この記事では「真綿に針を包む」について解説する。

端的に言えば真綿に針を包むの意味は「表面は優しいが心の内に意地悪さを隠している」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

早稲田大学文学部で日本文学・日本語学を学んだぽん太を呼んです。一緒に「真綿に針を包む」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ぽん太

早稲田大学文学部で日本語学と日本文学を学び、中高国語科の教員免許も取得している。これまで学んだ知識を生かして、難解な言葉をわかりやすく解説していく。

「真綿に針を包む」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「真綿に針を包む」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「真綿に針を包む」の意味は?

「真綿に針を包む」を国語辞典や漢字辞書で検索すると、次のような意味がありました。

表面は優しいが、内心に害意があって底意地が悪い意のたとえ。

害意や底意地の悪さを隠すことのたとえ。

 

出典:デジタル大辞泉(小学館)「真綿に針を包む」

「まわたにはりをつつむ」と読みます。

うわべでは親切で人当たりが良くても、心の内には悪意や意地悪さを隠し持っているという意味のことわざです。ちなみに「真綿に針を包む」以外に「針を包む」「綿に針」という言い方もあります。

「真綿」は蚕の繭からつくる綿のことで、木綿とならんで日本人に親しまれてきました。柔らかくて気持ちのいい真綿に針が忍ばせてあったら、思わず手に刺して怪我をしてしまいそうですよね。これを人の態度や言動のたとえとして用いたのが「真綿に針を包む」です。

「真綿に針を包む」はたとえとして使われることわざですが、そもそも「針」には「人の心を傷つけようとする悪意のたとえ」という意味があります。「針のある言葉」「針のある言い方」など聞き覚えがあるのではないでしょうか。ここでは物としての針という意味だと思いますが、「針」にこうした意味があることもぜひ覚えておきましょう。

「真綿に針を包む」の使い方・例文

「真綿に針を包む」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

\次のページで「「真綿に針を包む」の類義語は?違いは?」を解説!/

1.彼は表面上穏やかだが、自分の出世のためにはどんな手段もいとわない。まるで真綿に針を包んだような人だ。

2.彼の真綿に針を包んだような態度と物言いは、いつ見ても寒気がするよ。

3.上司の真綿に針を包むような態度が明るみに出て、彼は役職を外されることになった。

「真綿に針を包む」を使った例文を3つ紹介しました。

主に「真綿に針を包むような」というたとえの形で使います後ろには人や態度、言葉が入ることが多いです。「真綿に針を包む」を使うときには、表面上の優しい態度がありつつ、内心に隠し持つ意地悪さが垣間見えるような場面であることを確認しましょう。

ちなみに、誤用されるものとして「内弁慶の外すわり」「外柔内剛」が挙げられます。「内弁慶の外すわり」は「家庭でばかり強がって外では意気地が無いこと」、「外柔内剛」は「外見はものやわらかだが心の中にはしっかり芯があること」という意味です。こうした意味で使うのは誤用になるので注意してください。

「真綿に針を包む」の類義語は?違いは?

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次に「真綿に針を包む」の類義語をいくつか紹介します。

その1「口に蜜あり腹に剣あり」

読み方は「くちにみつありはらにけんあり」です。

「口では相手が喜ぶようなうまいことを言うが、内心では険悪で悪意を抱いている」という意味があります。

これは『資治通鑑(しじつがん)』に登場する故事が由来です。『資冶通鑑』は司馬光が編纂した歴史書で、八世紀、唐王朝の時代の中国について記述されています。

玄宗(げんそう)が唐の皇帝であった時の側近、李林甫(りりんぽ)は教養のある優秀な人々をねたみ、常に彼らを蹴落とそうと思案していました。李林甫は表では仲良く振る舞うものの、裏で彼らが罪をかぶるよう不利な情報を進言していたと言います。この李林甫の態度を「口に蜜有り、腹に剣有り」と言っていたのが語源になり、この故事成語が生まれました。

その2「笑中に刀あり」

読み方は「しょうちゅうにとうあり」です。「刃(やいば)」と書く場合もあります。

「表面は穏やかそうな笑みを浮かべているが、内心は陰険で、人を傷つけ陥れようと考えている人間のこと」を意味することわざです。

「笑中に刀あり」は『旧唐書(くとうじょ)』の李義府伝に登場する故事が由来となっています。先ほどの李林甫と同様、李義府がうわべでは温厚ながら内心で人を陥れようとしていることを述べたものです。こうした故事成語からも唐の時代は権力争いが熾烈だったことがうかがえますね。

\次のページで「「真綿に針を包む」の対義語は?」を解説!/

「真綿に針を包む」の対義語は?

次に「真綿に針を包む」の対義語を紹介します。

「口に針」

読み方は「くちにはり」です。

「言葉がとげとげしく、皮肉や悪意が感じられること」という意味があります。

「真綿に針を包む」が悪意を隠し持っていることを表すのに対し、「口に針」は皮肉や悪意をむき出しにしたとげとげしい言葉を発しているという意味です。

実際に口に針があるわけではないですが、針のように鋭く相手を傷つけるような物言いが口から出ると解釈できます。

「真綿に針を包む」の英訳は?

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最後に「真綿に針を包む」の英訳を紹介します。

「God in the tongue and devil in the heart.」

「舌には神、心には悪魔」という意味です。キーワードの単語を解説していきましょう。

「tongue」「舌」という意味です。焼き肉の「タン」ですね。「God in the tongue」で「舌の中の神様」という意味になります。ここでいう神様は優しさや温厚さの象徴でしょう。「舌に神がいる」とすることで、話し方や言葉の優しさを表しています

「devil in the heart」は「心の中の悪魔」です。分かりやすいですね。心に悪魔がいるとは、意地悪さや人を陥れようという悪意があるという意味でしょう。

これらを組み合わせることで、「口ぶりは優しく温厚だが、心の中には意地悪さや悪意を隠し持っている」、つまり「真綿に針を包む」という意味になります。

「真綿に針を包む」を使いこなそう

この記事では「真綿に針を包む」の意味・使い方・類語などを説明しました。人によってはあまりなじみのない言葉だったかもしれませんが、しっかり理解できたでしょうか?もしわからない部分があれば是非読み返してみてください。時間がないという人は目次だけでも大丈夫です。記事の内容が一覧で表示されているので復習にも役立ちますよ。

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【ことわざ】「真綿に針を包む」の意味や使い方は?例文や類語を早稲田文学部卒Webライターがわかりやすく解説!

この記事では「真綿に針を包む」について解説する。

端的に言えば真綿に針を包むの意味は「表面は優しいが心の内に意地悪さを隠している」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

早稲田大学文学部で日本文学・日本語学を学んだぽん太を呼んです。一緒に「真綿に針を包む」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ぽん太

早稲田大学文学部で日本語学と日本文学を学び、中高国語科の教員免許も取得している。これまで学んだ知識を生かして、難解な言葉をわかりやすく解説していく。

「真綿に針を包む」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「真綿に針を包む」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「真綿に針を包む」の意味は?

「真綿に針を包む」を国語辞典や漢字辞書で検索すると、次のような意味がありました。

表面は優しいが、内心に害意があって底意地が悪い意のたとえ。

害意や底意地の悪さを隠すことのたとえ。

 

出典:デジタル大辞泉(小学館)「真綿に針を包む」

「まわたにはりをつつむ」と読みます。

うわべでは親切で人当たりが良くても、心の内には悪意や意地悪さを隠し持っているという意味のことわざです。ちなみに「真綿に針を包む」以外に「針を包む」「綿に針」という言い方もあります。

「真綿」は蚕の繭からつくる綿のことで、木綿とならんで日本人に親しまれてきました。柔らかくて気持ちのいい真綿に針が忍ばせてあったら、思わず手に刺して怪我をしてしまいそうですよね。これを人の態度や言動のたとえとして用いたのが「真綿に針を包む」です。

「真綿に針を包む」はたとえとして使われることわざですが、そもそも「針」には「人の心を傷つけようとする悪意のたとえ」という意味があります。「針のある言葉」「針のある言い方」など聞き覚えがあるのではないでしょうか。ここでは物としての針という意味だと思いますが、「針」にこうした意味があることもぜひ覚えておきましょう。

「真綿に針を包む」の使い方・例文

「真綿に針を包む」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

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