今回は「グリコーゲン」というキーワードについて学習していこう。

グリコーゲンは我々の体内にもたくさん存在している成分です。生体内で一体どのような役割を果たしているのでしょう?この機会に、グリコーゲンに関する幅広い知識を総ざらいしていこうじゃないか。

大学で生物学を学び、現在は講師としても活動しているオノヅカユウに解説してもらおう。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

グリコーゲンとは?

グリコーゲンは、たくさんのグルコースがグリコシド結合という方法でつながった、大きな分子です。糖原質(とうげんしつ)や動物デンプンなどとよばれることもあるようですね。

グリコーゲンは、私たちの体内でグルコースを材料にしてつくられます。逆に、グリコーゲン中の結合を切って、ばらばらのグルコースの状態に戻すこともできるんです。これは、体内でのグリコーゲンの”役割”に大きく関係してくるポイントですので、少し詳しくみていきましょう。

そもそもグルコースとは?

グルコースは糖の一種であり、私たちの細胞がエネルギー源として使うことのできる大切な物質です。ブドウ糖という名前でも呼ばれることもあります。

細胞ではミトコンドリアがグルコースを使い呼吸(細胞呼吸)をおこなうことで、生命活動に必要なエネルギーを生み出しているのです。

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食事で体内に取り入れたグルコースは血液にのって全身をめぐります。血液中のグルコース濃度(血糖値)が低くなると、細胞でエネルギーをつくり出すことができず、さまざまな不調が現れるのです。

とくに脳。血糖値の低下によってぼーっとしてきたり、意識がもうろうとしたり…命に危険が及ぶ状態になってしまいます。

image by iStockphoto

血液中のグルコースの量が減少しすぎないよう、適切に保つことが命をつなぐために必要といえます。

グリコーゲンでグルコースを貯蔵する

私たちの体がグリコーゲンをつくりだすのは、このグルコースを貯蔵するためです。血液中に十分な量のグルコースがある時、体内ではグルコースからグリコーゲンを積極的に合成します。

反対に、血液中のグルコースが減ってくると、グリコーゲンを分解し、グルコースとして血液に放出されていくのです。

\次のページで「グリコシド結合」を解説!/

そうですね!いざというときの蓄えとして、グリコーゲンをつくっておくのです。”貯金”というイメージは、いい得て妙かもしれません。

グリコシド結合

グリコーゲンからグリコーゲンをつくる際には、グリコシド結合という結合が行われます。2つの糖(炭水化物)の分子の間から水分子がとれることで、糖がつながるのです。

分子の間から簡単な分子がとれることで新たな結合が形成される現象は縮合(しゅくごう)とよばれます。また、今回の場合は水分子がとれて結合ができているので、脱水反応の一種ともみなせるのです。

ということで、グリコシド結合は脱水縮合とよばれる種類の結合なんですよ。

グリコーゲンがたくさんある場所

私たちの体内では、特に肝臓筋肉の細胞にグリコーゲンが多く含まれています。

肝臓は、私たちの体内でも最大級の臓器です。体に害を及ぼすような毒物の分解や、熱の発生など様々な役割をもっています。その多様な役割の一つが、血糖量の調節。グルコースからつくられたグリコーゲンのうち、少なくない量がこの肝臓に貯蔵されています。

image by Study-Z編集部

もうひとつ、忘れてはいけないのが筋肉です。体のあちこちにある骨格筋にも、グリコーゲンが貯蔵されます。

じつは、全身の筋肉に散らばるグリコーゲンをすべて集めると、肝臓に貯蔵されているものよりもずっと多くの量になるのだそうです。

\次のページで「グリコーゲンの合成・分解に関わるホルモン」を解説!/

グリコーゲンの合成・分解に関わるホルモン

血中のグルコースからグリコーゲンを合成すると、血糖値は低下します。逆に、血糖値が低いときにはグリコーゲンを分解してグルコースにする…これらの反応を促進するホルモンがいくつか知られているのです。高校の生物学でも学習する内容なので、確認しておきましょう。

グリコーゲンの合成を促すホルモン

グリコーゲンの合成を促すホルモンにインスリンがあります。インスリンはすい臓のランゲルハンス島B細胞から分泌されるホルモンです。

食後など、血糖値の高い状態になると分泌され、豊富なグルコースをもとにグリコーゲンを合成するはたらきが促進されます。

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グリコーゲンの分解を促すホルモン

血糖値が低い状態になると、グルカゴンアドレナリンなどのホルモンが分泌され、グリコーゲンの分解が促進されます。

グルカゴンは、すい臓のランゲルハンス島A細胞から分泌されるホルモンです。前述のインスリンを分泌するB細胞とともに、ランゲルハンス島とよばれる細胞のまとまりをつくっているのですが、それぞれのホルモンの作用は正反対というのが面白いですよね。

アドレナリンは副腎の髄質から分泌されるホルモンです。血糖値が低くなっているときだけでなく、興奮状態にあるときにも分泌が促されます。

そうですね。「体内環境の調節」のしくみとして、ホルモンの学習をします。体内の血糖量調節に関係しているホルモンとして、以上のような名前を覚えなくてはいけません。

インスリンがうまく作れなかったり、インスリンが肝臓や筋肉でうまく効かなくなったりすると、グルコースがいつまでもグリコーゲンに合成されず、血糖値の高い状態が続きます。これが糖尿病ですね。

\次のページで「スポーツ選手の行う「グリコーゲンローディング」」を解説!/

スポーツ選手の行う「グリコーゲンローディング」

スポーツをしている人であれば、グリコーゲンローディング(またはカーボローディング)という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか?

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グリコーゲンローディングとは、試合や大会のある日の少し前から糖質を積極的に摂取することで、筋肉にグリコーゲンを蓄えておく手法です。筋肉にたくさんのグリコーゲンがあれば、試合や大会の最中にスタミナ切れを起こしにくくなる効果が期待できます。

とくに持久力が必要な運動では、パフォーマンスの向上を期待して、グリコーゲンローディングを目的とした食事メニューを考えることがあるんですよ。

グリコーゲンをうまく利用したい

私たちが四六時中ご飯を食べ続けなくて済むのは、摂取したグルコースをグリコーゲンとして貯蔵できるためです。とくに運動をよくする人は、グルコースとグリコーゲンの関係を頭に入れて、グリコーゲンローディングなどのテクニックを取り入れてみると良いでしょう。

グリコーゲンは私たちの生命をつなぐために必要な成分ではありますが、くれぐれも甘いもののとりすぎには注意してくださいね!

イラスト提供元:いらすとや

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体の仕組み・器官理科生物

グリコーゲンとは?グルコースとの違いや肝臓との関係・血糖値調節に重要な物質を現役講師がわかりやすく解説します

今回は「グリコーゲン」というキーワードについて学習していこう。

グリコーゲンは我々の体内にもたくさん存在している成分です。生体内で一体どのような役割を果たしているのでしょう?この機会に、グリコーゲンに関する幅広い知識を総ざらいしていこうじゃないか。

大学で生物学を学び、現在は講師としても活動しているオノヅカユウに解説してもらおう。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

グリコーゲンとは?

グリコーゲンは、たくさんのグルコースがグリコシド結合という方法でつながった、大きな分子です。糖原質(とうげんしつ)や動物デンプンなどとよばれることもあるようですね。

グリコーゲンは、私たちの体内でグルコースを材料にしてつくられます。逆に、グリコーゲン中の結合を切って、ばらばらのグルコースの状態に戻すこともできるんです。これは、体内でのグリコーゲンの”役割”に大きく関係してくるポイントですので、少し詳しくみていきましょう。

そもそもグルコースとは?

グルコースは糖の一種であり、私たちの細胞がエネルギー源として使うことのできる大切な物質です。ブドウ糖という名前でも呼ばれることもあります。

細胞ではミトコンドリアがグルコースを使い呼吸(細胞呼吸)をおこなうことで、生命活動に必要なエネルギーを生み出しているのです。

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食事で体内に取り入れたグルコースは血液にのって全身をめぐります。血液中のグルコース濃度(血糖値)が低くなると、細胞でエネルギーをつくり出すことができず、さまざまな不調が現れるのです。

とくに脳。血糖値の低下によってぼーっとしてきたり、意識がもうろうとしたり…命に危険が及ぶ状態になってしまいます。

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血液中のグルコースの量が減少しすぎないよう、適切に保つことが命をつなぐために必要といえます。

グリコーゲンでグルコースを貯蔵する

私たちの体がグリコーゲンをつくりだすのは、このグルコースを貯蔵するためです。血液中に十分な量のグルコースがある時、体内ではグルコースからグリコーゲンを積極的に合成します。

反対に、血液中のグルコースが減ってくると、グリコーゲンを分解し、グルコースとして血液に放出されていくのです。

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