今回は「重曹」と「ベーキングパウダー」の違いについてみていきます。どちらもお菓子の生地を膨らませる目的で使うイメージがあるよな。ですが、それぞれを使用して作ったお菓子の仕上がりを比べると、いろいろ違いがあるみたいです。
お菓子作りに欠かせない2つの材料の違いを、成分からしっかり確認しつつ、スイーツ大好きなライター田嶋と一緒に解説していきます。

ライター/田嶋あこ

家にいつも何かしら甘いものをストックしている、スイーツ大好きライター。最近は健康を意識するようになり、糖質控えめなスイーツ作りにハマっている。日頃の料理経験を活かして違いを分かりやすく解説していく。

そもそも重曹とベーキングパウダーって何?

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みなさんはお菓子やパンを作ったりしますか?レシピを見ると、「重曹」や「ベーキングパウダー」という材料が書かれていることもあるかと思います。

どちらも生地を膨らませる目的で使われるものではありますが、「違いは?」と聞かれると難しいですよね。まずは、それぞれがどんなモノなのか一緒に見ていきましょう。

重曹:炭酸水素ナトリウム

重曹は、炭酸水素ナトリウムという名前でも呼ばれています。日本では昔、炭酸水素を「重炭酸」・ナトリウムを「曹達(ソーダ)」と呼んでいました。この2つを略した呼び方として、炭酸水素ナトリウムが「重曹」と呼ばれるようになったのです。

汚れを浮かせて分解する作用があるので、料理だけでなく掃除に使われたりすることも。

ただ、食用の重曹と掃除などに使う重曹は入っている不純物の量が違います。お菓子やパン作りに使うときは、必ず食用の重曹を使いましょう。

ベーキングパウダー:ふくらし粉

ベーキングパウダーはふくらし粉とも呼ばれます。名前を見てもわかる通り、生地を膨らませる目的で作られた粉です。

サクサク食感を出すため、天ぷらの衣に使われることもありますが、基本的にはお菓子やパンの生地を膨張させるためのものと言えます。

重曹と似ている材料ではありますが、ベーキングパウダーは掃除に使ったりされることはありません。

重曹とベーキングパウダーの違いを徹底チェック!

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重曹とベーキングパウダーを、成分・見た目・使い方からさらに詳しくチェックしていきましょう。深く知れば違いもグッとわかりやすくなりますよ!

\次のページで「重曹とベーキングパウダーの「成分」の違い」を解説!/

重曹とベーキングパウダーの「成分」の違い

重曹とベーキングパウダーの成分をそれぞれ見ていきましょう。

重曹
重曹の成分は化学名でいうと炭酸水素ナトリウム。
食用の場合、99%以上が炭酸水素ナトリウムでできている。
炭酸水素ナトリウムは、水や人間の体内(血液や唾液など)にも含まれている天然ものの物質。
口に入れても害はないが、ごく弱いアルカリの性質を持っている。

ベーキングパウダー
ベーキングパウダーは様々な成分が配合されている。
炭酸ガス発生剤:炭酸水素ナトリウム(重曹)
酸性剤:酸性ピロリン酸ナトリウム・酒石酸水素カリウム・リン酸カルシウム
遮断剤:小麦粉・コーンスターチ
焼き物用や揚げ物用、蒸し物用など用途によって成分の組み合わせが変わる。

成分を比較すると、重曹は天然の物でベーキングパウダーは人によって作られたものという違いが見えてきますね。

また、ベーキングパウダーは成分に「硫酸アルミニウム(ミョウバン)」が含まれているものがあります。決定的な証拠がある訳ではありませんが、硫酸アルミニウムは健康に影響を及ぼすかもしれないと懸念されている成分です。

世界保健機関(WHO)や日本の厚労省では、大量に摂取しなければ大丈夫という考えを発表しています。

本当に体に悪いのかは今のところ分かりませんが、気になる方はアルミフリーのベーキングパウダーを選んでみてください。

重曹とベーキングパウダーの「見た目」の違い

重曹とベーキングパウダーの見た目に違いはあるのか気になりますね。両方とも色が白色で同じように感じますが、よく見ると粒子が違います。

重曹は粒は小さめで、丸い形。感触はベタつかずサラサラとしています。見た目は砂糖に近いです。

ベーキングパウダーは粒がきめ細かく、しっとりした感触。見た目は薄力粉によく似ています。

重曹とベーキングパウダーの「使い方」の違い

重曹もベーキングパウダーも、炭酸ガス(二酸化炭素)を発生させて生地を膨らませています。ただ、生地を膨らませるポイントはそれぞれ違うのです。何をしたら膨らむのか、さっそく確認してみましょう。

重曹を使って生地を膨らませるポイントになるのは、基本的に火。加熱すると炭酸ガスが発生する仕組みです。また、重曹は弱アルカリ性のため酸性の食品(レモンや蜂蜜やヨーグルト)にも反応します。より膨らませたい場合は、生地に加えてみるのもいいでしょう。

ベーキングパウダーを膨らませるポイントは水分と火です。まず、水や牛乳などの液体に入れた瞬間に炭酸ガスが発生します。そのあと加熱した際にも発生するので、炭酸ガスが発生するポイントは計2回。重曹より回数が多いですね。

ベーキングパウダーの方が効率よく炭酸ガスを発生させるので、より簡単にふんわり膨らませることができますよ。

重曹とベーキングパウダーの共通点は、炭酸ガスの発生を利用して生地を膨らませるという点と見た目が白い粉である点。

大きく違うところは、まず成分自体が天然のものか人によって作られたものか。そして炭酸ガスが発生するタイミングや回数です。

自然の中にあった重曹のメリットとデメリットを把握したうえで、きれいに生地を膨らませることを重視して作られたものがベーキングパウダー。

このことから、ベーキングパウダーは重曹の改良版のようなものということがわかりますね。

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重曹とベーキングパウダーはお菓子作りで代用できる?

重曹とベーキングパウダーの違いを調べるとき、「お菓子作りで代用できるの?」と疑問をもっている方が多いと思います。確かに、使用用途が似ているので代用できそうですよね。実際どうなのか一緒に確認してみましょう。

「ふくらませる」という目的では代用が可能

重曹とベーキングパウダーは、生地を膨らませることだけを重視するのであれば代用可能です。しかし、成分が異なるので見た目や味には違いがでてきます。

まずは焼き上がりの色。重曹はアルカリの性質を持っているので、小麦粉の「フラボノイド色素」という成分に反応します。そのため、生地が黄色っぽくなったり焼き色が濃い仕上がりに。また、味も独特な苦味や塩気を感じる場合があります。

ベーキングパウダーは、生地がアルカリ性になることを防ぐ成分が入っているので無味無臭。焼き上がりの見た目や味に影響はありません。

この特徴を理解したうえで代用しないと、「失敗した…」と残念な結果になる可能性があります。注意しましょう!

代用する場合のそれぞれの使用量

重曹とベーキングパウダーの炭酸ガスの発生量は異なります。「ベーキングパウダーが小さじ1と書いてあるから、重曹も小さじ1」という訳にはいきません。炭酸ガスの量を合わせることが必要です。

例えば、薄力粉100gに対する分量を比べてみましょう。この場合、重曹は約1g・ベーキングパウダーは約4gになります。

ベーキングパウダーと同じ量で重曹を入れてしまうと、後味もかなり苦くなるので気をつけましょう。

重曹とベーキングパウダーそれぞれでパンケーキを作ったときの違い

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もっと重曹とベーキングパウダーの違いを知るために、それぞれを使用してパンケーキを作ったらどうなるかを見ていきましょう。

重曹:もっちり食感のパンケーキ

重曹を使ってパンケーキを作ると、もっちりした食感になります。断面を見ると気泡にムラがあり、焼き色も濃いです。膨らみ方も、横に広がっているような印象を受けます。食べると黒糖のような後味が。見た目も味も、どら焼きの皮の部分に似た仕上がりになります。

\次のページで「ベーキングパウダー:ふわふわ食感のパンケーキ」を解説!/

ベーキングパウダー:ふわふわ食感のパンケーキ

ベーキングパウダーを使って作ったパンケーキは、ふわふわな食感に。ベーキングパウダーはムラなく炭酸ガスが発生するように作られているので、断面もきれいです。縦方向に膨らむので、重曹で作ったパンケーキより厚みを感じます。味に独特なクセもなく、バターなどの素材の風味が際立つ仕上がりに。

似たような材料:ドライイーストとは?

パン作りでは必ずと言っていいほど登場する、ドライイースト。この材料も、生地を膨らませる役割があるという点では、重曹やベーキングパウダーに似ていますね。しかしドライイーストで生地を膨らませるには、発酵という工程が必要になります。

一次発酵の工程
捏ねた生地に霧吹きで水分をかけ、ラップをして暖かい場所へ。
40分くらいで、イーストという微生物が生地の中に含まれる糖分を分解して、炭酸ガスとアルコールが発生する。

二次発酵の工程
再び生地を捏ねて炭酸ガスを逃し、新しい空気を取り込む。
30分〜1時間ほどくらいで、生地に溶けた炭酸ガスを元に新しい炭酸ガスが発生する。

ドライイーストで生地を膨らませる場合、2回に分けて発酵させなければなりません。その点、重曹やベーキングパウダーは発酵しなくても生地が膨らむので楽ですね。また、ドライイーストを使うと甘みが少ない生地になります。お菓子作りに使用する場合は、想像していたものと違う仕上がりになる可能性が高いです。

お菓子に求める食感・風味で使い分けよう

重曹とベーキングパウダーは、作ったあとにお菓子の見た目・食感・風味に大きく違いがでてきます。

重曹はどら焼きなど、素朴な味の和菓子にぴったり。重曹に含まれる塩分が甘さを引き立ててくれますよ。また、チョコレート入りの生地など、色が濃くでても気にならないお菓子に使うのもいいでしょう。ベーキングパウダーは味や焼き色に影響を与えないので、ケーキなどの洋菓子作りに向いています。

生地を膨らませるという同じ目的で使われることが多いですが、お菓子に求める食感・風味によって使い分けるのがおすすめです。

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雑学食べ物・飲み物

重曹とベーキングパウダーの違いって?お菓子作りで代用できる?ドライイーストとは?スイーツ好きライターがわかりやすく解説!

今回は「重曹」と「ベーキングパウダー」の違いについてみていきます。どちらもお菓子の生地を膨らませる目的で使うイメージがあるよな。ですが、それぞれを使用して作ったお菓子の仕上がりを比べると、いろいろ違いがあるみたいです。
お菓子作りに欠かせない2つの材料の違いを、成分からしっかり確認しつつ、スイーツ大好きなライター田嶋と一緒に解説していきます。

ライター/田嶋あこ

家にいつも何かしら甘いものをストックしている、スイーツ大好きライター。最近は健康を意識するようになり、糖質控えめなスイーツ作りにハマっている。日頃の料理経験を活かして違いを分かりやすく解説していく。

そもそも重曹とベーキングパウダーって何?

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みなさんはお菓子やパンを作ったりしますか?レシピを見ると、「重曹」や「ベーキングパウダー」という材料が書かれていることもあるかと思います。

どちらも生地を膨らませる目的で使われるものではありますが、「違いは?」と聞かれると難しいですよね。まずは、それぞれがどんなモノなのか一緒に見ていきましょう。

重曹:炭酸水素ナトリウム

重曹は、炭酸水素ナトリウムという名前でも呼ばれています。日本では昔、炭酸水素を「重炭酸」・ナトリウムを「曹達(ソーダ)」と呼んでいました。この2つを略した呼び方として、炭酸水素ナトリウムが「重曹」と呼ばれるようになったのです。

汚れを浮かせて分解する作用があるので、料理だけでなく掃除に使われたりすることも。

ただ、食用の重曹と掃除などに使う重曹は入っている不純物の量が違います。お菓子やパン作りに使うときは、必ず食用の重曹を使いましょう。

ベーキングパウダー:ふくらし粉

ベーキングパウダーはふくらし粉とも呼ばれます。名前を見てもわかる通り、生地を膨らませる目的で作られた粉です。

サクサク食感を出すため、天ぷらの衣に使われることもありますが、基本的にはお菓子やパンの生地を膨張させるためのものと言えます。

重曹と似ている材料ではありますが、ベーキングパウダーは掃除に使ったりされることはありません。

重曹とベーキングパウダーの違いを徹底チェック!

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重曹とベーキングパウダーを、成分・見た目・使い方からさらに詳しくチェックしていきましょう。深く知れば違いもグッとわかりやすくなりますよ!

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