この記事では大麻と覚醒剤の違いについてみていきます。両方とも怖いイメージの薬物ですが、どう違うのかと聞かれると説明が難しいでしょう。大麻の使用では罰されないのか、覚醒剤の医薬品がある?など、意外な真実も隠されているんです。

今回はそんな違法薬物の性質について、薬のプロである現役薬剤師のライター、アラノるかと一緒に解説していきます。

ライター/アラノるか

薬局の店頭に立つ現役薬剤師ライター。日々の業務で、麻薬や覚せい剤原料の処方せんも扱い、薬物の種類には詳しい。患者への説明同様、わかりやすい解説を心がけている。

1.大麻とは?

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大麻は、薬用型の品種のアサ(麻、大麻草とも呼ばれる)から採取できます。アサの花びらの集まった部分や葉を乾燥させたり、樹脂化、液体化させたものが「大麻」です。大麻に特異的な成分として問題視されるのは、向精神作用のあるTHC(テトラヒドロカンナビノール)で、化学合成されたTHCは麻薬として規制されています。

1-1.大麻の種類

大麻の加工品には主に、葉や花を乾燥させた「マリファナ」、大麻から抽出される大麻樹脂「ハシッシュ」、樹脂から成分を抽出、濃縮して作る液体大麻「ハシッシュオイル」の3種があります。俗称は、「マリファナ」「ハッパ」「チョコ」「グラス」など。

1-2.精神錯乱!?大麻の体への働き

大麻を乱用すると、一般的には気分が爽快、陽気になるようです。一方で、視覚、聴覚、味覚、触覚等の感覚が過敏になり体調を崩したり集中力や学習能力が低下します。吐き気めまい筋力の低下平衡感覚の障害等が起こるほか、急性中毒による意識障害も。

長く続けると興奮状態に陥って暴力的になったり、幻覚や妄想が生じることも。常用で脳の一部が萎縮することも報告されており、認知症や、何もやる気のない状態となる「無動機症候群」におちいります。

1-3.医療用の大麻って?

医療大麻とは、医療目的で使用される大麻の総称です。大麻そのもの以外に、大麻草から作られる医薬品も、日本での流通は規制されています。

しかし2021年、大麻草由来の医薬品のうち、精神作用や依存性のないCBD(カンナビジオール)製剤について、厚生労働省が国内使用の検討を始めました。CBD製剤は欧米などではすでに使われており、難治性のてんかん治療に使われたり、がんの痛みを抑えるのに有効です。

実はCBDそのものは規制されておらず、輸入品の健康食品や化粧品が販売されています。ただし原料である大麻の栽培や輸入が規制されているため、CBDの国内製造はできません。流通品は現行法の「大麻」にあたらないよう、大麻草の成熟した茎と種からのみ抽出、もしくは化学合成されます。業者は成分分析により、THC(テトラヒドロカンナビノール)が混入していないことを示さなければなりません。

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1-4.大麻の依存性

大麻には覚醒剤よりは低いものの、はっきりした精神依存性があります。大麻に含まれるTHC(テトラヒドロカンナビノール)は脳に作用し、多幸感や知覚の変化を起こすのです。通常とは異なる人為作用で得られた快感は、脳に深く印象付けられ、忘れられなくなります。そのため依存症患者は、再び大麻に手を出してしまうのです

2.覚醒剤とは?

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「覚醒剤」とは、脳を刺激する中枢神経の刺激薬です。アンフェタミン、メタンフェタミンの2種を指します。漢方薬として使用されるマオウ(麻黄)の抽出物から、メタンフェタミンを初めて合成したのは日本人です。

2-1.覚醒剤の種類

主に白色の粉末無色透明の結晶として出回りますが、錠剤型のものにはカラフルに色付けされたものも。においはなく、やや苦みがあります。俗称は「シャブ」「S(エス)」「スピード」「アイス」「ヤーバー(錠剤型の覚醒剤)」など。大ぶりで単一の結晶状のものは「ガンコロ」と呼ばれます。

2-2.死亡する場合も!覚醒剤の体への働き

脳神経系に興奮作用を示すため、心拍数は増加し血圧が上昇眠気や疲労感がなくなり、頭が冴えた感じに。便秘や食欲の低下も現れます。しかし、接種から数時間で効果が切れると、激しい脱力感疲労感倦怠感に襲われることに。

大量摂取すると、急性中毒により全身けいれん意識消失を起こしたり、脳出血により死亡するケースも。

乱用を続けると被害・迫害妄想幻聴体感幻覚が高頻度にあらわれ、錯乱状態になって発作的に暴力をふるう場合もあります。意欲低下引きこもりといった症状が出ることも。このような精神障害は、乱用をやめてもしばしば慢性化します。

2-3.覚醒剤の医薬品があるの?

覚醒剤として管理されるメタンフェタミンは、現在でも医薬品「ヒロポン錠」として製造されています。

この薬は、他の医薬品とは別格の厳しい管理体制です。堅固な鍵のかかる場所での保存が義務とされ、製造業者から施用機関までの流通過程、使った患者名までが包装単位で記録保管されます。流通に医薬品卸は介在せず、許可された医療機関でしか使用できないため、薬局では取り扱えません。

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2-4.覚醒剤の依存性

覚醒剤強力な覚醒効果と快感をもたらすので、強い精神依存が形成されます。覚醒剤を止めて長期間経ってからも使用時のような妄想や幻聴などの症状「フラッシュバック」が起こることもあるのです。過去の覚醒剤使用が脳に不可逆の変化を起こし、体内にできた化学物質が、まるで覚醒剤のように作用してしまうためと考えられています。

フラッシュバックの症状から逃れようと、再び覚醒剤に手を伸ばし、ますますやめられなくなる人も少なくありません。

3.大麻と覚醒剤、取り締まりはどう違う?

3.大麻と覚醒剤、取り締まりはどう違う?

image by Study-Z編集部

大麻取締法と覚醒剤取締法では、上の表で示す通り、覚醒剤の方が量刑が重くなっています。営利目的が認められれば、どちらの法律でも刑はさらに重くなるのです。

3-1.大麻取締法

大麻取締法は、大麻の所持、栽培、譲渡等に罰則を定めています。しかし、大麻使用については規制されていません

理由については根拠となる資料が乏しいのですが、日本古来より大麻草が生活に利用されてきた経緯が関係しているようです。近年、使用罪を定めようという動きもあります。現状では、使用する以前には必ず所持をすることになるため、所持罪による取り締まりでカバーする形です。

大麻草の成熟した茎や種子は、大麻取締法の規制対象から除かれています。両部位には脳に作用するTHCもほとんど含まれません。茎は繊維として、種子は七味唐辛子などに使用されます。

3-2.覚醒剤取締法

覚醒剤取締法は、覚醒剤そのものだけではなく、近い化学構造を持つ「覚醒剤原料」の輸出入や製造、譲渡や所持使用などの行為も規制対象です。覚醒剤原料は、特定の化学物質を含有する12種ですが、そのうち一部は医療用医薬品として使用されています。

医薬品である覚醒剤原料に関しては、あらかじめ厚生労働大臣の許可を得て、自己の疾病の治療目的ならば覚醒剤原料を携帯しての出入国は可能です。つまり、自分用の薬を持って海外旅行をすることはできます。

体に悪いほど、違法性も高い

取締法を比べると、大麻より覚醒剤の方が罰則が重くなっているのがわかります。作用の強烈さ、依存性の強さ、どちらも覚醒剤の方が上です。ただし、罰則が軽い大麻は、安価で手が出しやすいという危うさを持っています。

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3分で簡単にわかる「大麻」と「覚醒剤」の違い!法律や依存度・種類も現役薬剤師がわかりやすく解説

この記事では大麻と覚醒剤の違いについてみていきます。両方とも怖いイメージの薬物ですが、どう違うのかと聞かれると説明が難しいでしょう。大麻の使用では罰されないのか、覚醒剤の医薬品がある?など、意外な真実も隠されているんです。

今回はそんな違法薬物の性質について、薬のプロである現役薬剤師のライター、アラノるかと一緒に解説していきます。

ライター/アラノるか

薬局の店頭に立つ現役薬剤師ライター。日々の業務で、麻薬や覚せい剤原料の処方せんも扱い、薬物の種類には詳しい。患者への説明同様、わかりやすい解説を心がけている。

1.大麻とは?

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大麻は、薬用型の品種のアサ(麻、大麻草とも呼ばれる)から採取できます。アサの花びらの集まった部分や葉を乾燥させたり、樹脂化、液体化させたものが「大麻」です。大麻に特異的な成分として問題視されるのは、向精神作用のあるTHC(テトラヒドロカンナビノール)で、化学合成されたTHCは麻薬として規制されています。

1-1.大麻の種類

大麻の加工品には主に、葉や花を乾燥させた「マリファナ」、大麻から抽出される大麻樹脂「ハシッシュ」、樹脂から成分を抽出、濃縮して作る液体大麻「ハシッシュオイル」の3種があります。俗称は、「マリファナ」「ハッパ」「チョコ」「グラス」など。

1-2.精神錯乱!?大麻の体への働き

大麻を乱用すると、一般的には気分が爽快、陽気になるようです。一方で、視覚、聴覚、味覚、触覚等の感覚が過敏になり体調を崩したり集中力や学習能力が低下します。吐き気めまい筋力の低下平衡感覚の障害等が起こるほか、急性中毒による意識障害も。

長く続けると興奮状態に陥って暴力的になったり、幻覚や妄想が生じることも。常用で脳の一部が萎縮することも報告されており、認知症や、何もやる気のない状態となる「無動機症候群」におちいります。

1-3.医療用の大麻って?

医療大麻とは、医療目的で使用される大麻の総称です。大麻そのもの以外に、大麻草から作られる医薬品も、日本での流通は規制されています。

しかし2021年、大麻草由来の医薬品のうち、精神作用や依存性のないCBD(カンナビジオール)製剤について、厚生労働省が国内使用の検討を始めました。CBD製剤は欧米などではすでに使われており、難治性のてんかん治療に使われたり、がんの痛みを抑えるのに有効です。

実はCBDそのものは規制されておらず、輸入品の健康食品や化粧品が販売されています。ただし原料である大麻の栽培や輸入が規制されているため、CBDの国内製造はできません。流通品は現行法の「大麻」にあたらないよう、大麻草の成熟した茎と種からのみ抽出、もしくは化学合成されます。業者は成分分析により、THC(テトラヒドロカンナビノール)が混入していないことを示さなければなりません。

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