この記事では「息が掛かる」について解説する。

端的に言えば息が掛かるの意味は「支配下にある」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

国立大学の国文科を卒業したあおやぎを呼んです。一緒に「息が掛かる」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/あおやぎ

幼い頃から本を数えきれないほど読んできた活字中毒。国立大学の文学部国文科に入学し、日本語について学ぶ。2人の子育て経験を生かし、分かりやすく言葉の使い方について解説する。

「息が掛かる」の意味や語源・使い方まとめ

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「息が掛かる」という言葉をご存知でしょうか?日常でも耳にすることが多い表現ですね。「息のかかった」とも言いますが、本稿ではそちらも同じものとして解説していきます。それでは早速「息が掛かる」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「息が掛かる」の意味は?

「息が掛かる」を辞書で引くと次のような意味が出てきます。

有力者の後援や支配を受ける。「会長の―・った人物」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「息が掛かる」

有力者の保護または影響、支配などを受ける。

出典:精選版 日本国語大辞典「息が掛かる」

権力を持った人物、組織などに保護されていたり、後援を受けていたりする状態を表しています。またそれだけでなく、その人物や組織の支配下にあり、指示に従うであろうことが予想される場合に「息が掛かる」を用いるのが普通です。単に支援を受けているだけではなく、支配下にあるというのが重要なポイントですよ。

\次のページで「「息が掛かる」の語源は?」を解説!/

「息が掛かる」の語源は?

次に「息が掛かる」の語源を確認しておきましょう。「息」といえば「呼吸」のことですね。「息が掛かる」状況を想像してみると、相手がとても近くにいるということが分かるのではないでしょうか。つまり、「息が掛かるほど近くにいる」=「関係が深い」というところからできた慣用句なのです。

「息が掛かる」の使い方・例文

「息が掛かる」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.石橋氏はあの政治家の息が掛かっているから、彼の政党から国会議員選挙に出馬するという情報が出ているよ。

2.杜若さんはアイドルグループ卒業後女優の座を狙っているから、最近ドラマプロデューサーの息が掛かったスタッフに近づいているって噂がありますね。

3.行き当たりばったりで進むのは良くない。鎌倉のあたりは敵の息のかかった人間があちこちにいて、一触即発って話だ。

どの文章も、「政治家」「プロデューサー」「敵」などの有力者や組織の支配下にある人について述べていますね。また、全て「息が掛かった」「息のかかった」という形で使われています。実は「息が掛かる」と終止形で用いられることはあまりありません。何かを修飾、説明するために連体形で使われることが多い用語です。

「息が掛かる」の類義語は?違いは?

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「息が掛かる」の類義語にはどのようなものがあるでしょうか。二つご紹介します。

\次のページで「その1「傘下にある」」を解説!/

その1「傘下にある」

「さんかにある」と読みます。「指導的な人物や機関の下で、その統制・支配を受ける立場にあること」「大きな力を持つ人や組織に属して、支配・庇護などを受ける立場にあること」という意味です。「傘下」というのは文字通り「傘の下」。傘の下にいれば雨に濡れることはありませんよね。ただし、傘を持った人に付き従っていかなければ濡れてしまいます。そのように、守られているけれども従属しているイメージの言葉です。会社などについて、「大企業の傘下にある」などと使われることが多い用語ですね。

その2「まつろう」

「服ふ」「順ふ」などと書きます。あまり日常で耳にすることはない言葉かもしれません。元は古語で、動詞の「奉る(まつる)」に反復・継続の助動詞「ふ」がついてできたと言われています。「奉る」には「貢物を献上する」という意味がありますので、献上し続けるというところから「従いつく、服従する」の意味を持つようになりました。

「息が掛かる」の対義語は?

「後援や庇護を受けながら、支配も受けている」という意味の「息が掛かる」ですが対義語はあるのでしょうか。実はきちんと対になるような対義語はありません。ここでは内容的に反対に近い関連語をいくつかご紹介します。

その1「独立」

「独立」には様々な意味がありますが、大まかにまとめると「他からの束縛や支配を受けずに自分の意思で行動したり、権限を行使できる状態」という意味になります。また、「自分の力で生計を営むこと、事業を営むこと」という意味もありますね。「誰かに支配されコントロール下にある」状態とは反対といえます。

その2「自治」

「自分や自分たちに関することを自らの責任において処理すること」という意味です。「自治体」「自治会」など身近で良く使われる言葉ですよね。外部の組織や人に指図されることなく、自分たちのことを決定・実行できる状態ということです。こちらもまた「息が掛かった」状態とは反対だといえますよね。

「息が掛かる」の英訳は?

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「息が掛かる」を英訳するとどういった表現になるのでしょうか?日本語をそのまま「take a breath」とするとやはり意味が違ってしまいます。「庇護を受ける、影響下にある」といった意味の言葉を挙げていきますね。

\次のページで「「have the backing(of ○○)」」を解説!/

「have the backing(of ○○)」

「(○○の)後援がある、後ろ盾がある」という意味です。「backing」だけでも「後援、支援、支持」「支持者、後援者」という意味があります。また、「be backed up by ○○」でも同じような意味を表しますよ。

Kazuya has the backing of the professor, so he would be a doctor easily.
和也には教授の後ろ盾があるので、簡単に医者になれるだろう。

「under the influence(of ○○)」

「(○○の)影響下にある」という意味です。「influence」という単語には「影響」という意味があります。「under」は「○○の下」ですから、そのまま「影響の下にある」となるわけです。

The administrator is under the influence of the association.
その運営者は協会の影響下にある。

「息が掛かる」を使いこなそう

この記事では「息が掛かる」の意味・使い方・類語などを説明しました。「何かに庇護を受けながら、同時に支配されている」状態を表す慣用句でしたね。「傘下にある」「まつろう」などの類語があり、対立する意味を持つ言葉には「独立」「自治」などがありました。よく目にする言葉ではありますが、この記事をヒントにして理解を深めていただければ幸いです。

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国語言葉の意味

【慣用句】「息が掛かる」の意味や使い方は?例文や類語を国文科卒ライターがわかりやすく解説!

この記事では「息が掛かる」について解説する。

端的に言えば息が掛かるの意味は「支配下にある」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

国立大学の国文科を卒業したあおやぎを呼んです。一緒に「息が掛かる」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/あおやぎ

幼い頃から本を数えきれないほど読んできた活字中毒。国立大学の文学部国文科に入学し、日本語について学ぶ。2人の子育て経験を生かし、分かりやすく言葉の使い方について解説する。

「息が掛かる」の意味や語源・使い方まとめ

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「息が掛かる」という言葉をご存知でしょうか?日常でも耳にすることが多い表現ですね。「息のかかった」とも言いますが、本稿ではそちらも同じものとして解説していきます。それでは早速「息が掛かる」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「息が掛かる」の意味は?

「息が掛かる」を辞書で引くと次のような意味が出てきます。

有力者の後援や支配を受ける。「会長の―・った人物」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「息が掛かる」

有力者の保護または影響、支配などを受ける。

出典:精選版 日本国語大辞典「息が掛かる」

権力を持った人物、組織などに保護されていたり、後援を受けていたりする状態を表しています。またそれだけでなく、その人物や組織の支配下にあり、指示に従うであろうことが予想される場合に「息が掛かる」を用いるのが普通です。単に支援を受けているだけではなく、支配下にあるというのが重要なポイントですよ。

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