この記事では「御茶を挽く」について解説する。

端的に言えば御茶を挽くの意味は「客がいなくて暇でいる」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

高校で国語教師をしていた経歴を持つ、現役ライターのhiyoriを呼んです。一緒に「御茶を挽く」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/hiyori

大学で近現代日本文学を専攻し、その知識を活かして国語教師として教壇に立っていた経歴を持つ。現在はライターとして様々な情報を発信している。難しい言葉もわかりやすい言葉で解説していく。

「御茶を挽く」の意味や語源・使い方まとめ

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皆さんは「御茶を挽く」という言葉を知っていますか?パッと字面だけを見るとお茶やコーヒーを挽くことなどと思いがちな言葉ですが、実は慣用句として使うとまったく違う意味を持つ言葉なのです。今回は、そんな「御きたいと思います。

それでは早速「御茶を挽く」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「御茶を挽く」の意味は?

「御茶を挽く」には、次のような意味があります。

芸者や遊女、女給などが客がなくて暇でいる。

出典:大辞林 第3版(三省堂)

「御茶を挽く」は「おちゃをひく」と読む慣用句です。
本来、「御茶を挽く」というと、お茶のもととなる茶葉を茶臼で挽いて細かく擦って抹茶にすることを表します。しかし、慣用句として用いられる場合、暇で仕事がないこと、特に、芸者や遊女などが客がいなくて暇であるさまという意味を持つのです。
なお、遊女とは風俗の役割を担っていた吉原などの遊郭(ゆうかく)と呼ばれる場所で、男性に性的なサービスをする女性のことを指します。昭和21年の公娼制度廃止、昭和32年の売春禁止法などにより以前と状況が変化して完全に遊女がいなくなったため、現代では遊女が暇でいるという意味で使われることはほとんどありません。
しかし、キャバクラ嬢やホストなどの水商売で働く人たちが暇な様子を表すのに使われることもあるようです。

「御茶を挽く」の語源は?

次に「御茶を挽く」の語源を確認しておきましょう。

昔、遊郭では客がおらず暇をしている遊女に客に出すお茶を茶臼(ちゃうす)で挽く仕事をさせていました。これが「御茶を挽く」の由来になったと考えられています。

\次のページで「「御茶を挽く」の使い方・例文」を解説!/

「御茶を挽く」の使い方・例文

「御茶を挽く」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.彼はまだ新人で贔屓にしてくれているお客さんが一人もいないため、御茶を挽いている。
2.ただでさえコロナで客足が減っていたのに、そのうえライバル店が近くにできたら御茶を挽い従業員が増えてしまう。
3.自身の失礼で長年贔屓にしてくれていたお客様を怒らせてしまい、その責任を取り接客から外されてしまったので御茶を挽いている。

ここでは3つの例文を挙げました。一つ一つ例文を確認していきましょう。

例文1は、まだ入ったばかりの新人であるため常連がいないため暇をしていることを表す例文です。例文2は不況による経営難の上に、近所にできたライバル店に客を取られた結果、暇になったことを表しています。例文3は、自分のミスで客を怒らせた結果、自分が暇になってしまうことを表す例文です。このように、常連のお客さんがいない場合や経営難、ライバル店による場合、自分の失敗などで暇になった場合に「御茶を挽く」を使用できるのではないでしょうか。

「御茶を挽く」の類義語は?違いは?

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遊女などが客がいないため暇をしていると似た意味を持つ言葉には、どんなものがあるのでしょうか。下記の言葉を確認していきましょう。

その1「閑古鳥が鳴く」

「閑古鳥が鳴く」は「かんこどりがなく」と読むことわざです。

「閑古鳥」とはカッコウという鳥の別名のこと。カッコウの鳴き声は寂しく物悲しいというイメージがあり、さらにその鳴き声が聞こえる場所も人里から離れた山の中であったことから、訪れる人間がおらずひっそりとしていることの例え、商売が流行らない様子を表す言葉として用いられます

「御茶を挽く」は主に遊女や、現代の夜の店が暇な様子を表すのに対して、「閑古鳥が鳴く」はお店や商店街、旅館や映画館、観光地など客を相手にする商売全般に用いられることが多いので使い分けには注意しましょう。

\次のページで「その2「手持ち無沙汰」」を解説!/

1.目と鼻の先にできたライバル店の影響で、最近では閑古鳥が鳴く状況が続いている。
2.ウリにしている商品のブームが去ってしまったため、閑古鳥が鳴いている。
3.彼女が先日ラーメン店をオープンしたところ、ラーメンの味が伴わず閑古鳥が鳴いている。

その2「手持ち無沙汰」

「手持ち無沙汰」は「てもちぶさた」と読みます。何もすることがなくて間が持たないこと、所在ないこと、またその様子を表します
江戸時代の油を売る商人の、油がどろどろしていて客の容器に移すのに時間がかかる様が周囲から見ると何もせず見えたということが由来であると考えられています。
なお、「手持ち無沙汰」を「てもちぶたさ」と読む間違いがよくあるので十分注意してください。
仕事がなくて暇であることを表すのに「御茶を挽く」に対して、「手持ち無沙汰」は今することがなくて間が持たないというニュアンスを持ちますが、使用シーンは仕事だけには限られないので注意してください。

1.上司の書類チェック待ちで手持ちの作業がないため手持ち無沙汰だ。
2.次の電車が来るまであと5分ある。売店に行く時間の余裕もなく、手持ち無沙汰だ。
3.予約時間通りに美容室に来たが、前の客に時間がかかっていて呼ばれず手持ち無沙汰だ。

その3「有閑」

「有閑」は「ゆうかん」と読む熟語です。「閑」という漢字はひまな時間、ゆったりと落ち着いていて静かな様を指し、ここに「有る」が付くことで暇のあること、時間に余裕があることを意味します

単独で「有閑」を使うほか、「有閑マダム」などの言葉のように他の言葉につなげて用いられるので覚えておきましょう。

1.日々贅沢をする有閑階級の貴族に対し、日々働く下級の労働者たちの不満が爆発してストライキが起こった。
2.同じ会社の社長に見初められて玉の輿に乗った彼女は、習い事やエステに通うなどまるで有閑マダムのような生活を送っている。

「御茶を挽く」の対義語は?

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「御茶を挽く」の明確な対義語は見つかりませんでした。あえて、ヒマで仕事がないことの反対の意味を持つ言葉を挙げるなら、出入りする人が多いことのたとえである門前市を成す(もんぜんいちをなす)多くの客が絶え間なくやって来ることを表す「千客万来」(せんきゃくばんらい)などが考えられるのではないでしょうか。

\次のページで「「御茶を挽く」を使いこなそう」を解説!/

「御茶を挽く」を使いこなそう

この記事では「御茶を挽く」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「御茶を挽く」とは、昔の遊郭でのエピソードが元になっており、芸者や遊女などが客がいなくて暇でいることを表します

元々は遊女や芸者などを対象に用いられておりましたが、遊女は現代にいないため、水商売などの夜のお店の人達が暇な様子を表すのに使われることが多いようです。

類義語として「閑古鳥が鳴く」「手持ち無沙汰」を挙げました。それぞれ「御茶を挽く」とニュアンスが似ていますが、使用シーンや対象が微妙に異なるので注意してください。

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【慣用句】「御茶を挽く」の意味や使い方は?例文や類語を文学部卒現役ライターがわかりやすく解説!

この記事では「御茶を挽く」について解説する。

端的に言えば御茶を挽くの意味は「客がいなくて暇でいる」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

高校で国語教師をしていた経歴を持つ、現役ライターのhiyoriを呼んです。一緒に「御茶を挽く」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/hiyori

大学で近現代日本文学を専攻し、その知識を活かして国語教師として教壇に立っていた経歴を持つ。現在はライターとして様々な情報を発信している。難しい言葉もわかりやすい言葉で解説していく。

「御茶を挽く」の意味や語源・使い方まとめ

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皆さんは「御茶を挽く」という言葉を知っていますか?パッと字面だけを見るとお茶やコーヒーを挽くことなどと思いがちな言葉ですが、実は慣用句として使うとまったく違う意味を持つ言葉なのです。今回は、そんな「御きたいと思います。

それでは早速「御茶を挽く」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「御茶を挽く」の意味は?

「御茶を挽く」には、次のような意味があります。

芸者や遊女、女給などが客がなくて暇でいる。

出典:大辞林 第3版(三省堂)

「御茶を挽く」は「おちゃをひく」と読む慣用句です。
本来、「御茶を挽く」というと、お茶のもととなる茶葉を茶臼で挽いて細かく擦って抹茶にすることを表します。しかし、慣用句として用いられる場合、暇で仕事がないこと、特に、芸者や遊女などが客がいなくて暇であるさまという意味を持つのです。
なお、遊女とは風俗の役割を担っていた吉原などの遊郭(ゆうかく)と呼ばれる場所で、男性に性的なサービスをする女性のことを指します。昭和21年の公娼制度廃止、昭和32年の売春禁止法などにより以前と状況が変化して完全に遊女がいなくなったため、現代では遊女が暇でいるという意味で使われることはほとんどありません。
しかし、キャバクラ嬢やホストなどの水商売で働く人たちが暇な様子を表すのに使われることもあるようです。

「御茶を挽く」の語源は?

次に「御茶を挽く」の語源を確認しておきましょう。

昔、遊郭では客がおらず暇をしている遊女に客に出すお茶を茶臼(ちゃうす)で挽く仕事をさせていました。これが「御茶を挽く」の由来になったと考えられています。

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