この記事では「竹に油を塗る」について解説する。

端的に言えば「竹に油を塗る」の意味は「スラスラしゃべること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「竹に油を塗る」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち

雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。

「竹に油を塗る」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「竹に油を塗る」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「竹に油を塗る」の意味は?

「竹に油を塗る」には、次のような意味があります。

① (もともと滑りのよい竹に油を塗れば、いっそうよく滑る意から) 口が達者であるさまをたとえていう。ぺらぺらとよくしゃべる。立板に水。※天理本狂言・磁石(室町末‐近世初)「竹にあぶらをぬるやうに云たほどにまことかと思ふて」

② (若竹に油を塗るとつやつやと美しいところから) 若々しく色つやが美しいさまにたとえる。

出典 精選版 日本国語大辞典「竹に油」

この言葉は、「よくしゃべる、口が達者なこと」を意味する慣用表現です。「年が若くて美しいこと」をたとえて言う場合もありますので、こちらも覚えておきましょう。

「ペラペラしゃべる」と言ってしまうと、なんだか軽薄で中身がないように聞こえますが、この表現の場合は「達者である・流暢である」と褒め言葉に寄っていることを押さえてください。「若くて美しい」とセットにすれば、良い意味で使われることが覚えやすいはずです。

「竹」はもちろん植物の竹のこと。その形を想像しながら、今回の解説を読んでみてくださいね。

「竹に油を塗る」の語源は?

次に「竹に油を塗る」の語源を確認しておきましょう。この言葉は、室町時代の文献などに見ることができる表現です。ただそれよりもずっと昔、縄文時代からも、竹が製品として利用されていたことがわかっています。

用途は様々で、かごや家屋を作る材料になり、「竹」が有用なものとして考えられていたことは想像しやすいはず。その有益なイメージに、「弁が立つ」「美しい」という褒め言葉が合わされたと考えられるのが、この言葉なのです。

もし竹を見たことがない人は、ぜひ画像検索をしてみてください。表面がツヤツヤと美しく、まっすぐに生えているのがわかるでしょう。「竹を割ったような性格(まっすぐな性格)」という慣用表現も存在しますよ。

\次のページで「「竹に油を塗る」の使い方・例文」を解説!/

「竹に油を塗る」の使い方・例文

「竹に油を塗る」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

・江戸から続く業界最大手の剣道具を提供するショップの若社長は、竹に油を塗ったような話し方で店舗に商品を見に来た相手に好印象を与えている。

・京都で番傘や和傘、日傘などの様々なセレクト品を扱うあのお店は、持ち手に合わせたお手入れ、防水方法、模様のことを竹に油を塗るように教えてくれると大人気だ。

・武士の家の血を引くあの人は、まだ十五歳を過ぎただけなのに、常にゆっくり落ち着いた振る舞いが身についていて、容姿も竹に油を塗ったようだと言われている。

「話し方が上手い、すらすらしゃべる」「見た目が美しい」というニュアンスが伝わりますでしょうか。褒め言葉として使われることが多いため、好意的な感情を表していると考えることもできます。

「あの人は竹に油を塗ったようで、信用ができない」のように、悪い意味で使われることはまずありません。「竹」の持つ良いイメージを思い出してくださいね。

自分で使う場合、比喩表現のため「竹に油を塗ったように」と付けると伝わりやすいでしょう。「話し方」か「見た目」かについても、文脈からわかりにくければ補足するのが無難です。

「竹に油を塗る」の類義語は?違いは?

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「竹に油を塗る」の類義語は「立て板に水」「水もしたたる」がいいでしょう。それぞれについて、解説します。

「立て板に水」

これは「つっかえることなく、スラスラ話す」ことを意味する表現です。語源は言葉のまま、立てた板に水を流すこと。そうすると当たり前ですが、水は板の上に残らず流れてしまいますね。その様子を人が話す様子に例えた言い方です。

良い意味で使われることが多い言葉ですが、「(相手のことを考えずに)立て続けにものを言うこと」と、あまりよくない意味で使われることも。どんなにスムーズな話し方でも、状況をわきまえなければ悪くも捉えられてしまうもの。文脈からその意図を読み取れるように注意しましょう。

\次のページで「「水もしたたる」」を解説!/

国語博士と言われる彼は、漢字の読み方やことわざの意味を問われると、立て板に水ですぐに教えてくれる。

「水もしたたる」

これは「水もしたたるいい男・女」のように繋げ、「つやつやとして色気がある、美しい様子」を意味する慣用表現です。

もともとは歌舞伎の口上で使われたという説がありますが、歌舞伎役者の美しさを想像してみるとわかりやすいかもしれません。みずみずしく、きりっと端正な顔立ちを褒めたものなのでしょう。

余談ですが、「立て板に水」と「水」を使った表現が並びましたが、「水」が良いものとして使われるのは、水が綺麗な日本ならではないかとも考えてしまいました。

現在流行のアイドルは、水もしたたる美しい男女が多いのが特徴で、メディア映えも抜群だ。

「竹に油を塗る」の対義語は?

「竹に油を塗る」の対義語には「狆(ちん)くしゃ」を紹介します。

「狆くしゃ」

これは「(狆がくしゃみをしたように)可愛くない・不美人である」という意味の慣用表現です。狆は小型犬の一種のことで、まるで冗談のような表現ですがしっかりと辞書にも載っています。

画像検索をすると絶対に可愛いと思ってしまうでしょうが、これは「目・鼻・口が、(くしゃみをして)中央に寄ったような」と、顔のパーツのバランスについて形容している言葉です。なかなか独特の表現ですが、知識として覚えておくと面白いでしょう。

狆くしゃなんて言われる彼女だけれど、僕にとってはあの顔の作りが最高に可愛いのだ。

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「竹に油を塗る」の英訳は?

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「竹に油を塗る」の英訳は「rapid flow of speech」「good figure」で表すことができます。

「rapid flow of speech」「good figure」

「rapid flow」は直訳すれば「急流」のこと。これを人の話し方について使うことで、「流暢に、スラスラ話す」という意味なります。「rapid(急な)」から、「止めどなくしゃべる」のように、勢い込んでいるニュアンスも持たせることができるフレーズです。

「good figure」はそのまま「美しい容姿」の意味。「figure」は「姿、プロポーション」など、広い意味での美しさについて言うことができる言葉です。他にも様々な意味を持つ頻出単語のため、合わせて調べておきましょう。

He had a rapid flow of speech at the debate.
彼は討論会で竹に油を塗ったように話した。

She has a good figure for years.
彼女は何年経っても竹に油を塗ったような容姿をしている。

「竹に油を塗る」を使いこなそう

この記事では「竹に油を塗る」の意味・使い方・類語などを説明しました。色々な意味のある「竹」。それはこれまで日本でどのような使われ方・関わり方をしてきたのかということが密接に関係していることがわかる言葉でしたね。

今回の解説の中では、他にも「水」や「狆」などが登場していました。現在ではちょっと理解しにくいものもあるかもしれませんが、その違和感も含めて学べるポイントになります。色々なことを楽しみながら勉強していきましょう。

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国語言葉の意味

【慣用句】「竹に油を塗る」の意味や使い方は?例文や類語を元予備校講師がわかりやすく解説!

この記事では「竹に油を塗る」について解説する。

端的に言えば「竹に油を塗る」の意味は「スラスラしゃべること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「竹に油を塗る」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち

雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。

「竹に油を塗る」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「竹に油を塗る」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「竹に油を塗る」の意味は?

「竹に油を塗る」には、次のような意味があります。

① (もともと滑りのよい竹に油を塗れば、いっそうよく滑る意から) 口が達者であるさまをたとえていう。ぺらぺらとよくしゃべる。立板に水。※天理本狂言・磁石(室町末‐近世初)「竹にあぶらをぬるやうに云たほどにまことかと思ふて」

② (若竹に油を塗るとつやつやと美しいところから) 若々しく色つやが美しいさまにたとえる。

出典 精選版 日本国語大辞典「竹に油」

この言葉は、「よくしゃべる、口が達者なこと」を意味する慣用表現です。「年が若くて美しいこと」をたとえて言う場合もありますので、こちらも覚えておきましょう。

「ペラペラしゃべる」と言ってしまうと、なんだか軽薄で中身がないように聞こえますが、この表現の場合は「達者である・流暢である」と褒め言葉に寄っていることを押さえてください。「若くて美しい」とセットにすれば、良い意味で使われることが覚えやすいはずです。

「竹」はもちろん植物の竹のこと。その形を想像しながら、今回の解説を読んでみてくださいね。

「竹に油を塗る」の語源は?

次に「竹に油を塗る」の語源を確認しておきましょう。この言葉は、室町時代の文献などに見ることができる表現です。ただそれよりもずっと昔、縄文時代からも、竹が製品として利用されていたことがわかっています。

用途は様々で、かごや家屋を作る材料になり、「竹」が有用なものとして考えられていたことは想像しやすいはず。その有益なイメージに、「弁が立つ」「美しい」という褒め言葉が合わされたと考えられるのが、この言葉なのです。

もし竹を見たことがない人は、ぜひ画像検索をしてみてください。表面がツヤツヤと美しく、まっすぐに生えているのがわかるでしょう。「竹を割ったような性格(まっすぐな性格)」という慣用表現も存在しますよ。

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