今回はなつめとデーツの違いをみていきます。日本ではドライフルーツとして親しまれる、なつめとデーツ。干した実だけを見るとよく似ていて、区別が難しいよな。デーツはなつめやしとも呼ばれ、名前までそっくりです。しかし、植物としての特徴や、味や食感、栄養成分などには違いがある。
漢方薬にもなるなつめと、栄養豊富なデーツ。両者が健康に役立つ点も合わせて、現役薬剤師ライターのアラノるかと一緒に解説していきます。

ライター/アラノるか

現役薬剤師ライター。生薬としてのなつめ(大棗)は、実家の漢方薬局で見慣れた存在。いつか海外で生のデーツを食べてみたい。患者さまへの説明同様、わかりやすい解説を心がけている。

1.なつめとデーツは別のもの!植物としての特徴は?

ドライフルーツとして売られているところを見ると、なつめデーツの見た目はそっくり。しかし、植物としての種類や、木になっている姿は大きく違います。写真を見比べながら説明していきましょう。

1-1.棗(ナツメ)の特徴や原産地は?

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ナツメクロウメモドキ科の落葉樹。一本の木だけで実を結びます。南ヨーロッパ原産で、西アジアを経由して中国に伝わったというのが一説ですが、中国原産であるとの意見も。

日本には奈良時代以前に伝わりました。庭木として親しまれてきましたが、現代では多くが伐採されてしまっているようで、商業的に果樹栽培されているのはごくわずか。ドライフルーツとしての流通がほとんどで、今の国内では珍しい果物という印象です。

中国韓国では広く栽培され、品種もさまざま。日常的に生食されるほか、干しなつめが料理にもしばしば使われます。

1-2.デーツ(ナツメヤシ)の特徴や原産地は?

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デーツヤシ科の常緑高木ナツメヤシの果実のことを指します。ナツメヤシは雄株と雌株に分かれているため、両方がそろった環境でなければデーツは実りません。風によって受粉する植物なのですが、現代の商業栽培では人工授粉が行われます。

紀元前6000年ごろにはすでに栽培が始まっていたらしく、人類の介入以前の原産地の特定は難しいようです。北アフリカか西南アジアが原産ではないかと推定されています。北アフリカ中東地域を中心に広く栽培される、乾燥に強いオアシス作物です。

デーツは砂漠でも育つ上、栄養価が高く、乾燥させて長期保存することもできるため、中近東諸国では重要な食料として扱われてきました。近年では健康目的で注目され、日本でも名前を聞くことが増えてきています。

2.どうしてデーツはなつめやしと呼ばれる?なつめとデーツの名前の由来

デーツの和名である「なつめやし」は、果実がなつめに似ていることから名づけられました。

一方で、なつめは英語圏では「Chinese date(中国のデーツ)」と呼ばれることも。そっくりな果物同士の面白い関係性ですね。

2-1.なつめの名前の由来

なつめの和名の由来は「夏芽」。初夏に芽を出すことから、こう呼ばれるようになったと言われています。

漢字では「」と書きますが、これはなつめの中国名、「棗(そう)」の漢字を取り入れたもの。元々は「棘」という漢字から転じた字です。字の示す通りに、なつめの枝や幹には鋭い棘が生えています。

\次のページで「2-2.デーツの名前の由来」を解説!/

2-2.デーツの名前の由来

デーツという名前は、ギリシア語の「ダクティロス(指)」に由来するという説があります。一方で、アラビア語の「ダクル(ナツメヤシの一種を指す)」、もしくは「ダクラン(苗)」から名づけられたとも言われており、はっきりと特定はされていません。

古くから広い地域で親しまれてきた果物なので、語源にも幅広い説があるのですね。

3.なつめとデーツの味や栄養素、違いはあるの?

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ドライフルーツとしては、なつめさっぱりして甘酸っぱくデーツの方はねっとりとして濃厚な甘さがあるとのこと。見た目とは裏腹に味は別物で、食べた方の間でも好みが分かれるようです。

3-1.なつめの味と栄養、おいしい食べ方

甘酸っぱい味もさることながら、ドライフルーツとしてのなつめには独特の食感があります。固めの皮の中身はふわふわしていて、唯一無二のなつめならではの感覚。生食すると、リンゴのようなしゃきっとした食感があり、素朴で控えめな甘酸っぱさが感じられます。

生のなつめに多いのはビタミンC。干したなつめには食物繊維葉酸が多いほか、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄などのミネラルが豊富に含まれます。

生・干しなつめとも、そのまま食べることが可能。干したなつめはサムゲタンなどの料理に入れたり、砂糖で甘く煮るのも美味。また、干しなつめを煮出して砂糖やはちみちで甘味をつけ、なつめ茶としていただくこともできます。

3-2.デーツの味と栄養、おいしい食べ方

黒糖のような濃厚な甘みがあるデーツ。ねっとりした食感は、干し柿や干しブドウ、干したプルーンなどに似ています。木に実をつけたまま乾燥させたものを食べることが多いようですが、生でも食べることは可能で、柿のような味がするそうです。

デーツには食物繊維β-カロテンが多く、なつめ同様にカリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄といったミネラルも豊富。

そのまま食べるほかには、クッキーやパンに入れたり、アクセントとして料理に混ぜたりもします。甘味が強くて苦手だという場合は、クルミやアーモンド等のナッツ類と合わせるといいようです。日本では有名メーカーのお好み焼きソースの原料として、甘味とコクを出すためにデーツが使われています。

4.漢方薬にもなるなつめ、その効能とは?

中国には「一日吃三棗、一生不顕老(一日になつめを三個食べれば、いつまでも若く過ごすことができる)」ということわざがあるほどで、なつめは古くから健康に良いとされています。世界三大美女の一人である楊貴妃も好んで食べたというなつめは、漢方薬「大棗(たいそう)」としても利用されているのです。

\次のページで「4-1.大棗(たいそう)として用いられるなつめ」を解説!/

4-1.大棗(たいそう)として用いられるなつめ

なつめの成熟した果実を乾燥させたものが、生薬としては大棗と呼ばれます。滋養強壮、補血、鎮静、便秘や下痢などの改善効果があり、食欲不振神経過敏冷えの改善貧血・高血圧の予防などに用いられているのです。薬効がおだやかで甘味があるため、他の漢方薬を飲みやすくする目的で配合されることもあり、さまざまな漢方処方に用いられています。

4-2.大棗を含む主な漢方薬について

メインの薬効を担うというよりは、処方全体の調和を取ったり味を調えるために加えられることの多い大棗。

消化吸収機能を高めて元気を補い、疲れを改善する補中益気湯(ほちゅうえっきとう)や、甘い味で飲みやすく、女性や子供の精神不安に用いられる甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう)、体が弱い人の風邪の初期症状などに使われ、さまざまな漢方処方のベースとなっている桂枝湯(けいしとう)をはじめ、他にも数多い処方に含まれています。

5.スーパーフードとして注目されるデーツ、何が期待できる?

楊貴妃に並ぶ世界三大美女の一人、クレオパトラも愛したというデーツ。栄養豊富なデーツは、古代から砂漠の隊商の食糧としても用いられ、断食明けのイスラム教徒が最初に口にする食物でもあります。近年ではスーパーフードとして、世界で注目を集めるようになりました。

5-1.デーツを食べて健康に

鉄分や銅、亜鉛といったミネラルを多く含むデーツは、摂取することで貧血の予防効果が期待できます。また、β-カロテンをはじめとした抗酸化作用のある成分も多く含まれているのです。

甘味の強いデーツですが、食物繊維が多いため、食後の血糖値の上昇程度を示すGI(グリセミックインデックス)値は31~50程度と小さめ。GI値55以下の低GI食品として分類され、糖尿病やメタボリックシンドロームの予防が期待されるほか、ダイエットにも適しているとされています。

似て非なるなつめとデーツ、どちらも健康の味方

ドライフルーツとしての姿はそっくりのなつめデーツ。どちらも古くから人類に愛されてきた果物ですが、木に生っている姿や味には違いがあります。含まれる栄養素にも若干の違いがありますが、東洋医学に取り入れられたなつめと、砂漠における栄養補給源として用いられてきたデーツは、それぞれの文化圏で人々の健康を支えてきたのですね。健康的なスイーツとして食生活に取り入れ、二つを食べ比べてみるのも面白そうです。

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雑学食べ物・飲み物

棗(なつめ)とデーツの違いは?味はどう違う?栄養や効果、漢方薬としての効能まで現役薬剤師がわかりやすく解説

今回はなつめとデーツの違いをみていきます。日本ではドライフルーツとして親しまれる、なつめとデーツ。干した実だけを見るとよく似ていて、区別が難しいよな。デーツはなつめやしとも呼ばれ、名前までそっくりです。しかし、植物としての特徴や、味や食感、栄養成分などには違いがある。
漢方薬にもなるなつめと、栄養豊富なデーツ。両者が健康に役立つ点も合わせて、現役薬剤師ライターのアラノるかと一緒に解説していきます。

ライター/アラノるか

現役薬剤師ライター。生薬としてのなつめ(大棗)は、実家の漢方薬局で見慣れた存在。いつか海外で生のデーツを食べてみたい。患者さまへの説明同様、わかりやすい解説を心がけている。

1.なつめとデーツは別のもの!植物としての特徴は?

ドライフルーツとして売られているところを見ると、なつめデーツの見た目はそっくり。しかし、植物としての種類や、木になっている姿は大きく違います。写真を見比べながら説明していきましょう。

1-1.棗(ナツメ)の特徴や原産地は?

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ナツメクロウメモドキ科の落葉樹。一本の木だけで実を結びます。南ヨーロッパ原産で、西アジアを経由して中国に伝わったというのが一説ですが、中国原産であるとの意見も。

日本には奈良時代以前に伝わりました。庭木として親しまれてきましたが、現代では多くが伐採されてしまっているようで、商業的に果樹栽培されているのはごくわずか。ドライフルーツとしての流通がほとんどで、今の国内では珍しい果物という印象です。

中国韓国では広く栽培され、品種もさまざま。日常的に生食されるほか、干しなつめが料理にもしばしば使われます。

1-2.デーツ(ナツメヤシ)の特徴や原産地は?

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デーツヤシ科の常緑高木ナツメヤシの果実のことを指します。ナツメヤシは雄株と雌株に分かれているため、両方がそろった環境でなければデーツは実りません。風によって受粉する植物なのですが、現代の商業栽培では人工授粉が行われます。

紀元前6000年ごろにはすでに栽培が始まっていたらしく、人類の介入以前の原産地の特定は難しいようです。北アフリカか西南アジアが原産ではないかと推定されています。北アフリカ中東地域を中心に広く栽培される、乾燥に強いオアシス作物です。

デーツは砂漠でも育つ上、栄養価が高く、乾燥させて長期保存することもできるため、中近東諸国では重要な食料として扱われてきました。近年では健康目的で注目され、日本でも名前を聞くことが増えてきています。

2.どうしてデーツはなつめやしと呼ばれる?なつめとデーツの名前の由来

デーツの和名である「なつめやし」は、果実がなつめに似ていることから名づけられました。

一方で、なつめは英語圏では「Chinese date(中国のデーツ)」と呼ばれることも。そっくりな果物同士の面白い関係性ですね。

2-1.なつめの名前の由来

なつめの和名の由来は「夏芽」。初夏に芽を出すことから、こう呼ばれるようになったと言われています。

漢字では「」と書きますが、これはなつめの中国名、「棗(そう)」の漢字を取り入れたもの。元々は「棘」という漢字から転じた字です。字の示す通りに、なつめの枝や幹には鋭い棘が生えています。

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