今回は「遊水池」について解説していきます。

遊水池は、洪水被害などを最小限に抑えるために設置される防災インフラの1つです。同じ役割をもつインフラとして、ダムを思い浮かべるかもしれないが、ダムと遊水池の違いはわかるでしょうか?この記事を読むと、この問いに対する答えがわかるでしょう。ぜひ、この機会に遊水池についての理解を深めてくれ。

環境工学を専攻している現役理系学生ライター通りすがりのペンギン船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。エネルギー工学、環境工学を専攻している。これらの学問への興味は人一倍強い。土壌、生態系、気象、地球温暖化について学んだこともある。

遊水池について学ぼう!

Tochigi Watarase Reservoir Third Regulation Pond 1.JPG
京浜にけ - 自ら撮影, CC 表示-継承 3.0, リンクによる

皆さんは遊水池(ゆうすいち)という言葉を聞いたことはあるでしょうか?遊水池(ゆうすいち)は、洪水による河川のはんらんなどを防ぐ役割をもつ施設であり、ダムや堤防と同じ防災インフラです。日本では、遊水池の数はダムの数よりも少ないため、遊水池という言葉に馴染みのある方は少ないかもしれません。

しかしながら、遊水池は世界的に普及しているインフラであり、マイナーな専門用語であるとは言えないのです。ですから、遊水池について知っておくことで、損をすることは決してないでしょう。この記事では、具体例を交えながら、遊水池が一体どのようなものであるかを説明していきます。ぜひ最後まで記事を読んでみてくださいね。

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遊水池とは?

遊水池とは?

image by Study-Z編集部

遊水池とは、洪水時に川の水を意図的に氾濫させるための土地のことをさします遊水池内に、川の水の一部を流入させることで、下流域の流量を減少させることができるのです。このようにすることでピーク時の水量を減らすことができ、堤防の決壊を回避したり、時間稼ぎをしたりすることが可能になりますよ。

遊水池が効果を発揮するためには、貯留可能な河川水の容量をできるだけ多くする必要がありますそのため、遊水池の設置には平野部の広い土地が必要になるのです。日本は国土が比較的狭く、土地利用が進んでいるため、遊水池の設置数は世界の中では少なくなっていますよ。日本国内にある遊水池としては、渡良瀬遊水地(大部分が栃木県)境川遊水地(神奈川県)などが挙げられます。渡良瀬遊水地については記事の後半で詳しく解説しますよ。

遊水池とダムの違い

遊水池とダムは、豪雨による洪水などの自然災害から人々を守るという共通の目的をもっています。このように機能的には似た性質をもつ遊水池とダムですが、一体どのような違いがあるのでしょうか違いの1つとして挙げられるのは、生態系への影響です。ダムの場合、建設に伴って生態系の一部を破壊してしまうという考えが一般的ですよね。ですが、遊水池の場合、自然環境は残されやすくなることが知られていますよ

実際、遊水池の中で絶滅危惧種が発見されたり、多くの動植物が繁殖していることが確認されたりしています。また、遊水地は水が溜まっていないときには、その場所を公園として使用することもできますよ。これもダムとの違いと言えますよね。

遊水池の重要性

近年、気候変動などの影響で豪雨災害の件数が増加しています。そのため、人々の生活を守るために、防災インフラの強化が急がれているのです。このような状況の中で、遊水地の活用が国際的に注目されています

日本においても、令和元年の台風19号が関東地方に接近した際に渡良瀬遊水地が過去最大の水量を蓄えて、首都圏の洪水被害を最小限にすることに成功しました。以上のような事例から、今後も遊水池の重要性は高まっていくことが予想されるのです。

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世界の遊水池をご紹介

ここまで、遊水池が一体どのようなものであるかを機能や効果などに注目して、説明してきました。これらの事柄を踏まえて、以下では世界各地にある遊水地について学んでいきましょう。今回は、日本にある『渡良瀬遊水地』・中国にある『蒙窪遊水池』・カンボジアにある『トンレ・サップ湖』の3つをご紹介します。

それぞれの遊水地がどの程度の規模であり、どのように役立っているのかという視点で以下の記事を読み進めてみてくださいね。具体例を知ることで、遊水池についての理解がさらに深まることでしょう。

渡良瀬遊水池(日本)

渡良瀬遊水地
MaedaAkihiko - 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 4.0, リンクによる

渡良瀬遊水地は栃木県・群馬県・埼玉県・茨城県の4県にまたがる日本最大級の遊水池です渡良瀬遊水池は、明治時代の足尾銅山鉱毒事件がきっかけで作られました。そのため、渡良瀬遊水池が作られた目的は洪水の緩和だけでなく、重金属などの汚染物質の沈殿にもあるのです。

渡良瀬遊水池は、渡良瀬川が利根川に合流する直前の部分に設置されています。洪水時に渡良瀬川から利根川に流入する河川水の量を調整することで、利根川の下流域での洪水被害を少なくすることができるのですね。また、渡良瀬遊水地は貴重な生物が生息していることから、2012年にラムサール条約の登録湿地に登録されました

蒙窪遊水池(中国)

Huairivermap.jpg
Shannon - Background and river course data from http://www2.demis.nl/mapserver/mapper.asp, CC 表示-継承 4.0, リンクによる

蒙窪遊水池は淮河の王家ダム近くに存在する世界最大級の遊水池です。淮河は黄河や長江に次ぐ大河ですよ。蒙窪遊水池の面積は180キロ平方メートルであり、これは山手線の内側の面積を3倍にしたくらいの広さになりますよ

平時の遊水池内では、農耕などが営まれており、驚くべきことに一部エリアには人も住んでいます。蒙窪遊水池に住む人は20万人ほどだと言われていますよ。これらの人々は、洪水時には避難を強いられるのです。

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トンレ・サップ湖(カンボジア)

image by iStockphoto

トンレ・サップ湖はカンボジアに存在する湖です実はこの湖は、メコン川の水を吸い込んだり、吐き出したりすることができることが知られています。つまり、トンレ・サップ湖は天然の遊水池なのです

トンレ・サップ湖の水位は、雨季と乾季で8メートル程度の差があります。つまり、河川の8メートルほどの水位差を遊水地のみで吸収することができ、水害などを最小限に抑えることができるのです。8メートルというのは、3階建ての建物の高さに近いものであり、このことからトンレ・サップ湖が遊水池としていかに高い能力を持っているかが実感できますよね

遊水池について学ぶ意義

この記事では、遊水池についての基礎知識を述べ、その後に世界各地に存在する遊水池について紹介しました。具体例を知ることで、遊水池の役割や規模について詳しく学べたことでしょう。遊水池はコンクリート製のダムに比べて、自然環境へ悪い影響を与えにくいことから『緑のダム』と呼ばれていますよ。

自然災害が増加している今日この頃ですが、広い意味での持続可能な社会を実現しながら、防災機能を高める必要があります。そのような意味で、遊水池は非常に高いポテンシャルを持っていると言えますよね。ぜひ、この機会に遊水池について学んでみてください。

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地学地球大気・海洋理科生態系生物

3分で簡単遊水池!防災に必須?ダムとの違いは?世界の具体例を交えて現役理系学生ライターが徹底わかりやすく解説!

今回は「遊水池」について解説していきます。

遊水池は、洪水被害などを最小限に抑えるために設置される防災インフラの1つです。同じ役割をもつインフラとして、ダムを思い浮かべるかもしれないが、ダムと遊水池の違いはわかるでしょうか?この記事を読むと、この問いに対する答えがわかるでしょう。ぜひ、この機会に遊水池についての理解を深めてくれ。

環境工学を専攻している現役理系学生ライター通りすがりのペンギン船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。エネルギー工学、環境工学を専攻している。これらの学問への興味は人一倍強い。土壌、生態系、気象、地球温暖化について学んだこともある。

遊水池について学ぼう!

Tochigi Watarase Reservoir Third Regulation Pond 1.JPG
京浜にけ自ら撮影, CC 表示-継承 3.0, リンクによる

皆さんは遊水池(ゆうすいち)という言葉を聞いたことはあるでしょうか?遊水池(ゆうすいち)は、洪水による河川のはんらんなどを防ぐ役割をもつ施設であり、ダムや堤防と同じ防災インフラです。日本では、遊水池の数はダムの数よりも少ないため、遊水池という言葉に馴染みのある方は少ないかもしれません。

しかしながら、遊水池は世界的に普及しているインフラであり、マイナーな専門用語であるとは言えないのです。ですから、遊水池について知っておくことで、損をすることは決してないでしょう。この記事では、具体例を交えながら、遊水池が一体どのようなものであるかを説明していきます。ぜひ最後まで記事を読んでみてくださいね。

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