今回は「熱帯低気圧」について解説していきます。

熱帯低気圧とは名前の通り、熱帯地域で発生する低気圧のことです。このように聞くと難しい話のように感じるかもしれないが、実は台風も熱帯低気圧の種類の1つです。この記事では、台風をはじめとする熱帯低気圧の特徴やメカニズムについて詳しく説明する。ぜひ、この機会に熱帯低気圧についての理解を深めてくれ。

環境工学を専攻している現役理系学生ライター通りすがりのペンギン船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。エネルギー工学、環境工学を専攻している。これらの学問への興味は人一倍強い。土壌、生態系、気象、地球温暖化について学んだこともある。

熱帯低気圧について学ぼう!

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皆さんは熱帯低気圧という言葉を聞いたことがあるでしょうか?難しい専門用語のように感じられますが、実は熱帯低気圧というのは毎年のように日本列島を襲う台風の正体なのです。このように聞くと、熱帯低気圧という言葉がやや身近なものであると感じられることでしょう。

今回の記事では、熱帯低気圧が一体どのようなものであるのかを解説します。具体的には、熱帯低気圧の特徴熱帯低気圧の発生および消滅のメカニズムなどを学びますよ。はじめは、熱帯低気圧の概要について述べますね。それでは早速、説明をはじめます。

熱帯低気圧とは?

熱帯低気圧とは?

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熱帯低気圧は、熱帯または亜熱帯に属する南の海で発生する低気圧のことを指します熱帯低気圧は発達した雨雲を伴いますよ。そのため、熱帯低気圧が通過する場所では、大雨となることが非常に多いです。また、熱帯低気圧は強風や高潮を伴うことも知られています。その瞬間最大風速は60[m/s]を上回ることもありますよ。

熱帯低気圧の一種である台風も、以上の事柄が当てはまっており、日本列島に上陸する際に大きな被害をもたらします。近年は、海洋温度上昇の影響で強い勢力の台風が日本に接近する機会も増えていますよ

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熱帯低気圧の特徴

熱帯低気圧の特徴

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ここでは、熱帯低気圧の特徴について学びます。熱帯低気圧の最大の特徴は、暖気のみで構成される低気圧であり、前線を伴わないことにありますよ。これが普通の雨をもたらす温帯低気圧との決定的な違いなのです。また、エネルギー源の違いもあります。熱帯低気圧の主たるエネルギー源は、海水が水蒸気に変化するときに発生する蒸発潜熱です。一方、温帯低気圧は前線を隔てた温度差が主たる駆動力になっていますよ。

その他にも、熱帯低気圧に特有の性質が存在します。熱帯低気圧の等圧線は綺麗な同心円状になることが知られており、これも特徴の1つですよ。台風が接近しているときの天気図でぜひ確認してみてくださいね。加えて、熱帯低気圧は温帯低気圧よりも縦方向に広く低圧部が存在するという特徴があることも覚えておきましょう

熱帯低気圧の別の呼び名

熱帯低気圧の別の呼び名

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熱帯低気圧は世界中で発生していますが、発生する地域によってそれぞれ別の呼び名が存在しています。日本に接近する熱帯低気圧は『台風(typhoon)』と呼ばれますよ。フィリピンなど含む北西太平洋や南シナ海で発生する熱帯低気圧は台風に分類されます。

ハリケーン(hurricane)』は北東太平洋および北大西洋の海域で発生する熱帯低気圧です。ハリケーンは南北アメリカ大陸に被害をもたらすことが多くなっています。また、南半球やインド洋で発生する熱帯低気圧は人々に『サイクロン(cyclone)』と呼ばれていますよ。

熱帯低気圧の発生から消滅までのプロセス

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ここまでは熱帯低気圧の特徴や呼び名などを中心に説明してきました。ここからは熱帯低気圧の発生から消滅までのプロセスについて考えてみましょう以下では、いくつかの種類のある熱帯低気圧の中から私たちに馴染みのある台風を代表として選び、メカニズムの説明をします

熱帯低気圧の一生を知ることで、先ほど説明したような事柄についてもより本質的に理解ができるようになりますよ。また、天気予報で台風情報を見るときにも、これらの知識や理論が役に立つことがあるかもしれません。

熱帯低気圧のもとは積乱雲?

台風をはじめとする熱帯低気圧が発生する最初のきっかけとなるのは、積乱雲の発生です。赤道付近の海上では、南半球と北半球の貿易風がぶつかり合い上昇気流が発生しており、雲が生じやすくなっています。このような条件に加えて、海水温が高いという条件もあるため、赤道付近では次から次へと積乱雲が発生しますよ

このような赤道付近で発生する積乱雲が、熱帯低気圧の構造に含まれる雲の原型なのです。熱帯低気圧の元を辿れば、積乱雲に行き着くというのはあまり知られていないので、ぜひこの機会に覚えておきたいですね。

渦を巻きはじめる熱帯低気圧

赤道付近で発生した複数の積乱雲が集積し、渦を巻きはじめることがあります積乱雲が渦を巻きはじめると、いよいよ熱帯低気圧らしい構造が出来上がってくるのです。ですが、以上のような現象がなぜ発生する理由は、未だに完全に解明されていません。

複数の学説の中で主流とされている仮説は、偏東風波動説ですよ。偏東風波動説は、赤道上空の偏東風が蛇行する際に発生する気圧の谷がきっかけとなり、積乱雲が集積されるという学説です。また、集積された積乱雲が渦を巻くのは、地球の自転によって発生するコリオリ力が原因と考えられています。

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勢力を拡大しながら北上

積乱雲が集積して誕生した熱帯低気圧は、赤道付近から移動をはじめます台風の場合は、赤道から中緯度地域まで貿易風に沿って北西に向かって進んだ後、沖縄付近で東に向かって進路を変えますよ。進路を変えるのは、貿易風帯から偏西風帯に移るときに風向きが変わるからです。このように進路を変えることを転向と呼びますよ。

台風などの熱帯低気圧は移動中にも、蒸発する海水の潜熱を利用して、勢力を拡大します。特に第2種条件付不安定 (CISK) という条件が成立するときは、熱帯低気圧の周りに次々と積乱雲が発生し、熱帯低気圧の成長が活発になりますよ。

熱帯低気圧の消滅

勢力を拡大した熱帯低気圧は、やがて陸地に上陸しますよ台風の場合は日本列島・朝鮮半島・中国・台湾などに上陸します。熱帯低気圧が上陸すると、土砂災害や洪水被害が発生するリスクが高まるので、注意が必要ですよね。

ですが、上陸した熱帯低気圧は、新たな潜熱によるエネルギーを得られなくなります。上陸した熱帯低気圧の下には海が存在しないからです。このような理由で熱帯低気圧は上陸後、温帯低気圧に変わり、やがて消滅します。これで1つの熱帯低気圧の一生が終わるのですね。

台風の正体について考えよう

日本列島に毎年上陸する台風は、自然災害という爪痕を頻繁に残していきます。そのため、台風接近時には、様々なメディアが台風に警戒するように訴えていますよね。このように多くの人々に認識されている台風ですが、そのメカニズムについてはあまり知られていません。

この記事では、台風の正体を明らかにするべく、熱帯低気圧の特徴やメカニズムについて詳しく説明しました。そして、熱帯低気圧の台風以外の呼び名も紹介しましたよね。ぜひ、この機会に台風の正体である熱帯低気圧について学んでみてくださいね。

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地学地球大気・海洋理科

熱帯低気圧とは一体何?台風の正体について現役理系学生ライターが5分でわかりやすく解説!

今回は「熱帯低気圧」について解説していきます。

熱帯低気圧とは名前の通り、熱帯地域で発生する低気圧のことです。このように聞くと難しい話のように感じるかもしれないが、実は台風も熱帯低気圧の種類の1つです。この記事では、台風をはじめとする熱帯低気圧の特徴やメカニズムについて詳しく説明する。ぜひ、この機会に熱帯低気圧についての理解を深めてくれ。

環境工学を専攻している現役理系学生ライター通りすがりのペンギン船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。エネルギー工学、環境工学を専攻している。これらの学問への興味は人一倍強い。土壌、生態系、気象、地球温暖化について学んだこともある。

熱帯低気圧について学ぼう!

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皆さんは熱帯低気圧という言葉を聞いたことがあるでしょうか?難しい専門用語のように感じられますが、実は熱帯低気圧というのは毎年のように日本列島を襲う台風の正体なのです。このように聞くと、熱帯低気圧という言葉がやや身近なものであると感じられることでしょう。

今回の記事では、熱帯低気圧が一体どのようなものであるのかを解説します。具体的には、熱帯低気圧の特徴熱帯低気圧の発生および消滅のメカニズムなどを学びますよ。はじめは、熱帯低気圧の概要について述べますね。それでは早速、説明をはじめます。

熱帯低気圧とは?

熱帯低気圧とは?

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熱帯低気圧は、熱帯または亜熱帯に属する南の海で発生する低気圧のことを指します熱帯低気圧は発達した雨雲を伴いますよ。そのため、熱帯低気圧が通過する場所では、大雨となることが非常に多いです。また、熱帯低気圧は強風や高潮を伴うことも知られています。その瞬間最大風速は60[m/s]を上回ることもありますよ。

熱帯低気圧の一種である台風も、以上の事柄が当てはまっており、日本列島に上陸する際に大きな被害をもたらします。近年は、海洋温度上昇の影響で強い勢力の台風が日本に接近する機会も増えていますよ

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