今回は「体性反射」というキーワードを軸に学習していこう。

体性反射は、我々の身体でもよく見られる”反射”という反応の一種です。聞きなれない用語かもしれないが、この記事を読めばすっきり理解できるでしょう。自分自身の身体で見られる反応も意識しながら見ていってほしい。

大学で生物学を学び、現在は講師としても活動しているオノヅカユウに解説してもらおう。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

体性反射

体性反射(たいせいはんしゃ)とは、動物にみられる反射の中でも、筋肉(骨格筋)の収縮が引き起こされる反射のことをいいます。

端的にいってしまえば、「意志に反して身体が動くような反射」です。

体性反射それ自体について詳しく解説する前に、まずは生物の「反射」という現象について確認しておきましょう。

反射とは?

生物学において反射とは、ある特定の刺激によって引き起こされる、無意識の反応のことをいいます。

”無意識の反応”というところが大きなポイントです。反射という反応は生理的なものであり、基本的には自らの意志でコントロールできるものではありません。

残念ながら、虫にみられる光への反応などは、反射に含まれないことが多いんです。

繰り返しになりますが、反射は”無意識の反応”。ある生き物が刺激に対して何か反応を示したとき、それが「無意識かどうか」というのは、判断が難しいですよね。

逆にいえば、その生き物が「意識して行動を行うことがある」という前提がないと、”無意識の反応”というポイントが無意味になってしまいます。

image by iStockphoto

一般的に、”反射”という言葉が使われるのは、「意識がある(であろう)」と考えられている脊椎動物に対してです。昆虫や、ゾウリムシのような原生生物、植物などに対しては”反射”という言葉を用いず、反応の種類によって”走性”や”屈性”などの単語を使います。

\次のページで「反射と神経」を解説!/

反射と神経

それでは、今一度脊椎動物…なかでも人間にみられる反射について考えていきましょう。

反射は、まず器官が特定の”刺激”を受けることから始まります。その刺激の情報が神経によって中枢へ送られ、中枢で処理されたのち、反応を引き起こす器官へと刺激が伝達されるのです。

この流れで、刺激を受け取る器官を受容器(じゅようき)、反応を引き起こす器官を効果器(こうかき)といいます。

image by Study-Z編集部

また、受容器から中枢に向かって刺激を伝える神経を求心性神経(きゅうしんせいしんけい)、中枢から効果器へと刺激を伝える神経を遠心性神経(えんしんせいしんけい)というのです。

反射の種類

ヒトにみられる反射は、「どんな効果器に反応がみられるか」によって、大きく2種類に分けることができます。

効果器が骨格筋の場合が、今回のテーマである”体性反射”です。骨格筋の収縮が引き起こされるため、刺激を与えると「意識していないのに勝手に足が動く」というような現象がみられます。

一方、効果器が内臓の場合は”内臓反射”です。刺激によって「各内臓の活動が活発になったり、穏やかになる」といった変化が生じます。この反射は交感神経や副交感神経といった自律神経系が深く関係しているため、”自律神経反射”とよばれることもあるんです。

そうですね。

それでは、今回の本題である体性反射について、具体例を見ていきましょう。

代表的な体性反射

体性反射には、さまざまな反射が含まれています。その中でも代表的なものをいくつかご紹介していきますね。

くしゃみ反射

くしゃみは、私たちの身体で比較的頻繁にみられる現象ですが、これこそ体性反射らしい、よい例の一つなんです。

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くしゃみは、鼻に異物が侵入するなどして、鼻の粘膜が刺激されたときに生じる反射です。刺激が中枢(延髄にあるくしゃみ中枢)へ伝わり、さらに信号が横隔膜などの呼吸筋や、顔の筋肉などへ伝えられて、「はくしょん!」というくしゃみになります。

自分の意志で抑えることができない反応であり、呼吸筋などの筋肉が動かされる…まさに、体性反射ではありませんか!

咽頭反射

喉の奥の粘膜を刺激することで、吐き気を催す反射のことを咽頭反射といいます。のどに指なんかをつっこむと「オエッ」となる、あれのことです。

咽頭反射があることで私たちの身体は、意図せず異物を簡単に飲み込んだりしないようになっているのでしょうね。

こちらも、体性反射の例だということが良くわかりますね。

\次のページで「角膜反射」を解説!/

角膜反射

「触ると動いてしまう」というような反射は他にも見られます。例えば眼。眼の角膜にものが当たると、まぶたが閉じてしまう反射があります。これは角膜反射とよばれるんです。

目薬などを指したときにも、まぶたがぱちぱちと動いてしまいますよね。目を守るための動きなのでしょう。

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以上のような、からだの表面…皮膚や粘膜に刺激が与えられることで生じる反射のことは、まとめて表在反射(ひょうざいはんしゃ)とよばれます。

膝蓋腱反射

膝頭(いわゆる”ひざこぞう”)のやや下に、膝蓋腱(しつがいけん)と呼ばれる場所があります。足の力を抜いた状態で、この場所をハンマー等でたたくと、足がまるで持ち上げられるかのようにグイっと上がる様子が見られるんです。

この反射は、膝蓋腱反射とよばれます。

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この反射では、膝蓋腱という腱に刺激が与えられたことで、結果的に足の筋肉の収縮がおきます。

高校や中学の理科の先生が見せてくれることも多いですね。自宅でもできますので、家の人に協力してもらって、確かめてみるといいでしょう。

アキレス腱反射

足首あたりにあるアキレス腱をハンマーなどでたたくと、足首が足の裏側に向けて折まがるような反射がみられます。その様子は、”つま先立ち”をするかのような感じです。これはアキレス腱反射とよばれます。

膝蓋腱反射やアキレス腱反射は、腱への刺激によって反射が引き起こされることから、まとめて腱反射というのです。

体性反射は病気やけがの診断にも使われる

今回紹介したもの以外にも、私たちの身体にはさまざまな体性反射が備わっています。それらの反射を、病気やけがの診断に使うことがあるんです。

反射は自らの意志でコントロールできない反応。我慢しようと思ってもできるものではありません。反射を引き起こすような刺激を与えてみたにもかかわらず、反射が起きない場合は…刺激を伝える神経系に何らかの問題(障害など)があるのではないかと考えられるんです。

とくに、腱反射は運動機能を評価する目的で、病院などでも診断に使われるんですよ。とっても興味深いですよね。

イラスト使用元:いらすとや

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体の仕組み・器官理科生物

「体性反射」とはどんなもの?反射の具体例も合わせて現役講師がわかりやすく解説します

今回は「体性反射」というキーワードを軸に学習していこう。

体性反射は、我々の身体でもよく見られる”反射”という反応の一種です。聞きなれない用語かもしれないが、この記事を読めばすっきり理解できるでしょう。自分自身の身体で見られる反応も意識しながら見ていってほしい。

大学で生物学を学び、現在は講師としても活動しているオノヅカユウに解説してもらおう。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

体性反射

体性反射(たいせいはんしゃ)とは、動物にみられる反射の中でも、筋肉(骨格筋)の収縮が引き起こされる反射のことをいいます。

端的にいってしまえば、「意志に反して身体が動くような反射」です。

体性反射それ自体について詳しく解説する前に、まずは生物の「反射」という現象について確認しておきましょう。

反射とは?

生物学において反射とは、ある特定の刺激によって引き起こされる、無意識の反応のことをいいます。

”無意識の反応”というところが大きなポイントです。反射という反応は生理的なものであり、基本的には自らの意志でコントロールできるものではありません。

残念ながら、虫にみられる光への反応などは、反射に含まれないことが多いんです。

繰り返しになりますが、反射は”無意識の反応”。ある生き物が刺激に対して何か反応を示したとき、それが「無意識かどうか」というのは、判断が難しいですよね。

逆にいえば、その生き物が「意識して行動を行うことがある」という前提がないと、”無意識の反応”というポイントが無意味になってしまいます。

image by iStockphoto

一般的に、”反射”という言葉が使われるのは、「意識がある(であろう)」と考えられている脊椎動物に対してです。昆虫や、ゾウリムシのような原生生物、植物などに対しては”反射”という言葉を用いず、反応の種類によって”走性”や”屈性”などの単語を使います。

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