この記事では「風穴を開ける」について解説する。

端的に言えば「風穴を開ける」の意味は「新風を吹き込むこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「風穴を開ける」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち

雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。

「風穴を開ける」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「風穴(かざあな)を開ける」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「風穴を開ける」の意味は?

「風穴を開ける」には、次のような意味があります。

1 槍・鉄砲の弾丸などで、胴体を貫く。「どてっぱらに―・けてやるぞ」
2 転じて、閉塞感のある組織や事態などに新風を吹き込む。「寡占市場に―・ける」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「風穴を開ける」

この言葉は、「閉ざされた状態に、新しい風を吹き込む」という意味の慣用表現です。「閉ざされた状態に」というところが大切で、ただ単純に「物事・状態が新しくなる」という意味では使わないことをしっかり押さえてください。

世の中には「風通しが悪い」「空気が悪い」という言葉もありますが、そんな閉じた状態に新しい風が吹くイメージで、前向きな使われ方をすることが多い表現です。大きな変化が起きているはずですから、長文読解のポイントにもなるでしょう。

他にも「弾丸などで胴体を貫く」という恐ろしい意味もあるのですが、こちらは慣用表現の問題としてはまず問われることはなく、前後の文脈から意味も推測できるはずですので、心に留めておく程度で大丈夫でしょう。

「風穴を開ける」の語源は?

「風穴」とは、もともと「通風のために壁や窓に開けた穴」「山腹などにできた奥深い風が吹き抜ける穴」を意味する言葉でした。この「閉じたところに風が通る」イメージが転じて、物事全般に対しても使われるようになったのだと考えられています。

元の意味では「ふうけつ」と音読みをすることもありましたが、慣用句としては「かざあな」。「かぜあな」でもないことに注意しましょう。

ちなみに、辞書によっては「風穴を明ける」という感じで表記されているものもありました。現在は「開ける」が一般的な使われ方ですが、暗いところに穴から光が差し込むイメージであれば、そちらも納得できるのではないでしょうか。こちらも念のため覚えておきましょう。

\次のページで「「風穴を開ける」の使い方・例文」を解説!/

「風穴を開ける」の使い方・例文

「風穴を開ける」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

・お試しサービスをしてみるのにも、常に上の人間の顔色を窺わなければいけない旧体質の会社に風穴を開けたのは、社長の息子その人だった。

・数百年続いた王国の天下に風穴を開ける争いに、多くの魅力的なキャラクターが参戦する超王道ストーリー…という触れ込みのゲームだったが、肩透かしな出来栄えだった。

・学問とは本来、知識によって固定観念に風穴を開けて、あなたたちが新しい世界に踏み出すためのものなのだと先生が語ってくれて、僕はとても合点がいった。

「閉塞感がある状況に、新しい状況をもたらす」というニュアンスが伝わりますでしょうか。先の意味の項でも書いたように「閉塞感」があることが大切で、それを屋根や壁に囲まれた状態に例えてみると特にわかりやすいでしょう。

苦しくて息が出来ないようなところに、ずぼっと大きな穴が開いて新鮮な空気が差し込む…思わず深呼吸がしたくなるかもしれませんね。そんな「生き返った」とか「これで助かる」という意図まで読み取れるかもしれません。

実際にそのあとが良くなるかはわからないものの、その時点では希望を得られたということ。「風穴を開けて、状況が悪くなる」という文脈にはなりません。どんな苦しさから解放されて、どんな希望を持てたのか前後からしっかり読み取ってくださいね。

「風穴を開ける」の類義語は?違いは?

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「風穴を開ける」の類義語は「殻(から)を破る」などが挙げられます。

「殻を破る」

「殻を破る」は、「新しいことの妨げになっていた、古い考えや習慣を打ち破ること」。まさに「風穴を開ける」と同じ意味で使える慣用表現で、こちらは「殻」が「固い=簡単には変えられない、古いもの」を象徴しています。

同時に「殻を破る」の場合は、自身に対して「成長する・大人になる」という使い方をすることもでき、これはやはり「卵から雛が孵って育っていく」イメージから発生したものでしょう。合わせてこちらの意味も押さえてしまいましょう。

\次のページで「「風穴を開ける」の対義語は?」を解説!/

風の便りによると、数年前に親と大喧嘩して家を飛び出した彼は旅先で新しい生活を見つけることができ、意識が変わって自分の殻を破ることができたようだ。

「風穴を開ける」の対義語は?

「風穴を開ける」の対義語は「硬直化」「形骸化」で表すことができます。

「硬直化」「形骸化」

「硬直化」は「考え方が硬くなること、柔軟性がなくなること」。「形骸化」は「中身が失われること、最初の理念などがなくなること」。息苦しそうだったり、当初の魅力が無くなってしまったりという状態を表していますね。

まさに「風穴を開ける」とは逆の意味になりますが、むしろ「硬直化した組織に、風穴を開ける」のように、セットで使われることも多くあります。一緒に覚えてしまうとお得ですよ。

・常にブログランキングの上位だったあの魅力的なサイトは、運営者が変わったとたんにグループ内部が硬直化してしまったらしく、すっかりつまらなくなった。

・偉大なボスが掲げていた大事な理念も年を経るごとに形骸化して、どんどんその勢いを失っていく、ということはどこにでも起こりうるものだ。

「風穴を開ける」の英訳は?

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「風穴を開ける」の英訳は「make a breakthrough」で表すことができます。

「make a breakthrough」

これは直訳すれば「大発見・打破を行うこと」。「breakthrough」自体に、「進展・打開」というニュアンスがあり「(硬直した状態から)新しくなる」という意味合いを強く出せるフレーズです。

最近は日本語でも「ブレイクスルー」という言葉を使いますね。これにも「既存のやり方を打ち破って」という意味で、新技術や新しい考え方に対する前向きな気持ちが込められています。英語でも日本語でも、そんな希望的な表現意図で使いたいものですね。

\次のページで「「風穴を開ける」を使いこなそう」を解説!/

He made a breakthrough to the old-fashioned company.
彼は古い体質のその会社に、風穴を開けた。

「風穴を開ける」を使いこなそう

この記事では「風穴を開ける」の意味・使い方・類語などを説明しました。息苦しい状態にあっては、新鮮な空気が欲しくなるもの。今も昔も、「風穴を開け」ようとしている人たちは、語源にあったように山に穴を開けるような苦しさも乗り越えてきたのかもしれません。

希望と同時に頑張りや必死さも感じられる、エネルギッシュな表現ともいえるでしょう。

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国語言葉の意味

【慣用句】「風穴を開ける」の意味や使い方は?例文や類語を元予備校講師がわかりやすく解説!

この記事では「風穴を開ける」について解説する。

端的に言えば「風穴を開ける」の意味は「新風を吹き込むこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「風穴を開ける」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち

雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。

「風穴を開ける」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「風穴(かざあな)を開ける」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「風穴を開ける」の意味は?

「風穴を開ける」には、次のような意味があります。

1 槍・鉄砲の弾丸などで、胴体を貫く。「どてっぱらに―・けてやるぞ」
2 転じて、閉塞感のある組織や事態などに新風を吹き込む。「寡占市場に―・ける」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「風穴を開ける」

この言葉は、「閉ざされた状態に、新しい風を吹き込む」という意味の慣用表現です。「閉ざされた状態に」というところが大切で、ただ単純に「物事・状態が新しくなる」という意味では使わないことをしっかり押さえてください。

世の中には「風通しが悪い」「空気が悪い」という言葉もありますが、そんな閉じた状態に新しい風が吹くイメージで、前向きな使われ方をすることが多い表現です。大きな変化が起きているはずですから、長文読解のポイントにもなるでしょう。

他にも「弾丸などで胴体を貫く」という恐ろしい意味もあるのですが、こちらは慣用表現の問題としてはまず問われることはなく、前後の文脈から意味も推測できるはずですので、心に留めておく程度で大丈夫でしょう。

「風穴を開ける」の語源は?

「風穴」とは、もともと「通風のために壁や窓に開けた穴」「山腹などにできた奥深い風が吹き抜ける穴」を意味する言葉でした。この「閉じたところに風が通る」イメージが転じて、物事全般に対しても使われるようになったのだと考えられています。

元の意味では「ふうけつ」と音読みをすることもありましたが、慣用句としては「かざあな」。「かぜあな」でもないことに注意しましょう。

ちなみに、辞書によっては「風穴を明ける」という感じで表記されているものもありました。現在は「開ける」が一般的な使われ方ですが、暗いところに穴から光が差し込むイメージであれば、そちらも納得できるのではないでしょうか。こちらも念のため覚えておきましょう。

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