今回のテーマは「空腸と回腸の違い」です。

腸の名前というのは知っていても、それぞれ腸のどの部分でどんな役割をはたしているのか知っているか?似たような名前の腸ですが、しっかり役割分担されているんだぜ。 そこで今回は空腸・回腸の解剖学的な違いや、機能面での違いなどを比較しながら見ていきたい。

大学で生物を学び、現在は食品メーカーの研究員であるライター、ハナイグチに解 説してもらおう。

ライター/ハナイグチ

大学で生物学を学び、現在は食品メーカーの研究員として勤務している。

サプリメントの広告を見るとついつい有効成分の含有量や作用機序を調べてしまう。

空腸と回腸の違いは消化・吸収担当か免疫担当か!

空腸と回腸の違いは消化・吸収担当か免疫担当か!

image by Study-Z編集部

空腸と回腸というのは小腸の一部です。小腸はとても長くて、まっすぐに伸ばすと5~7mもあるんですよ。そんな小腸は3つの部位にわかれていて、上から25cm程度を十二指腸、続いて2/3程度を空腸、最後の3/5程度を回腸と呼びます。このうち空腸と回腸は腸間膜という血管、神経およびリンパ管の集合体に包まれているんです。

腸と回腸の特徴を端的に言うと、消化・吸収をメインに行うのが空腸、免疫反応をメインに行うのが回腸です

空腸と回腸の解剖学的な違い

image by iStockphoto

空腸と回腸にはそれぞれの役割に適した解剖学的な違いがあるんです。

結論から言うと、空腸は輪状ひだと平滑筋が発達しており、回腸ではパイエル板が発達しています。

それぞれがどのような構造のものなのか、どのような役割を担うものなのか、詳しく見ていきましょう。

空調の特徴:輪状ひだと平滑筋

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小腸の役割として一番最初にイメージするのは消化・吸収ですよね。小腸では食べた栄養素の約90%が吸収されると言われています。つまり、この消化・吸収の役割をメインに行っているのが空腸なんですね。

空腸の解剖学的な特徴としては表面積が大きいこと、内容物を押し出す筋肉が発達していること、の2つです。

小腸には「輪状ひだ」と呼ばれるたくさんのひだがあり、輪この状ひだの表面には絨毛と呼ばれる突起があります。それだけではなく、絨毛を構成している上皮細胞には、さらに微絨毛と呼ばれる細かい突起があるんです。

\次のページで「回腸の特徴:パイエル板」を解説!/

はい。このような構造をとることで表面積を増やして内容物と接する面積を増やすことで、効率的に消化・吸収を行うことができるんです。

また、輪状ひだの下の部分には平滑筋が存在し、この筋肉が収縮することで内容物を運ぶ役割を担っています。空腸ではこの平滑筋が発達しているため、空腸の中身はすぐに押し出されてしまって空っぽであることが多いんですね。このような特徴から「空」腸という名前がつけられています。

回腸の特徴:パイエル板

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回腸は空腸と異なり輪状ヒダや平滑筋はそこまで発達していません。その代わり、回腸にはパイエル板というリンパ小節が集合した器官が存在します

腸管免疫という言葉を聞いたことはあるでしょうか?実は小腸は消化吸収を担うだけでなく、免疫反応を行う重要な器官でもあるのです。全身の免疫細胞のうち70%が腸に存在するとも言われています。

そうなんです。腸管には食物と一緒に細菌やウイルスが入ってきてしまいます。それらを退治するために免疫反応を起こす必要があるわけです。その役割を担っているのが回腸に存在するパイエル板というわけですね。

空腸と回腸の主な病気とは

空腸と回腸に共通する病気としてはクローン病や小腸異常細菌増殖症(SIBO)などがあげられます。

それぞれ簡単に説明すると、クローン病は消化管の粘膜である腸粘膜に炎症が起きることで、腹痛や下痢、血便や肛門付近の痛みおよび腫れといった症状が現れます。クローン病ははっきりした原因はわかっておらず、根治も難しいため難病指定されています。

次にSIBOですが、これは名前の通り何らかの原因で小腸の細菌が異常に増えてしまう病気です。お腹の張りや、便秘・下痢、栄養吸収の低下といった症状が現れます。

空腸の病気:空腸がん

空腸がんは小腸全体の35%を占めていると言われています。空腸は上から調べる胃カメラでも、下から調べる大腸カメラでも届きにくい位置にあるため、空腸がんは大変発見されにくいです。

回腸の病気:回腸がん

回腸がんは小腸全体の20%を占めています。回腸も大腸に近い部分以外は空腸と同様、検査で発見されにくいです。

小腸はこのように検査で病気を発見することが難しいため、「暗黒の臓器」とも呼ばれています。

消化管の種類について復習しよう

Digestive system diagram ja.svg
Mariana Ruiz, Jmarchn, (translated by Hatsukari715) - Digestive system diagram en.svg, パブリック・ドメイン, リンクによる

消化管は口から始まって食道、胃、小腸、大腸、肛門まで1本の管として繋がっています。

このうちメインの消化器官である胃、小腸、大腸について復習しましょう。

消化というのは簡単に言うと大きなものを小さく分解するということです。それぞれの器官はどのように食物を分解し、吸収しているのでしょうか。

胃の主な働きは食物をとりあえず貯蔵すること、大まかに分解(消化)することです。

液体はすぐに十二指腸に送りますが、固形物を一気に十二指腸へ送ってしまうと小腸での消化が間に合わなくなってしまうので、胃に貯蔵しておいたものをタイミングを見計らって小腸へ送り出します。

大まかな消化としては胃酸やタンパク分解酵素であるペプシンで分解するほか、胃の筋肉で内容物をかき混ぜることで粥上に消化するのです

\次のページで「小腸」を解説!/

小腸

小腸では胃酸によって酸性に傾いた内容物をアルカリ性の膵液と混ぜることによって中和します。そしてより細かく消化する作業を行うのです。

消化は消化管の管腔内で行われる管腔内消化と、粘膜上に分泌された酵素でさらに細かく分解する膜消化があります。そうして細かくなった栄養素の殆んどを小腸で吸収してしまうんですね。

大腸

大腸の主な役割は吸収しきれない不要な内容物を便として固めて排泄することです。便の滑りをよくするため、粘液を分泌しています。

さらに大腸には大量の腸内細菌が存在し、この菌の種類や組み合わせが健康に大きく影響することが最近わかってきているんです。消化管としての役割を超えた、とても興味深い臓器なんですよ。

空腸と回腸は小腸の一部!

よく似た用語ですがそれぞれの特徴をきちんと捉えて学習しましょう。

生物の器官など特定の機能をもつものについては構造と役割を結び付けて覚えるととても頭に入りやすいです。

また、消化器官のように一連の流れがあるものについては、大きなものを「胃」で消化し、ある程度小さくなったものを「小腸」でさらに消化・吸収した後、最後まで吸収されなかったものが「大腸」に流れる、といったように一つのストーリーとして理解した方が個別に覚えるよりもわかりやすく、楽しく学習できると思います。

" /> 3分でわかる空腸と回腸の違い!場所や役割・特徴・病気の種類など小腸の種類について食品メーカー研究員がわかりやすく解説 – Study-Z
体の仕組み・器官理科生物

3分でわかる空腸と回腸の違い!場所や役割・特徴・病気の種類など小腸の種類について食品メーカー研究員がわかりやすく解説

今回のテーマは「空腸と回腸の違い」です。

腸の名前というのは知っていても、それぞれ腸のどの部分でどんな役割をはたしているのか知っているか?似たような名前の腸ですが、しっかり役割分担されているんだぜ。 そこで今回は空腸・回腸の解剖学的な違いや、機能面での違いなどを比較しながら見ていきたい。

大学で生物を学び、現在は食品メーカーの研究員であるライター、ハナイグチに解 説してもらおう。

ライター/ハナイグチ

大学で生物学を学び、現在は食品メーカーの研究員として勤務している。

サプリメントの広告を見るとついつい有効成分の含有量や作用機序を調べてしまう。

空腸と回腸の違いは消化・吸収担当か免疫担当か!

空腸と回腸の違いは消化・吸収担当か免疫担当か!

image by Study-Z編集部

空腸と回腸というのは小腸の一部です。小腸はとても長くて、まっすぐに伸ばすと5~7mもあるんですよ。そんな小腸は3つの部位にわかれていて、上から25cm程度を十二指腸、続いて2/3程度を空腸、最後の3/5程度を回腸と呼びます。このうち空腸と回腸は腸間膜という血管、神経およびリンパ管の集合体に包まれているんです。

腸と回腸の特徴を端的に言うと、消化・吸収をメインに行うのが空腸、免疫反応をメインに行うのが回腸です

空腸と回腸の解剖学的な違い

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空腸と回腸にはそれぞれの役割に適した解剖学的な違いがあるんです。

結論から言うと、空腸は輪状ひだと平滑筋が発達しており、回腸ではパイエル板が発達しています。

それぞれがどのような構造のものなのか、どのような役割を担うものなのか、詳しく見ていきましょう。

空調の特徴:輪状ひだと平滑筋

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小腸の役割として一番最初にイメージするのは消化・吸収ですよね。小腸では食べた栄養素の約90%が吸収されると言われています。つまり、この消化・吸収の役割をメインに行っているのが空腸なんですね。

空腸の解剖学的な特徴としては表面積が大きいこと、内容物を押し出す筋肉が発達していること、の2つです。

小腸には「輪状ひだ」と呼ばれるたくさんのひだがあり、輪この状ひだの表面には絨毛と呼ばれる突起があります。それだけではなく、絨毛を構成している上皮細胞には、さらに微絨毛と呼ばれる細かい突起があるんです。

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