この記事ではパワハラとモラハラの違いについてみていきます。パワハラはパワーハラスメント、モラハラはモラルハラスメントを略した言葉です。ハラスメントというのは「嫌がらせ」や「いじめ」という意味で、最近よく聞く言葉ですが良くない事ですね。我慢する必要はないぞ。
今回はそんなパワハラとモラハラの違いを、定義から確認しつつ、訴える方法までを会社員ライターtanokunと一緒に解説していきます。

ライター/さいとうれいこ

会社員ライター。企業に長く勤めており、職場内でのさまざまな人間関係をみつめてきた。モラハラやパワハラについて詳しく説明。

パワハラとモラハラの違いは相手や環境にある

image by iStockphoto

パワハラは、立場の違いから生まれる上下関係を利用し、立場が下の人に精神的・肉体的な苦痛を与える嫌がらせやいじめの事を言います。こうした状況が生まれやすいのは職場や学校です。

モラハラは、公的な立場としての上下関係ではありませんが、相手より自分の方が上だと思っている方が下だと思う方に、道徳や倫理に反し精神的に苦痛を与える理不尽な嫌がらせやいじめの事を言います。立場は関係ないので職場の同僚や学校の友達、そして夫婦や嫁姑の間でも起こる事です。

パワハラ:職場や学校など上下関係がある環境で起こる

職場や学校のように、人間関係において「上司と部下」「先輩と後輩」「コーチと生徒」のように力関係がある場合は、もともと立場の弱い人が我慢をせざるをえないので、思っていることを言えずコミュニケーションが不足しやすいという環境です。

上司の要求の伝え方が下手なだけなのに、立場の弱い部下や後輩が要求を理解しない事に苛立ちを感じ、大勢の前で怒鳴ったり仕事を与えなかったりなど、他の人と違う扱いをし始めます。部下や後輩はますます萎縮し、コミュニケーションどころではなくなってしまうのです。

このような事が積み重なった結果、パワハラという事態になってしまいます。

モラハラ:公の立場とは関係なく「心の優位性」が生まれる環境で起こる

職場の同僚や友達、夫婦や嫁姑など、公の立場で上下関係があるわけではありませんが「相手より自分の方がかわいい」や「相手より自分の方が仕事が出来る」など、主観的な見方に基づいて勝手に心の中で優越感を持っている場合、それを元に相手に対して悪口を言ったり、嫌味を言ったり、仲間外れにしたりして、相手を精神的に追い詰めます。

モラハラの場合は、モラハラをしている事が知れるとまずい第三者が近くにいる時は、わからないように振舞ったりするので、モラハラを受けているとしても表面化しにくく、陰湿な嫌がらせになりがちです。

パワハラとモラハラの定義

image by iStockphoto

日本では、パワハラとモラハラは違う意味合いを持つものとして使い分けられていますが、定義としてはパワハラはモラハラの一種とされています。パワハラは、大きな「モラハラ」という定義の中の一部分なのです。

\次のページで「パワハラの定義:職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える行為」を解説!/

パワハラの定義:職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える行為

パワハラは、立場の違いから生まれる上下の力関係を利用して、立場の弱い人に嫌がらせなどの精神的苦痛を与えるハラスメントの為、職場の上司から部下に対して起こりやすいと言えます。

しかし、少数ながら「部下から上司へのハラスメント」も存在するのです。「上下の力関係」とは、上から下に向けてのものとは限らない、という事ですね。仕事が出来ないと思われている上司に対して「指示が出されても聞こえないふりをする」「隣の課の課長ならすぐ対応してくれるのに」などと聞こえよがしに言う、などは上司に対する部下からのハラスメントと言えるでしょう。

モラハラの定義:道徳や倫理に反し精神的に苦痛を与える理不尽な嫌がらせ

 モラハラは、必ずしも立場の上下関係があるとは限りません。夫が人前で妻の事を、妻として合格点が与えられるような家事をしていない、などと貶めたり、実際に妻に貶めるような言葉を浴びせたり、などはモラハラにあたります。 パワハラとのはっきりした違いは、身体的な暴力は伴わないという事です。暴力を伴うものはドメスティックバイオレンス(DV)に分類されます。

パワハラとモラハラの法律上の違い

パワハラとモラハラは、似ているようで似ていないものだという事が分かりましたが、法律上はどうなのでしょうか。監督官庁は同じなのでしょうか?

パワハラ→改正労働施策推進法が関与

令和2年6月1日に改正労働施策推進法が施行され、職場でのパワーハラスメント対策が義務化されました。この法律に罰則はありませんが、必要に応じて監督官庁である厚生労働省が勧告・指導することになっており、規定違反が改善されない場合は、企業名を公表できることになっています。

モラハラ→家庭内のモラハラであればDV防止法が関与

モラハラ独自の防止法はありません。職場内でのモラハラであれば、法律的にはパワハラと同じ意味のものとして扱われます。家庭内でのモラハラであればDV防止法の対象になり、行政に通報や保護制度を整えさせ、裁判所が保護命令を出すことも出来るのです。DV加害者には罰金や懲役などの刑事罰が科されることとなります。

\次のページで「パワハラやモラハラを受けたらどこに相談すればいい?」を解説!/

パワハラやモラハラを受けたらどこに相談すればいい?

image by iStockphoto

パワハラやモラハラを受けたら泣き寝入りする必要はありません。理不尽だと思ったら、まずは相談に行き、現状を話してみましょう。相談をするだけでもだいぶ心が軽くなると思います。

職場のハラスメントは社内のコンプライアンス窓口か労働基準監督署へ相談

職場でのパワハラやモラハラであれば、証拠を揃えて社内のコンプライアンス窓口か労働基準監督署へ相談するのが良いでしょう。社内で起こっていることを、社内のコンプライアンス窓口に相談する事に抵抗がある場合は、直接労働基準監督署に相談しても問題はありません。

ただ、労働基準監督署はこのような紛争について、助言や指導は出来ますが、解決までを担当する機関ではありません。

職場以外のモラハラであれば、役所で開催している弁護士の法律相談に行くのが良いでしょう。

それでもダメなら弁護士へ相談

労働基準監督署への相談でも解決しない場合には、弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士はこうした問題を数多く扱っていますので、適切なアドバイスをもらえるでしょう。ただ、相談の結果弁護士に解決を依頼する事にした場合、依頼人であるあなたを守るために弁護士は徹底的に闘うことになります。モラハラやパワハラが解決しても、その後会社に居づらくなってしまう可能性に考慮が必要です。

家庭内のモラハラであれば、弁護士に解決を依頼する事はかなり有益でしょう。ただこちらも、同居している相手に対し、同じ家のポストに弁護士からの内容証明郵便が届いたりしてしまうので、これまで以上に同じ家に住みづらくなる事は想定しておく事が大切です。

パワハラやモラハラの訴え方とは?

パワハラもモラハラも訴えるとなれば方法は同じです。「証拠を押さえて裁判にする」という方法ですが、パワハラやモラハラの証拠集めはとても難しいもの。しかも苦労して証拠を集めても、それが裁判上の証拠能力があるかどうかは分かりません。

こうした判断を自分でするのはまず無理なので、弁護士を通じて裁判をするのが良いでしょう。ただ、裁判に勝っても、慰謝料の相場は50~100万の間と言われており、弁護士費用を支払うと手元にはほとんど残らないというのが実情です。

訴えるのは最終手段と考えた方が良いでしょう。

パワハラの場合

訴えるとしても、いきなり訴えると相手は「いや、全くそんなつもりではなかった」と、とぼけられてしまうかも知れません。訴える前に、話しにくいでしょうが、「相手の言動を自分はパワハラだと捉えている」事を相手に伝えましょう。

それで態度が改善することもありますが、もし改められなければ、その相手を監督することの出来る上司や人事部に相談します。最近は社内コンプライアンスを厳しくする風潮が高まり、人事部に相談して解決する事も多いので、解決の糸口になるかも知れません。

それでも改善されない時には

・録音などの音声データ

・医師の診断を受けている場合は診断書

・パワハラを受けた日時と内容を記録したメモ

・同僚の証言

を揃えて弁護士に相談し、訴訟の準備を進めましょう。

証拠集めの中で、一番苦労するのは「同僚の証言」です。同僚は、自分の証言で自分自身が会社に居づらくなる事を恐れ、直前で証言を翻す可能性もあります。手堅く証言をしてくれる同僚を選ぶ事が重要でしょう。

モラハラの場合

モラハラも、基本的な流れはパワハラと同じですが、実際に裁判を起こして原告が勝訴した例も少なからずあります。以下の事例では一審で慰謝料297万円、その後企業と問題の上司が控訴し、控訴審では165万円に減額されて結審しました。

1 上司の度重なる暴言により原告はうつ病を発症

2 その為3ヶ月の休養を願い出た際に有休を使うよう指示された

3 3ヶ月休養するのであれば希望している異動はさせないと言われた

4 コンプライアンス室長に訴えたものの、問題の上司の行動改善には至らなかった

この一連の流れについて、うつ病を発症しながら証拠集めをしなければならなかったわけです。会社としては、裁判などで大事になるのは困るでしょうから、もみ消そうとする動きもあったかもしれません。

裁判に勝訴はしたものの、受けた被害に対して慰謝料の額は妥当なものなのか、という疑問は残ります。

似たような言葉、セクハラとは?

セクハラはセクシャルハラスメントの略で、異性に性的に不快な思いをさせる言動を繰り返し、拒否された腹いせに不利な査定を行ったりすることです。以前は男性が女性に対して行うセクハラがほとんどでしたが、近頃は女性の上司が部下の男性にセクハラをするパターンも増えています。このセクハラも、パワハラ同様、モラハラの一部分という位置づけです。

パワハラとモラハラの違いに応じた対策が大切

パワハラはモラハラの一部分であり、大きな意味ではモラハラそのものに対しての適切な対策が必要になりますが、訴えるという方法だけではなく、職場であれば配置換えの希望を出したり、思い切って転職するという方法もあります。そして家庭内のハラスメントであれば離婚するという選択肢もあるでしょう。これは決して逃げではなく、自分らしく生きるための一つの選択肢です。

裁判を起こしたとしても、かけた労力に対してそれほど報われるわけではなく、職場に居づらくなるなどの理不尽さが残り続ける結果になる事が多いので、配置換えや転職なども視野に入れつつ、弁護士と相談して最も納得のいく対策を講じるのが良いでしょう。

" /> パワハラとモラハラの違いは相手だった!定義や法律・相談方法や訴え方など現代の職場問題について現役会社員が詳細わかりやすく解説 – Study-Z
言葉雑学

パワハラとモラハラの違いは相手だった!定義や法律・相談方法や訴え方など現代の職場問題について現役会社員が詳細わかりやすく解説

この記事ではパワハラとモラハラの違いについてみていきます。パワハラはパワーハラスメント、モラハラはモラルハラスメントを略した言葉です。ハラスメントというのは「嫌がらせ」や「いじめ」という意味で、最近よく聞く言葉ですが良くない事ですね。我慢する必要はないぞ。
今回はそんなパワハラとモラハラの違いを、定義から確認しつつ、訴える方法までを会社員ライターtanokunと一緒に解説していきます。

ライター/さいとうれいこ

会社員ライター。企業に長く勤めており、職場内でのさまざまな人間関係をみつめてきた。モラハラやパワハラについて詳しく説明。

パワハラとモラハラの違いは相手や環境にある

image by iStockphoto

パワハラは、立場の違いから生まれる上下関係を利用し、立場が下の人に精神的・肉体的な苦痛を与える嫌がらせやいじめの事を言います。こうした状況が生まれやすいのは職場や学校です。

モラハラは、公的な立場としての上下関係ではありませんが、相手より自分の方が上だと思っている方が下だと思う方に、道徳や倫理に反し精神的に苦痛を与える理不尽な嫌がらせやいじめの事を言います。立場は関係ないので職場の同僚や学校の友達、そして夫婦や嫁姑の間でも起こる事です。

パワハラ:職場や学校など上下関係がある環境で起こる

職場や学校のように、人間関係において「上司と部下」「先輩と後輩」「コーチと生徒」のように力関係がある場合は、もともと立場の弱い人が我慢をせざるをえないので、思っていることを言えずコミュニケーションが不足しやすいという環境です。

上司の要求の伝え方が下手なだけなのに、立場の弱い部下や後輩が要求を理解しない事に苛立ちを感じ、大勢の前で怒鳴ったり仕事を与えなかったりなど、他の人と違う扱いをし始めます。部下や後輩はますます萎縮し、コミュニケーションどころではなくなってしまうのです。

このような事が積み重なった結果、パワハラという事態になってしまいます。

モラハラ:公の立場とは関係なく「心の優位性」が生まれる環境で起こる

職場の同僚や友達、夫婦や嫁姑など、公の立場で上下関係があるわけではありませんが「相手より自分の方がかわいい」や「相手より自分の方が仕事が出来る」など、主観的な見方に基づいて勝手に心の中で優越感を持っている場合、それを元に相手に対して悪口を言ったり、嫌味を言ったり、仲間外れにしたりして、相手を精神的に追い詰めます。

モラハラの場合は、モラハラをしている事が知れるとまずい第三者が近くにいる時は、わからないように振舞ったりするので、モラハラを受けているとしても表面化しにくく、陰湿な嫌がらせになりがちです。

パワハラとモラハラの定義

image by iStockphoto

日本では、パワハラとモラハラは違う意味合いを持つものとして使い分けられていますが、定義としてはパワハラはモラハラの一種とされています。パワハラは、大きな「モラハラ」という定義の中の一部分なのです。

\次のページで「パワハラの定義:職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える行為」を解説!/

次のページを読む
1 2 3
Share: