の使用目的に関しては諸説あり、定かではないのですが一般的には豊穣祈願とされます。土偶は妊娠した女性を象ったものだと説明しましが、その意味は「生命の誕生」。 縄文人は土偶に安産や五穀豊穣を祈願したのです。

他に有力なのが、厄除けのまじないという説。土偶の外観の特徴に破損が多いと説明しましたが、ケガや病気の厄除けとして身代わりに破壊していたという説ですね。

魔除けの埴輪

埴輪は古墳から出土する遺物だと説明しました。古墳とは当時の権威者の墓のこと。人物、動物、家などの埴輪は葬送の儀式に似せて配置され、筒状の埴輪は古墳を囲うように配置されます(結界のような役割)。

土偶の種類は多い

土偶は年代によって外観上の特徴が少し異なっています。とても長い縄文時代のうち、中期、後期、晩期で大別して見てみましょう。

\次のページで「土偶が立体的になったのは縄文時代中期」を解説!/

土偶が立体的になったのは縄文時代中期

最古の土偶として名前を挙げた粥見井尻土偶や、相谷土偶は立像ではなく、顔や手足を省いた胸部だけのもの。土偶が立体になったのは縄文時代中期であり、同時に頭部と四肢も表現されるようになったのです。

縄文時代後期の土偶

縄文時代後期に主に関東地方及び東北地方南部で製作されたのが、顔がハート型になった「ハート形土偶」。しかし、なぜそのような形になったかはわかっていません。

縄文時代晩期の土偶

縄文時代晩期の特徴的な土偶として挙げられるのが、髪を結ったような「結髪土偶(けっぱつどぐう)」。

後期から晩期までの期間には、目にあたる部分がゴーグル上の「遮光器土偶」や仮面を被った「仮面土偶」なども製作されました。

埴輪の種類は2つに大別される

年代で外観が少し異なっている土偶と違い、埴輪は明確に「円筒埴輪」と「形象埴輪」に大別することができます。

円筒埴輪

円筒埴輪とは土管のような見た目をした埴輪。弥生時代後期の葬送の儀式時に壺を載せる台だったものが、古墳時代になって変化していきました。主に墳丘の周りや頂部に配置。

形象埴輪

形象埴輪とは名前の通り、何かを形どった埴輪。家形埴輪・器財埴輪・動物埴輪・人物埴輪に細分化可能。古墳の頂部や基壇状構造物に配置。人物埴輪は「埴輪挂甲武人」のように、その外観から当時の服装や生活様式などを垣間見ることができますね。人物埴輪の中には巫女を象ったものもある点が、女性型=土偶というのは大雑把な見分け方だと説明した理由です。

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世界の類例は?

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土偶と埴輪の類例は世界にも見て取れます。

土偶の類例としては、オーストリアのウィレンドルフのビーナスが挙げられるでしょう。旧石器時代後期の遺跡から発見され女性像で、その使用目的も豊穣祈願。

埴輪の類例としては、かの有名な中国の兵馬俑が挙げられるでしょう。形象埴輪と同様に兵士や馬を象っていますね。ただし、埋葬者とともに副葬されたものである点が埴輪との相違点。日本でいうところの副葬品は、銅鏡が挙げられます。

土偶と埴輪の違いは製作年代と役割!

縄文時代に女性を象り、豊穣を祈願して作られた土偶と、古墳時代に魔除けとして作られた埴輪。普段の生活の中ではなかなかお目にかかれない両者ですが、定期的に展示・催し物が開かれています。博物館に足を運び、歴史のミステリーに浸ってみるのもよいでしょう。土偶が破壊されている理由など、いつか明らかになって欲しいものですね。

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3分でわかる土偶と埴輪の違い!見分け方は?年代や役割、種類などを史跡巡り大好きライターがわかりやすく解説

この記事では土偶と埴輪の違いについてみていきます。2つとも土製の遺物というイメージがあるよな。違いはずばり「製作年代」と「使用目的」のようですが、その外観からでも見分けが可能で、細分化されたそれぞれのデザインには異なった呼び方があるみたいです。今回はそんな原始から古代の日本文化を語るうえで欠かせない2つの遺物の違いや、世界の類例を史跡巡り大好きライターSadaieと一緒に解説していきます。

ライター/Sadaie

プログラマー、ヘルプデスク経験者。パソコン関係以外では文学、歴史が好き。それらの知識をわかりやすいかたちで配信したいと考えている。

製作された年代が大きく異なる!

image by iStockphoto

土偶と埴輪と聞くとどちらも素焼きの土製品を連想しますよね。似たような外観ですが、実はそれらの製作された年代には大きなひらきがあります。土偶の方が埴輪よりも遥か昔に製作されたものなのです。

縄文時代に製作された土偶

先輩の土偶の解説からしましょう。土偶は縄文時代に製作されています。

縄文時代とは紀元前14000年頃~紀元前10世紀。

最古の土偶といわれる粥見井尻土偶(かゆみいじりどぐう)や、相谷土偶(あいだにどぐう)は紀元前11000年前後に製作されたもの。

古墳時代に製作された埴輪

後輩の埴輪は古墳時代(大和時代)に製作されたもので、主に古墳から出土されます

古墳時代(大和時代)は3世紀中頃 –~7世紀頃。

3世紀後半の古墳から出土した都月型円筒埴輪(とつきがたえんとうはにわ)が最古の埴輪とされる。

土偶と埴輪の見分け方は?

その見分け方は、その外観に女性的特徴を見て取ることが出来るかです。女性的御特徴があれば土偶、なければ埴輪というのが大雑把な見分け方。ただし、埴輪の中にも女性を象ったものは存在するので注意が必要です。

土偶は女性を象ったもの

Dogū of Jōmon Venus.JPG
Takuma-sa投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, リンクによる

土偶の多くは乳房やくびれを有し、妊娠した女性を象っています。

画像はその特徴を見て取れる典型、長野県の棚畑遺跡(たなばたいせき)から出土した国宝の土偶。通称「縄文のビーナス」。

また、土偶は体の一部が破壊されているものが多いのも特徴。出土の間に壊れてしまったのではなく、意図的に壊されていたとする説もあります。

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