この記事では、「下衆の勘繰り」について解説する。

「下衆」ってのはなかなかきつい響きの言葉ですね。この言葉から「下衆の勘繰り」がいい意味で使われるものではないということは、容易に察することができる。しかし朝のニュース番組でコメンテーターがうっかりこの言葉を使ってしまい、ちょっとした炎上騒ぎになったこともあるらしいのです。不用意に発言して無礼をはたらかないためにも、言葉の意味はしっかりと把握しておきたいもんだ.

今回は「下衆の勘繰り」が度を越して自滅しがちなライターのぷーやんを呼んです。お得意の「下衆の勘繰り」について、意味や使われ方を説明してもらう。

ライター/ぷーやん

webライター歴6年。鍛えられた語彙と文章力は本業でも発揮され、社内ルールの書き換え担当に。あるとき下衆の勘繰り(心配性)をこじらせて強迫観念にかられ、心理カウンセラーのお世話になったことがある。

「下衆の勘繰り」の意味と使い方

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「下衆の勘繰り」ということわざについて、「汚い人間の行う汚い推測」というような意味で、なんとなく理解している方が多いのではないでしょうか?しかし「下衆」も「勘繰り」も見慣れない漢字であまり頻繁に使う言葉ではなさそうですので、「正確な意味は?」と聞かれるとちょっと心もとないですよね。そこでまずは、「下衆の勘繰り」の意味と使い方をみていきましょう。

「下衆の勘繰り」の意味は「下品な人の心配」

「下衆」と「勘繰る」は、辞典で次のように書かれています。

1 心根の卑しいこと。下劣なこと。また、そのようなさまやその人。「―な根性は持つな」
2 身分の低い者。
「未学を軽んぜず―をも侮らず」〈露伴・五重塔〉

出典:デジタル大辞泉(小学館) 「下衆」

[動ラ五(四)]あれこれ気を回して悪い意味に考える。邪推する。「何か裏があるのではないかと―・る」

出典:デジタル大辞泉(小学館) 「勘ぐる」

これら2つの言葉を合わせた「下衆の勘繰り」の意味は、「卑しい人や身分の低い人が、気をまわして悪い意味に考える」となります。もう少し端的には、「下品な人の心配」と言えるでしょう。

「下衆の勘繰り」の使い方

つぎに「下衆の勘繰り」をどういう風に使えばいいのかを示す例文をご紹介します。

\次のページで「「下衆の勘繰り」の類語」を解説!/

1.お前の彼女が先週末ほかの男と歩いていたって?それは下衆の勘繰りってやつだよ。俺は彼女から「兄貴と買い物に行く」って聞いていたからな。
2.貴社の資材は他社と比べて明らかに値段が高いです。下衆の勘繰りですが、弊社なら文句を言わないと高を括ってらっしゃるとお見受けします。

男女関係では相手を想うあまり、ついつい疑り深くなってしまいがちです。しかし相手の自由を尊重することが、本当の愛情というものでしょう。1.の例では『彼女が浮気をしているんじゃないか』という確証のない疑念に対して、「下衆の勘繰り」を使っていますが、戒めの意味をこめてこの言葉をチョイスしたのでしょうね。

2.の例は取引先とのネゴシエーションのシーンで、自社の考えを表面上へりくだって表現しています。ややハードな内容ですが、業者の言い値を信じ込んで買い続けてしまうのは、ビジネスでは危険というもの。他社と比較して高いなら、なぜ高いのかを聞かなければならないこともあります。

「下衆の勘繰り」の類語

桜木先生の言う通りで、言葉の意味をきちんと理解して使いこなすには、類義語と対義語を知っておくべきでしょう。まずは「下衆の勘繰り」の類義語を3つ挙げます。

「杞憂」:心配しないでいいことを心配すること

「杞憂」は昔中国にあった「杞」の国に「天と地が崩れたらどうしよう」と心配している人がいた、という文献が由来。この話で悩んでいたのは「下衆」ではなさそうですが、無用な心配という部分は、「下衆の勘繰り」と類似していますね。

「取り越し苦労」:どうなるかわからないことを心配すること

「取り越す」は「期限よりも前にする」という意味。したがって「取り越し苦労」は「まだ起きてもいないことに苦労する」ことになり、転じて「不確実な未来のことを心配する(のは無駄)」という使い方をされます。

「邪推」:他人の行為を悪い意味にひがんで推量すること

「他人」「ひがむ」を含意するところが、「下衆の勘繰り」にもっとも近い表現と言えるでしょう。なぜなら「杞憂」や「取り越し苦労」は自然現象にも使えますが、「下衆」の意味する「品位のなさ」は、人間社会の中にしかない評価だから。

\次のページで「「下衆の勘繰り」の対義語」を解説!/

「下衆の勘繰り」の対義語

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類義語の次は、対義語をみていきましょう。「下衆の勘繰り」はことわざであり、同じことわざの中に反対の意味を持つものはありません。したがってここでは「下衆」と「勘繰り」にわけて考えてみます。

「下衆」の対義語

古語では「下衆」に対して「上衆」という言葉がありますが、これはとりもなおさず「貴人」です。ほかの表現では、「貴族」「上品な人」「優雅な人」あたりが「下衆」の対義語と言えるでしょう。

「勘繰り」の対義語

「勘繰り」は「あれこれ気を回して悪い意味にとる」でしたね。「あれこれ気を回す」に対しては「無頓着」が、「悪い意味にとる」に対しては「楽観視」が対義語として挙げられるでしょう。

それぞれの対義語を足してみると…?

「下衆」と「勘繰る」の対義語をそれぞれ合わせてみると、「貴族の無頓着」や「優雅な人の楽観視」が「下衆の勘繰り」の対義語ということに。当然聞いたことのない言葉だと思います。しかし「下衆の勘繰り」の持つ心や生活に余裕のない保身的な心証を、見事に翻した言葉だと思いませんか?

「下衆の勘繰り」の英語表現

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最後に、「下衆の勘繰り」を英語にしたらどうなるかをご紹介します。

「下衆の勘繰り」の意味解釈

「下衆の勘繰り」はことわざですが、以下に紹介する2つの表現もまた、英語での似たような意味合いのことわざです。日本人の感覚とちょっと違うと思うかもしれませんので、なぜこの英訳になるかのもととなる解釈を先にお伝えしておきましょう。

「下衆の勘繰り」の意味は「下品な人が気を回した結果の心配」でしたね。ここで「下品な人」が「心配」してしまうのは、「ほかの人が自分と同じように考えると思っているから」です。

先述した例文の1.を思い出してください。「彼女が男と歩いていた=浮気」という心配は、心配している当人が「自分が女の人と2人でいるときは浮気の可能性が高い」と思っているからと解釈できてしまうことに。この理解に立つと、「下衆の勘繰り」の英語訳は次のようになります。

\次のページで「英訳1「The thief thinks all people like himself.」」を解説!/

英訳1「The thief thinks all people like himself.」

1語ずつ日本語にすると、「泥棒はみんなが自分と同じだと思っている」です。「泥棒」=「品位のない人」と考えてください。

英訳2「He thinks everyone is like him.」

前項のことわざは古い表現とのことで、もう少しシンプルに言い換えるとこちらの表現に。「He」=「品位のない人」です。

ときには必要な「下衆の勘繰り」の懐疑さ

この記事では、「下衆の勘繰り」について解説しました。どこかで聞いたことのある言葉だったかもしれませんが、何の気なしに使うと相手の機嫌をすこぶる損ねる恐れがありますので、ご注意を。

基本的に悪い意味で使われる「下衆の勘繰り」。確かにいつも疑心を持って人に接する姿勢は、とても褒められたものではありません。しかしそうした穿った視点からは、ときに決定的に重要な問題点が見つかったりもするものです。「勘ぐるのは悪いことだから」と意固地にならずに、いろいろな可能性を考えてみることはとても大切なこと。

食わず嫌いにならないように、しかし疑念にかられ続けないようにも注意して、バランスよく「下衆の勘繰り」を使いこなしてみてはいかがでしょうか。

英語の勉強には洋楽の和訳サイトもおすすめです。
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国語言葉の意味

「下衆の勘繰り」の意味って?実は必要悪?使い方・類語・対義語・英語表現について心配症をこじらせているwebライターがわかりやすく解説!

この記事では、「下衆の勘繰り」について解説する。

「下衆」ってのはなかなかきつい響きの言葉ですね。この言葉から「下衆の勘繰り」がいい意味で使われるものではないということは、容易に察することができる。しかし朝のニュース番組でコメンテーターがうっかりこの言葉を使ってしまい、ちょっとした炎上騒ぎになったこともあるらしいのです。不用意に発言して無礼をはたらかないためにも、言葉の意味はしっかりと把握しておきたいもんだ.

今回は「下衆の勘繰り」が度を越して自滅しがちなライターのぷーやんを呼んです。お得意の「下衆の勘繰り」について、意味や使われ方を説明してもらう。

ライター/ぷーやん

webライター歴6年。鍛えられた語彙と文章力は本業でも発揮され、社内ルールの書き換え担当に。あるとき下衆の勘繰り(心配性)をこじらせて強迫観念にかられ、心理カウンセラーのお世話になったことがある。

「下衆の勘繰り」の意味と使い方

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「下衆の勘繰り」ということわざについて、「汚い人間の行う汚い推測」というような意味で、なんとなく理解している方が多いのではないでしょうか?しかし「下衆」も「勘繰り」も見慣れない漢字であまり頻繁に使う言葉ではなさそうですので、「正確な意味は?」と聞かれるとちょっと心もとないですよね。そこでまずは、「下衆の勘繰り」の意味と使い方をみていきましょう。

「下衆の勘繰り」の意味は「下品な人の心配」

「下衆」と「勘繰る」は、辞典で次のように書かれています。

1 心根の卑しいこと。下劣なこと。また、そのようなさまやその人。「―な根性は持つな」
2 身分の低い者。
「未学を軽んぜず―をも侮らず」〈露伴・五重塔〉

出典:デジタル大辞泉(小学館) 「下衆」

[動ラ五(四)]あれこれ気を回して悪い意味に考える。邪推する。「何か裏があるのではないかと―・る」

出典:デジタル大辞泉(小学館) 「勘ぐる」

これら2つの言葉を合わせた「下衆の勘繰り」の意味は、「卑しい人や身分の低い人が、気をまわして悪い意味に考える」となります。もう少し端的には、「下品な人の心配」と言えるでしょう。

「下衆の勘繰り」の使い方

つぎに「下衆の勘繰り」をどういう風に使えばいいのかを示す例文をご紹介します。

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