「菌」と聞いたら何をイメージするでしょうか。目には見えない微生物であり、なんだか汚い、病気になるイメージでしょうか。菌類と細菌類は同じものだと思っていた人も多いでしょう。実は両者は全然似て非なるものなのです。ヒトに病気を引き起こすものももちろんありますが、意外な作用をもたらすものもあるぞ。菌類と細菌類(細菌)の違いについて、生物に詳しい医学系研究アシスタントのライターmimosa(ミモザ)と一緒に解説していきます。

ライター/mimosa

もともと文系出身で、独学で生物学、生化学を勉強し、現在医学系研究所の研究アシスタントとして理系の世界へ飛び込んだ。理科が苦手な方へも興味を持ってもらうべくわかりやすい説明を心掛けている。

生物の分類

菌類と細菌類は名前は似ていますが全く異なるものです。区別が難しいと思えるかもしれませんが、まずはじめに、アメリカの生物学者のウーズによって提唱された3ドメイン説を基に説明していきますね。

3ドメイン説

3ドメイン説

image by Study-Z編集部

ウーズによって提唱された3ドメイン説は、実験により取得された様々な生物のリボソームRNAや遺伝に関係するタンパク質を用いて、それぞれの生物の遺伝子の塩基配列を分析し、類縁性を比較して分類したものです。その結果、3つのグループに分けることができましたよ。

図の左から真正細菌真核生物、下に古細菌がありますね。図のように、細菌は真正細菌、菌類は私たちと同じ真核生物なのですよ。これらは遺伝子的に全く違うものです。細胞から生殖、生活環などそれぞれ詳しく見ていきましょう。

真核生物と原核生物

真核生物と原核生物

image by Study-Z編集部

菌類は真核生物であり、細菌類は原核生物ですよ。真核生物と図には真核生物の細胞です。真核生物は多細胞生物ですよ。菌類は細胞壁があるので、どちらかというと、植物の細胞に近いですよ。

原核生物は、からだが原核細胞からできているものですよ。単細胞生物(からだ自体が1つの細胞のよう)ですから、原核生物の図は下の別の章で参照してくださいね。

菌類とは

image by iStockphoto

菌類は、真菌類とも言いますよ。菌類には、カビ、キノコ、コケの仲間などが含まれますよ。生殖仕方によって、接合菌類、子のう菌類、担子菌類などに分けられます。詳しく見ていきましょう。

菌類の特徴

菌類は、無性生殖と有性生殖のどちらもありますよ。胞子で増え、細胞壁を持っているので、植物と似ていますね。

カビを思い浮かべてみたらわかるかもしれませんが、体は微細な糸のようであり、これを菌糸と言いますよ。これは一本の糸のように見えますが、細胞がつながっているものです。自然界では、朽ちた木や動物の死骸や糞、腐葉土に菌糸を伸ばし栄養を吸収していますよ。中には、子実体をつくるものもいます。子実体はキノコのことですね。

接合菌類

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接合菌類は、菌類の中で最も古い系統です。無性生殖によって増殖するものの場合、菌糸の一部が立ち上がり、その先端に胞子のうができますが、減数分裂を行いません。そのまま栄養胞子をつくって増えますよ。有性生殖では、菌糸の一部が配偶子のうをつくり、配偶子同士が接合し、接合胞子をつくって増えますよ。

接合菌類には、クモノスカビ、ケカビなどがありますよ。

子のう菌類

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子のう菌類は、私たちの生活になじみのあるものが多く含まれていますよ。パン、ワイン、日本酒を作る際にアルコール発酵をしてくれる酵母カビも子のう菌類の仲間なんですよ。アカパンカビ、アオカビ、コウジカビなどがあります。コウジカビは、あの麹です。日本食には欠かせない醤油、味噌、鰹節、日本酒の発酵に使用されますね。

子のう菌類は、有性生殖でも無性生殖でも増えますよ。無性生殖では、菌糸の先端が体細胞分裂して胞子をつくります。「出芽」とも呼ばれますね。有性生殖では、子のう内(袋のようなもの)に子のう胞子を8個つくります。子実体(キノコのようなもの)をつくるものもいますよ。

担子菌類と地衣類

担子菌類と地衣類

image by Study-Z編集部

担子菌類とは、私たちが良く知っているマツタケやシイタケ、シメジなどのキノコが含まれますよ。単相の(nのみ)一次菌糸どうしが結びついて単相の2核(n+n)を持つ二次菌糸ができます。この二次菌糸でキノコができますよ。キノコのひだの部分で二次菌糸の減数分裂が起こり、単相の胞子が4つできます。また、ひだの部分は、胞子をつくってバラまきやすくなっていますよ。

地衣類(ちいるい)は、コケのような見た目ですが、コケとは異なります。緑藻類やシアノバクテリア(どちらも光合成をする)と共生している菌類ですね。高山や極地など厳しい環境でも適応できます。無性生殖で増殖しますよ。ウメノキゴケ、イワタケ、リトマスゴケなどがあります。

細菌類とは

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細菌類は、正式には「細菌」と言われ、バクテリアや真正細菌とも言われますよ。細菌は、原作細胞から成る原核生物です。原核細胞とは何か。まずは原核細胞について説明して、細菌の特徴について説明しますね。

\次のページで「原核生物の構造」を解説!/

原核生物の構造

原核生物の構造

image by Study-Z編集部

原核生物は、原核細胞でできたもののことですよ。原核細胞は、シンプルで、核膜や核小体がなく、ミトコンドリア、葉緑体、ゴルジ体などの細胞小器官もありません。

図のように、鞭毛(べんもう)を持つものもいますが、真核細胞のような微細な構造はありませんよ。からだは、真核細胞よりも小さく、1~数μmほどの大きさです。分裂によって増えますが、真核細胞のような有糸分裂はしません。

細菌の種類

細菌には、いろいろな見た目や性質のものがあります。丸い形の球菌、コンマのような形の細長い桿菌(かんきん)、細長くてらせん状になっているらせん菌。上の図を参照してくださいね。

球菌はブドウ球菌、肺炎球菌、連鎖球菌など。桿菌には、大腸菌、コレラ菌、炭疽菌など。らせん菌にはスピロヘータ菌などがいますよ。スピロヘータ菌は自然界や人の体内でも見られる細菌です。感染症を引き起こしますよ。

従属栄養細菌と独立栄養細菌

細菌は、どのようにして生きているのでしょうか。栄養を私たちと同じように細胞の外から取り入れているものもあります。これを従属栄養細菌と言いますよ。酸素を呼吸で取り入れる好気性細菌発酵を行う乳酸菌がいます。他にも、大腸菌、コレラ菌、枯草菌、ブドウ球菌、スピロヘータ菌などたくさんいますよ。

また、酸素ではなく窒素を必要とするものもいますよ。マメ科の植物に共生している根粒菌、土壌に生息するアゾトバクタ―などです。

独立栄養とは、自分で栄養を合成できるものを言いますよ。光合成をおこなう光合成細菌、化学合成を行う化学合成細菌がいますよ。光合成細菌には、緑色硫黄細菌、シアノバクテリアなどがいます。

菌類と細菌類は遠い種別

ウーズの3ドメイン説で分類すれば、菌類は真核生物であり、細菌は原核生物です。遺伝子的にも細胞の構成から異なっていますね。細菌は真正細菌とも呼ばれますね。

菌類は接合菌類、子のう菌類、担子菌類、地衣類に分けられます。接合菌類以外はキノコ、麹菌など私たちの生活の中で見かけることができるものですね。菌類は無性生殖で増えることもできれば有性生殖でも増えることができますね。胞子で増えるので、菌類には生活環があります。

細菌は、無性生殖で増えますよ。細菌の分類は、形や酸素が必要か不必要か、自分で栄養を合成できるかできないか、グラム染色法でどのように細胞が染まるかで分類されますよ。

目には見えない微生物でも、菌類や細菌について深く知ることはとても興味深いですね。

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理科生物

3分で簡単!菌類と細菌類の違いとは?特徴や構造も医学系研究アシスタントがわかりやすく解説

「菌」と聞いたら何をイメージするでしょうか。目には見えない微生物であり、なんだか汚い、病気になるイメージでしょうか。菌類と細菌類は同じものだと思っていた人も多いでしょう。実は両者は全然似て非なるものなのです。ヒトに病気を引き起こすものももちろんありますが、意外な作用をもたらすものもあるぞ。菌類と細菌類(細菌)の違いについて、生物に詳しい医学系研究アシスタントのライターmimosa(ミモザ)と一緒に解説していきます。

ライター/mimosa

もともと文系出身で、独学で生物学、生化学を勉強し、現在医学系研究所の研究アシスタントとして理系の世界へ飛び込んだ。理科が苦手な方へも興味を持ってもらうべくわかりやすい説明を心掛けている。

生物の分類

菌類と細菌類は名前は似ていますが全く異なるものです。区別が難しいと思えるかもしれませんが、まずはじめに、アメリカの生物学者のウーズによって提唱された3ドメイン説を基に説明していきますね。

3ドメイン説

3ドメイン説

image by Study-Z編集部

ウーズによって提唱された3ドメイン説は、実験により取得された様々な生物のリボソームRNAや遺伝に関係するタンパク質を用いて、それぞれの生物の遺伝子の塩基配列を分析し、類縁性を比較して分類したものです。その結果、3つのグループに分けることができましたよ。

図の左から真正細菌真核生物、下に古細菌がありますね。図のように、細菌は真正細菌、菌類は私たちと同じ真核生物なのですよ。これらは遺伝子的に全く違うものです。細胞から生殖、生活環などそれぞれ詳しく見ていきましょう。

真核生物と原核生物

真核生物と原核生物

image by Study-Z編集部

菌類は真核生物であり、細菌類は原核生物ですよ。真核生物と図には真核生物の細胞です。真核生物は多細胞生物ですよ。菌類は細胞壁があるので、どちらかというと、植物の細胞に近いですよ。

原核生物は、からだが原核細胞からできているものですよ。単細胞生物(からだ自体が1つの細胞のよう)ですから、原核生物の図は下の別の章で参照してくださいね。

菌類とは

image by iStockphoto

菌類は、真菌類とも言いますよ。菌類には、カビ、キノコ、コケの仲間などが含まれますよ。生殖仕方によって、接合菌類、子のう菌類、担子菌類などに分けられます。詳しく見ていきましょう。

菌類の特徴

菌類は、無性生殖と有性生殖のどちらもありますよ。胞子で増え、細胞壁を持っているので、植物と似ていますね。

カビを思い浮かべてみたらわかるかもしれませんが、体は微細な糸のようであり、これを菌糸と言いますよ。これは一本の糸のように見えますが、細胞がつながっているものです。自然界では、朽ちた木や動物の死骸や糞、腐葉土に菌糸を伸ばし栄養を吸収していますよ。中には、子実体をつくるものもいます。子実体はキノコのことですね。

接合菌類

image by iStockphoto

接合菌類は、菌類の中で最も古い系統です。無性生殖によって増殖するものの場合、菌糸の一部が立ち上がり、その先端に胞子のうができますが、減数分裂を行いません。そのまま栄養胞子をつくって増えますよ。有性生殖では、菌糸の一部が配偶子のうをつくり、配偶子同士が接合し、接合胞子をつくって増えますよ。

接合菌類には、クモノスカビ、ケカビなどがありますよ。

子のう菌類

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子のう菌類は、私たちの生活になじみのあるものが多く含まれていますよ。パン、ワイン、日本酒を作る際にアルコール発酵をしてくれる酵母カビも子のう菌類の仲間なんですよ。アカパンカビ、アオカビ、コウジカビなどがあります。コウジカビは、あの麹です。日本食には欠かせない醤油、味噌、鰹節、日本酒の発酵に使用されますね。

子のう菌類は、有性生殖でも無性生殖でも増えますよ。無性生殖では、菌糸の先端が体細胞分裂して胞子をつくります。「出芽」とも呼ばれますね。有性生殖では、子のう内(袋のようなもの)に子のう胞子を8個つくります。子実体(キノコのようなもの)をつくるものもいますよ。

担子菌類と地衣類

担子菌類と地衣類

image by Study-Z編集部

担子菌類とは、私たちが良く知っているマツタケやシイタケ、シメジなどのキノコが含まれますよ。単相の(nのみ)一次菌糸どうしが結びついて単相の2核(n+n)を持つ二次菌糸ができます。この二次菌糸でキノコができますよ。キノコのひだの部分で二次菌糸の減数分裂が起こり、単相の胞子が4つできます。また、ひだの部分は、胞子をつくってバラまきやすくなっていますよ。

地衣類(ちいるい)は、コケのような見た目ですが、コケとは異なります。緑藻類やシアノバクテリア(どちらも光合成をする)と共生している菌類ですね。高山や極地など厳しい環境でも適応できます。無性生殖で増殖しますよ。ウメノキゴケ、イワタケ、リトマスゴケなどがあります。

細菌類とは

image by iStockphoto

細菌類は、正式には「細菌」と言われ、バクテリアや真正細菌とも言われますよ。細菌は、原作細胞から成る原核生物です。原核細胞とは何か。まずは原核細胞について説明して、細菌の特徴について説明しますね。

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