この記事では「蛍の光」と「別れのワルツ」の違いについてみていきます。よくお店の閉店時間に流れる「蛍の光」のような音楽があるでしょう。実はあの曲は「別れのワルツ」という曲なんです。

両方とも「別れ」や「終わり」をイメージさせるし、メロディもとても似ているから、その区別は難しい。

歴史を紐解くと、この2つの曲はそれぞれ別のルートをたどり、日本に浸透したらしいな。音楽と雑学が好きなライターishkaと一緒に勉強していきます。

ライター/ishka

会社員兼WEBライター。普段はビジネスやサステナブルに関する情報を発進している傍ら、趣味で音楽制作にも打ち込んでいる。毎日白Tを着ているライター。

どちらも同じ曲のアレンジで誕生した歌

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お店で買い物をしているときに閉店ソングが流れ、「あ、蛍の光だ!早く買い物しなきゃ!」と思ったことのある方もいるでしょう。実はその曲、「蛍の光」ではないんです。(蛍の光の場合もあるかもしれません)

よく閉店のBGMとして使用されているのは、実は「別れのワルツ」という曲。「蛍の光」と「別れのワルツ」両者ともかなり似たメロディですが、なぜこんなにも似ているかというと、どちらも同じ曲が元となっているからです。

スコットランド民謡の「オールド・ラング・ザイン(Auld Lang Syne)」が、両方の原曲になります。この原曲の歌詞は、「昔の友人との再会を喜び、別れを惜しみながらもまたの再会を願う」という内容です。卒業ソングとして有名な「蛍の光」と、閉店ソングの定番となった「別れのワルツ」にぴったりの内容ですね。

「蛍の光」と「別れのワルツ」の聴き分け方はリズム

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「蛍の光」と「別れのワルツ」はメロディラインがとても似た曲ですが、聴き分ける方法があります。それが、「リズム(拍子)」です。「蛍の光」は四拍子、「別れのワルツ」は三拍子の音楽になります。

「拍子」とは音楽のリズムのことです。日本のポップスの多くは「四拍子」で構成されていますね。「三拍子」の曲は「ワルツ」と呼ばれる音楽ジャンルに多いです。それぞれ詳しくみていきましょう。

「蛍の光」は四拍子

まずは卒業式の定番ソング「蛍の光」について。「蛍の光」は四拍子の音楽になります。

この「四拍子」は簡単に説明すると、「1(強調) 2 3 4 1(強調) 2 3 4 …」のリズムが取れる拍子です。リズムをうまく取るポイントは、頭の「1」を強調すること。手を叩きながらだと分かりやすいと思います。

「別れのワルツ」は三拍子

対して「別れのワルツ」は、ワルツとあるように三拍子の音楽になります。三拍子の音楽は四拍子の音楽に比べて、リズムの取り方が少し複雑です。

三拍子のリズムは「1(強調) 2 3 1(強調) 2 3 …」となります。四拍子目がなく、三拍子目のあとは頭の1拍子目に戻るイメージですね。リズムを取るコツとして、手で三角形を書いてみるというのがあります。「1 2 3」に合わせて、空中に三角形を書いてみてください。それが三拍子です。

「別れのワルツ」はこの三拍子で構成されているので、「この曲は蛍の光と別れのワルツのどっちかな?」と迷った時には、リズムを取ってみてくださいね。

\次のページで「それぞれの曲が有名になった背景」を解説!/

それぞれの曲が有名になった背景

よく似ている2つの曲ですが、拍子に着目することで聴き分けできることが分かりましたね。次に、「蛍の光」「別れのワルツ」がそれぞれどういう背景で有名になったのかを解説していきます。この2つの曲は全く別のルートをたどって日本に伝わり、浸透していったんです。

「蛍の光」は海軍学校の卒業式で歌われた

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まずは、「蛍の光」の背景から見ていきましょう。その背景は、明治時代までさかのぼります。

当時大日本帝国海軍では、士官や特に戦争で活躍した隊員が艦艇や軍から離任・卒業するときに、蛍の光(当時は「告別行進曲」や「ロングサイン」という曲名)が演奏されていました。

そこから全国的に広まっていった背景として、明治時代の文明開化が関係しています。明治時代は、西洋のカルチャーが様々な場面で取り入れられました。音楽もその1つで、西洋音楽による音楽教育が始まったんですね。そのとき、音楽教育で使用する教科書「小学唱歌集」が発行されました。小学唱歌集に掲載されている楽曲の大部分が、外国の曲に日本語の詞をつけたものとなりました。

「蛍の光」はスコットランド民謡である「オールド・ラング・ザイン(Auld Lang Syne)」に、稲垣 千穎(いながき ちかい)が詞をつけ、「蛍」という曲名で「小学唱歌集」に掲載されることになったんです。

のちに全国に広まっていく中で、海軍の離任式で演奏されていた流れから、卒業式の定番ソングになったんですね。

「別れのワルツ」は恋愛映画のヒットがきっかけ

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「別れのワルツ」は、また違った背景から日本で広まりました。その背景はズバリ「映画」です。

「哀愁(原題:Waterloo Bridge)」というアメリカのラブロマンス映画が、1949年に日本で公開されました。劇中に主人公とその恋人が高貴な雰囲気のただようカフェで、社交ダンスをするシーンがあります。そのシーンで音楽隊が演奏しているのが、「オールド・ラング・ザイン(Auld Lang Syne)」なのですが、映画のために三拍子にアレンジされているんです。

映画のヒットと同時に、この音楽も話題になり、作曲家の古関裕而が採譜・編曲したものが「別れのワルツ」としてリリースされることになりました。

なぜ「別れのワルツ」を聴くと帰りたくなるのか

スーパーや百貨店などの閉店BGMとして使用されている「別れのワルツ」。この曲を聴くと、不思議と「そろそろ帰ろうかな」という気持ちになってしまいますよね。その秘密を紐解いてみましょう。

まずポイントとしては、三拍子というところにあります。先にも説明したとおり、日本の音楽の多くは四拍子です。よって多くの日本人は「別れのワルツ」のような三拍子の曲は耳馴染みがなく、ある意味「違和感」を感じるでしょう。

しかしこの違和感がありながらも、メロディーは日本人の耳に心地よい音階になっているんです。それが音楽用語でいう「四七(ヨナ)抜き。これはドレミの4番目の音「ファ」と7番目の音「シ」が使われない楽曲のことを指します。この音階こそが日本人の耳に心地よく感じる音階とされており、他の有名曲だと、「春よ、来い」「上を向いて歩こう」などがありますね。

このように、少し違和感のあるリズム聴き心地のよいメロディがうまく調和し、早くお家に帰りたいという気持ちにさせるのかもしれません。

\次のページで「どちらも、昔の思い出が蘇る素敵な音楽」を解説!/

どちらも、昔の思い出が蘇る素敵な音楽

「蛍の光」「別れのワルツ」、ものすごく似ているけど、それぞれ全く違った背景がありましたね。拍子の取り方による聴き分け方も、お分かりいただけたかと思います。

そんな2曲ですが、両方とも「昔の思い出が蘇る」ような音楽ですよね。「蛍の光」は卒業式の定番ですので、楽しかった学生時代のことを思い出させてくれます。「別れのワルツ」を聴くとアルバイトのことを思い出すという方もいるでのはないでしょうか。「そろそろバイト終わりだ〜」というワクワク感や、退勤してお店を出た後の涼しい夜がフラッシュバックしますね。

2曲ともシンプルな曲ですが、聴く人によって思い出される風景が異なると思います。改めてじっくり聴いてみるのもいいかもしれませんね。

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雑学

3分でわかる蛍の光と別れのワルツの違い!閉店の定番曲は蛍の光ではない?聴き分け方や歴史的背景の違いを音楽好きライターがわかりやすく解説!

この記事では「蛍の光」と「別れのワルツ」の違いについてみていきます。よくお店の閉店時間に流れる「蛍の光」のような音楽があるでしょう。実はあの曲は「別れのワルツ」という曲なんです。

両方とも「別れ」や「終わり」をイメージさせるし、メロディもとても似ているから、その区別は難しい。

歴史を紐解くと、この2つの曲はそれぞれ別のルートをたどり、日本に浸透したらしいな。音楽と雑学が好きなライターishkaと一緒に勉強していきます。

ライター/ishka

会社員兼WEBライター。普段はビジネスやサステナブルに関する情報を発進している傍ら、趣味で音楽制作にも打ち込んでいる。毎日白Tを着ているライター。

どちらも同じ曲のアレンジで誕生した歌

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お店で買い物をしているときに閉店ソングが流れ、「あ、蛍の光だ!早く買い物しなきゃ!」と思ったことのある方もいるでしょう。実はその曲、「蛍の光」ではないんです。(蛍の光の場合もあるかもしれません)

よく閉店のBGMとして使用されているのは、実は「別れのワルツ」という曲。「蛍の光」と「別れのワルツ」両者ともかなり似たメロディですが、なぜこんなにも似ているかというと、どちらも同じ曲が元となっているからです。

スコットランド民謡の「オールド・ラング・ザイン(Auld Lang Syne)」が、両方の原曲になります。この原曲の歌詞は、「昔の友人との再会を喜び、別れを惜しみながらもまたの再会を願う」という内容です。卒業ソングとして有名な「蛍の光」と、閉店ソングの定番となった「別れのワルツ」にぴったりの内容ですね。

「蛍の光」と「別れのワルツ」の聴き分け方はリズム

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「蛍の光」と「別れのワルツ」はメロディラインがとても似た曲ですが、聴き分ける方法があります。それが、「リズム(拍子)」です。「蛍の光」は四拍子、「別れのワルツ」は三拍子の音楽になります。

「拍子」とは音楽のリズムのことです。日本のポップスの多くは「四拍子」で構成されていますね。「三拍子」の曲は「ワルツ」と呼ばれる音楽ジャンルに多いです。それぞれ詳しくみていきましょう。

「蛍の光」は四拍子

まずは卒業式の定番ソング「蛍の光」について。「蛍の光」は四拍子の音楽になります。

この「四拍子」は簡単に説明すると、「1(強調) 2 3 4 1(強調) 2 3 4 …」のリズムが取れる拍子です。リズムをうまく取るポイントは、頭の「1」を強調すること。手を叩きながらだと分かりやすいと思います。

「別れのワルツ」は三拍子

対して「別れのワルツ」は、ワルツとあるように三拍子の音楽になります。三拍子の音楽は四拍子の音楽に比べて、リズムの取り方が少し複雑です。

三拍子のリズムは「1(強調) 2 3 1(強調) 2 3 …」となります。四拍子目がなく、三拍子目のあとは頭の1拍子目に戻るイメージですね。リズムを取るコツとして、手で三角形を書いてみるというのがあります。「1 2 3」に合わせて、空中に三角形を書いてみてください。それが三拍子です。

「別れのワルツ」はこの三拍子で構成されているので、「この曲は蛍の光と別れのワルツのどっちかな?」と迷った時には、リズムを取ってみてくださいね。

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