今回は白色ワセリンとプロペトの違いをみていきます。
両方とも乾燥を防いだり皮膚を保護してくれる軟膏で、見た目もよく似ている。ですが、白色ワセリンとプロペトの特徴には違いがあり、値段の差が出る場合もあるんです。
そんな二種類の軟膏の性質を、薬のプロである現役薬剤師ライター、アラノるかと一緒に解説していきます。

ライター/アラノるか

薬局の店頭に立つ現役薬剤師ライター。一番よく軟膏つぼに詰めるのは、やっぱり白色ワセリン(他剤との混合処方も含む)。患者さまへの説明同様、わかりやすい解説を心がけている。

1.白色ワセリンとプロペトの違いとは?

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白色ワセリンプロペトは、どちらもやや透明度のある白色の軟膏です。双方とも病院で処方されたり、ドラッグストアなどで購入できます。

よく似ているように見えますが、違いは何でしょうか。

1-1.白色ワセリン:最も一般的な「ワセリン」

ワセリンは石油の精製過程で得られる、パラフィンを中心とした炭化水素の混合物の半固体油脂です。天然ガスやガソリン、灯油・軽油や重油などを分離したあとの残油から得られます。

その中で最も広く使われているものが、白色ワセリンです。

1-2.プロペト:高純度で柔らかな白色ワセリン

白色ワセリンから不純物を除き、より純度を高くしたものプロペトと呼ばれています。つまり、純度の違いで呼び名が変わっているのです。

1-3.白色ワセリンとプロペトの効果は一緒?

効果はどちらも一緒と言っていいでしょう。白色ワセリン、プロペトとも、効能は同じ皮膚保護剤。軟膏そのものに水分や保湿成分は含まれませんが、皮膚の表面に膜を張ることで、乾燥を防いだり傷の保護をします。細菌などの感染を抑える効果や、痛みや炎症を鎮める効果はありませんので注意してください。

ただ、効能は同じではありますが、性質の違いにより使い分けがされているケースもあります。下の項目で見ていきましょう。

2.白色ワセリンとプロペトで肌に優しいのはどっち?

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お肌に優しい軟膏」というフレーズをよく聞きますが、具体的にはどういったものを指すのでしょうか。一般的には、塗るときの肌への負担が少ないかどうか

刺激性の物質が含まれないかどうかに着目して評価されることが多いです。

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2-1.白色ワセリンは低温下では固め、伸びにくいことも

白色ワセリンは、夏には柔らかく冬には固めになります。同じく油脂であるラードなどを考えてもらうとわかりやすいですが、暖かくなり、物質の溶ける温度=融点に近づくほど柔らかくなっていくのです。一般に、純粋な物質に不純物が混ざるほど、融点は上がっていきます。

このため、不純物の除去率が高いプロペトと比較すると、白色ワセリンはやや固め柔らかさや伸びの良さには劣ります。伸びが悪い分、塗った後のべたつきを感じる方もいるでしょう。

2-2.プロペトは柔らかく、肌に優しい

純度の高いプロぺトは、同じ気温なら白色ワセリンよりも柔らか。塗るときの伸びもよく摩擦が少ないため、肌への負担も少ないです。また、精製により不純物が除去されているため、刺激性の物質も少なくなっています。敏感肌の方や赤ちゃんなどは、プロペトを使うと安心ですね。

ちなみに、ワセリンに微量に含まれる不純物は、紫外線を受けることで過酸化物という化合物を生成します。この過酸化物が、皮膚への刺激や皮膚組織のダメージの原因となるのです。

3.白色ワセリンとプロペトで値段は違うの?

医療用医薬品としての値段は、ほぼ同じです。白色ワセリンとプロペトは、日本薬局方の基準においては同じ成分。なので、薬価差が出ないよう設定されています。

医療用医薬品の白色ワセリンは10社以上から発売されており、わずかにメーカーごとの薬価差がありますが、10gあたり23.8~21.0円です。医療用医薬品としてのプロペトの薬価は10gあたり23.8円で、白色ワセリンを超えない価格になっています。

しかし、市販品では両者に価格差があるのです。理由を説明していきましょう。

3-1.白色ワセリンは安め

市販品の白色ワセリンとプロペトを比べた場合、ほとんどの場合で白色ワセリンの方が安くなります。

通販サイトの白色ワセリンは、大きな容器で売っているものですと10gあたり20~30円程度から購入できますが、プロペトは10gあたり100円以上で売っている店舗が多いです。

3-2.プロペトは高純度な分、製造コストも高い

プロペトは純度が高い分、白色ワセリンよりも製造に手間がかかり、コストが高くなっています。

市販品の白色ワセリンやプロペトは、メーカーの違いや包装の違いで価格が変わってくるほか、小売店や通販サイトごとに値段が違っていることも。よく商品を見比べて、使いやすくてお得なものを選びましょう。

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4.ワセリンは4種類ある!

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ワセリンは実は4種類に分けられており、それぞれ黄色ワセリン白色ワセリンプロペトサンホワイトと呼ばれます。

黄色ワセリンとサンホワイトの2種は、もしかすると馴染みがないという方もいるかもしれません。白色ワセリンやプロペトと同じく、どれも皮膚の保護を目的として使われるのですが、それぞれ精製度が異なります。そのため肌への優しさや、価格帯も違ってくるのです。

4-1.4つの違いは精製度!

黄色ワセリンは、名前の通り薄い黄色をしたワセリン。不純物は4種の中では一番多く含まれます

白色ワセリンは、黄色ワセリンを精製して脱色し、不純物を減らしたもの。

プロペトはこれまでにも説明した通り、白色ワセリンの精製を進めたものです。

サンホワイトは、特殊な方法でプロペトをさらに精製したもの。最も不純物が少なく、なめらかで真っ白です。皮膚に対しての刺激がなく安全性が高いため、アレルギー診断のためのパッチテストにおいても使用されます。パッチテストの際、アレルギーの原因疑いになっている物質を、サンホワイトに混ぜて塗ることで試験をするのです。

精製度の高い方から順に、サンホワイト>プロペト>白色ワセリン>黄色ワセリンとなります。肌への優しさや柔らかさ、そして市販品の価格帯についても、精製度が高いほどにレベルが上がるのです。

4-2.それぞれのワセリンの使われ方

黄色ワセリンは今ではほとんど使われておらず、「ワセリン」とだけ言えば白色ワセリンを指すようになっています。不純物が多い分、やや刺激が多いというイメージで語られますが、現在流通しているものは問題ないレベルの品質です。

白色ワセリンプロペトは、ご存知の通り皮膚科領域の治療や、市販品によるセルフスキンケアに使われます。

サンホワイト「化粧油」に区分され、上の三種のように、「医療用医薬品」「第三類医薬品」「医薬部外品」等には入っていません。そのため、医療機関で使用をすすめられる場合も健康保険は効かず自費で市販品を購入することになるのです。品質が良いのに医薬品ではないの?と疑問に思いますが、最初は一般には販売されない化粧品原料として作られたため、このような区分で残っていると考えられます。

5.薬剤師に聞きたい!ワセリンの疑問

白色ワセリンやプロペトなどを使用する際、「これって大丈夫かな?」と感じる瞬間があるかと思います。経験上、お問い合わせが多かった二点についてまとめてみました。

5-1.処方せんには白色ワセリンがあるけど、入っていたのはプロペト?

医師に処方薬として白色ワセリンを出してもらったのに、薬局で薬を受け取ってみたらプロペトが入っているという場合があります。間違いだと申し出るべき?それとも、そのまま受け取ったらいいのでしょうか。

処方せんに「白色ワセリン(メーカー名)」と、特定の製品を指定して書かれている場合は、医師の指示なしにプロペトに変更することはできません。もしも変更されている場合は、薬剤師が医師へと問合せを行った上で変更されているのです。専門家の判断による変更ですので、問題なくご利用いただけます。

処方せんに「(般)白色ワセリン」あるいは「白色ワセリン」とだけ書かれている場合は、成分の一般名だけが指定されているので、薬剤師の判断で白色ワセリン、プロペトのどちらをお渡ししても良いことになっているのです。ですので、この場合も問題ありません。

ただし、薬の袋説明の紙の印字が「白色ワセリン」なのにプロペトが入っていた場合は、調剤ミスの可能性がありますので問い合わせてみてください。

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5-2.ワセリンが分離した!使えるの?

夏場などに、ワセリンは分離して一部が液状になることがあります。ワセリンは炭化水素の混合物の半固体油脂ですが、その混合物のうち融点の低い成分が、液状の油分となり出てくるのです。

他の成分と混合していない純粋な白色ワセリンやプロペトを、直接手で触れずに清潔に扱っている場合は、品質に問題はありません。再び混ぜ合わせて使用することができます。ただし、直接手で触れたりしていた場合や、異臭がしたり変色していたりと、明らかな変質がある場合は使用しないでください。

分離を防ぐには、普段から30℃以下の涼しい場所に保管するようにしましょう。冷蔵庫に入れても問題はないのですが、固くなってしまい塗りにくくなるので、室内で快適に過ごせる温度での保管がおすすめです。

白色ワセリンとプロペト、違いは柔らかさと不純物の含有度

白色ワセリンよりもプロペトの方が精製度が高く、肌に優しいと言えます。ただし、市販品ではプロペトの方が高価です。

それぞれの特徴を知って、ご自身の肌の性質や、求める使用感に合わせて購入してみてくださいね。

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3分でわかる白色ワセリンとプロペトの違い!より肌に優しいのは?用途・値段の差など現役薬剤師がわかりやすく解説

2-1.白色ワセリンは低温下では固め、伸びにくいことも

白色ワセリンは、夏には柔らかく冬には固めになります。同じく油脂であるラードなどを考えてもらうとわかりやすいですが、暖かくなり、物質の溶ける温度=融点に近づくほど柔らかくなっていくのです。一般に、純粋な物質に不純物が混ざるほど、融点は上がっていきます。

このため、不純物の除去率が高いプロペトと比較すると、白色ワセリンはやや固め柔らかさや伸びの良さには劣ります。伸びが悪い分、塗った後のべたつきを感じる方もいるでしょう。

2-2.プロペトは柔らかく、肌に優しい

純度の高いプロぺトは、同じ気温なら白色ワセリンよりも柔らか。塗るときの伸びもよく摩擦が少ないため、肌への負担も少ないです。また、精製により不純物が除去されているため、刺激性の物質も少なくなっています。敏感肌の方や赤ちゃんなどは、プロペトを使うと安心ですね。

ちなみに、ワセリンに微量に含まれる不純物は、紫外線を受けることで過酸化物という化合物を生成します。この過酸化物が、皮膚への刺激や皮膚組織のダメージの原因となるのです。

3.白色ワセリンとプロペトで値段は違うの?

医療用医薬品としての値段は、ほぼ同じです。白色ワセリンとプロペトは、日本薬局方の基準においては同じ成分。なので、薬価差が出ないよう設定されています。

医療用医薬品の白色ワセリンは10社以上から発売されており、わずかにメーカーごとの薬価差がありますが、10gあたり23.8~21.0円です。医療用医薬品としてのプロペトの薬価は10gあたり23.8円で、白色ワセリンを超えない価格になっています。

しかし、市販品では両者に価格差があるのです。理由を説明していきましょう。

3-1.白色ワセリンは安め

市販品の白色ワセリンとプロペトを比べた場合、ほとんどの場合で白色ワセリンの方が安くなります。

通販サイトの白色ワセリンは、大きな容器で売っているものですと10gあたり20~30円程度から購入できますが、プロペトは10gあたり100円以上で売っている店舗が多いです。

3-2.プロペトは高純度な分、製造コストも高い

プロペトは純度が高い分、白色ワセリンよりも製造に手間がかかり、コストが高くなっています。

市販品の白色ワセリンやプロペトは、メーカーの違いや包装の違いで価格が変わってくるほか、小売店や通販サイトごとに値段が違っていることも。よく商品を見比べて、使いやすくてお得なものを選びましょう。

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