この記事では「すいません」と「すみません」の違いについてみていきます。
どちらも謝罪するときやお礼を言うときに頻繫に使う言葉ですが、自然と口にしているだけに、その違いを意識することは少ないよな。
たった一文字の違いですが、そこには使用する際の明らかな違いがあるようです。これらの言葉の違いや語源について、語学が大好きなWebライターおとのと一緒に解説していきます。

ライター/おとの

日本語の美しさと面白さについて学ぶのが大好きな語学オタク。小説や歌詞で素敵な表現に出会うととてもテンションがあがる。今回は英語表現にも食指を動かして調べてみた。

「すみません」と「すいません」はどちらが正しい?

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「すみません」や「すいません」は日常的によく使う言葉です。謝罪するときはもちろん、お礼を言うときや呼びかけるときにも使用しますね。しかしこの二つの言葉の微妙な違いを意識したことはありますか?言葉として正しいのはどちらなのか。それぞれの語源や成り立ちを含めて解説します。

「すみません」の語源

まずは結論から。語法として正しいのは「すみません」です。その理由は語源を知ると分かりやすいので、以下で解説していきますね。

「すみません」の語源は「済む」「澄む」の二つの動詞です。まずは「済む(澄む)」に打ち消しの助詞である「ぬ」をつけて「すまぬ」となります。さらに敬語にすると「すみませぬ」。この言葉が現代に至るまでに「すみません」と変化したのです。

「すいません」の成り立ち

正しいのは「すみません」なのに、何故「すいません」も広く使われているのでしょうか。その理由は単純。こちらの方が言いやすいからです。

このような変化を音便と言います。簡単に説明すると、言葉の音を発音しやすいように変化させることです。「すみません」の「み」を音便によって「い」に置き換えた結果「すいません」が生じました。つまり「すいません」は口語。日常会話で使うぶんには問題ありませんが、メールや手紙では使用できないので注意しましょう。

「すみません」と「ごめんなさい」の違い

「すみません」と「すいません」の違いは簡単でしたね。では、次は同じく謝罪の意味を持つ「ごめんなさい」と比較してみましょう。

「すみません」の語源は上記のとおり「済む(澄む)」で、次のような意味を持ちます。

[動マ五(四)

 物事がすっかり終わる。「契約が—・む」「株主総会が無事に—・んだ」

 借り全部返す。「借金が—・む」

 予想していた程度以下や範囲内で収まる。解決される。また、その場はそれで用が足りる。間に合う。「幸い、軽傷で—・んだ」「電話一本で—・むことだ」「罰金だけで—・んだ」

 気持ちのうえで満足する。気持ち安らぐ。「君の気が—・むまでなぐってくれ」

 他人に対して言い訳が立つ。多く打消し反語の意を表す語を伴って他人に謝罪する際に用いる。「ほんとに—・まなかったね」「あやまって—・む問題ではない」→済まない →済みません

(出典:デジタル大辞泉 / 小学館)

\次のページで「ビジネスで「すみません」は使っても良い?」を解説!/

物事が完全に片付いたと見なし、心にひっかかることがない状態を示す言葉ですね。これを打ち消しているわけですから「すみません」は「申し訳ないと思う気持ちが強く、自分の気持ちが晴れません」といった意味になります。

「ごめんなさい」を漢字で描くと「御免なさい」です。「免」には許可の意味があり「免許」や「放免」などの言葉は普段でも耳にしますよね。この「免」に尊敬を表す接頭語の「御」をつけて「御免」となり、本来は許可を下す人を敬う言い方でした。後に命令形の「なさい」をつけて、謝罪の意味も担うようになったのです。以上を踏まえると「ごめんなさい」の意味は「許してください」となります。

ビジネスで「すみません」は使っても良い?

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ビジネスにおいて、正しく謝罪したりお礼を伝えたりすることは非常に重要です。マナーがなっていない人や会社はそれだけで信用を失ってしまいます。ここでは、ビジネスで正しいコミュニケーションを取るために「すみません」を利用しても良いのかを学んでいきましょう。

謝罪なら「申し訳ございません」

例えば、同僚などのフランクな間柄で使用するならば「すみません」でも失礼な印象はありません。しかし取引先や上司など、目上の人に対する謝罪として使う場合は不適切です。代わりに「申し訳ございません」や「失礼致しました」を使用するようにしましょう。「ごめんなさい」の意味を持たせたいのなら「ご容赦ください」などが挙げられます。

取引先や顧客に多大な迷惑をかけてしまった場合には、謝罪の言葉だけでなく、問題が発生した原因や経緯を述べたうえで今後の対応策も伝えることが肝心です。

感謝なら「ありがとうございます」

「すみません」は汎用性が高いだけに、相手にハッキリとした意図を伝えにくい場合があります。感謝の気持ちを伝えたいのに、相手に謝罪と受け取られて「そんなに気にさせて悪かったかな…?」などと思わせては本末転倒ですよね。ビジネスシーンのみならず、明確な感謝を表したいときには「ありがとうございます」と言いましょう。

ちなみに「ありがとう」には、言った本人のストレスを和らげ、前向きな気持ちにさせてくれるという心理的効果が認められてみます。一石二鳥なこの言葉。積極的に使いたいものです。

クッション言葉なら「恐れ入りますが」

人に何かを依頼したり尋ねたりする際、クッション言葉として「すみませんが」と言う機会は多いでしょう。クッション言葉をうまく活用することで、相手に与える印象を和らげて、物事を円滑に進めることができます。しかしビジネスでクッション言葉を使う相手は、目上の人であることがほとんどですから「すみませんが」は適しません

相手に依頼や質問する際は「恐れ入りますが」「失礼ですが」などを使うことができます。相手の希望に沿うことができない場合は「生憎ですが」「申し訳ございませんが」などが適切でしょう。

\次のページで「「すみません」の英語表現は?」を解説!/

「すみません」の英語表現は?

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日本人は謝りすぎだという話は、世界でも広く知られていることです。そう思われる理由としては日本人が礼儀を重んじる国民性であることのほかに「すみません」を多用することにあります。では、英語で「すみません」はどのように表現するかを見ていきましょう。

“I'm sorry”だけじゃない

謝罪の英語表現の代表格といえば“I'm sorry.”ですね。カジュアルな表現ならば“Sorry.”だけでも利用できます。また“I'm(so/very)sorry.”というように深い謝罪を表すことも可能です。この表現はビジネスでも利用できて、会社として謝罪する際の主語は“I”ではなく“We”になります。

もっとフォーマルな謝罪をしなくてはいけない場合、以下のような表現方法も覚えておきましょう。

・We apologize for our mistake. (こちらのミスをお詫び致します)
・Please accept my sincere apologies for my rude attitude.(失礼な態度を取ってしまったことを心よりお詫び申し上げます)

呼びかけや軽度の謝罪は“Excuse me”

例えば目の前の人が財布を落としたり、誰かに道を尋ねたりするときに「すみません」と呼びかける場面。英語では“Excuse me.”と言いますが、これも定番の表現ですね。この言葉は呼びかけの他に以下のような軽い謝罪でも用いられます

・Excuse me. Please let me through. (すみません。通してください)
・Ah-Ah-achoo! Excuse me.(ハ…ハックション!失礼しました)

\次のページで「感謝を伝えるには“Thank you”」を解説!/

謝罪として使う場合、“I'm sorry”との違いは相手に与える損害の度合いと考えるのが簡単です。誰かと肩がぶつかっただけであれば“Excuse me.”ですが、ぶつかった相手が尻餅をついて、持っていたコーヒーをシャツにこぼしてしまった場合は“I'm (very) sorry!”といった具合ですね。

また、日本語でも相手の言ったことが聞き取れなかった際に「すみません?」と聞き返すことがありますが、それも“Excuse me?”でカバーできますよ。

感謝を伝えるには“Thank you”

英語では感謝を伝える際、謝罪の意味を含む言葉は利用しません。日本語と同じ感覚で“I'm sorry”を使うと「どうして誤る必要があるの?」と首を傾げられてしまいます。

もっとも一般的で幅広く使われるのが“Thank you”ですが、その他にも以下のような感謝の表現がありますよ。

・Thanks a lot.(いろいろとありがとう)
・I appreciate your help.(あなたの協力に感謝致します)
・I am grateful for your kindness.(あなたのご親切をありがたく思っています)

日本とは反対に、英語はお詫びの代わりにお礼の表現を使うことがあります。例えば「お待たせしてすみません」は“Thank you for waiting.”と英訳することができて、日本語に再翻訳すると「待っていてくれてありがとうございます」となるのです。ポジティブな意味に変換するのは見習いたい技ですね。

「すみません」は便利な言葉!けれど、時には休ませてあげよう!

一言に「すみません」といっても、そこには複数の意味が含まれています。使う機会の多い便利な言葉ですが、時としてそれがそぐわない場面があることも解説しました。お詫びやお礼をしっかり伝えるのは簡単なようで意外と難しく、そしてとても大切なことです。表現の仕方はたくさんありますから、言葉のもつ意味を捉えて、状況に合わせた適切な表現を選べるようにしていきましょう!

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言葉雑学

「すいません」は誤り?「すみません」との違いは?語源や使い分けを日本語大好きWebライターがわかりやすく解説

この記事では「すいません」と「すみません」の違いについてみていきます。
どちらも謝罪するときやお礼を言うときに頻繫に使う言葉ですが、自然と口にしているだけに、その違いを意識することは少ないよな。
たった一文字の違いですが、そこには使用する際の明らかな違いがあるようです。これらの言葉の違いや語源について、語学が大好きなWebライターおとのと一緒に解説していきます。

ライター/おとの

日本語の美しさと面白さについて学ぶのが大好きな語学オタク。小説や歌詞で素敵な表現に出会うととてもテンションがあがる。今回は英語表現にも食指を動かして調べてみた。

「すみません」と「すいません」はどちらが正しい?

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「すみません」や「すいません」は日常的によく使う言葉です。謝罪するときはもちろん、お礼を言うときや呼びかけるときにも使用しますね。しかしこの二つの言葉の微妙な違いを意識したことはありますか?言葉として正しいのはどちらなのか。それぞれの語源や成り立ちを含めて解説します。

「すみません」の語源

まずは結論から。語法として正しいのは「すみません」です。その理由は語源を知ると分かりやすいので、以下で解説していきますね。

「すみません」の語源は「済む」「澄む」の二つの動詞です。まずは「済む(澄む)」に打ち消しの助詞である「ぬ」をつけて「すまぬ」となります。さらに敬語にすると「すみませぬ」。この言葉が現代に至るまでに「すみません」と変化したのです。

「すいません」の成り立ち

正しいのは「すみません」なのに、何故「すいません」も広く使われているのでしょうか。その理由は単純。こちらの方が言いやすいからです。

このような変化を音便と言います。簡単に説明すると、言葉の音を発音しやすいように変化させることです。「すみません」の「み」を音便によって「い」に置き換えた結果「すいません」が生じました。つまり「すいません」は口語。日常会話で使うぶんには問題ありませんが、メールや手紙では使用できないので注意しましょう。

「すみません」と「ごめんなさい」の違い

「すみません」と「すいません」の違いは簡単でしたね。では、次は同じく謝罪の意味を持つ「ごめんなさい」と比較してみましょう。

「すみません」の語源は上記のとおり「済む(澄む)」で、次のような意味を持ちます。

[動マ五(四)

 物事がすっかり終わる。「契約が—・む」「株主総会が無事に—・んだ」

 借り全部返す。「借金が—・む」

 予想していた程度以下や範囲内で収まる。解決される。また、その場はそれで用が足りる。間に合う。「幸い、軽傷で—・んだ」「電話一本で—・むことだ」「罰金だけで—・んだ」

 気持ちのうえで満足する。気持ち安らぐ。「君の気が—・むまでなぐってくれ」

 他人に対して言い訳が立つ。多く打消し反語の意を表す語を伴って他人に謝罪する際に用いる。「ほんとに—・まなかったね」「あやまって—・む問題ではない」→済まない →済みません

(出典:デジタル大辞泉 / 小学館)

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