この記事では「傷持つ脛」について解説する。

端的に言えば傷持つ脛の意味は「後ろめたさから堂々と振る舞えない様子」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
国立大学の国文科を卒業したあおやぎを呼んです。一緒に「傷持つ脛」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/あおやぎ

幼い頃から本を数えきれないほど読んできた活字中毒。国立大学の文学部国文科に入学し、日本語について学ぶ。2人の子育て経験を生かし、分かりやすく言葉の使い方について解説する。

「傷持つ脛」の意味や語源・使い方まとめ

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「傷持つ脛」という慣用句をご存知ですか?「きずもつすね」と読みます。また、「傷持つ足」「脛に傷」という表現があり、ほとんど同じ意味や使い方ですのでこの記事ではまとめて解説していきますね。

「傷持つ脛」の意味は?

「傷持つ脛」には、次のような意味があります。

傷(きず)持つ足

犯罪などの後ろ暗いところがあって、常に不安をいだいていることのたとえ。傷持つ脛(すね)。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「傷持つ足」

脛に傷

「脛に傷を持つ」という言い回しを略した言い方。内心やましいところがある、よくない隠し事がある、といった意味の表現。

出典:実用日本語表現辞典

犯罪や、その他でも何か悪いことをしてしまった人がその後ろめたさで不安を抱いている状態を表しています。悪事が広く知られているようなときには使いません。誰にも秘密にしている、もしくは知られていてもごく少数で目の前の人には知られていないときに後ろめたさや不安に駆られている状況についていう言葉です。

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「傷持つ脛」の語源は?

次に「傷持つ脛」の語源を確認しておきましょう。「すね」といえば脚の膝下のあたりですが、そこに傷があることがなぜ後ろめたさの例えになったのでしょうか?その由来には2つの説がありますのでご紹介していきます。

1つ目は「人から見えない向こうずねに傷がある」ことから「人には見せていない悪いところがある」という意味になったという説です。現代では向こうずねが見えないというイメージはあまりありませんが、着物を着ていた時代では向こうずねは基本的に隠れる場所でした。

2つ目は「脛に疵持てば笹原走る」ということわざです。笹がたくさん生えている笹原を、脛に傷がある人は痛くてゆっくり歩くことができず、おびえて走るだろうという例えで、やましいことがある人は堂々と世渡りができず、他人の目を気にしながら生きていくものだ、という意味になり、短く「傷持つ脛」「脛に傷持つ」などと使われるようになったと言われています。

「傷持つ脛」の使い方・例文

「傷持つ脛」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.健太は少年団でサッカーを教えていたが、不注意で生徒を事故に遭わせてしまった。それが傷持つ脛でサッカーから遠ざかっているようだよ。

2.そのドラマは、主人公の男性が過去の殺人を隠した脛に傷持つ身で、ハードボイルドな雰囲気があった。

3.浮気をしてしまったことが傷持つ足になって、彼女と一緒にいても生きた心地がしないんだ。

1.は自分の過失から起こった事故について、自責の念がありまた周りの目が気になって堂々とサッカーができない状態を表しています。2.ではドラマの主人公について述べていますね。「脛に傷持つ身」というのもよく使う表現です。3.では「傷持つ足」を使いました。隠しているのは彼女がいるのに浮気をしてしまったことです。犯罪などの世間一般に対しての悪いことだけでなく、誰か一人に対する不義理や裏切りなどに対しても使われることがあります。

「傷持つ脛」の類義語は?違いは?

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傷持つ脛、脛に傷持つ、傷持つ足と類似の表現は除いて、他に言い換えができる言葉をご紹介します。「悪いことを隠していて堂々とできない、後ろめたい気持ちがある」という意味の言葉が当てはまりますね。

\次のページで「その1「負い目がある」」を解説!/

その1「負い目がある」

「負い目」というのは、「恩義があったり、自分の側に罪悪感などがあったりして、相手に頭が上がらなくなるような心の負担」のことです。「傷持つ脛」が悪いことだけ使われるのに対し、こちらは恩義があって頭が上がらないといった場合にも使われます。また、特定の誰かや集団に対して「負い目がある」と表現するのがふつうで「傷持つ脛」のように「世間一般」に対しては用いません。

その2「やましい」

「良心がとがめる、後ろめたい」という意味です。「やましいところがある」などと使われますね。人には言えないことというニュアンスがありますが、おおむね自分の良心に照らしての判断についていうときに用います。犯罪などの悪事に関しても使いますが、それが社会的に悪いことだからというよりは当人の気持ちとして悪いことをしたと感じていることが分かるような表現です。

「傷持つ脛」の対義語は?

「悪いことを隠していて堂々とできない」という意味の「傷持つ脛」ですが、その対義語にはどのようなものがあるでしょうか。「悪いことをしていないため、正々堂々と振る舞うことができる」といった意味の言葉が当てはまりそうですね。いくつかありますのでご紹介します。

その1「清廉潔白」

刑事ドラマなどで耳にしたことがある言葉かもしれません。「心が清くて私欲がなく、後ろ暗いところのないこと」という意味の四字熟語です。「清廉」は心が清らかで私利私欲に溺れない様子を表し、「潔白」は心や行いがきれいなこと、後ろ暗いところがないことを表します。主に他者について述べる際に使う言葉ですが、自分に対して使うときには客観的な証拠があり身の潔白を主張する場面が多いです。

その2「青天白日」

「せいてんはくじつ」と読みます。晴れた青い空と日の光という清々しい光景から転じて、潔白で後ろ暗いところのない様子を表すようになりました。疑いがはれ、無罪が明らかになったときにも使います。「白日青天」とも言いますが、「晴天白日」とは言わないので注意が必要です。

「傷持つ脛」の英訳は?

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「傷持つ脛」「脛に傷持つ」などを英語で表現するとどのようになるでしょうか。2つほどご紹介します。

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その1「to have a guilty conscience」

直訳すると「罪悪感を持つ」という意味です。「guilty」は罪、「conscience」には「良心、善悪の判断力、分別、罪悪感」などの多くの意味がありますがここでは「罪悪感」という意味で使われています。この表現は重い罪について、本人にも深い自覚がある場合に使われるようです。

その2「to feel guilty」

「to have a guilty conscience 」と似ていますが、前者よりも少し軽いニュアンスも表現できます。罪の意識の多寡に関わらず使えますので、日常会話で耳にするのはこちらが多いでしょう。

He feels guilty,so he is taking care to avoid crowded places.彼は脛に傷持つ身なので、人混みを避けるようにしている。

「傷持つ脛」を使いこなそう

この記事では「傷持つ脛」について説明してきました。「傷持つ足」「脛に傷持つ」なども同様に、「罪悪感や後ろめたさがあるため堂々と振る舞えない」という意味の言葉でしたね。ことわざが由来の慣用句ですが、類義語には「やましい」「負い目がある」、対義語には「清廉潔白」、「青天白日」などがありました。できれば「脛に傷持つ身」にはなりたくありませんが、表現として使いこなせると良いですね。

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【慣用句】「傷持つ脛」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「傷持つ脛」について解説する。

端的に言えば傷持つ脛の意味は「後ろめたさから堂々と振る舞えない様子」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
国立大学の国文科を卒業したあおやぎを呼んです。一緒に「傷持つ脛」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/あおやぎ

幼い頃から本を数えきれないほど読んできた活字中毒。国立大学の文学部国文科に入学し、日本語について学ぶ。2人の子育て経験を生かし、分かりやすく言葉の使い方について解説する。

「傷持つ脛」の意味や語源・使い方まとめ

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「傷持つ脛」という慣用句をご存知ですか?「きずもつすね」と読みます。また、「傷持つ足」「脛に傷」という表現があり、ほとんど同じ意味や使い方ですのでこの記事ではまとめて解説していきますね。

「傷持つ脛」の意味は?

「傷持つ脛」には、次のような意味があります。

傷(きず)持つ足

犯罪などの後ろ暗いところがあって、常に不安をいだいていることのたとえ。傷持つ脛(すね)。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「傷持つ足」

脛に傷

「脛に傷を持つ」という言い回しを略した言い方。内心やましいところがある、よくない隠し事がある、といった意味の表現。

出典:実用日本語表現辞典

犯罪や、その他でも何か悪いことをしてしまった人がその後ろめたさで不安を抱いている状態を表しています。悪事が広く知られているようなときには使いません。誰にも秘密にしている、もしくは知られていてもごく少数で目の前の人には知られていないときに後ろめたさや不安に駆られている状況についていう言葉です。

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