日本食の文化を説明するとしたら、どんな料理を挙げるでしょうか。おそらくラインナップから寿司を外す人はまずいないでしょう。高級な寿司店からリーズナブルな回転寿司まで、日本には数多くの店が寿司を提供している。もはや和食を代表する寿司ですが、これにはもう一つ鮨という漢字を当てはめることも多い。この記事では「寿司」と「鮨」の違いについて雑学オタクのライターおとのと一緒に解説していきます。

ライター/おとの

日本と世界の食文化に興味が尽きない雑学オタク。特別な日は大抵回転寿司か宅配寿司を食べるため、寿司は身近で大好きな料理。どんなに満腹でもサーモンで締め括らなければ気が済まない。

寿司と鮨の違いはズバリ種類!

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寿司と鮨の違いは、本来は明確に決められたものではありません。そのため、実際にはどちらを利用しても間違いではないのです。しかし、一般的に考えられている違いはあります。それはズバリ、それぞれの漢字が示すすし料理の種類。ここでは、寿司と鮨が表すのはどんなすしなのかを確認しましょう。

寿司:すし料理全般

寿司はすし料理全般を表します。寿司という漢字は実は当て字。「寿を司る」として縁起が良いため、江戸時代から使われ始めました。

寿司と言うと魚の刺身をシャリと呼ばれる酢飯に乗せた握り寿司をイメージしやすいですが、油揚げを使ったいなり寿司や金糸卵と花でんぶで飾ったちらし寿司にもこの漢字を当てはめることができます。寿司はネタや種類に限らずに利用できる万能な漢字なのです。

鮨:魚介を使ったすし

鮨は寿司と併用して現代でも利用される漢字です。寿司という当て字が利用される以前から用いられてきました。

この漢字を偏と旁で分けると「魚」と「旨」になりますね。つまり、鮨が表すすしは魚介類をネタとして使ったもの。旨いという漢字が入っていることからも、看板に鮨が利用されていると職人のこだわりを感じ、期待が高まりますね。

寿司と鮨の定義の違いとは?

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前の項では、2つの漢字が示すすしの種類をざっくりと解説しました。では、それらのすしの定義とはどのようなものでしょうか。これもハッキリとした定義付けがされているわけではないのですが、巷説としてどのようなイメージを持たれているのかを見ていきましょう。

寿司は酢飯とネタを合わせたもの

寿司は酢飯とネタや具材を合わせた料理の総称。酢飯にネタを乗せたり、具材を混ぜ込んだり、中に酢飯を包み込んだりとその調理方法は非常に多岐にわたります

寿司は種類と見た目も様々。例えば「いなり寿司」を見てみても、中に詰める酢飯をシンプルに仕上げるものもあれば、たくさんの具材を混ぜ込んだ五目いなりや、山菜をふんだんに使った山菜いなりというものもあります。コロンとした形が可愛く色鮮やかな手毬寿司も、外側の材料を薄焼き玉子やサーモンや生ハムと変化させるだけで色々なアレンジが可能ですね。

酢飯と具材を組み合わせて、無限に楽しめる料理が寿司なのです。

鮨は寿司のなかでもネタが魚介類であるもの

鮨は魚介類をネタに使った寿司を表す漢字だと上記しました。基本的な定義もそれと同様に酢飯と魚介を合わせたものと考えて良いでしょう。一般的にはやはり握り鮨を思い浮かべやすいのですが、押し鮨にもサバやマスなどの魚が使われているので、鮨の定義に当てはまります。押し鮨は関西で発展して全国に広まった鮨。地域や季節によって異なる魚を味わうことができます。

同じ握りでも厚焼き玉子を乗せたものは定義には当てはまりません。しかし鮨屋の看板を掲げた店のメニューに魚介以外の握りがあるのも実情です。同様に、海鮮ちらしを鮨と表して良いのかも微妙なところ。これらはもともと厳密に決められていることではないので、美味しく食べることが一番大切ですね

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寿司と鮨はこうして使い分ける!具体例から見てみよう

ここまでは、寿司と鮨の表す料理や定義を解説しました。では次はそれらの使い分けについて具体例を用いて確認してみましょう。2人の人物がすし料理について会話しているという場面で、寿司と鮨はそれぞれどのように使われているかに注目して下さいね。

寿司は色んな種類のすし料理を挙げる時に使う

寿司を取りげた日常会話を見ていきましょう。

A「お祝い事のときにはどんなご馳走を食べる?」
B「ウチはお寿司かな。生の魚が苦手だから握り寿司は食べないけど、いなり寿司や巻き寿司は大好き」
A「巻き寿司って、干瓢とかキュウリや玉子焼きが一緒に入ったやつ?」
B「そういう太巻き以外にも、サラダ巻きや納豆巻きもあるよ。でも一番好きなのは豚カツを巻いた寿司!」
A「それはすごいボリュームになりそうだね…」

握り寿司、いなり寿司、巻き寿司と3つの種類の寿司が出てきましたが、全て寿司という漢字で網羅することができます。握り寿司は魚介を使ったネタがほとんどですが、寿司でも鮨でも問題ないのです。

鮨は魚介を使った寿司を挙げる時に使う

A「今日は奮発して鮨屋に行こうか。何のネタが一番好き?」
B「鮨のネタなら、中トロやハマチが好きだよ。でもエビの鮨も捨てがたいな」
A「東京に来て、蒸しエビが主流で驚いたよ。北海道じゃ握り鮨は生の甘エビが一般的だからね」
B「北海道と東京ではエビの中に含まれる水分量が違うから、それぞれ美味しい食べ方が違うんだって聞いたことがあるよ」
A「なるほどね」

\次のページで「【余談1】寿司の歴史」を解説!/

鮨についての会話は中トロ、ハマチ、エビなどの魚の名前が出てきましたね。握り鮨もたくさんのネタの種類がありますが、やはり魚介が使われていることを前提にして使うのが無難でしょう。オマケにエビについての豆知識も入れてみました。

【余談1】寿司の歴史

寿司は日本人の生活と文化に根強く結びついています。節分の恵方巻や雛祭りのちらし寿司など、年中行事に食べる伝統的な寿司もあれば、祝い事や人が集まった際に寿司を食べることも多いでしょう。この項では、寿司が日本の歴史のなかでどのように変化し、日本を象徴するまでに発展したのかを解説します。

寿司の起源は弥生時代

一説では、寿司は弥生時代に始まった稲作と共に日本に伝えられたと言われています。当時はもちろん、生の魚や肉を冷凍保存しておく場所も技術もありませんでした。そこで生み出されたのが、熟鮓(なれずし)という保存食です。白飯の乳酸発酵を利用して作るもので、奈良時代には朝廷への貢物としても献上されていました。これが寿司の歴史の始まりとなります。

寿司の原形は江戸時代

江戸時代になると一般的に米酢が使われるようになり、わざわざ発酵させる必要がなくなりました。そのため、作って食べるのに待つ必要がない「早寿司」と呼ばれる寿司が誕生します。当時の寿司は一口で食べることのできる大きさではなかったため、切って食べていました。現在の回転寿司で1皿に2貫ずつ乗っているのはその名残です。

寿司の完成は明治時代

寿司のネタとして刺身を乗せるようになったのは明治時代と言われています。明治時代には流通と製氷の技術が発展したため、刺身をネタとして扱えるようになりました。現代と同じスタイルの寿司は、ここでひとまず完成したことになります。

大正時代になると電気で冷蔵保存が可能となり、ネタの種類はどんどん増えていきました。大正12年に関東大震災が起こったことで、寿司職人が全国に散らばり、その結果として日本全国に寿司が広まったのです。

【余談2】海外の寿司事情

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海外において、寿司は日本の代名詞と言っても過言ではありません。現在では日本以外にも寿司店はたくさんありますし、日本食ブームの影響を受けてスーパーで簡単に手に入る国もあるようです。しかしその実態は、日本人が驚くようなアレンジが加えられているものも。この項では、海外の寿司事情について見ていきましょう。

\次のページで「海外の寿司はロールが主流?」を解説!/

海外の寿司はロールが主流?

海外でも「SUSHI」と呼ばれて知名度の非常に高い寿司ですが、海外(特にアメリカ)でイメージされるのは握り寿司よりも巻き寿司のようです。巻き寿司はロールと呼ばれ、特に有名なのはカリフォルニアロールというカニカマやアボカドを具材にしたもの。そのほか、サーモンとクリームチーズを具材にしたり、海外ならではの食材が使われていたりと様々な種類の巻き寿司がありますが、共通しているのは海苔が酢飯の内側に巻かれていること。海外では真っ黒の海苔が受け入れられ難く、あまり目立たないように配慮して内側に巻かれるようになりました。

海外で人気の寿司ネタ、嫌われる寿司ネタは?

海外で人気なのはサーモンやマグロなど、日本でも老若男女に好まれている定番のネタ。身に脂がのっていて、魚の生臭さが少ないことが多くの海外のファンを獲得したようです。特にサーモンは世界中の多くの国で食べられていますから、生でも抵抗が少ないのかも知れません。

日本ではよく食べられているネタでも、海外の人には受け入れられないものもあります。その代表がイカ。食感が独特で噛みにくいことや見た目が怖いとの意見が見られました。また海外には魚卵を食べる文化もないため、いくらが苦手な人も多いようです。

似たような言葉、鮓とは?

鮓は最も古くから使われている漢字で、古来に中国から伝わった熟鮓(なれずし)を指します

熟鮓とは魚介や獣肉を塩と米飯で乳酸発酵させた保存食。作り方や発酵させる期間は様々ですが、乳酸発酵する際に酸味と旨味が出てクセになる味わいに仕上がります。基本的には漬け床である米は食べないため、寿司の起源と言えども、一般的に考えられる寿司とは全く違う食べ物です。現在でも日本各地で材料を変えた熟鮓が郷土料理として親しまれています。

寿司は日本の技の集大成!

寿司は日本の技が詰まった料理です。職人はネタの種類によって包丁の使い方を変え、その魚が一番美味しく食べられる方法で調理します。ちらし寿司などに乗せる野菜を飾り切りにすると見た目が一層華やかに。鮮度が命の魚を素早く運搬する技術も必要ですし、回転寿司にも安く早く提供するためのテクノロジーが駆使されています。何より、生の魚を安全に食べることができるほどの衛生管理ができているというのは素晴らしいことです。もちろん、個人の好き嫌いはあって当たり前。しかし、寿司が日本を代表する食であることは、ぜひとも誇って欲しいと思います。

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雑学食べ物・飲み物

3分でわかる寿司と鮨の違い!定義や使い分け方や歴史、鮓についても雑学オタクライターが徹底わかりやすく解説!

寿司と鮨はこうして使い分ける!具体例から見てみよう

ここまでは、寿司と鮨の表す料理や定義を解説しました。では次はそれらの使い分けについて具体例を用いて確認してみましょう。2人の人物がすし料理について会話しているという場面で、寿司と鮨はそれぞれどのように使われているかに注目して下さいね。

寿司は色んな種類のすし料理を挙げる時に使う

寿司を取りげた日常会話を見ていきましょう。

A「お祝い事のときにはどんなご馳走を食べる?」
B「ウチはお寿司かな。生の魚が苦手だから握り寿司は食べないけど、いなり寿司や巻き寿司は大好き」
A「巻き寿司って、干瓢とかキュウリや玉子焼きが一緒に入ったやつ?」
B「そういう太巻き以外にも、サラダ巻きや納豆巻きもあるよ。でも一番好きなのは豚カツを巻いた寿司!」
A「それはすごいボリュームになりそうだね…」

握り寿司、いなり寿司、巻き寿司と3つの種類の寿司が出てきましたが、全て寿司という漢字で網羅することができます。握り寿司は魚介を使ったネタがほとんどですが、寿司でも鮨でも問題ないのです。

鮨は魚介を使った寿司を挙げる時に使う

A「今日は奮発して鮨屋に行こうか。何のネタが一番好き?」
B「鮨のネタなら、中トロやハマチが好きだよ。でもエビの鮨も捨てがたいな」
A「東京に来て、蒸しエビが主流で驚いたよ。北海道じゃ握り鮨は生の甘エビが一般的だからね」
B「北海道と東京ではエビの中に含まれる水分量が違うから、それぞれ美味しい食べ方が違うんだって聞いたことがあるよ」
A「なるほどね」

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