秋になると花を咲かせるセイタカアワダチソウとブタクサ。秋の花粉症の原因になる迷惑な雑草として、名前を知っている人も多いかもしれませんね。ですが、実は花粉症の原因になるのは片方だけなんです。正しく見分けることで、アレルギーの予防もしやすくなるぞ。また、両者の有効な駆除方法についても紹介していこう。ブタクサアレルギーにも詳しい現役薬剤師ライター、アラノるかと一緒に解説していきます。

ライター/アラノるか

現役薬剤師ライター。耳鼻科からのブタクサアレルギー用処方せんも扱う。郊外住まいで、セイタカアワダチソウもブタクサも身近。患者さまへの説明同様、わかりやすい解説を心がけている。

1.あなたは混同してない?セイタカアワダチソウとブタクサの違い

セイタカアワダチソウブタクサは、どちらも秋に花をつける雑草。両方とも日本全国の道端や空き地、河原などに群生するため、目にしたことがある方も多いでしょう。

ただし、両者は混同されたり間違って覚えられていることもあります。写真を見ながら、正しい見分け方を解説していきましょう。

1-1.写真で見るセイタカアワダチソウの特徴

image by iStockphoto

セイタカアワダチソウは、キク科アキノキリンソウ属の多年草。円錐形の黄色の花が終わったあと、泡立つような綿毛ができることが日本語名の由来です。

葉は細長く、先がとがっています。

1-2.写真で見るブタクサの特徴

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ブタクサは、キク科ブタクサ属の一年草。数ミリの黄色い小花がつきますが、遠目には見えづらく花穂は緑色に見えます。日本語名は英語での通称名、hogweed(ホッグウィード)に由来していて、hogは豚、weedは雑草を意味するのです。

葉っぱは細く切れ込んで分裂し、ヨモギに似た形をしています。

1-3.葉の形で見分けよう

上の写真で分かるように、セイタカアワダチソウの葉は細長く、切れ込みがなくすっきりしています。対してブタクサの葉は切れ込みがあり広がっているのです。

まだ花がついていない時期は、見た目が似ているため両者を見分けにくいのですが、葉の形に着目すれば区別しやすいですね。

1-4.開花時期で見分けよう

セイタカアワダチソウの開花時期は10~11月。目立つ花が少なくなってくる時期で、チョウやハチがよく集まります。ブタクサの開花時期はそれより早く、7~10月で、地域にもよりますが花の最盛期は9月中旬です。

秋に花が咲く植物というイメージの両者ですが、ブタクサが先に咲き、秋が深まってからセイタカアワダチソウの花期がやってきます。

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2.花粉症の原因になるのはブタクサ!

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セイタカアワダチソウの黄色く目立つ花は、いかにもたっぷりと花粉を飛ばしそう。対してブタクサのささやかな花は、一見するとそこまで花粉を飛ばすようには見えません。しかしその印象は大きな間違い。

実は花粉症を引き起こすのはブタクサの方で、セイタカアワダチソウの花粉は花粉症を起こさないのです。この違いの原因は、それぞれの繁殖の仕方にあります。

2-1.セイタカアワダチソウが花粉症の原因にならないわけ

セイタカアワダチソウは、虫に花粉を運んでもらうタイプの虫媒花です。花粉が重く遠くには飛びにくいため、風に乗って花粉症の原因になることはありません

他の花が少ない晩秋において、セイタカアワダチソウは虫たちには大人気。ミツバチの蜜源ともなるほどですが、採れた蜜には蒸れた靴下のにおいとも評される独特のにおいがあるようです。日本ではあまり蜂蜜としては市販されずに、巣に残されミツバチの冬越しの食料となっています。

2-2.なぜブタクサは花粉症を起こすのか

ブタクサは、風で花粉を飛ばして受粉させる風媒花であるため、花粉が大量に飛散します。そのため、人が吸い込んでしまい花粉症の原因になるのです

実はブタクサ花粉症は、日本で報告された初めての花粉症。スギやヒノキの花粉症が注目される以前から見つかっていました。

3.セイタカアワダチソウとブタクサ、駆除にはどうすればいい?

セイタカアワダチソウとブタクサは、ともに外来種で、要注意外来生物に指定されています。双方ともにアレロパシー(他感作用)という性質を持ち、根から周囲の植物の生長を抑制する物質を出すため、環境に侵入すると他を押しのけて一気に増殖するのです。

所有地に生えたものは駆除するようにと、さまざまな自治体が呼びかけをしています。

3-1.セイタカアワダチソウの駆除方法

セイタカアワダチソウは多年草で、種子のほか横に伸びた地下茎でも増えていきます。一か所にまとまって群生している場合、群れの全てが地下茎でつながっているとみていいでしょう。根に栄養をため込んでいるため、地上部だけを刈ってもまた生えてきます

根を取り除くことが必要ですが、大量の絡み合った根を手作業で抜くことは困難根まで枯らす除草剤を使うのが、比較的簡単な方法です。

\次のページで「3-2.ブタクサの駆除方法」を解説!/

3-2.ブタクサの駆除方法

ブタクサは種で繁殖する一年草なので、種がつく前に除草する必要があります。種がついてしまった後であれば、種を落とさないよう袋に入れて片付けましょう。花粉症のことを考えると、開花前の除草が望ましいです。

根こそぎ引き抜くか、根まで枯らす除草剤を使用しましょう。除草剤を使いにくい場合は、熱湯をかけて枯らすこともできます。

4.ブタクサアレルギーを知ろう

ブタクサの花粉は、特に関東や東北での飛散量が多いです。一方でブタクサ自体が少ない北海道や、比較的飛散の少ない東海地方のような地方もあり、飛散量には地域差があります。

住んでいる場所の気候に応じて飛散のピークも異なり、東北では9月上旬、関東では9月中旬、関西では9月中旬~下旬、九州では9月下旬がピークになる年が多いです。

4-1.症状の強い花粉症!?ブタクサアレルギーの特徴

ブタクサの花粉はサイズが小さく、スギ花粉の約半分ほど。そのため鼻毛などでキャッチされず、気管支の奥深くまで入り込むことがあり、ブタクサ花粉症では目のかゆみくしゃみ・鼻水の他に咳の症状が出るのが特徴的です。肌荒れや皮膚のかゆみが出ることも。元々喘息のある方は、症状を悪化させることもあります。

出る症状が多岐にわたるため、症状が強い花粉症であると受け止められるようです。咳があるために典型的な花粉症のイメージとは異なっていて、風邪と間違われることも。熱がない風邪症状が秋口に長引く時には、ブタクサ花粉症の可能性も考えてみてください。アレルゲンがブタクサである場合は、内科や耳鼻科でのアレルギー検査で特定できます。

4-2.相性の悪い食べ物って?食物アレルギーとの交差反応に注意

花粉症のある人は、特定の食べ物で口腔アレルギー症候群(OAS)が出ることがあります。花粉症の人は花粉のアレルゲンに対する抗体を持っているのですが、生野菜や果物に含まれるアレルゲンには、花粉に含まれるアレルゲンと構造が似ているものがあり、これに抗体が反応してしまうのです。これを交差反応といいます。OASの症状が重い場合には、下痢や腹痛やじんましん、息苦しさや咳などが表れ、アナフィラキシーショックが起こることも。

ブタクサ花粉症のある方は、メロンやスイカのようなウリ科の果物や、セロリでOASが出やすいです。全く食べてはいけないわけではないですが、食べた後に唇や口の中にかゆみを感じるようなら食べるのを控えましょう。加熱などの工夫で食べられるケースもあるので、医師に相談してみてください。

4-3.ブタクサアレルギーの対策法は?

他の花粉症と同じく、花粉を浴びないようにすることが大切です。ブタクサは草丈が低く、花粉の飛散距離は長くて100m程度。スギやヒノキのように遠方から飛来することはありませんので、行動である程度避けられます。自宅に生えるものは花が咲く前に駆除し、近隣のブタクサ生息地もチェックした上で、近づかないようにしましょう。

どうしても近くを通る場合は、マスク花粉症用メガネで、目、鼻、口をガードします。粒子の小さいブタクサ花粉を防ぐため、マスクの内側にガーゼを当てると効果的です。帰宅後には服の花粉を払い落とし、手洗いうがいと洗顔を行います。部屋の掃除もこまめにして、花粉を取り除きましょう。

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花が目立つのはセイタカアワダチソウ、花粉症の原因はブタクサ

黄色い花が目立ち、葉に切れ目のないセイタカアワダチソウは、多年草で地下茎でも増え駆除が大変。しかし、虫媒花なので花粉症の原因にはなりません

花が目立たないブタクサは、広がった葉に切れ目があります。一年草なのでセイタカアワダチソウに比べれば除草しやすいですが、風媒花であるため秋の花粉症の原因になるのです。

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生き物・植物雑学

セイタカアワダチソウとブタクサの違いや駆除方法は?花粉症の原因はどっち?アレルギー対策の仕方まで現役薬剤師がわかりやすく解説

秋になると花を咲かせるセイタカアワダチソウとブタクサ。秋の花粉症の原因になる迷惑な雑草として、名前を知っている人も多いかもしれませんね。ですが、実は花粉症の原因になるのは片方だけなんです。正しく見分けることで、アレルギーの予防もしやすくなるぞ。また、両者の有効な駆除方法についても紹介していこう。ブタクサアレルギーにも詳しい現役薬剤師ライター、アラノるかと一緒に解説していきます。

ライター/アラノるか

現役薬剤師ライター。耳鼻科からのブタクサアレルギー用処方せんも扱う。郊外住まいで、セイタカアワダチソウもブタクサも身近。患者さまへの説明同様、わかりやすい解説を心がけている。

1.あなたは混同してない?セイタカアワダチソウとブタクサの違い

セイタカアワダチソウブタクサは、どちらも秋に花をつける雑草。両方とも日本全国の道端や空き地、河原などに群生するため、目にしたことがある方も多いでしょう。

ただし、両者は混同されたり間違って覚えられていることもあります。写真を見ながら、正しい見分け方を解説していきましょう。

1-1.写真で見るセイタカアワダチソウの特徴

image by iStockphoto

セイタカアワダチソウは、キク科アキノキリンソウ属の多年草。円錐形の黄色の花が終わったあと、泡立つような綿毛ができることが日本語名の由来です。

葉は細長く、先がとがっています。

1-2.写真で見るブタクサの特徴

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ブタクサは、キク科ブタクサ属の一年草。数ミリの黄色い小花がつきますが、遠目には見えづらく花穂は緑色に見えます。日本語名は英語での通称名、hogweed(ホッグウィード)に由来していて、hogは豚、weedは雑草を意味するのです。

葉っぱは細く切れ込んで分裂し、ヨモギに似た形をしています。

1-3.葉の形で見分けよう

上の写真で分かるように、セイタカアワダチソウの葉は細長く、切れ込みがなくすっきりしています。対してブタクサの葉は切れ込みがあり広がっているのです。

まだ花がついていない時期は、見た目が似ているため両者を見分けにくいのですが、葉の形に着目すれば区別しやすいですね。

1-4.開花時期で見分けよう

セイタカアワダチソウの開花時期は10~11月。目立つ花が少なくなってくる時期で、チョウやハチがよく集まります。ブタクサの開花時期はそれより早く、7~10月で、地域にもよりますが花の最盛期は9月中旬です。

秋に花が咲く植物というイメージの両者ですが、ブタクサが先に咲き、秋が深まってからセイタカアワダチソウの花期がやってきます。

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