この記事では「草木も眠る」について解説する。

端的に言えば「草木も眠る」の意味は「夜がすっかり更けたこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「草木も眠る」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち

雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。

「草木も眠る」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「草木も眠る(くさきもねむる)」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「草木も眠る」の意味は?

「草木も眠る」には、次のような意味があります。

夜がすっかり更けて、すべてのものが寝静まることのたとえ。「草木も眠る丑(うし)三つ時」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「草木も眠る」

この言葉は、「夜が更(ふ)けて、人も物もすべて寝てしまっている様子」、または「それくらい深夜の時間帯」を指す言葉です。夜中、特に日付が変更してからの時間帯を考えてみるとよくわかるのではないでしょうか。

現代では夜中でも明るいこともあるとはいえ、深夜のしんと静まり返ったイメージは伝わるはず。この言葉が作られた昔の時代だったら、なおさらですね。ほとんどのものが眠っていてシーンと静まり返っている様子を想像して、そんな夜の深さをイメージしながら使ってみましょう。

また、用法としては「草木も眠る丑三つ時(うしみつどき)」というセットでの使い方で耳にすることも多いはず。これについては、次の語源の項で説明します。

「草木も眠る」の語源は?

次に「草木も眠る」の語源を確認しておきましょう。「草木も眠る丑三つ時」の解説からですが、この「丑三つ時」とは、時間を干支で表していた時代の言い方で、現在の時間で午前二時から二時半のこと。

これが落語などで「草木も眠る~」と調子を付けて語られたことで、表現が一般的にも定着したと考えられています。

ちなみに「丑三つ」は悪い方角とされる「鬼門」に当たり、ここから「恐ろしい」「お化けが出そう」といったイメージを呼び起こすことも。ただ深夜というのではなく、「何かが出てきそうな夜」と言いたい時に使える表現です。

\次のページで「「草木も眠る」の使い方・例文」を解説!/

「草木も眠る」の使い方・例文

「草木も眠る」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

・草木も眠る丑三つ時なんていうけれど、現代では何時でも使えるサービスが増加して、古くからあることわざの意味は伝わりにくくなっているかもしれない。

・草木も眠る真夜中に実施された肝試しで、怪異に遭遇したという人が何人もいたが、やはりそこは現実と他界の境目が曖昧になる恐ろしい時刻なのかもしれない。

・大人になって、草木も眠るような夜中でも経済は回っているなんて考えると、子供の頃に怖がっていたのがウソのように感じられてしまう。

「ひっそり寝静まった夜」「すっかり夜が更けた時間」というイメージが伝わりますでしょうか。「草木も眠る」ですから、風さえ吹かないのかもしれません。

無音・無風で真っ暗だとしたら、そこには幽霊や魔物など恐ろしいものが潜んでいるかも…と恐ろしくなりますね。そのため、この表現は「賑やか・穏やかな夜」といった表現には使わないことも押さえておきましょう。

わざわざこの言い回しを使う場合、「これから何か恐ろしいことが起こるかも」という示唆になっていることも。文章問題で登場した場合は要注意です。

「草木も眠る」の類義語は?違いは?

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「草木も眠る」の類義語は「逢魔時/逢魔が時(おうまがとき)」などが挙げられます。似た意味ですが、大きな違いもありますのでしっかり確認してくださいね。

「逢魔が時」

「逢魔が時」は、「災いが起こる時刻、特に夕方から夜にかけて薄暗くなる時間」を意味する言葉です。

「草木も眠る」が真夜中だったのに対し、こちらは夕方であることがポイント。どちらも「恐ろしいものに遭遇する時刻」ですが、大きな違いです。選択問題などで引っかからないように気を付けましょう。

黄昏時もいきなり暗くなるため、「魔に逢って(遭遇して)しまう恐ろしい時」という意味から作られた言葉です。街灯などがなかった時代を想像してみるとわかりやすいでしょう。

\次のページで「「草木も眠る」の対義語は?」を解説!/

逢魔が時は魔物が出る時と言われ、実際に現実的な犯罪も増える時間帯と言われている。

「草木も眠る」の対義語は?

「草木も眠る」の対義語は「昼日中(ひるひなか)」や「白昼(はくちゅう)」といった言葉が挙げられます。

「昼日中」「白昼」

「昼日中」「白昼」ともに、「真昼間、昼の時間帯」を表す言葉です。

「草木も眠る」のように特定の感情を連想させるような意味は持っていませんが、「白」などの語句が入っていることで、太陽が強く照って眩しいニュアンスが伝わりますね。

他にも似た漢字を重ねて、「昼」という意味合いを強めた言い方は様々なものがありますが、今回の二つは読み方もやや難しかったため紹介しました。読み問題で問われても大丈夫なように、しっかり読めるようにしておきましょう。

たまたま休みが取れたので、昼日中から思いっきりのんびりリラックスして過ごす贅沢な時間の使い方ができた。

白昼堂々、恐ろしい事件が起こる世の中になったとニュースで言われているが、実際の犯罪件数は昔よりずっと減っているのだ。

「草木も眠る」の英訳は?

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「草木も眠る」の英訳は「the witching hour」で表すことができます。

「the witching hour」

「the witching hour」は直訳すれば「魔女の時間」となり、これで「(魔物などが出そうな)真夜中」を意味することができます。

「midnight」でも「真夜中」は表せますが、「魔女」から連想されるイメージを含めてこちらが相応しいでしょう。「草木も眠る」に対して、西洋では「魔女」が夜の象徴になっていることがわかる面白い表現ですね。

ちなみに文法的な解説をすると、「witching」は名詞「witch」の分詞系で「魔女が出るような~、魔女にふさわしい~」と、後ろに続く「hour」を修飾できる形になっています。「witching」という単語はあまり耳にしないでしょうが、合わせて覚えておきましょう。

\次のページで「「草木も眠る」を使いこなそう」を解説!/

We always date in the witching hour.
私たちはいつも、草木も眠る真夜中にデートをする。

「草木も眠る」を使いこなそう

この記事では「草木も眠る」の意味・使い方・類語などを説明しました。マンガやアニメのなかで、「草木も眠る丑三つ時~」なんて、おどろおどろしく語られるシーンを見かけたことがあるでしょうか。

現代でもホラー作品などからもわかるように、暗闇は人々に色々なものを想像させるのかもしれません。みなさんも自身が持つ「暗い夜」に対するイメージを膨らませて、この言葉を理解してみましょう。

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国語言葉の意味

【慣用句】「草木も眠る」の意味や使い方は?例文や類語を元予備校講師がわかりやすく解説!

この記事では「草木も眠る」について解説する。

端的に言えば「草木も眠る」の意味は「夜がすっかり更けたこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「草木も眠る」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち

雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。

「草木も眠る」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「草木も眠る(くさきもねむる)」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「草木も眠る」の意味は?

「草木も眠る」には、次のような意味があります。

夜がすっかり更けて、すべてのものが寝静まることのたとえ。「草木も眠る丑(うし)三つ時」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「草木も眠る」

この言葉は、「夜が更(ふ)けて、人も物もすべて寝てしまっている様子」、または「それくらい深夜の時間帯」を指す言葉です。夜中、特に日付が変更してからの時間帯を考えてみるとよくわかるのではないでしょうか。

現代では夜中でも明るいこともあるとはいえ、深夜のしんと静まり返ったイメージは伝わるはず。この言葉が作られた昔の時代だったら、なおさらですね。ほとんどのものが眠っていてシーンと静まり返っている様子を想像して、そんな夜の深さをイメージしながら使ってみましょう。

また、用法としては「草木も眠る丑三つ時(うしみつどき)」というセットでの使い方で耳にすることも多いはず。これについては、次の語源の項で説明します。

「草木も眠る」の語源は?

次に「草木も眠る」の語源を確認しておきましょう。「草木も眠る丑三つ時」の解説からですが、この「丑三つ時」とは、時間を干支で表していた時代の言い方で、現在の時間で午前二時から二時半のこと。

これが落語などで「草木も眠る~」と調子を付けて語られたことで、表現が一般的にも定着したと考えられています。

ちなみに「丑三つ」は悪い方角とされる「鬼門」に当たり、ここから「恐ろしい」「お化けが出そう」といったイメージを呼び起こすことも。ただ深夜というのではなく、「何かが出てきそうな夜」と言いたい時に使える表現です。

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