この記事では音読みと訓読みの違いについてみていきます。どちらも漢字や熟語の読み方であることは分かるかと思う。とはいえ漢字や熟語が"読めた"としても、それが音読みなのか訓読みなのかの区別や判断は、受験勉強や学年が上がった人でも悩むでしょう。

両者の違いは言葉を理解するうえで欠かせなのですが、実は例外も多く意外に複雑な内容なんです。そこで今回は、それぞれの歴史や成り立ちを確認しつつ例文を交えながら、小説家兼ライターのさらささらと一緒に解説していきます。

ライター/さらささら

少女向け小説家兼ライター。趣味は神社や名所巡り。お話のネタ探しのために様々な雑学を調べています。

「音読み」と「訓読み」の違いとは?

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小学生や子どもが最初に習う漢字に「一、二、三」がありますが、数をかぞえる時など「いち、にい、さん」以外に「ひとつ、ふたつ、みっつ」とも言いませんでしたか?熟語に目を向けてみても、「登山」は「山登り」と同じ漢字や意味を持ちながらも、それぞれ「とざん」「やまのぼ(り)」と違った発音になるのは不思議ですよね。

つまりこれが、「音読み」と「訓読み」なのです。

ここからは「音読み」はカタカナ(片仮名)、「訓読み」をひらがな(平仮名)で読みがな(読み仮名)表記させていただきます。

「音読み」は中国語の発音がもとに

私たち日本人が使う漢字は、お隣の中国大陸から伝わってきた文字です。そして、ひとつひとつの漢字には、中国での読み方(発音)がありました。例えば、「山」と言う漢字は中国語で「Shān(シャン)」と発音し、これに似せた日本語の「サン」がそのまま「音読み」というわけです。

「訓読み」は漢字の意味を日本語に

「音読み」が漢字の中国発音であることは分かりましたね。こうして中国から伝来した漢字の中でも、同じ意味(情報)を持つものに日本語の読みをあてたものが「訓読み」なのです。

例えば、中国語の「愛(アイ)」に近い意味、これが日本では「まな」や「いと(しい)」などでした。そのため日本語で「愛」の音読みは「アイ」、訓読みは「まな」「いと(しい)」の他に「う(い)」「お(しむ)」「め(でる)」「かな(しい)」となったのです。

辞書などで「音読み」をカタカナ表記にするのも、中国語が英語(英語訳)などと同じ外国語であることが理由となります。

それぞれどんな使い方をするの?

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日本の観光地「浅草(あさくさ)」には、赤い大提灯で知られる「浅草寺(センソウジ)」がありますね。実は、お寺(=仏教)は中国伝来の宗教なので、日本の地名である「浅草(あさくさ)」を「音読み」して「センソウ(ジ)」と呼ばれています。一方、隣りにある「浅草神社(あさくさじんじゃ)」などは、日本古来の神様を祀った神社なので「訓読み」が多いわけです。

次の項目では「音読み」「訓読み」の見分け方などを解説します。

\次のページで「それだけで意味が分かるか・分からないか」を解説!/

それだけで意味が分かるか・分からないか

漢字が中国由来であることは前述しましたね。そのため、それだけでは意味が分からない読み方が「音読み」、反対にそれだけで意味の分かる読み方が「訓読み」です。

※これらのやり方は判断基準の一部であり、すべてに当てはまるわけではありません。そのため、例文項目に記載したいくつかの【例外】を参照して下さい。

・それだけでは意味の分からない読み方は「音読み」、分かる読み方は「訓読み」。
「山」=サン:意味が分からない…(音読み)
    やま:意味が分かる…………(訓読み)
「犬」=ケン:意味が分からない…(音読み)
    イヌ:意味が分かる…………(訓読み)

【例外】
・意味は分かるが実は「音読み」。
「客」=キャク
「絵」=エ
「本」=ホン
「線」=セン…など。

・意味は分かりにくいが実は「訓読み」。
「場」=ば
「音」=ね
「馬」=ま
「身」=み…など。

訓読みは送りがなが付く

「音読み」と「訓読み」の見分け方に「送りがな(送り仮名)」があります。送りがなとは、日本語としての意味が分かるようにするため付けられた文字こと。そのため、送りがなが付くのが「訓読み」、送りがなが付かないのが「音読み」です。

また、「動詞」や「形容詞」などを活用するため、送りがなが必要となるのが「訓読み」とも考えます。

・送りがなが付かないのは「音読み」、付くのは「訓読み」。
「熱」=ネツ……………音読み
    あつ(い)…訓読み

・動詞や形容詞になりにくのは「音読み」。
「読」 =ドク…………音読み
「読む」=よ(む)…訓読み

【例外】
送りがながサ行変格活用の場合は「音読み」となります。
「訳す」 =ヤク(す)
「愛する」=アイ(する)
「生じる」=ショウ(じる)

音読みは3文字以下、訓読みは4文字以上

中国語では漢字1文字は1音節で発音されます。こうした由来により、漢字1文字の「音読み」は必ず3文字以下の特徴があるようです。反対に、4文字以上になる読み方が「訓読み」になります。

他にも「音読み」には共通した特徴があるのでご紹介しますね。3文字になる場合、2文字目は必ず小さな「ゃ・ゅ・ょ」が入ります。例えば「病」を「ビョウ」と読むのは「音読み」です。さらに「音読み」のほとんどは、最後の一文字が「う・ん・ち・く・き・つ・い」のどれかで終わります。

・3文字以下は「音読み」、4文字以上は「訓読み」。
「私」=わたくし……………………訓読み
「承る」=うけたまわ(る)…訓読み

・3文字の場合2文字目が小さな「ゃ・ゅ・ょ」は「音読み」。
「略」=リャク
「流」=リュウ
「行」=ギョウ…など

・最後の一文字が「う・ん・ち・く・き・つ・い」は「音読み」。
「牢」=ロウ
「卵」=ラン
「日」=ニチ
「角」=カク
「赤」=セキ
「活」=カツ
「体」=タイ…など

【例外】
「関」=せき
「靴」=くつ
「相」=あい…など。

\次のページで「濁音やラ行始まりは音読み」を解説!/

濁音やラ行始まりは音読み

1文字で意味が分かる漢字でも、濁音やラ行(ラリルレロ)で始まる読み方は「音読み」です。特にラ行に関しては、漢字辞書を開けばほとんどが「音読み」なのが一目瞭然かと思います。

・濁音始まり。
「額」=ガク
「罰」=バツ
「雑」=ザツ…など。

・ラ行始まり。
「楽」=ラク
「竜」=リュウ
「礼」=レイ…など。

【例外】
「路」=じ
「場」=ば
「紅」=べに
「崖」=がけ…など。

地名と異なる読みのお寺は他にもあります。例えば、東京・品川は鎌倉時代の豪族「品河氏(しながわし)」に由来した地名ですが、領地にあった「品川寺」は「ホンセンジ」と音読みです。

一方、京都の「清水寺」は「きよみずでら」と訓読みですが、9世紀初めは「北観音寺」という音読み名前が付けられていました。

ところが、清水寺は室町時代の謡本では「センスイジ」と書かれ、品川寺は品河氏にちなんで地元から「しながわでら」と呼ばれているとか。

つまりお寺は基本「音読み」ですが、時代や周囲の人々によって「訓読み」に代わる場合もあるようです。

「重箱読み」と「湯桶読み」って何?

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ここまで読んで、音読みと訓読みの違いが分かりかけてきたと思います。ところが、熟語の中には音読みと訓読みが混ざった言葉もあるため、「どっちなの?」と混乱する方もいるのではないでしょうか。

次の項目では、「重箱読み」や「湯桶読み」とも呼ばれる、音訓混在した読みについての説明をしたいと思います。

どちらも熟語の変則的な読み方のこと!

お正月のおせち料理などが入った箱を「重箱(ジュウばこ)」といいます。そう、読みがな表記でも分かる通り、漢字2つの前と後ろがそれぞれ「音読み」と「訓読み」に分かれているのです。
⇒重箱=ジュウ(音)+ばこ(訓)で「重箱読み」。

反対に、そば湯などを入れる急須に似た容れ物を「湯桶(ゆトウ)」といい、こちらは重箱と反対です。
⇒湯桶=ゆ(訓)+トウ(音)で「湯桶読み」。

以下の項目では、それぞれの例文を紹介します。

「重箱読み」の例文

・音+訓…重箱読み。
「悪玉」=アクだま
「胃袋」=イぶくろ
「駅前」=エキまえ
「学割」=ガクわり
「派手」=ハで…など。

\次のページで「音訓2つの読みにより日本語の表現が豊かに」を解説!/

「湯桶読み」の例文

・訓+音…湯桶読み
「鮭缶」=さけカン
「鈴蘭」=すずラン
「関所」=せきショ
「成金」=なりキン
「夕刊」=ゆうカン…など。

音訓2つの読みにより日本語の表現が豊かに

今回の記事で「音読み」と「訓読み」の相違点や、見分けるための簡単なルールが少しだけ理解できたのではないでしょうか。とは言え、音訓読みには例外も多いので、辞書を教材にした読み書き練習などの勉強をおすすめします。

中学生でも理解するのが難しいとされる音訓読みですが、私たちが使う言葉が現在こんなにも豊かである理由は、この面倒な2つの読みのおかげかもしれませんね。「音読み」と「訓読み」を学ぶことで、日本語の美しさを再確認してはいかがでしょうか。

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言葉雑学

3分で簡単音読みと訓読みの違い!音読みの発祥は中国?重箱読みや湯桶読みについても小説家兼ライターが丁寧にわかりやすく解説!

この記事では音読みと訓読みの違いについてみていきます。どちらも漢字や熟語の読み方であることは分かるかと思う。とはいえ漢字や熟語が”読めた”としても、それが音読みなのか訓読みなのかの区別や判断は、受験勉強や学年が上がった人でも悩むでしょう。

両者の違いは言葉を理解するうえで欠かせなのですが、実は例外も多く意外に複雑な内容なんです。そこで今回は、それぞれの歴史や成り立ちを確認しつつ例文を交えながら、小説家兼ライターのさらささらと一緒に解説していきます。

ライター/さらささら

少女向け小説家兼ライター。趣味は神社や名所巡り。お話のネタ探しのために様々な雑学を調べています。

「音読み」と「訓読み」の違いとは?

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小学生や子どもが最初に習う漢字に「一、二、三」がありますが、数をかぞえる時など「いち、にい、さん」以外に「ひとつ、ふたつ、みっつ」とも言いませんでしたか?熟語に目を向けてみても、「登山」は「山登り」と同じ漢字や意味を持ちながらも、それぞれ「とざん」「やまのぼ(り)」と違った発音になるのは不思議ですよね。

つまりこれが、「音読み」と「訓読み」なのです。

ここからは「音読み」はカタカナ(片仮名)、「訓読み」をひらがな(平仮名)で読みがな(読み仮名)表記させていただきます。

「音読み」は中国語の発音がもとに

私たち日本人が使う漢字は、お隣の中国大陸から伝わってきた文字です。そして、ひとつひとつの漢字には、中国での読み方(発音)がありました。例えば、「山」と言う漢字は中国語で「Shān(シャン)」と発音し、これに似せた日本語の「サン」がそのまま「音読み」というわけです。

「訓読み」は漢字の意味を日本語に

「音読み」が漢字の中国発音であることは分かりましたね。こうして中国から伝来した漢字の中でも、同じ意味(情報)を持つものに日本語の読みをあてたものが「訓読み」なのです。

例えば、中国語の「愛(アイ)」に近い意味、これが日本では「まな」や「いと(しい)」などでした。そのため日本語で「愛」の音読みは「アイ」、訓読みは「まな」「いと(しい)」の他に「う(い)」「お(しむ)」「め(でる)」「かな(しい)」となったのです。

辞書などで「音読み」をカタカナ表記にするのも、中国語が英語(英語訳)などと同じ外国語であることが理由となります。

それぞれどんな使い方をするの?

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日本の観光地「浅草(あさくさ)」には、赤い大提灯で知られる「浅草寺(センソウジ)」がありますね。実は、お寺(=仏教)は中国伝来の宗教なので、日本の地名である「浅草(あさくさ)」を「音読み」して「センソウ(ジ)」と呼ばれています。一方、隣りにある「浅草神社(あさくさじんじゃ)」などは、日本古来の神様を祀った神社なので「訓読み」が多いわけです。

次の項目では「音読み」「訓読み」の見分け方などを解説します。

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