この記事では「命を捨てる」について解説する。

端的に言えば命を捨てるの意味は「目的のために命を投げ出す」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

広告や書籍で13年の経験を積んでいる現役校正者の朱月を呼んです。一緒に「命を捨てる」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/朱月

誤字脱字と日々格闘する、文学部出身の校正者。13年の校正経験を生かし、丁寧に解説する。

「命を捨てる」の意味・使い方まとめ

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「命」がつく慣用句やことわざは色々ありますが、「命を捨てる」という慣用句を知っていますか?今回はこの「命を捨てる」について、意味や使い方を見ていきましょう。

「命を捨てる」の意味は?

「命を捨てる」を国語辞典で調べると、次のような意味が載っています。

1.ある目的のために死ぬ。命を投げ出す。「—・てる覚悟で取り組む」
2.生きるべきなのに死ぬ。「無謀な運転で—・てる」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「命を捨てる」

「命」とは「生きている限り持ち続け、死とともに消滅する生命」のことです。ここでの「捨てる」とは、わたしたちが日頃よく使っている「いらないものとして手元から離す」「放棄する」という意味ではありません。「捨てる」という言葉には、慣用句的に使うことで「自らを犠牲にする、投げ出す」という意味があります

「命を捨てる」とは、目的のために自分の命や危険も顧みずに努力する強い意志や、自己犠牲の精神の表れと考えてもよいでしょう。また、2の意味のように実際に死んでしまうという意味でも使われます。この場合も「生きるべきなのに死ぬ」と辞書にあるように、本来しなくてもいい犠牲を払っていることに注目しましょう。

「命を捨てる」の語源は?

「命を捨てる」という言葉に語源はあるのでしょうか。自己犠牲の精神を表した記述は古くからさまざまな書物に見られますが、何が「命を捨てる」の語源であるのか、どうやらはっきりしていないようです。文字通りの意味から、次第に慣用句として使われるようになったのかもしれませんね。

「命を捨てる」の使い方・例文

「命を捨てる」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

\次のページで「「命を捨てる」の類義語は?違いは?」を解説!/

1.彼が命を捨てる覚悟で組織改革に取り組んでいるのを知って、とても勇気をもらった。
2.彼女が自殺したなんていまだに信じられない。命を捨てるには惜しすぎる。

例文1は、1つ目の意味の例文として取り上げました。自分の仕事に対して大きな目標を持つことは、とても大切なことですよね。たとえ困難な状況でも成功に向かって努力する人の存在は、周りにも影響を与えてくれます。

例文2は、2つ目の意味で取り上げました。どのような理由があるにせよ、将来ある人が自分で自分の人生を終わりにしてしまうのは、本当に悲しいことです。

「命を捨てる」の類義語は?違いは?

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次に、「命を捨てる」の類義語を見ていきましょう。

その1「捨て身」

柔道の経験がある人はピンとくるかもしれませんね。「捨て身」とは、「命を捨てる覚悟で事にあたること」という意味の言葉です。

仏教用語に「捨身(しゃしん)」という言葉がありますが、聞いたことはあるでしょうか?「供養や衆生(しゅじょう)救済などのために、自分の身を捨てること」「仏門に入ること」などの意味があります。「捨て身」と字面がよく似ていますが、意味がやや異なるので注意しましょう。

捨て身で技を仕掛けたが、相手にうまくかわされてしまった。

その2「命は鴻毛より軽し」

「命は鴻毛(こうもう)より軽し」とは、あまり聞かない慣用句かもしれませんね。この言葉は、中国の歴史家・司馬遷が書いた文章に由来があります。

「鴻毛」とは「鴻(おおとり)」という水鳥の羽毛のことで、極めて軽いもののたとえです。「命は鴻毛より軽し」で「命を捨てることは少しも惜しくない」という意味になります。

\次のページで「その3「身命を賭す」」を解説!/

命は鴻毛より軽し」というだろう。今こそ主君の悲願成就のため先頭に立って戦うべきだ。

その3「身命を賭す」

「身命(しんめい)を賭(と)す」とは、「命を投げ出して努力する」という意味の慣用句です。「身命」は「身体と生命」をさしており、「自身のいのち」を意味しています。

「不惜身命(ふしゃくしんみょう)」という四字熟語も「身命を賭す」と同様の意味がありますので、あわせて覚えておくとよいですよ。

決して簡単な研究ではないが、成功すればたくさんの人が救われる。知恵を振り絞り、身命を賭して取り組もう。

「命を捨てる」の対義語は?

ここからは、「命を捨てる」の対義語を見ていきましょう。どのような言葉があるでしょうか。

その1「命あっての物種」

「命あっての物種(ものだね)」とは、「何事も命があるからできることで、死んでは何にもならない」という意味の慣用句です。「物種」には「穀物などの種」という意味もありますが、ここでは「物事のもととなるもの」という意味で使われています。

あなたの決断は素敵なことだし理解もするが、命あっての物種だ。もっと現実を見て、慎重になったほうがいい。

その2「死んで花実が咲くものか」

「死んで花実(はなみ)が咲くものか」とは、「死んでしまえば万事おしまいである」という意味の慣用句です。「花実」には「花と実」という文字通りの意味もありますが、ここでは「名と実(じつ)」という意味で使われています。「生きているからこそ栄華を得るなど良い結果があるのだ、死んでしまったらおしまいだ」というわけですね。

\次のページで「「命を捨てる」の英訳は?」を解説!/

片思いが破れるのはつらいことだ。だが「死んで花実が咲くものか」という言葉もあるだろう。どんなにつらい出来事があったとしても、それで命を落としてしまっては元も子もない。

「命を捨てる」の英訳は?

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ここでは、「命を捨てる」の英訳を見てみましょう。

「give one's life」

学校で「give」という単語を習った時、「ずいぶんたくさんの意味があるな」という感想を抱いたことはありませんでしたか?「give one's life」で「(〜のために)命を捧げる・犠牲にする」という意味になります。「〜のために」の部分は「for」や「to」で説明することが可能です。

「命を捨てる」を使いこなそう

この記事では「命を捨てる」の意味・使い方・類語などを説明しました。対義語では見慣れない表現も紹介しましたが、類義語は今回取り上げた以外にもたくさんの表現があります。他にどのような言葉があるのか、興味がわいた人はぜひ辞書を引いてみてください。

言葉とは一つ覚えれば十分というものではなく、他の言葉と関連づけることでさらに理解が深まり、語彙として定着します。今回の「命を捨てる」に限らず、もし身の回りで気になる言葉に出会った時は、他に似た意味の言葉や反対の意味の言葉がないか、ぜひ探してみてください。

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国語言葉の意味

【慣用句】「命を捨てる」の意味や使い方は?例文や類語を校正者がわかりやすく解説!

この記事では「命を捨てる」について解説する。

端的に言えば命を捨てるの意味は「目的のために命を投げ出す」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

広告や書籍で13年の経験を積んでいる現役校正者の朱月を呼んです。一緒に「命を捨てる」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/朱月

誤字脱字と日々格闘する、文学部出身の校正者。13年の校正経験を生かし、丁寧に解説する。

「命を捨てる」の意味・使い方まとめ

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「命」がつく慣用句やことわざは色々ありますが、「命を捨てる」という慣用句を知っていますか?今回はこの「命を捨てる」について、意味や使い方を見ていきましょう。

「命を捨てる」の意味は?

「命を捨てる」を国語辞典で調べると、次のような意味が載っています。

1.ある目的のために死ぬ。命を投げ出す。「—・てる覚悟で取り組む」
2.生きるべきなのに死ぬ。「無謀な運転で—・てる」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「命を捨てる」

「命」とは「生きている限り持ち続け、死とともに消滅する生命」のことです。ここでの「捨てる」とは、わたしたちが日頃よく使っている「いらないものとして手元から離す」「放棄する」という意味ではありません。「捨てる」という言葉には、慣用句的に使うことで「自らを犠牲にする、投げ出す」という意味があります

「命を捨てる」とは、目的のために自分の命や危険も顧みずに努力する強い意志や、自己犠牲の精神の表れと考えてもよいでしょう。また、2の意味のように実際に死んでしまうという意味でも使われます。この場合も「生きるべきなのに死ぬ」と辞書にあるように、本来しなくてもいい犠牲を払っていることに注目しましょう。

「命を捨てる」の語源は?

「命を捨てる」という言葉に語源はあるのでしょうか。自己犠牲の精神を表した記述は古くからさまざまな書物に見られますが、何が「命を捨てる」の語源であるのか、どうやらはっきりしていないようです。文字通りの意味から、次第に慣用句として使われるようになったのかもしれませんね。

「命を捨てる」の使い方・例文

「命を捨てる」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

\次のページで「「命を捨てる」の類義語は?違いは?」を解説!/

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