この記事では「山中の賊を破るは易く心中の賊を破るは難し」について解説する。

端的に言えば「山中の賊を破るは易く心中の賊を破るは難し」の意味は「自分自身の心を律することは難しい」ですが、もっと幅広い意味やニュアンス、由来を理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元予備校校舎長で国語指導歴が長く、現在は教育系ライターのみゆなを呼んです。一緒に「山中の賊を破るは易く心中の賊を破るは難し」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/みゆな

元大手予備校校舎長、現在は教育系のライター。国語、特に現代文の指導経験が豊富。難解な言葉や表現を中高生がスラスラ理解できるように解説するのが大得意。

「山中の賊を破るは易く心中の賊を破るは難し」の意味や語源・使い方まとめ

image by iStockphoto

山中の賊を破るは易く心中の賊を破るは難し」、ストイックでカッコいい印象もあることわざですね。やや長めですが、ここぞという場面でさりげなく口にすることができると、周囲から一目置かれることまちがいなし!語彙力アップのチャンスです。

そのためにも正しい意味や使い方をきちんと押さえておきましょう。早速「山中の賊を破るは易く心中の賊を破るは難し」の意味や由来・使い方を見ていきます。

「山中の賊を破るは易く心中の賊を破るは難し」の意味は?

「山中の賊を破るは易く心中の賊を破るは難し」には、次のような意味があります。

山中に立てこもっている賊を討伐するのはやさしいが、心の中の邪念に打ち勝つことはむずかしい。自分の心を律することは困難であるというたとえ。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「山中の賊を破るは易く心中の賊を破るは難し」

「山中の賊」とは、昔は山によくいたと言われる賊(山賊)のこと。「心中の賊」とは、自分の心の中の賊、つまり邪念やよこしまな思い、間違った考えなどのことを指します。

自分の心に巣食うよこしまな心を律するのは、山賊を討伐するという本来とても危険なことをするよりも、もっと難しい。山賊の討伐と自分の心の制御を比較し、自分の心というのは律しがたいものだ、とたとえていることわざです。

「山中の賊を破るは易く心中の賊を破るは難し」の由来は?

次に「山中の賊を破るは易く心中の賊を破るは難し」の由来を確認しておきましょう。

このことわざは、中国・明の時代の儒学者であった王陽明(おうようめい)が著した『与楊仕徳薛尚誠書』に記載されています。該当部分を原文で見てみましょう。

\次のページで「「山中の賊を破るは易く心中の賊を破るは難し」の使い方・例文」を解説!/

破山中賊易、破心中賊難。区区翦除鼠竊、何足為異。若諸賢掃蕩心腹之寇、以収廓清平定之功、此誠大丈夫不世之偉績。

(意味)
山中に立てこもっている賊を討伐するのはやさしいが、心の中の邪念に打ち勝つことはむずかしい。私のような者が賊をを切り除くと言うことは、どうして他愛もない事でしょう。もしあなた方が、歪んだ私欲と言った心の奥底に居る賊の一切を払い除き、乱れた世の中を清められたならば、真の意味で偉丈夫であり、世に見る稀な偉大なる業績であるのです。

王陽明は思想家でもありましたが、武将としてもすぐれた業績を残した人でした。実際に賊と戦うことも多かったと考えられています。一方で思想家でもあったため、起きた出来事を深く思索することも欠かさなかったそうです。

破山中賊易、破心中賊難」、後世においてことわざになったこの部分で言っている「賊を討った」のも、王陽明自身が行ったことだったかもしれませんね。

「山中の賊を破るは易く心中の賊を破るは難し」の使い方・例文

「山中の賊を破るは易く心中の賊を破るは難し」はどのように使えることわざでしょうか。例文使って見ていきましょう。

1.友人には「ダイエット続いている?」なんて気軽に言えるのに、自分はついいつも甘いものを食べてばかり……。まさに「山中の賊を破るは易く心中の賊を破るは難し」だ。
2.今日こそはテレワーク中に動画を見ることなく仕事に集中しようと思ったのに!気付いたらまた30分も見てしまっていた。僕はいつだって「山中の賊を破るは易く心中の賊を破るは難し」なんだ。

「山中の賊を破るは易く心中の賊を破るは難し」は、自分の中にある誘惑に打ち勝つのは難しい!自分を律するのは難しい!と言いたい場面で使えます。

例文1のようにダイエットは典型的ですよね。常に「食べたい」誘惑との戦いです。戦いに負けてしまったときに「山中の賊を破るは易く心中の賊を破るは難し」と言ってみてください。

例文2も最近は「あるある」な人も多いのではないでしょうか。テレワーク中は周りの視線がありませんから、ついスマホに手が伸びて……、そんなときにも「山中の賊を破るは易く心中の賊を破るは難し」ということができますよ。

\次のページで「「山中の賊を破るは易く心中の賊を破るは難し」の類義語は?違いは?」を解説!/

「山中の賊を破るは易く心中の賊を破るは難し」の類義語は?違いは?

image by iStockphoto

「山中の賊を破るは易く心中の賊を破るは難し」と同じ意味を持つことわざを見てみましょう。

「人の七難より我が十難」

「難」とは欠点のこと。他人のことはよく見えるから欠点も目につきやすいけれども、自分のことはよく見えないから欠点にあまり気づけない。他人に欠点が7つ見つかったら、自分はそれ以上に欠点があるはずだから、自分の言動を振り返りなさい、と自覚と反省を促すことわざだと言われています。

「山中の賊を破るは易く心中の賊を破るは難し」のことわざで山賊は討伐しやすいのも、自分の外にある存在だからですよね。自分自身や自分の内面を自覚するのは難しい、という点で共通した意味を持っていることわざです。

「山中の賊を破るは易く心中の賊を破るは難し」の対義語は?

残念ながら「山中の賊を破るは易く心中の賊を破るは難し」と対義になることわざはありませんでした。「自分の外にあるものは討ちにくいが、自分自身は律しやすい」というのでは、なんの戒めにもなりませんよね。

ことわざとは教訓やより良く生きるヒントがこめられているものなので、自分自身は律しにくい(だから自律が大事)というものが多く存在します。

「山中の賊を破るは易く心中の賊を破るは難し」の英訳は?

image by iStockphoto

「山中の賊を破るは易く心中の賊を破るは難し」を英語で説明できたら、ますますカッコいいですよね。英語にも同じような意味を持つことわざはあるのでしょうか?調べてみました。

「One man’s fault is another’s lesson. 」

英語では「One man’s fault is another’s lesson. 」ということわざがあります。直訳すると「ある人の失敗は、他の人の学び」、つまり他人に失敗や欠点があれば自分にも同じようにあるはず。自分がまだ失敗していなかったとしても、周りから学ぶ謙虚さを持ちなさい、という意味です。

\次のページで「「山中の賊を破るは易く心中の賊を破るは難し」を使いこなそう」を解説!/

「山中の賊を破るは易く心中の賊を破るは難し」を使いこなそう

この記事では「山中の賊を破るは易く心中の賊を破るは難し」の意味・使い方・類語などを説明しました。

私たちは多かれ少なかれ、毎日自分の中の邪念や誘惑と戦っていますよね。今日からはぜひ「山中の賊を破るは易く心中の賊を破るは難し」を念じ、戦いに打ち勝ってください。気に入ったことわざや慣用句を紙に書いて、目立つところに貼っておくのもおすすめの方法ですよ。

" /> 【ことわざ】「山中の賊を破るは易く心中の賊を破るは難し」の意味や使い方は?例文や類語を元予備校校舎長がわかりやすく解説! – Study-Z
国語言葉の意味

【ことわざ】「山中の賊を破るは易く心中の賊を破るは難し」の意味や使い方は?例文や類語を元予備校校舎長がわかりやすく解説!

この記事では「山中の賊を破るは易く心中の賊を破るは難し」について解説する。

端的に言えば「山中の賊を破るは易く心中の賊を破るは難し」の意味は「自分自身の心を律することは難しい」ですが、もっと幅広い意味やニュアンス、由来を理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元予備校校舎長で国語指導歴が長く、現在は教育系ライターのみゆなを呼んです。一緒に「山中の賊を破るは易く心中の賊を破るは難し」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/みゆな

元大手予備校校舎長、現在は教育系のライター。国語、特に現代文の指導経験が豊富。難解な言葉や表現を中高生がスラスラ理解できるように解説するのが大得意。

「山中の賊を破るは易く心中の賊を破るは難し」の意味や語源・使い方まとめ

image by iStockphoto

山中の賊を破るは易く心中の賊を破るは難し」、ストイックでカッコいい印象もあることわざですね。やや長めですが、ここぞという場面でさりげなく口にすることができると、周囲から一目置かれることまちがいなし!語彙力アップのチャンスです。

そのためにも正しい意味や使い方をきちんと押さえておきましょう。早速「山中の賊を破るは易く心中の賊を破るは難し」の意味や由来・使い方を見ていきます。

「山中の賊を破るは易く心中の賊を破るは難し」の意味は?

「山中の賊を破るは易く心中の賊を破るは難し」には、次のような意味があります。

山中に立てこもっている賊を討伐するのはやさしいが、心の中の邪念に打ち勝つことはむずかしい。自分の心を律することは困難であるというたとえ。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「山中の賊を破るは易く心中の賊を破るは難し」

「山中の賊」とは、昔は山によくいたと言われる賊(山賊)のこと。「心中の賊」とは、自分の心の中の賊、つまり邪念やよこしまな思い、間違った考えなどのことを指します。

自分の心に巣食うよこしまな心を律するのは、山賊を討伐するという本来とても危険なことをするよりも、もっと難しい。山賊の討伐と自分の心の制御を比較し、自分の心というのは律しがたいものだ、とたとえていることわざです。

「山中の賊を破るは易く心中の賊を破るは難し」の由来は?

次に「山中の賊を破るは易く心中の賊を破るは難し」の由来を確認しておきましょう。

このことわざは、中国・明の時代の儒学者であった王陽明(おうようめい)が著した『与楊仕徳薛尚誠書』に記載されています。該当部分を原文で見てみましょう。

\次のページで「「山中の賊を破るは易く心中の賊を破るは難し」の使い方・例文」を解説!/

次のページを読む
1 2 3 4
Share: