今回のテーマは「養護学校と特別支援学校の違い」についてです。
単純に「養護学校は聞いたことあるけど、特別支援学校って何?」や「どういう学校なのかな」という素朴な疑問があるでしょう。
今回、言語聴覚士としての勤務経験がある「けい」が不安を解消するべく制度の違いや種類について、更には「教員になるための方法」について紹介しているので、一緒に見ていこう。

ライター/けい

8年間、言語聴覚士として勤務。またプライベートでも育児に日々奮闘中。これらの経験で培われた情報をわかりやすいく発信していく。

養護学校と特別支援学校の違いって?

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それでは、「養護学校」と「特別支援学校」の違いについてみていきましょう。違いについて理解するためには、「学校教育法」について整理しなければなりません。

学校教育法は1947年(S22)に公布されています。それまでも学校教育法の一部改正は行われてきていましたが、2007年(H19)に行われた一部改正において、それまでの学校教育法とは異なる考え方で体制を作り始めました

養護学校とは→視覚・聴覚障害以外の障害を持つ子どもが通う学校

養護学校とは、知的障害や肢体不自由、病弱の子どもが通う学校として位置づけられていたものです。そのため、学校教育法の改正以前では障害を持つ子どもが通う学校は、「盲学校、聾学校、養護学校の3種類があった」とイメージするとよいでしょう。

どの学校でも幼稚園や小学校、中学校、高校に準ずる教育が行われていました。

特別支援学校とは→法改正後の呼び名

2007年の学校教育法の改正後からは、盲学校、聾学校、養護学校の3種類が「特別支援学校」という名称で一本化されています。これは、障害の重症化や重複化するケースが増えてきており、より柔軟な対応が求められるようになったためです。

指している学校はほぼ同じ!

学校名として「養護学校」が使われているところはありますが、現在では障害を持つ子どもが通う専門的な学校を総じて「特別支援学校」と名称が固定されています。そのため、「視覚・聴覚障害を持つ子どもも特別支援学校に通う」と考えてよいでしょう。

特別支援学校と一般的な学校は何が違うの?

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次に、特別支援学校と一般的な学校の違いについてみてきましょう。ここでは、「普通の学校と比べて特別支援学校の教育内容はどのように違うのかな?」「特別支援学校に通う子どもはどんな子供なのかな?」等の疑問を解消できるよう紹介していきます。

\次のページで「一般的な学校と教育内容の違いは?」を解説!/

一般的な学校と教育内容の違いは?

文部科学省は特別支援学校に対して「特別支援教育」としており、一般の学校の教育目的とは異なる目的を掲げています。「特別支援教育」とはどういうものをいうのでしょうか。まず教育支援教育の定義について確認していきます。

「障害のある幼児児童生徒の自立や社会参加に向けた主体的な取組を支援するという視点に立ち、幼児児童生徒一人一人の教育的ニーズを把握し、その持てる力を高め、生活や学習上の困難を改善又は克服するため、適切な指導及び必要な支援を行うもの」

(引用元:文部科学省HP)

障害によって、自立するために必要な能力や問題が子ども一人ひとり異なります。特別支援学校では子ども一人ひとりの能力や特性に合わせながら、社会参加や自立ができるように支援・指導していくのです。一方で、通常の教育では子ども自らが主体的に勉学や感性を自ら高めることを目的としており、勉強をすること、自分とは違う人や文化に触れることで、日々自分自身を磨いて社会に進出していきます。

つまり、特別支援学校は「他者と関わりながら社会参加できるようになる」点、通常の学校では「教育や学校という場を通じて自分で自分の能力(学力や社交性など)を高めて社会に進出する」という点が違うと言えるでしょう。

特別支援学校はどういう子どもが対象なの?

特別支援学校の対象は、視覚障害者、聴覚障害者、知的障害者、肢体不自由者、病弱者と学校教育法で決定されています。具体的にそれぞれの障害についてみていきましょう。

・視覚障害

両眼の視力がおおむね0.3未満のもの又は視力以外の視機能障害が高度のもののうち、拡大鏡等の使用によっても通常の文字、図形等の視覚による認識が不可能又は著しく困難な程度のもの

・聴覚障害

両耳の聴力レベルがおおむね60デシベル以上のもののうち、補聴器等の使用によっても通常の話声を解することが不可能又は著しく困難な程度のもの

・知的障害

1.知的発達の遅滞があり、他人との意思疎通が困難で日常生活を営むのに頻繁に援助を必要とする程度のもの 

2.知的発達の遅滞の程度が前号に掲げる程度に達しないもののうち、社会生活への適応が著しく困難なもの

・肢体不自由

1.肢体不自由の状態が補装具の使用によっても歩行、筆記等日常生活における基本的な動作が不可能又は困難な程度のもの

2.肢体不自由の状態が前号に掲げる程度に達しないもののうち、常時の医学的観察指導を必要とする程度のもの

・病弱・身体虚弱

1.慢性の呼吸器疾患、腎臓疾患及び神経疾患、悪性新生物その他の疾患の状態が継続して医療又は生活規制を必要とする程度のもの

2.身体虚弱の状態が継続して生活規制を必要とする程度のもの

(引用元:文部科学省HP)

眼鏡や杖等を使っても自力では難しい状態や、他者とコミュニケーションをとることがすごく難しい状態、病気により一般的な日常生活送ることが難しい状態の子どもが適応です。言い換えると「自分の力だけで日常生活を送ることが極めて難しい子ども」が特別支援学校の対象とも言えます。

特別支援学校の生活ってどんなもの?

次に、特別支援学校の生活についてみていきましょう。ここでは「入学までの流れはどのようなものなの?」「学費ってどれくらいかかるんだろう…」「特別支援学校の指導者ってどのような人なのかな?という疑問が解決できますので、順に紹介していきます。

\次のページで「入学までの流れ」を解説!/

入学までの流れ

そもそもどのような流れで特別支援学校に入学することとなるのでしょうか。まず、最終的な決定権はお住いの「市町村」が持っています。市町村は「就学前健診の結果」と「保護者の要望」「専門家の意見」を合わせて、子供にとって「どんな教育が必要か」「どんな支援が必要か」という視点で常に考えて判断しているのです。

学費はどれくらい?

公立の学校に通う場合、授業料は無料です。基本的には公立の学校と同じと考えてよいと思います。そのため、給食費や教材費などは別途に料金が発生しますので、通う地域の市町村や私立であれば学校に問い合わせるとよいでしょう。

どういう人が教えているの?

特別支援学校教諭免許の資格を持つ教員が指導してくれています。そのため、一般的な学校の教員よりも視覚障害や聴覚障害等の障害に対してより理解していることはももちろんのこと、クラスも少人数で編成されているため、より子どもに寄り添った対応が可能です。

特別支援学校と特別支援学級の違いは?

特別支援学校は障害が重度な子どもが通う「専用の学校」で、特別支援学級は「通常の学校内に設立されている学級」という違いがあります。そのため、特別支援学校には重度な障害を持つ子どもだけのクラスですが、特別支援学級は通常の教育も受けることが可能です。

また、文部科学省では以下の通りに掲げています。

・特別支援学校

障害のある幼児児童生徒に対して、幼稚園、小学校、中学校又は高等学校に準ずる教育を施すとともに、障害による学習上又は生活上の困難を克服し自立を図るために必要な知識技能を授けること目的とする学校。

【対象障害種】視覚障害者、聴覚障害者、知的障害者、肢体不自由者又は病弱者(身体虚弱者を含む。)

・特別支援学級

小学校、中学校等において以下に示す障害のある児童生徒に対し、障害による学習上又は生活上の困難を克服するために設置される学級。

【対象障害種】知的障害者、肢体不自由者、病弱者及び身体虚弱者、弱視者、難聴者、言語障害者、自閉症者・情緒障害者

(引用元:文部科学省HP)

特別支援学校では障害が重度であるため生活での自立を基盤に考えられてることに対し、特別支援学級では自閉症や言語障害といった周囲とのコミュニケーションスキルを磨いたり、社会への適応に備えていく場となっています。

\次のページで「特別支援学校の教員になるには?」を解説!/

特別支援学校の教員になるには?

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では、具体的に特別支援学校の教員になるための手順について解説します。

原則的に、特別支援学校で教員になるには教員免許と特別支援学校教諭免許状の2つを取得する必要があります。しかし、免許を取得したからそのまま特別支援学校の教員として働けるわけではありません。免許取得後に、各都道府県の教員採用試験を受験する必要があり、ここで合格すると晴れて特別支援学校の教員になることができます。

教員免許と特別支援学校教諭免許の2種類の免許が必要

特別支援学校の教員には「教員免許」と「特別支援学校教諭免許」の2つが必要です。教員免許とは学校で教員として働くためには持っていなければならない資格であり、もちろん特別支援学校も「学校」ですので、教員免許が必須となります。

次に、特別支援学校教諭免許の取得は障害への理解を深めるために、各学校で専門の講義を履修しなければなりません。履修した後に各都道府県の教育委員会に免許状の交付を依頼することで、免許状を取得できます。しかし、すべての学校で5つの障害(視覚障害、聴覚障害、知的障害、肢体不自由、病弱)の講義をすべて履修できるわけではありませんので注意してください。

教員採用試験に合格しなければ教員として働くことができない

教員免許と特別支援学校教諭免許を取得できても特別支援学校の教師になるためにはもう1つのステップがあります。それは教員採用試験です。教員採用試験の「特別支援学校採用試験」に受験し合格する必要があります。つまり、特別支援学校の教員として働くために必要なものは「教員免許」「特別支援学校教諭免許」「教員採用試験の合格」の3つです。

教員採用試験の内容は受験する地域によって違いがありますので各自治体に問い合わせるのが一番ですが、「一般教養」「教職教養(法律など)」「適性試験」「面接」などを行います。合格点ははっきりと数値化されているわけではなく年度によって異なるようです。

現在では「養護学校」という考えは存在しない

この記事では「養護学校と特別支援学校の違い」について紹介しました。学校教育法が制定された当時は、聴覚障害の子どもが通う「聾学校」と視覚障害の子どもが通う「盲学校」、その他の障害を持つ子どもが通う「養護学校」という位置づけでした。しかし、学校教育法が改定された現在では、特別支援学校とは障害の種類に関係なく「障害を持つ子どもが通う学校」という位置づけになっています。

障害の重症化・複雑化により学校教育法が改定されたおかげで、障害を持つ子どもに対してより広い範囲の支援ができるようになりました。これを機に、社会が「みんなが暮らしやすいもの」になると良いですよね。

" /> 実際にはほとんど同じ?養護学校と特別支援学校の違いや制度、種類などを言語聴覚士が紹介! – Study-Z
学問雑学

実際にはほとんど同じ?養護学校と特別支援学校の違いや制度、種類などを言語聴覚士が紹介!

今回のテーマは「養護学校と特別支援学校の違い」についてです。
単純に「養護学校は聞いたことあるけど、特別支援学校って何?」や「どういう学校なのかな」という素朴な疑問があるでしょう。
今回、言語聴覚士としての勤務経験がある「けい」が不安を解消するべく制度の違いや種類について、更には「教員になるための方法」について紹介しているので、一緒に見ていこう。

ライター/けい

8年間、言語聴覚士として勤務。またプライベートでも育児に日々奮闘中。これらの経験で培われた情報をわかりやすいく発信していく。

養護学校と特別支援学校の違いって?

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それでは、「養護学校」と「特別支援学校」の違いについてみていきましょう。違いについて理解するためには、「学校教育法」について整理しなければなりません。

学校教育法は1947年(S22)に公布されています。それまでも学校教育法の一部改正は行われてきていましたが、2007年(H19)に行われた一部改正において、それまでの学校教育法とは異なる考え方で体制を作り始めました

養護学校とは→視覚・聴覚障害以外の障害を持つ子どもが通う学校

養護学校とは、知的障害や肢体不自由、病弱の子どもが通う学校として位置づけられていたものです。そのため、学校教育法の改正以前では障害を持つ子どもが通う学校は、「盲学校、聾学校、養護学校の3種類があった」とイメージするとよいでしょう。

どの学校でも幼稚園や小学校、中学校、高校に準ずる教育が行われていました。

特別支援学校とは→法改正後の呼び名

2007年の学校教育法の改正後からは、盲学校、聾学校、養護学校の3種類が「特別支援学校」という名称で一本化されています。これは、障害の重症化や重複化するケースが増えてきており、より柔軟な対応が求められるようになったためです。

指している学校はほぼ同じ!

学校名として「養護学校」が使われているところはありますが、現在では障害を持つ子どもが通う専門的な学校を総じて「特別支援学校」と名称が固定されています。そのため、「視覚・聴覚障害を持つ子どもも特別支援学校に通う」と考えてよいでしょう。

特別支援学校と一般的な学校は何が違うの?

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次に、特別支援学校と一般的な学校の違いについてみてきましょう。ここでは、「普通の学校と比べて特別支援学校の教育内容はどのように違うのかな?」「特別支援学校に通う子どもはどんな子供なのかな?」等の疑問を解消できるよう紹介していきます。

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