この記事では「深窓に育つ」について解説する。

端的に言えば深窓に育つの意味は「世間から隔離された場所で育つこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

早稲田大学文学部で日本文学・日本語学を学んだぽん太を呼んです。一緒に「深窓に育つ」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ぽん太

早稲田大学文学部で日本語学と日本文学を学び、中高国語科の教員免許も取得している。これまで学んだ知識を生かして、難解な言葉をわかりやすく解説していく。

「深窓に育つ」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「深窓に育つ」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「深窓に育つ」の意味は?

「深窓に育つ」を国語辞典や漢字辞書で検索すると、次のような意味がありました。

上流階級の娘などが、俗世間から隔離された環境で養育されて大きくなる

出典:デジタル大辞泉(小学館)「深窓に育つ」

読み方は「しんそうにそだつ」です。

「身分の高い人の娘などが、屋敷の中など一般社会から隔離された環境で育てられること」を意味します。

上流家庭の子供、特に娘を指して使われる慣用句ですが、対象の年齢は特に関係ありません。大抵は10代・20代の娘さんに対して使われます。

隔離された環境で大切に育てられるため、「世間のけがれを知らずに」という意味が含まれることも多いです。この意味を含むと、「世間知らずな」「温室育ちの」といった少しマイナスなニュアンスが入ります。

「深窓に育つ」の語源は?

次に「深窓に育つ」の語源を確認しておきましょう。

「深窓」「屋敷の奥の方の部屋」を意味します。実際の窓の意味はありません。多くの場合、そこに住む身分の高い人や大切に扱われる人の意を含んで用いられます。窓は家と外を隔てる象徴的なものですから、そこから連想してこのような意味が生まれたのでしょう。

「深窓」を使った言葉は他にも「深窓の令嬢(れいじょう)」「深窓の佳人(=世のけがれを知らない美人)」があります。

\次のページで「「深窓に育つ」の使い方・例文」を解説!/

「深窓に育つ」の使い方・例文

「深窓に育つ」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.何しろ彼女は深窓に育った人だから、私たち一般人と話が合わなくて当然だろう。


2.深窓に育った彼女が就職して一人暮らしをしたいと言い出し、周囲の人間は言葉を失った。


3.幼い頃から深窓に育った彼女に、この貧乏な暮らしは耐えられまい。

「深窓に育つ」を使った例文を3つ紹介しました。

「深窓に育つ」は「深窓に育った(人)」という使い方が主です。親目線で「深窓で育てる」という言い方もできそうですが、使われている例は見つかりませんでした。「深窓の令嬢」などと使われるように、「深窓」は本人の特徴を表すための言葉として使われるものと考えられます。

「深窓に育った(人)」と使う場合、上流階級の暮らしぶりを表現する文章にはなりません。一般人や世間との対比のような構造で使われるのが主流です。

「深窓に育つ」の類義語は?違いは?

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次に「深窓に育つ」の類義語をいくつか紹介します。

その1「箱入り娘」

読み方は「はこいりむすめ」です。

「めったに外へも出さないようにして、家庭の中で大事に育てられた娘」という意味があります。

「箱」は物としての箱ではなく、家庭を例えたものです。「箱入り」には「箱の中に秘蔵するように、大切にすること」という意味があります。他の人の目に触れないよう大切に育てられている様子が伝わってきますね。

\次のページで「その2「蝶よ花よ」」を解説!/

その2「蝶よ花よ」

読み方は「ちょうよはなよ」です。

「親が子どもをこの上なく可愛がり、大切に育てるさま」という意味があります。蝶も花も可憐で美しく、大切にかわいがるものであることから生まれた言葉です。

昔は「花や蝶や」「蝶や花や」と言われており、現在の「蝶よ花よ」に変化したのは明治時代と言われています。ちなみに、相手を大切に扱うさまを表した「ちやほや」は「蝶や花や」を略したものという説がありますよ。

その3「温室育ち」

読み方は「おんしつそだち」です。

「大事にされて育ったために、世間の苦労を知らず、きたえられていないこと。また、そういう人」という意味があります。類義語は「過保護」「世間知らず」「苦労知らず」です。あまりいいイメージの言葉ではありませんね。

「温室」は植物園などをイメージするとわかりやすいでしょう。温室では、植物をビニールなどで覆って雨風から守り、さらに暖房機器を設置して寒さからも守ります。このように他の人の手によって守られ、ぬくぬくと育った人が「温室育ち」です。一般の人からするといいイメージが持てないのは当然かもしれませんね。

「深窓に育つ」の対義語は?

次に「深窓に育つ」の対義語を紹介します。

「可愛い子には旅をさせよ」

読み方は「かわいいこにはたびをさせよ」です。

「我が子が可愛いなら、親の元に置いて甘やかすことをせず、世の中の辛さや苦しみを経験させたほうがよい」という意味があります。同じような意味を持つことわざは「獅子の子落とし」です。

昔の旅といえば徒歩で、ほとんど整備されていない道を延々と歩き続けるような過酷なものでした。親元を離れて辛く苦しい体験をしてこそ成長するという考えのもと、自分の子供に辛い経験をさせるのは昔からよく行われていたようです。

「深窓に育つ」の英訳は?

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最後に「深窓に育つ」の英訳を紹介します。

「be brought up with tenderest care in a good family.」

「上流家庭でとても大切にかわいがられながら育つ」という意味です。キーワードの単語ごとに解説していきましょう。

「be brought up」「育てられる、育つ」です。「育てる」という意味の「bring up」が受け身の形に変化しています。

「with tenderest care」は「with tender care」が「親身になって」という意味なので、それを最上級に格上げした意味です。ちなみに「tender」には「柔らかな、かよわい、思いやりがあって優しい、あわれみ深い」という意味があります。今回の英文では意訳して「大切にかわいがられる」としました。

「good family」「上流階級、いいとこ、良家」という意味です。単純に「良い家族」ではないので気をつけましょう。

これらの意味を組み合わせると、「上流家庭でとても大切にかわいがられながら育つ」、つまり「深窓に育つ」という意味になります。

\次のページで「「深窓に育つ」を使いこなそう」を解説!/

「深窓に育つ」を使いこなそう

この記事では「深窓に育つ」の意味・使い方・類語などを説明しました。あまりなじみのない言葉でしたが、しっかり理解できたでしょうか?もしわからない部分があれば是非読み返してみてください。時間がないという人は目次だけでも大丈夫です。記事の内容が一覧で表示されているので復習にも役立ちますよ。

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【慣用句】「深窓に育つ」の意味や使い方は?例文や類語を早稲田文学部卒Webライターがわかりやすく解説!

この記事では「深窓に育つ」について解説する。

端的に言えば深窓に育つの意味は「世間から隔離された場所で育つこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

早稲田大学文学部で日本文学・日本語学を学んだぽん太を呼んです。一緒に「深窓に育つ」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ぽん太

早稲田大学文学部で日本語学と日本文学を学び、中高国語科の教員免許も取得している。これまで学んだ知識を生かして、難解な言葉をわかりやすく解説していく。

「深窓に育つ」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「深窓に育つ」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「深窓に育つ」の意味は?

「深窓に育つ」を国語辞典や漢字辞書で検索すると、次のような意味がありました。

上流階級の娘などが、俗世間から隔離された環境で養育されて大きくなる

出典:デジタル大辞泉(小学館)「深窓に育つ」

読み方は「しんそうにそだつ」です。

「身分の高い人の娘などが、屋敷の中など一般社会から隔離された環境で育てられること」を意味します。

上流家庭の子供、特に娘を指して使われる慣用句ですが、対象の年齢は特に関係ありません。大抵は10代・20代の娘さんに対して使われます。

隔離された環境で大切に育てられるため、「世間のけがれを知らずに」という意味が含まれることも多いです。この意味を含むと、「世間知らずな」「温室育ちの」といった少しマイナスなニュアンスが入ります。

「深窓に育つ」の語源は?

次に「深窓に育つ」の語源を確認しておきましょう。

「深窓」「屋敷の奥の方の部屋」を意味します。実際の窓の意味はありません。多くの場合、そこに住む身分の高い人や大切に扱われる人の意を含んで用いられます。窓は家と外を隔てる象徴的なものですから、そこから連想してこのような意味が生まれたのでしょう。

「深窓」を使った言葉は他にも「深窓の令嬢(れいじょう)」「深窓の佳人(=世のけがれを知らない美人)」があります。

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